チャイコフスキー 序曲「1812年」3

たいこ叩きのチャイコフスキー 序曲「1812年」名盤試聴記

シャルル・デュトワ/モントリオール管弦楽団

icon★★★☆
豊かなホールの響きを伴って伸びやかな弦の演奏です。
落ち着いたテンポで音楽が進みます。ブラスセクションの余裕のある響きも心地よい。
スネアの締まりのある良い音です。続くホルンも豊かな響きです。
大太鼓の音がほとんど聞こえません。スッキリとした演奏ですが、響きに厚みが感じられません。もっとロシア音楽的な怒涛の響きがあった方が良いと思いますが、洗練された美しい響きが身上のデュトワとモントリオールsoにはムリな要求でしょうか。
弦楽器と管楽器のバランスがしっかり取られていて、金管が暴走するようなところがありません。
大砲は左右中央と位置を変えて発射されました。ここでもオケは余裕を残しています。鐘は低音を伴った良い響きです。
突然シンセサイザーの登場です。これは必要ないと思うのですが・・・・・・。

余裕を十分残した美しい演奏でした。

ユーリ・テミルカーノフ/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

テミルカーノフ★★★☆
Largoサラッとした伸びやかな響きでとてもゆっくりとしたテンポで感情を込めて歌います。かなり下品に吹くトロンボーン。Andanteホルンが途中から少し強くなります。艶やかで美しい弦。Allegro giusto一転して速いテンポになります。あまり大きく盛り上がることはありません。第二主題もとても速いテンポであっさりと演奏します。ロシア民謡もかなり速いです。二度目の戦闘シーンも速いテンポで金管が咆哮することも無く、大きなエネルギーを放出することはありません。やはりロシア民謡はとても速いです。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは高い音にアクセントを付けて演奏します。大砲の実射がありました。その後急加速して駆け下りるような音形ではガクッと音量が落ちました。Largoここまで抑えていたエネルギーを放出するような輝かしく盛大な演奏になりました。Allegro vivaceゆっくりと刻みつけるような演奏です。軍の金管も増強されています。最後は花火も打ち上げられます。

伸びやかで美しい響きでした。前半はあまりエネルギーを放出しないような抑えた演奏でしたが、Largoからは輝かしく堂々とした演奏になりました。ただ、第二主題やロシア民謡のすごく速いテンポや駆け下りるような音形で音量がガクッと落ちるなどちょっと納得行かない部分もありました。
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ウラディミール・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

フェドセーエフ★★★☆
Largoゆっくりとしたテンポと暖かい響きでとても良く歌う演奏です。抑えた音量で入って大きくクレッシェンドする金管。Andante豊かな残響をともなってふくよかに響くホルン。Allegro giusto遅いテンポで確実に刻みます。響き渡るシンバル。金管はホールの響きに溶け込んであまり突出して来ません。第二主題は速めのテンポでさりげない歌でとても洗練されています。ロシア民謡はさらに速くなります。二度目の戦闘シーンでも長く尾を引き響き渡るシンバルが美しい響きです。トロンボーンのラ・マルセイエーズはスタッカートぎみに演奏しました。ロシア民謡はテンポが速すぎて落ち着きません。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは筋肉質で男性的です。金管が全開とまでは行きませんがかなり強く演奏します。大砲は大太鼓です。駆け下りるような音形の前はテヌートぎみに演奏しました。Largo盛大に鳴り響く鐘。トランペットがクレッシェンドします。ビブラートが強く強弱の変化を付けて演奏しています。 Allegro vivaceロシア国家はテヌートぎみにねちっこく演奏します。

表現の幅が広く変化に富んだ演奏でした。ただ、テンポが速く落ち着かないロシア民謡やビブラートを強くかけて強弱の変化をつけて演奏するトランペットなどちょっとやり過ぎの感も無きしもあらずです。
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大植 英次/大阪フィルハーモニー交響楽団

大植★★★☆
Largoマイクの位置が楽器に近い感じの録音です。木管もとても近いです。細部の表現よりも作品を大きくとらえて表現している感じです。Andanteマイク位置が近いので色彩感も濃厚です。Allegro giusto速いテンポでかなりガツガツと角の立った演奏です。最近では珍しいマルチマイク録音のようで、金管も非常に近いパートがあります。シンバルが気持ちよく鳴り響きます。第二主題も速めのテンポです。一つ一つのフレーズを歌うことはあまりしませんが、もっと大きい単位での音楽の起伏があります。二度目の戦闘シーンも速いテンポで、ここでもガツガツと演奏される弦。録音によるものだと思いますが、非常に激しい感じは出ています。タンブリンも鮮明に聞こえます。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは浅い響きです。速いテンポで頂点に向かいます。シンセサイザーの大砲はそれらしく聞こえました。かなり激しい頂点でした。Largoミキサーで金管のレベルを抑えているような感じであまり突出して来ないと言うか、引っこんでいる感じです。Allegro vivace金管よりも弦や木管の方がよく聞こえる録音には違和感を感じます。

マルチマイクの録音で、ミキサーでかなりバランスをコントロールしているような感じでした。コーダで金管がフルパワーで演奏する部分でも弦や木管がはっきり聞こえる録音には違和感を感じました。演奏そのものは作品を大きく捉えて起伏のある表現の演奏でした。
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エイドリアン・リーパー/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

リーパー★★★☆
Largo伸びやかで柔らかい弦の穏やかな演奏です。奥行き感のある木管が絡んで美しいです。第一主題も柔らかいです。かなりダイナミックに鳴る金管。Andante速いテンポで弾むような木管。ふくよかで柔らかいホルン。Allegro giusto柔らかいですが、しっかりとエッジの効いた弦。シンバルが炸裂します。金管はとても穏やかで、戦闘シーンというような描写ではありません。第二主題は硬い響きになり、歌もほとんどありません。二度目の戦闘シーンも柔らかく穏やかな金管。打楽器はアンバランスなくらい強烈です。弱音で演奏されるホルンのラ・マルセイエーズは浅く明るい響きです。スケールが大きく全開になるオケ。大砲も重低音を含んでリアルでした。駆け下りるような音形へ向けて大きくクレッシェンドとアッチェレランドしました。Largo鐘がかなりクローズアップされています。Allegro vivaceここでも堂々とした全開の演奏はなかなかの迫力です。

基本的には柔らかい響きの演奏でしたが、第二主題が硬い響きになったのが気になりました。戦闘シーンは穏やかで戦闘を描写したものとは感じられませんでした。最後の大砲の入る部分の全開のオケの響きは見事でした。大砲も重低音を含んだ良い音でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:序曲「1812年」の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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