月: 2022年4月

マーラー交響曲第10番(全曲)

エリアフ・インバル/東京都交響楽団

★★★★★

一楽章、整然としている序奏主題。良く歌い、広がりのある第一主題。華やかな第二主題。とても良い響きで録音されています。都響はとても伸びやかで、上手い。丁寧で表情も豊かです。トランペットも輝かしく突き抜けて来ます。

二楽章、とてもゆったりとしたテンポです。アンサンブルの精度も高く、色彩感も濃厚です。しなやかで揺れ動く表現の中間部。最後は少しアッチェレランドしました。

三楽章、豊かに表現される主要主題。

四楽章、緩いスネアが入りました。とても色彩感が濃厚で、その上、音が空間にスーッと広がる雰囲気はとても良いです。フランクフルト放送soとの録音よりも表情が豊かです。インバルの円熟によるものか、その分、鋭利な刃物のような鋭さは無くなっています。ペタンと浅い響きの大太鼓。

五楽章、柔らかいチューバ。深い響きで美しく歌うフルート。胸に迫るものがあります。頂点で大太鼓が入った後のチューバは、テヌート気味に演奏する盤が多かったですが、マルカート気味でした。シンバルも素晴らしい響きでした。インバルの唸り声は何度か聞こえましたが、掛け声のようにはっきりとした声も聞こえます。1970年代には考えられない程安定したトランペットのロングトーン。次第に黄昏る寂しさがとても良く表現されてまいす。凄く寂しい。グリッサンドはバラバラで異様な雰囲気を表現しました。遠くの天使の梯子を昇って行きました。
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レイフ・セーゲルスタム/スウェーデン放送交響楽団

インバル★★★★★

一楽章、はっきりと表れる序奏主題。ゆっくりと感情を込めて演奏される第一主題。作品に入って行ける演奏です。第二主題もゆっくりととても感情の籠った演奏です。とても静寂感のある録音で、残響がホールに広がって行きます。中低音の暖かく柔らかい響きです。楽譜に忠実になり過ぎて冷徹な演奏になるよりも、感情のままに豊かに表現される演奏がとても良いです。壮絶な雰囲気の中からトランペットのロングトーンが響きます。オーディエンスのノイズが聞こえるので、ライヴ録音のようですが、録音状態はとても良いように感じます。

二楽章、この楽章もゆったりとしたテンポで豊かに歌います。木管が生き生きとした演奏をします。とても楽し気です。中間部に入る前の金管で少しテンポを速めましたが、中間部はまたゆったりとしたテンポです。

三楽章、控えめですが、表現があります。

四楽章、胴の深いスネアが入りました。テンポの動きもあり、振幅も大きい演奏です。不気味な雰囲気になって、パチーンと強烈な大太鼓が響きます。

五楽章、たっぷりと歌うチューバ。大太鼓は強烈です。感情が籠っていて引き付けられるフルート。続く繊細な表現のヴァイオリン。素晴らしい響きで盛り上がり強烈な大太鼓。壮絶な響きの中からトランペットのロングトーンが響きますが若干音が合わない。アウフタクトの4分音符をかなり長く演奏して、グリッサンドはしましたがかなり揃っていました。最後は天使の梯子を昇って行きました。

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エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団

ブロムシュテット★★★★★

一楽章、割と明快な序奏主題。クッキリとした第一主題。第二主題も鮮明。オケがとても機能的です。軽々と鳴り響く金管の充実した響き。ミュートを付けたトランペットは鋭い響きです。録音も相まって精緻な響きは素晴らしい。鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた響き。湧き上がるようなトゥッティから突き抜ける鋭いトランペットのロングトーン。一転してとても穏やかなコーダ。

二楽章、とても俊敏に反応するオケ。鋭い切れ味です。淡々と演奏される中間部。活発で反応の良いオケが見事です。伸びやかで音離れの良い金管がホールに拡散して行きます。

三楽章、シルキーなヴァイオリンの主要主題。シャープで奥行き感のある音場。あまり雰囲気の変わらない中間部。

四楽章、スネアがはっきり聞こえる冒頭。シロフォンも奥行き感があります。トランペットが鋭く奥から突き抜けて来ます。とても洗練された響きで楽譜に忠実に演奏している感じがします。フラッターも良く聞こえます。かなり硬い響きの大太鼓。

五楽章、控えめなチューバ。バチーンとかなり強烈な大太鼓です。かなり暗い雰囲気の中で、異質な大太鼓。細身のフルートが寂しく印象的です。とても美しいヴァイオリン。頂点に達して痛みを感じる程硬く強い大太鼓。次第に静まって行きますが、惜別の寂しさが滲み出て来ます。孤独に死んで行く悲しみ。最後のグリッサンドが揃わないところが独特な効果を生んでいます。最後は天使の梯子を昇って行きます。

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ダニエル・ハーディング/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ハーディング★★★★★

一楽章、非常に弱くしなやかな序奏主題。緊張感から解放されるようなゆったりと柔らかい第一主題。さらりと流れる第二主題。とても緻密な表情が付けられていて絶対に大味にはなりません。ウィーンpoのしなやかな響きと相まってとても良い演奏です。柔らかいトゥッティ。不協和音も壮絶な響きにはならず、柔らかい。広がりのあるトランペットのロングトーン。全体にゆっくりとしたテンポで丁寧に描いて行きます。弱音も消え入るような静けさで強弱の振幅もとても大きいです。

二楽章、遠くから響くホルン。豊かな表現の主部。優雅な雰囲気の中間部。普通に美しく鳴るシンバルが入りました。昔のような割れてヒビの入ったシンバルはもう使っていないのか?

三楽章、速めのテンポです。とても表情豊かな主要主題。

四楽章、スネアは入りませんでした。濃厚で密度の濃い響きです。油絵のように濃厚で色彩感もとても豊かです。奥まって柔らかい大太鼓。あまり強打していません。

五楽章、柔らかいチューバ。弱い大太鼓は何を意図しているのでしょう。透き通って美しいフルート。とても感情を込めて迫って来る演奏です。続く弦もとても柔らかく美しい。次第に楽器が重なっても美しい盛り上がりです。テヌート気味のチューバ。トランペットのロングトーンも奥まって柔らかい。とても美しく穏やかになって行きます。グリッサンドはほぼ揃っていました。

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ヤニック・ネゼ=セガン/ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、少し離れたところからフワッと届くような序奏主題。広がりのある第一主題。とても美しいです。第二主題もゆったりとしていて美しいです。トロンボーンの重厚な響きもブレンドされてとても良い響きです。コンセルトヘボウでのコンサートなので、トゥッティもよくブレンドされた美しい響きです。トランペットはあまり強く突き抜けては来ません。素晴らしい静寂感の中に消えて行きました。

二楽章、一体感があって、生き物のように動く演奏です。中間部も豊かな表情です。ホールによる効果か、当日のコンディションが良かったのか、とても充実した響きです。

三楽章、とても繊細で淡い主要主題。全体の色彩感が濃厚でとても美しいです。

四楽章、スネアは入らず柔らかい冒頭でした。大きな表現や主張は無く、自然に流れて行く演奏で、「別れ」を特に意識している演奏でも無い感じです。硬い響きですが、あまり強烈では無い大太鼓。

五楽章、不気味なチューバ。淡々と演奏されるフルート。感動的な盛り上がりです。ゆっくりとしたテンポで演奏されるチューバ。ここでもトランペットのロングトーンは控えめです。会場がコンセルトヘボウだからか、とても色彩感の濃厚で深みのある響きが魅力的です。次第に寂しく、物悲しい雰囲気になって来ました。グリッサンドは僅かにズレがある程度でした。
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ジャン・マルティノン/ハーグ・レジデンティ管弦楽団

★★★★☆

一楽章、硬い響きで明瞭な序奏主題。倍音成分があまり含まれていないような第一主題。テンポは速めです。淡々と演奏される第二主題。ザラザラとした弦が気になります。速めのテンポでこねくり回すようなことの無いストレートな演奏です。トゥッティでも録音の古さは否めません。かなり奥まって響くトランペットのロングトーン。

二楽章、一楽章とは打って変わって、ヴェールに覆われているような奥ゆかしい響きでメルヘンチックな主部。中間部は良く歌います。テンポの動きや表現も豊かになって来て次第に乗って来ている感じがします。

三楽章、あまり歌わない主要主題。この楽章のテンポは遅めです。

四楽章、スネアがはっきりと聞こえます。トランペットが突き抜けるようになって来て、演奏が生き生きとして来ました。推進力があって力強い演奏です。金管の咆哮もあるようになりかなり力のこもった演奏になって来ました。テンポは速めに進みます。あまり強烈には響かなかった大太鼓。

五楽章、ゴロゴロとした響きのチューバ。線が細く澄んだフルートが美しい旋律を奏でます。頂点に達して大太鼓が打たれる部分の盛り上がりは今一つでした。続くチューバはテヌート気味に演奏しました。テンポは大きく変わらず自然に流れて行きます。かなり強いトランペットのロングトーン。次第に惜別の物悲しさがとても良く表現されます。黄昏てとても悲しい。グリッサンドはしなかったようです。

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トーマス・ダウスゴー/シアトル交響楽団

★★★★

一楽章、割とはっきりとした序奏主題。豊かに歌う第一主題。第二主題もとても豊かな表現です。金管は突き抜けては来ず、奥まってブレンドされた響きです。ライヴ録音らしいブレンドされた柔らかい響きですがヴァイオリンなどは響きが少なく、摩擦音のような感じです。トランベットのロングトーンも突き抜けては来ません。穏やかで柔らかいコーダ。

二楽章、少しゆったりとしたテンポの主部。感情的にのめり込むような演奏ではありませんが、良く歌う演奏です。中間部もゆったりとした歌です。トゥッティでは混然一体となります。トランペットもくすんだ響きで、全体にマイルドです。

三楽章、強弱の変化の大きい主題。ゆったりとした中間部。

四楽章、浅く筋肉質なホルン。インバルの超鮮明なセッション・レコーディングに比べると、録音の制限を感じてしまいます。とても淡々と演奏が進みます。トランペットがマイルドで伸びて来ないので、あまりダイナミックには感じません。大太鼓は響きからかなり強烈に叩かれているようですが、音圧としてはあまり強く感じません。

五楽章、大砲のような響きの大太鼓。チューバはかなり抑えています。かなり暗く不気味な雰囲気です。細身で澄んだフルートがなかなか良いです。とても清らかに上昇して行きます。頂点がリミッターがかかったように伸びて来ないのが残念。トランペットのロングトーンの部分も後ろではパイプオルガンのような響きです。ホルンも間接音を伴わない浅い響き。死へ向けて脱力して行くところはとても良いです。

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サイモン・ラトル/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、モヤーッとした暗闇から響く序奏主題。かなりの弱音で温度感も低いです。ゆっくりと演奏される第一主題。第二主題もゆっくり目です。非常に丁寧で、生き生きとしています。不協和音からトランペットが突き抜けて来ます。弱音は消え入るように弱く演奏されます。

二楽章、冒頭部分もかなり弱い演奏でしたが、強弱の振幅はとても大きい演奏です。活発に動く弦。

三楽章、悲し気に繊細に表現される主要主題。活発に動く木管と、ゆったりと流れる弦の対比も見事です。

四楽章、スネアは入りませんでした。クリアで見通しの良い演奏です。弱音はしなやかでシルクのような肌触りです。ティンパニの強烈なクレッシェンドなど、振幅もとても大きいです。シンバルは効果的に入っています。大太鼓はあまり強くありません。

五楽章、比較的穏やかな冒頭部分。大太鼓はかなり軽く叩いている感じで、個人的にはもっと強烈に叩いて欲しいと感じます。フルートは遠くから響きます。胸を抉られるような演奏です。壮絶な不協和音の中からトランペットが抜けて来ます。グリッサンドは見事に揃っていましたので、異様な雰囲気は全くありませんでした。天使の梯子を昇って行くような雰囲気もありませんでした。

ハンヌ・リントゥ/マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、ボヤーッとした中から響く序奏主題が次第にハッキリとして来ます。静かにゆっくりと演奏される第一主題。第二主題もゆっくり目です。ゆったりとしたテンポですが、緊張感があって引き締まっています。反復された第一主題の強弱とテンポの動きの表現は独特です。豊かで柔らかい響きが美しい。トゥッティも充実した響きです。トランペットのロングトーンは強さは感じましたが突き抜けては来ませんでした。

二楽章、明快な主題。とても機能的に動きます。あまり伸びやかでは無い中間部。色彩感はとても濃厚です。

三楽章、細かく表情を付けられた主要主題。原色のような強い色彩がこのオーケストラなのか演奏の特徴です。東南アジアのオーケストラですが、予想以上に上手い。

四楽章、スネアは入りませんでした。トランペットがかなり強いバランスで録られているようにも感じます。ライヴゆえのキズもあります。あまり熱気をはらんで来るような演奏には感じません。遠くで鳴るような大砲のような大太鼓。

五楽章、とても良く歌うチューバ。オフ気味で細かなニュアンスが伝わらないフルート。頂点の大太鼓がリミッターが掛かったように弱くなりました。続くチューバが途中り音をスタッカートに演奏して不自然に感じました。トランペットのロングトーンの部分は壮絶な響きです。4拍目を長く伸ばしてグリッサンドしました。

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リッカルド・シャイー/ベルリン放送交響楽団

シャイー★★★☆

一楽章、モヤ~ッとした空気感に響く序奏主題。たっぷりと歌う第一主題。第二主題もゆったりとしたテンポで歌います。かなり積極的に表現する演奏です。ヴァイオリンのソロも美しい響きを伴ってとても心地よい演奏です。トゥッティは混然一体となっていて、まとまった響きです。トラッペットのロングトーンも突き抜けては来ません。シャイーの若い頃の録音ですが、響きは枯れて充実しています。

二楽章、この楽章もゆったりとしたテンポで落ち着いた演奏ですが、弦の主題は荒々しい表現です。モノトーンのような淡い色彩感ですが、とても落ち着きのある安定感を感じます。

三楽章、艶やかで歌う主要主題。随所にシャイーらしい歌が聞かれます。オーケストラはドイツのオーケストラらしい重量感のある響きで、いきなりのトゥッティでも瞬時に立ち上がらず、少し遅れてフルパワーになるような感じがあります。

四楽章、スネアが入りました。響きは鋭角的では無く、マイルドで少しくすんだ重厚な響きです。寂しげな雰囲気はとても良く表現されています。豊かな残響を伴って奥から響く大太鼓。あまり硬い響きではありません。

五楽章、ゴロゴロと響くチューバ。良く歌いますが響きが浅いフルート。とても繊細で夢見心地のヴァイオリン。あまり大きな盛り上がりにならずに頂点の大太鼓が入りました。トランペットのロングトーンが詰まったような響きで残念です。トゥッティのエネルギー感ももう一つといった感じです。グリッサンドはすこしバラツキました。天使の梯子を昇るような雰囲気は感じませんでした。

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ユージン・オーマンディー/フィラデルフィア管弦楽団

スクロヴァチェフスキ★★★☆

一楽章、とても現実的な序奏主題。豊かに歌う第一主題。第二主題もとても良く歌っています。豊麗なフィラデルフィアサウンドです。クック版第二稿唯一の録音ですがが、かなり均整の取れた演奏です。極端な表現をせずに作品をそのまま表現しようとしています。トランペットのロングトーン部分のトゥッティも豊麗な響きです。録音の古さはあまり感じさせません。安らかに終わります。

二楽章、ゆったりとしたテンポでふくよかなホルンに続いて控えめにオーボエ、続いてヴァイオリンの主題と続きます。中間部は、ゆったりしたテンポなのに慌てるような感じがあって、あまり伸びやかではありませんが、そつ無くまとめています。

三楽章、微妙な表情が付けられた主要主題。良く鳴る木管。この楽章もゆったりとしたテンポです。

四楽章、スネアがはっきりと聞こえます。少しテンポが動く所もありました。あまり奥行き感は無く、眼前に全ての楽器が広がるような音場感です。金管はとても良く鳴りますが、咆哮するほどのことはありません。感情的にのめり込むような演奏では無く、淡々と楽譜を音にしている感じです。トゥッティでもかなり余力を残している感じて、もう少し感情移入して欲しい気持ちになります。こちらの感情が盛り上がっても、スッとかわされるようなもどかしさがあります。大太鼓はあまり強烈ではありません。

五楽章、抑え目で柔らかいチューバ。独特な響きのフルート。大きな頂点ではありませんでしたが、頂点で大太鼓が鳴って、続くチューバはマルティノンの演奏程ではありませんが、テヌート気味でした。テンポはとても確実です。この楽章のトランペットのロングトーンの部分のトゥッティも全開では無いようです。あまり別れの寂しさは伝わって来ません。クリッサンドで演奏しませんでした。

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ルドルフ・バルシャイ/ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー

メナ★★★

一楽章うつろな序奏主題。とても豊かに伸びやかに歌う第一主題。ゆっくりとした第二主題。バルシャイ版での演奏ですが、独自の版を出すくらいなので、作品に対する思い入れも強いのでしょう。表現の幅はかなり広いです。木管が間接音を含んで奥行き感があります。輝かしい金管の響き。壮絶な響きからトランペットのロングトーンが響きます。

二楽章、ゆっくりとしたテンポです。かなり強めではっきりと演奏される主部。トライアングルが入ります。ホルツクラッパーのような音も聞こえます。シンバルも入って盛大です。中間部でも大太鼓のロールやシンバルが入ってちょっと違和感を感じます。コロコロと響くのはマリンバか?。とにかく色んな打楽器が登場します。演奏は積極的で元気です。

三楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポです。この演奏では消え入るような弱音は無く、かなり演奏しやすい音量で演奏している感じがします。シロフォンも登場しました。

四楽章、色んな打楽器が入ります。スネアもリズムを刻んでいます。ゆっくりと濃厚な表現もありますが、とにかく打楽器が頻繁に出て来ます。タンバリンまで登場します。大太鼓は強くミュートされた感じは無く柔らかく長い響きでした。

五楽章、ミュートは僅かに感じる大太鼓。大太鼓は遠くから響く感じで強烈な打撃ではありません。ゴロゴロとした響きのチューバ。美しいフルートですが、あまり感情は込められていないように感じました。それぞれの楽器がくっきりとしていて濃厚な色彩です。あまり盛り上がらず大太鼓が入りました。豊かな響きの中にテヌート気味にチューバが独特の響きです。トランペットのロングトーンも弱いです。僅かに揃わないグリッサンドでした。この部分は大きくズレがあった方が異様な雰囲気になって良いと思うのですが・・・・。あまり天に昇って行く感じもありませんでした。

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クルト・ザンデルリング/ベルリン交響楽団

★★

一楽章、静かな空間に音が広がり、かなりはっきりと演奏される序奏主題。速めのテンポで伸びやかで柔らかく歌う第一主題。ホルンも伸びやかです。。ゆったり目の第二主題。中低音も柔らかく伸びやかです。展開部に入っても速めのテンポです。再現部で金管の硬直した響き。トランペットのロングトーンはあまり鋭い音ではありません。最後はとても穏やかな雰囲気になりました。

二楽章、かなりゆっくりとした演奏ですがかなりエネルギッシュで振幅の大きい演奏です。中間部もゆっくりとたっぷりとした表現で歌います。一般的なこの楽章の演奏に比べるとかなり活発な表現です。テンポの動きもあります。

三楽章、一転して速めのテンポです。あまり表情を付けずに淡々と進みます。

四楽章、胴の浅いスネアが響きます。この楽章でもテンポの動きがあります。音像が大きくオンマイク気味で金管も前に出てきて奥行き感はあまり無い録音です。この楽章も速めのテンポでどんどん進みます。作品には不釣り合いな径の小さいシンバル。硬く強烈な大太鼓がホールに響き渡ります。

五楽章、弱めのチューバ。弱くビブラートを掛けているホルン。澄んだ響きのフルート。続くヴァイオリンが静かで美しい。トランペットのロングトーンはあまり強くありません。速めのテンポで淡々と演奏されるせいか、そんなに悪い演奏ではありませんが、何故か作品に入って行けません。最後も惜別に感じはほとんど感じませんでした。
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