ムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」
たいこ叩きのムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」名盤試聴記
クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
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表情豊かな演奏です。強弱の変化がとても大きいです。トロンボーンは控えめで後からでるトランペットが強いです。遅めのテンポでしっかりと表情付けをして行きます。すごく重量級の演奏です。怪しげな夜の雰囲気がとてもあります。リムスキー=コルサコフよりもムソルグスキーを表現しているようです。重い音楽作りが魑魅魍魎が出没しそうな雰囲気を上手く演出しています。鐘の後もアゴーギクも効かせて丁寧に音楽を作っている感じが伝わります。クラリネットとフルートのソロも歌でいっぱいでした。
ダニエル・バレンボイム/シカゴ交響楽団
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艶やかな高弦、エッジの立った低弦。余裕の全開!シカゴのパワー炸裂です。自信に満ちた堂々とした金管。シンコペーションのリズムも鋭く反応が良いです。このようなと言ったら失礼ですが、このような小品にこれだけ高機能なオーケストラが演奏するのはもったいないくらい見事なアンサンブルと豪快な振幅の演奏です。鐘が鳴った後も豊かな響きです。ニュートラルなクラリネットのソロ。笛を感じさせるフルートのソロ。
非の打ち所がないくらい気持ちよくオケが鳴り響きます。
あまりにも見事にオケが鳴り渡るので、作品の持っている、おどろおどろしい部分はほとんど表現されていませんが、ショーピースとしての価値は高いと思います。
ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団
★★★★★
変化に富んだ演奏です。重厚な金管。テンポも動くし普段は聞こえない音も聞こえます。充実した暖かいフィラデルフィアサウンドがバランス良く響きます。鐘の後の歌う部分では、グッとテンポを落としてテンポも動いてじっくりと表現します。クラリネットのソロも美しいものでした。フルートのソロは爽やかな夜明けを感じさせてくれました。
色彩感も豊かですし、アゴーギクも含めて表現も幅広い演奏で、楽しく聴かせてくれます。「はげ山の一夜」をこれだけ豊かな語り口で聴かせてくれた演奏ははじめてです。
エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団
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追い立てるように、かなり速いテンポで荒れ狂うように攻撃的な冒頭です。強烈に鳴り響く金管。弦も豪快に鳴ります。ファゴットのメロディの前にアッチェレランドしました。ファゴットから木管、弦とつながる部分もかなり追い立てるように加速します。その後の三連音を伴う金管でガクンとテンポを落とします。金管も耳をつんざくような思いっきりの強奏です。鐘の後はテンポを落として、テンポもルバートしたり柔軟です。前半の豪快な演奏とは対照的な柔らかい表現です。クラリネットのソロもフルートのソロもゆっくりとしたテンポでたっぷりと歌います。幽霊の大騒ぎと、夜明けの対比がとても上手く、なかなか聞かせる演奏でした。
ヴァレリー・ゲルギエフ/BBC交響楽団
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鮮烈な響きの冒頭。ティンパニも入ります。いかにも幽霊が現れそうな不気味な音楽です。思い切りの良い反応を示すオケ。リムスキー=コルサコフ版とはかなり違います。魔物たちのにぎやかな様子も生き生きと描かれています。リムスキー=コルサコフ版のような華やかさや変化はありません。夜明けの雰囲気はありませんでした。
粗野な作品ですが、洗練されたアンサンブルですっきりとした演奏に仕上げた良い演奏でした。
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クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
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速いテンポで物凄く豊かな表現です。フリークと言われるアバドの指揮ぶりも作品への思い入れを感じさせるものです。強弱の変化も大きくダイナミックです。この原典版を聞くと、リムスキー=コルサコフの編曲は大幅な改編だったんだと思います。テンポの動きもあります。柔らかく美しいオーボエ。とても表現が豊かで動きがあります。小物打楽器もさりげなくとても上手いです。オケも柔らかい響きでとても反応が良い演奏でした。
とても豊かな表現の演奏で、強弱の変化にも敏感でダイナミックでした。オケの反応もとても敏感で、とても楽しく聞くことができました。
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レオポルド・ストコフスキー/ロンドン交響楽団
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かなり録音が古い感じです。独特のアンセントの冒頭。音の上下が引き伸ばされます。トロンボーンの前にスネアが入ります。重量感のあるトロンボーン。カットがあったりリムスキー=コルサコフの版に比べるとかなり特徴的です。シロフォンが入ったり、色彩感も豊かです。怪しげな雰囲気も十分あります。テンポも大きく動いたり、自在な表現です。鐘の後はすごくゆっくりとしたテンポでたっぷりとした表現です。リムスキー=コルサコフ版ではクラリネットのソロがオーボエで演奏されます。最後は輝かしくクレッシェンドして終わりました。
ストコフスキーの強烈な色彩と描写を駆使した編曲による演奏で、その効果は抜群です。ムソルグスキーの原典版に比べると全く違う作品のようでした。魑魅魍魎の饗宴の表現にはこれくらいのアレンジは合っているように感じました。
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ズデニェク・マーツァル/ニュージャージー交響楽団
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合唱付きのバージョンです。独特の雰囲気です。オケは少し控えめで、合唱をクローズアップしているような感じです。男声の独唱もあります。合唱が入るとそれだけで神秘的な雰囲気になります。オケはあまり分厚い響きではなく、軽く爽やかに響いています。リムスキー=コルサコフ版では鐘の後に演奏されるメロディーがあってそこにも合唱が加わります。はげ山の一夜と言うよりももっと神聖な音楽に感じられます。クラリネットのソロもあります。その後はオーボエのソロになります。
合唱付きのバージョンで、とても神聖な音楽を聞いた雰囲気で、幽霊が現れる音楽には感じませんでしたが、同じ作品でも編曲でこんなに感じ方が変わるというのもとても興味深いものがありました。この曲の違う一面を見る上でも一聴の価値はあると思います。
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クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団
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ベルリンpoとの演奏同様、激しい表現です。こちらはセッション録音と言うこともあり細部の動きまで克明に録音されています。この演奏を聞くとアバドがこの作品をたまらなく好きだったことが伺えます。この演奏でもとても生き生きとした豊かな表現です。ベルリンpoとの演奏のような強弱の鋭い変化やテンポの動きはありませんが、この演奏でもオケの反応は敏感です。オケ全体の響きの豊かさはこちらの方があると思います。
ベルリンpoとの録音のような鋭い強弱の変化やテンポの動きはありませんでしたが、豊かな表現や細部の克明な動き、オケ全体の豊かな響きなどはこちらの方が良かったと思います。
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フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団
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速いテンポでスピート感のある冒頭。トロンボーンとチューバが一体になった強奏。その後も速いテンポにもしっかりと付いて行ってカチッとしたアンサンブルです。常に前へ行こうとするスピード感とエネルギー感が凄いです。速いテンポで豪快に一気に聞かせる演奏です。金管もかなり強く吠えます。鐘の後もテンポは速いですが、動きもあります。さりげない歌であっさりと進む木管のソロ。
基本的に速いテンポで強い推進力を持った演奏でした。エネルギーの放出もかなりのもので、なかなか聞きごたえがありました。
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ロリン・マゼール/クリーブランド管弦楽団
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ベルリンpoとの録音よりは若干遅いテンポで落ち着いた演奏です。シンバルも普通の大きさの物を使っています。とても余裕のある響きで柔らかいです。金管の三連音を含むメロディもとても軽く演奏しています。金管はそれなりに強く吹いていますが、とても美しいので、力が入っているようには感じません。鐘の後はあまりテンポの動きは僅かですが静かで美しいです。澄みきった朝に響くような美しいクラリネット。朝の冷たい空気を感じさせるフルート。
全く力みの無い美しい響きで全曲を通しました。幽霊が現れるような雰囲気とは違いますが、この美しさは特筆できるものです。木管のソロの朝のすがすがしさも素晴らしいものでした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/BBC交響楽団
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合唱が近い録音です。マーツァルの演奏よりもダイナミックな動きがあって、幽霊の大騒ぎの雰囲気があります。夜の描写も十分です。原典版から大きく進歩した版であることが良く分かります。リムスキー=コルサコフ編曲の版で鐘の後に出てくるメロディになってもテンポの揺れはありません。クラリネットのソロはあっさりとしています。
最後はあっさりとしていましたが、前半はダイナミックで魑魅魍魎の大騒ぎを上手く表現していた良い演奏だったと思います。
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ユーリ・シモノフ/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
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静かに始まりました。木管の強弱の変化が大きいです。音圧としては感じませんがトロンボーンはかなり強く吹いています。ゆったりとしたテンポで雄大です。オーボエが夜中の暗闇を表現しています。ガツガツと刻む弦。トランペッとホルンの三連音を含むメロディでテンポを落として途中ど音量も落としました。ロシアのオケらしく濃厚な色彩感とエネルギー感のある演奏です。鐘の後のテンポの動きは僅かです。
濃厚な色彩感と強いエネルギーの放出のある雄大な演奏で、ロシア音楽!と言う感じでした。これだけロシア音楽らしい演奏は昨今では珍しいと思いますので、とても貴重な音源だと思います。
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