カテゴリー: R・シュトラウス

R・シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」

リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」ベスト盤アンケート

たいこ叩きのR・シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
速目のテンポでの開始です。控え目なホルンのテーマ。トゥッティのすさまじい響きは見事です。ダイナミックの変化が大きく、語り口の上手さを感じさせます。艶やかで存在感抜群のヴァイオリン・ソロ。ソロの前の金管の表情もとても豊かでした。整然としていながらも、凄い咆哮が聞かれます。裁判から絞首台の金切り声の描写なども見事でした。大編成のオケの機能美を見事に発揮したすばらしい演奏でした。

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★★
筋肉質のホルン。締りのある響き。とても機能的で敏感に反応するオケです。静寂感もあり集中力の高い演奏です。ティルの悪戯の様子が高機能なオケによって見事に表現されます。オケは屈託なく気持ちよく鳴り響きます。特に抜群のアンサンブルで切れの良い金管の響きは見事です。

筋肉質でしかも抜群のアンサンブルで鳴り響く高機能なオケを使って見事な描写でした。すばらしい演奏でした。

ワシリー・シナイスキー/読売日本交響楽団

シナイスキー★★★★★
速めのテンポで豊かな表情です。ホールに響く残響も豊かで、静寂感も感じます。とても厚みのあるトゥッティ。活発で反応の良いオケの演奏で、ティルのいたずらが目に浮かぶようです。金管も見事に鳴り響き、読響もとても上手いです。軽快で決して重くならない演奏が作品にピッタリです。

軽快なテンポと豊かな色彩でティルのいたずらを楽しげに表現したとても良い演奏でした。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

ショルティ★★★★★
活発な動きがあって筋肉質な響きです。金管も明快に鳴り響きます。色彩感もとても濃厚でR・シュトラウスのオーケストレーションがとても良く分かります。はじけ飛ぶような猛烈なエネルギーの放出です。オケの見事な機能を見せ付けられるような完璧なアンサンブルと輝かしい響き。濃厚な表現はありませんが、これだけ明快に鳴り響くオケの名人芸には脱帽です。

もう、こんなに見事に鳴り響くオケは出現しないのではないかと思わせるほど見事な演奏でした。濃厚な表現はありませんが、これだけ明快に鳴り響くオケの名人芸には脱帽です。
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ルドルフ・ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデン

ケンペ★★★★★
速いテンポでくっきりとした演奏です。深みのある美しい響きです。ティルのいたずらで大騒ぎになる雰囲気はありますが、とても整然としていて落ち着いた穏やかな演奏ですが、ここぞと言うところでは思い切って金管を強奏させます。テンポの動きもあります。最初は速めのテンポでしたが、途中からはゆったりとしたテンポで音楽に浸ることができます。

ショルティの豪快な筋肉質の演奏とは違いますが、穏やかでどっぷりと音楽に浸ることができる演奏はなかなか良かったです。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★★
軽快なティルのテーマ。濃厚な色彩で場面場面を描いて行きます。羊の皮独特の響きのティンパニが締まった響きで切り込みます。ウィーンpoが持っている濃厚な色彩を十分に生かした演奏です。後年のベルリンpoとの録音にも通じる引き締まった表現がとても良いです。厚みのある響きではありませんが、とても切れの良い演奏で金管が気持ちよく鳴り響きます。

ウィーンpoらしい濃厚な色彩で描かれた演奏で、とても表現は豊かでありながら整然と整った演奏は見事でした。
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佐渡 裕/RAI国立交響楽団

佐渡★★★★★
ゆったりとしたテンポで豊かな表情です。テンポの動きもあり、振幅も大きな演奏です。かなり作品の描写を意識した演奏で、ティルの愉快ないたずらが表現されて、場面場面の表現が変化します。オケも豪快に鳴らされて爽快です。

作品の描写を意識した演奏で、豊かな表現でした、オケも豪快に鳴らされて振幅の大きな演奏でした。
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クリストフ・エッシェンバッハ/シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭管弦楽団

エッシェンバッハ★★★★★
柔らかく伸びやかな冒頭。ティルのテーマは激しく活発です。その後は起伏の激しい演奏です。激しいホルンで市場の大騒ぎが表現されます。見事に鳴り響く伸びやかな金管が見事です。物凄くダイナミックな演奏でかなり聞き応えがあります。柔らかく繊細な弱音から、豪快に鳴り響く金管まで、とても表現も豊かな演奏です。テンポの動きも自然でとても良いです。

凄く振幅の大きな演奏で、柔らかく繊細な弱音から、豪快に鳴り響く金管まで、とても表現も豊でした。ライヴでありながらとても完成度の高い演奏でした。
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ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団

マゼール★★★★☆
穏やかな冒頭。音を短めに弾むようなホルンのティルのテーマ。ゆっくりとのっそのっそと歩くような表現です。とても大きく構えた大人の演奏です。金管がし突出することも無くどっしりとしています。その分、ティルのいたずらで大騒ぎするような雰囲気はありません。マゼールらしくテンポの大きな動きもあります。一体感のある充実した響きは素晴らしいです。死刑の場面ではEbクラの金切り声をゆっくり粘っこく表現したり、トゥッティで音量を抑えてクレッシェンドしたりこの辺はマゼールらしいです。冒頭の「むかしむかし」の弦のとても穏やかな表現もとても良いです。

ゆったりとしたテンポで大きく構えた演奏でしたが、所々でマゼールらしい大見得を切るような表現もあり、このような作品にはとても合っていました。オケの一体感のある響きも充実していてなかなか良かったです。
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トーマス・ダウスゴー/DR放送交響楽団

ダウスゴー★★★★☆
静寂感の中から静かに始まりました。ホルンのティルのテーマは音を短めに演奏します。ホールに響く残響が美しいです。色彩感は濃厚です。咆哮するホルン。僧侶に変奏した場面では弦が音を短めに演奏します。テンポが遅い部分では少し停滞する感じもありますが、大きくテンポを速める部分もあり変化があります。音圧としては感じませんが金管はかなり強く演奏しています。テンポの動きもありなかなか表現が豊かです。

色彩感も豊かでしたし、強弱の振幅も大きくなかなか良い演奏でしたが、テンポの遅い部分で少し停滞した感じがあったのが残念でした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ロシア国立交響楽団

ロジェストヴェンスキー★★★★☆
速めのテンポで躍動感があって生き生きとした表情の演奏です。濃厚な色彩と豊かな歌で作品を描写します。ロシアのオケ独特の強く重い響きがあり、フワッとした柔らかさはほとんどありません。ロジェストヴェンスキーらしい濃厚でねっとりとした尾を引くような表現です。

かなり濃厚でねっとりとした表現で、フワッとした柔らかさはほとんどありませんでしたが、これはこれで良かったです。
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ベルナルド・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★
美しい響きを伴った演奏です。登場してくる楽器の表情もとても豊かです。シンバルやラチェットなども鮮明です。控え目なヴァイオリン独奏。奥行き感があって、美しい響きです。ただ、演奏が純音楽的で、描写性には若干欠けるように感じます。

カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ベーム R・シュトラウス「ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」★★★★
速めのテンポで始まります。テーマは一般的なテンポです。表情は豊かですが、カラヤンが指揮するベルリンpoの豪華絢爛な響きとは違い少しマットなくすんだ響きがします。ベルリンpoにしては珍しいカチンと硬い響きのシンバル。牛馬を解き放し、市場は大騒ぎになる場面でもおもちゃ箱をひっくり返したような色彩感溢れる音の洪水にはならず、整然としています。ヴァイオリ・ソロの最後をritしました。オケの響きが溶け合って一体感のある演奏ですが、その分R・シュトラウスのオーケストレーションが少し削がれているように感じます。

デヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

ジンマン★★★
微妙なテンポの動きがあります。トロンボーンは全開になりません。いたずらをたくらむティルの怪しい行動を表現するような演奏です。金管は常に余裕を残した美しい響きですが、ティルのいたずらで大騒ぎになるような雰囲気は表現されません。

かなり金管を抑えた演奏で、あまりエネルギーを放出するようなことはありませんでした。ティルのいたずらを描写するような演奏ではありませんでした。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★
生々しく鮮度が高い音です。遠くから次第に近づいてくるティルのテーマ。私は相性が悪いのだと思いますが、クレンペラーの演奏は雄大と言えばその通りなのですが、凝縮された濃密さがあまり感じられません。テンポも頑として動きませんが、他の演奏では聞えないいろんな音が聞こえて来ます。作品の描写などはほとんどありませんが、新しい発見もさせてくれる演奏でした。

頑として動かないテンポ。作品の描写は無く、淡白な表現で、作品そのものを忠実に演奏したものでした。クレンペラーの演奏は何故か密度が薄く感じてしまいます。
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エーリッヒ・ラインスドルフ/ボストン交響楽団

ラインスドルフ★★★
ライヴ録音でデッドな響きですが、生き生きとして活発な演奏です。敏感に反応するオケがとても良いです。僧侶に変奏した場面はあっさりと淡白な表現です。デッドな分濃厚で引き締まった響きになっています。金管が強い音を長く吹き伸ばさず、すぐに音量を落とす部分が多く、ちょっと気になります。

速めのテンポで活発表現と濃厚な響きの演奏でしたが、金管が強い音を長く吹き伸ばさずすぐに音量を落とす表現が気になりました。
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ヨーゼフ・カイルベルト/バンベルク交響楽団

カイルベルト★★
あまり起伏が大きく無く穏やかな演奏です。打楽器が強調されています。オケの特性かあまり色彩感は濃厚ではありません。ティルのいたずらで大騒ぎなるような雰囲気はあまり表現されません。アンサンブルの緩い部分もあります。作品に対してはとても真面目なアプローチの演奏です。

とても真面目なアプローチで、作品の描写を積極的に表現した演奏ではありませんでした。
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ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

メータ★★
とても近いホルンのティルのテーマ。全体の響きはブレンドされて柔らかいです。ティパニが遅れたりするアンサンブルの乱れもあります。テンポの動きもありますが、録音にもよるのか、色彩感や表現はあまり伝わって来ません。「むかしむかし」のテーマが回帰すると、ゆったりとしたテンポで音量の変化も大きくたっぷりとした表現になります。

offぎみの録音だったのか、あまり色彩感が無く、トゥッティでは団子状態になるような響きでした。表現などもあまり伝わって来ない演奏で、あまり楽しい演奏には感じませんでした。
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ダリル・ワン/ヴィクトリア交響楽団

ワン
豊かな残響で、フワーっとした響きです。カメラワークが全く定まらないので、かなり変な映像です。アンサンブルの乱れは所々で見受けられます。色彩感や表現は豊かですが、雑然としていてキリッと締まった感じがありません。

雑然とした感じで締まりの無い演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・R・シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」の名盤を試聴したレビュー

R・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」

リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」ベスト盤アンケート

たいこ叩きのR・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1973年

カラヤン★★★★★
導入部、重量感のあるパイプオルガン。テヌートで演奏されるトランペット。二つの音は速く間隔を詰めて演奏します。硬質なティンパニ。色彩感豊かで最後に残るパイプオルガンも鮮明です。

世界の背後を説く者について、推進力のある冒頭。多声的で柔らかく伸びやかな弦のコラール。その後大きく盛り上がり、カラヤンのスタジオ録音らしく完璧なバランスの演奏です。

大いなる憧れについて、爽やかな響きで、豊かな表現の弦。色彩感もとても豊かです。カラヤンのライヴを聞くようなスピード感のある演奏です。

喜びと情熱について、オケ全力投球するような凄みがあります。溢れ出すような豊かな弦。トロンボーンが強く抜けて来ます。

墓場の歌、とても濃厚に歌うオーボエ。とても豊かな色彩のパレットです。他の演奏とは格が違うような感じがします。

学問について、凄く音量を落としたコントラバス。強弱の振幅もとても大きいです。後半の動きのある部分のも木管も通常よりも音量を落としてさりげなく演奏するのもなかなかです。

病より癒え行く者、伸び伸びと鳴り響くトロンボーン。すごい情報量です。前のめりでスピード感と凄みがあります。集中力もとても高いと思います。

舞踏の歌、艶やかで伸びやかなヴァイオリンの美しいソロ。色気たっぷりの濃厚なソロです。トゥッティの物凄い情報量と弓をいっぱいに使うような弦のスピード感と全開の金管のパワーは凄いです。

夜の流離い人の歌、嵐のように渦巻くトゥッティ。弦だけになるとこれまでの嵐が嘘のように静まります。

絶頂期のカラヤンとベルリンpoの演奏にあっぱれです。前のめりで凄みのある表現。物凄く振幅の大きな演奏で、表現もとても豊かでした。この曲のベストだと思います。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★★
導入部、超低域を含んでゴロゴロと力強いパイプオルガン。割とシャープなトランペット。続く二つの音は豪快に金管が鳴って間を開けて演奏しています。ミュートしてゴムが弾むように力強いティンパニ。分厚く豪快に鳴り響くトゥッティは爽快でもあります。

世界の背後を説く者について、混沌とせずに非常に明快です。柔らかく伸びやかな弦のコラールは非常に美しい。

大いなる憧れについて、メロディをくっきりと浮かび上がらせます。コントラバスも動きがはっきりと聞き取れます。

喜びと情熱について、とても良く交通整理されていて、分かりやすい演奏です。トロンボーンもほぼ全開です。

墓場の歌、あまり歌うことはなく、どちらかと言うとメリハリをはっきりと付けてダイナミックで明快な演奏をしています。

学問について、コントラバスの分厚い響きに他の楽器が乗ります。とても色彩感が豊かで眩いほどです。

病より癒え行く者、背後で複雑に動く弦がありますが、金管がくっきりと浮かび上がります。自然の動機のトゥッティは凄く分厚い充実した響きでした。トランペットやクラリネットもくっきりと明快です。

舞踏の歌、美しいヴァイオリン独奏。いろんな楽器の動きが手に取るように分かります。豪快に鳴るオケのパワーに圧倒されます。もの凄いエネルギーです。

夜の流離い人の歌、衝撃音よりもしっかりと音程が聞き取れる鐘。極端な弱音で演奏されることはありません。弱音でも明快に楽器を鳴らします。

オケを豪快に鳴らした明快な演奏で、ダイナミックです。とにかくオケが高性能です。これだけ豪快に鳴らし切られると圧倒されます。素晴らしい演奏でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年

icon★★★★★
導入部、かなり低い音も含んでいるパイプオルガン。間接音を含んで遠くから響くようなトランペット。続く二つの音は速めです。ティンパニは軽く遠目に響きます。トゥッティでも全開にはならず、テンポも速めで力みの無い演奏です。

世界の背後を説く者について、静寂感の中から弦のトレモロが響きます。弦のコラールは間を取ったりして歌います。とても美しいです。とても積極的な表現意欲を感じさせる演奏です。夢心地のような美しさです。

大いなる憧れについて、コントラバスは残響を伴っていて動きははっきりしません。

喜びと情熱について、波が押し寄せるように浮き沈みする表現。見事に鳴り響くオケ。ベルリンpoの機能美を見せつけるようです。

墓場の歌、静かですが、複雑に動くパートがさらりとやってのけます。

学問について、重量感のあるコントラバス。モノトーンのようなマットな色彩からヴァイオリンが登場してから華やかで色彩感が豊かになります。

病より癒え行く者、トロンボーンも抑え気味でマットな響きです。自然の動機のトゥッティは巨大な響きでした。トランペットは奥まったところから軽く演奏されるのが次第に強くなります。

舞踏の歌、ニュートラルですが、僅かに艶を感じさせるヴァイオリン独奏。とても表現が積極的でカラヤンがR・シュトラウスを得意にしていたのが分かる気がします。自信を持って表現しています。洪水のように溢れ出す豊かな音。トゥッティのエネルギー感は凄いものがあります。

夜の流離い人の歌、硬質な鐘の響き。広い空間を感じさせる弦。静寂の中に響く弦とクラリネット。このクラリネットも豊かな表現です。

導入部をこれ見よがしの演奏はせずに、後に続く部分を充実した表現で演奏しました。弱音の静寂感とトゥッティの巨大な響きの対比も見事でした。カラヤンの自信に溢れた表現も素晴らしかったです。

ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
導入部、割と近く、明快に響くトランペット。抑え気味のトゥッティ。音像大きく柔らかく伸びやかなティンパニ。ゆっくりと降りてくるトロンボーン。ゆったりと大きいスケールの演奏です。

世界の背後を説く者について、伸びやかで豊かに歌う弦のコラール。ロスpoの弦がとても分厚く伸びやかです。

大いなる憧れについて、デッカの優秀な録音で、細部まではっきりと聞こえます。とても立体的で生き生きとしています。

喜びと情熱について、明快な動きのホルン。とても表現が積極的です。トロンボーンやチューバもくっきりと浮かび上がり濃厚な色彩感です。

墓場の歌、清涼感のある弦。この頃のメータの表現意欲が旺盛で生き生きとした演奏がとても良いです。

学問について、活発で生気に溢れた躍動感のある演奏です。

病より癒え行く者、オケが一体になって動くアンサンブルは見事です。演歌のこぶしが回るようなねっとりとした濃厚な表現です。もうこれ以上表現を付けられないと思うくらい表現し尽くされています。

舞踏の歌、艶やかでクローズアップされたヴァイオリンのソロ。ソロも木管もとても豊かな表情です。活発に舞い踊ります。濃厚で鮮明な色彩。強く突き刺さるトランペット。分厚く情報量の多いクライマックス。

夜の流離い人の歌、情報量の多いトゥッティ。表現意欲も旺盛でとても豊かに歌います。

この頃のメータを象徴するような豊かな表現の演奏でした。ねっとりとした濃厚な表現はなかなか聞き応えのあるものでした。

アントニオ・パッパーノ/ローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団

icon★★★★★
導入部、深みのあるパイプオルガン。遠くから響くトランペット。二つの音をしっかりと分けて演奏します。オケは少し離れたところにいて、トゥッティでもはっきりと弦が聞えます。

世界の背後を説く者について、淡々とした弦のコラール。

大いなる憧れについて、爽やかな響きの弦。僅かに遠い金管。

喜びと情熱について、奥まったホルン。起伏が大きく濃厚な色彩と積極的な表現です。響きも引き締まっています。

墓場の歌、清涼感があって美しい弦。

学問について、深みのあるコントラバスとその上に乗る高弦のサラサラとしたコントラストも見事です。

病より癒え行く者、鮮明な録音もあって、細部の動きも明快です。トランペットは明るくくっきりとしています。

舞踏の歌、たっぷりとお色気たっぷりのヴァイオリンのソロ。熱気のあるトゥッティも見事です。

夜の流離い人の歌、鮮明な色彩と彫りの深い表現。弦だけになるとゆったりとしたテンポでロマンティックな表現です。

積極的な表現で、鮮明な色彩感と熱気を感じさせるトゥッティと聞き所の多い演奏で、なかなか良かったです。
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ファンホ・メナ/BBCフィルハーモニック

icon★★★★★
導入部、かなり力強いパイプオルガン。二つの音は分かれています。速いテンポのティンパニ。全体に速いテンポであっさりと演奏します。

世界の背後を説く者について、鮮明で情報量が多いです。テンポが揺れて歌う弦のコラール。細部の動きも克明に表現されます。

大いなる憧れについて、程よく歌い、起伏にとんだ立体的な演奏です。

喜びと情熱について、表現意欲が旺盛で、大きな起伏のある演奏です。トロンボーンはあまり突き抜けて来ませんが、オケが一体になった盛り上がりはなかなかです。

墓場の歌、くっきりと浮かび上がる木管。

学問について、コントラバスはゴリゴリと硬質な響きです。登場してくるパートがとても鮮明に描かれています。

病より癒え行く者、うごめくような低音楽器の動きが克明に描かれています。激しさもあります。

舞踏の歌、くっきりとしていますが、速めのテンポであっさりと進むヴァイオリンのソロ。動機の変化に伴って雰囲気がガラッと変化します。激しいトゥッティ。

夜の流離い人の歌、激しいまま突入します。次第に落ち着いて弦だけになると伸びやかで広大な雰囲気です。ヴァイオリンのソロも豊かに歌います。

これ見よがしな導入部では無く、作品を全体として捉えた演奏で、表現の振幅もとても大きく起伏に富んだ演奏でした。
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ルドルフ・ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデン

icon★★★★★
導入部、トゥッティをかなり抑えて演奏しています。ティンパニは硬くミュートされたような音です。三度目のトランペットの後は速いテンポであっさりとした演奏でした。

世界の背後を説く者について、速めのテンポであっさりと演奏される冒頭。柔らかい弦のコラールですが、あっさりとしていて大きく歌うことはありません。

大いなる憧れについて、激しい起伏は無く、比較的穏やかな表現ですが最後で急激に盛り上がりました。

喜びと情熱について、この部分はティンパニのクレッシェンドも含めて動きもありかなり激しい表現です。

墓場の歌、あっさりとしたオーボエ。

学問について、かなり抑えたコントラバス。

病より癒え行く者、ここではかなりオケを開放して強い響きの自然の動機でした。トランペットのハイトーンは少し苦しそうでした。かなりエネルギッシュです。

舞踏の歌、大きな表現は無く、自然に流れていくヴァイオリンのソロ。オケが一体になって動く感じはとても見事です。トゥティのパワー感もなかなかです。激しく吠える金管。

夜の流離い人の歌、強く鳴らされる鐘。弱音をことさら抑えることなく豊かな表現です。

あっさりとした表現があったかと思うと激しく吠える金管もあったりと、とても多彩な表現でした。さすがにR・シュトラウスを得意にしていたケンペらしい演奏でした。
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クラウス・テンシュテット/シカゴ交響楽団

★★★★★
導入部、シカゴsoらしく明快に鳴り響く金管。ティンパニも重量感があります。堂々とした演奏でした。

世界の背後を説く者について、イコライザーでいじってあるようなメタリックな響きの弦のコラール。多声的な響きは感じられませんでした。

大いなる憧れについて、ザラザラとした響き。唸りを上げるコントラバス。かなり起伏の激しい演奏です。

喜びと情熱について、粘っこい表現です。トロンボーンも思いっきり突き抜けて来ます。かなり金管が吠えます。

墓場の歌、オーボエや弦もくっきりとしていて濃厚です。

学問について、後半の木管や弦は活発な動きで躍動感があります。

病より癒え行く者、オケはかなり積極的に演奏しています。自然の動機の前はかなりテンポを動かしました。巨大な自然の動機。登場する楽器も明快な色彩で描かれていて濃厚です。

舞踏の歌、一音一音に感情が込められたようなヴァイオリンのソロ。豊かな表現で活発に動くオケ。生き生きとしてとても活発です。クライマックスで全開になります。

夜の流離い人の歌、激しく金管が吠えます。感情のこもった弦。

テンシュテットらしい振幅の大きな、感情のこもった濃厚な表現の演奏でした。オケもテンシュテットの要求に見事に応えています。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・R・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の名盤を試聴したレビュー

R・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」2

たいこ叩きのR・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」名盤試聴記

カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
導入部、重低音までは含んでいないですが、それらしく響くパイプオルガン。モワーッとした響きで始まるトランペット。トゥッティで入る二つの音は速く演奏されます。柔らかいティンパニ。盛り上がりはあり賑やかになりますが、少し響きが薄いような感じがあります。

世界の背後を説く者について、弦のトレモロがモヤーッとした感じになります。弦のコラールは艶やかではありませんが、サラッとしていて美しいです。

大いなる憧れについて、コントラバスが唸りを上げますが、もやもやしていてあまり力がありません。

喜びと情熱について、活発に動きます。オケも集中力が高く、積極的に表現します。

墓場の歌、録音は古いので低域は軽いですが、1958年の録音とは思えない美しい音です。

学問について、混沌としている音楽が次第に目を覚ますように明確になって来ます。

病より癒え行く者、エネルギッシュに音が交錯しますが表現は自然体で、特に濃厚な表現などはありません。控え目なトランペット。音の洪水のように溢れ出しますが眩い色彩感ではありません。

舞踏の歌、ヴァイオリン独奏は枯れた響きです。オケが一体になったガッチリとした骨格はすばらしいです。噴水のように溢れ出す音。色彩感はあまりありませんが、密度は濃いです。

夜の流離い人の歌、鐘は衝撃音が強く響きはあまり聞き取れません。最後はあまり静寂感はありませんでした。

このような曲の場合、録音の古さはどうしてもハンデになりますが、自然体でガッチリとした演奏はなかなか聞きごたえがありました。

マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★
導入部、速いテンポで軽く演奏されます。この部分を豪快には演奏せず、とてもあっさりとした演奏でした。

世界の背後を説く者について、深みのある冒頭。自然な弦のコラール。この部分も粘ったような表現は無く比較的あっさりと演奏されます。

大いなる憧れについて、コンセルトボウらしい濃厚な色彩感と奥行きのある演奏で生き生きとしています。

喜びと情熱について、雄大な響きです。柔らかいトロンボーン。

墓場の歌、豊かに歌うオーボエ。色彩感が濃厚で情報量も多い感じがします。

学問について、最初の部分はとても静かです。躍動感のある木管。

病より癒え行く者、生き生きとした動きのある表現です。木管も生き生きとしています。グロッケンは奥行きを感じさせる響きです。

舞踏の歌、あっさりとした表現のヴァイオリンのソロですが、他の楽器と有機的に組み合わさって演奏されて行きます。

夜の流離い人の歌、あっさりとサラッと流れて行きます。

あまり大きな表現は無く、あっさりとした演奏でしたが、濃厚な色彩感はさすがコンセルトヘボウと言う感じでした。
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ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

メータ★★★★
導入部、色んな音を含んだパイプオルガン。遠く暗闇から響くようなトランペット。金管の二つの音で一気に太陽が差し込むようです。ティンパニは硬質な音であまり響きが残りません。かなり派手な色彩感です。アメリカのオケらしく豪快に鳴り響く金管。

世界の背後を説く者について、混沌とした複雑さはあまり感じさせない冒頭。力が抜けて自由に動く弦のコラール。とても豊かな響きです。

大いなる憧れについて、抑えた部分とトゥッティの振幅がとても大きいです。

喜びと情熱について、ロサンゼルスpoとの旧録音のような積極的な表現ではありませんが動きは活発です。

墓場の歌、清涼感があって艶やかな弦。

学問について、控えめな表現で穏やかに進みます。木管も躍動感は無く穏やかです。

病より癒え行く者、金管は明快に鳴り響きます。トランペットが浮き上がるほどくっきりと演奏します。

舞踏の歌、強弱を明快に付けたヴァイオリンのソロ。情報量が多く豊かな弦。シャープな響きで、一気に爆発するトゥッティはなかなかの迫力です。

夜の流離い人の歌、

ロサンゼルスpoの時代に比べるとメータも大人になったなーと感じさせる演奏でしたが、その分面白みには欠ける感じは確かにありました。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/フィラデルフィア管弦楽団

★★★☆
導入部、左右いっぱいに広がるオケ。ティンパニは速いテンポです。音が短めで少しせっかちでした。

世界の背後を説く者について、ここも速いテンポで落ち着きません。弦のコラールはゆったりと穏やかで美しいです。

大いなる憧れについて、オケは激しく動きますが、整然としています。

喜びと情熱について、フィラデルフィアoとは思えないような渋い響きで、色彩感はあまり感じません。音楽の起伏もあまり大きく無く、自然に流れて行きます。

墓場の歌、オーボエもあまり感情を込めずあっさりと演奏されます。

学問について、伸びやかで穏やかにいろんな楽器が絡みます。木管もあまり躍動感がありません。

病より癒え行く者、サヴァリッシュは表面的な効果には全く気持ちが行っていないのでしょう。純音楽として誠実に演奏することを徹底しているようです。ひっかかるところは全く無くサラッと流れて行きます。

舞踏の歌、速めのテンポで躍動感があるヴァイオリンのソロ。かなり積極的にオケをドライヴしています。トゥッティはかなりのエネルギー感です。

夜の流離い人の歌、とても静かで穏やかな弦。

外面的な効果には目もくれず、ひたすら作品を忠実に音にする演奏でした。オーマンディの頃のフィラデルフィアoとは全く違う演奏だったと思います。
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クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
導入部、超低域はあまり含まれずガラガラと鳴るパイプオルガン。かなり遠くから響くトランペット。続く二つの音は間隔を開けて余韻を残して演奏します。あまり強打はしないティンパニ。モノトーンのように色彩感の無い演奏です。

世界の背後を説く者について、静かに淡い色彩で、柔らかい表現です。

大いなる憧れについて、オフぎみの録音で、あまり激しい動きが伝わってきません。

喜びと情熱について、うねりのようになって激しい演奏をしているようなのですが、この録音からはストレートには伝わってきません。

墓場の歌、ヴァイオリンの冷たい響き。

学問について、極めて抑えた音量で演奏される低弦のフーガ。木管もあまり活発な表現はありません。

病より癒え行く者、自然の動機のトゥッティは分厚く大きい響きでした。不気味な低弦。トランペットやEbクラがR・シュトラウスらしい雰囲気を醸し出します。激しくなってもやはりモノトーンのような色彩感です。

舞踏の歌、テンシュテットらしい踏み込んだ表現もあまり感じません。やはりライヴじゃないと本領を発揮しないのでしょうか。穏やかで広々とした雰囲気です。ホルンはかなり咆哮しています。

夜の流離い人の歌、かなり低い響きを伴った鐘が空気を一変します。ヴァイオリンのソロも艶やかなのですが、色彩感はモノトーンです。

テンシュテットの演奏としては、あまり踏み込んだ表現が無かったように感じました。響きもモノトーンで音場感もオフぎみで熱気が伝わってきませんでした。この頃のEMIの録音の悪さなのでしょうか。

クリストフ・フォン・ドホナーニ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
導入部、くすんだトランペット。アンサンブルがあまり良くありません。音も短めでどっしりとした感じはありません。

世界の背後を説く者について、柔らかく大きなメタがあったりする弦のコラール。録音によるものか、弦の艶やかさはありません。

大いなる憧れについて、マットな弦。左右いっぱいには広がらず少し奥まったオケ。

喜びと情熱について、offな録音によるものなのか、オケの激しさはほとんど伝わって来ません。

墓場の歌、あまり色彩感は無く、穏やかです。

学問について、自然体で淡々と音楽が進んで行きます。滑らかな木管。

病より癒え行く者、くっきりと浮かぶトランペット。

舞踏の歌、楽しそうに戯れるヴァイオリンのソロと木管。表現は控えめですが、節度のある表現です。トゥッティでもオケは全開にならず、落ち着いた表現です。

夜の流離い人の歌、鐘が鳴り響き暗闇に落ちて行くようなトゥッティ。とても落ち着いた弦。

弱音の落ち着いた穏やかな表現はとても良かったですが、絶対に全開にならないトゥッティは少し欲求不満になりそうな感じでした。
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ジュゼッペ・シノーポリ/シュターツカペレ・ドレスデン

icon★★★
導入部、倍音が強くあまり低い響きを伴わないパイプオルガン。速いテンポでくすんだ響きのトランペット。さらに前へ進むようなティンパニ。この演奏もかなりあっさりとしていました。

世界の背後を説く者について、平面的で浅い音場感。感情を込めて歌う弦のコラールですが、多声的な感じはあまりありません。

大いなる憧れについて、モノトーンのように渋い色彩感。激しい起伏はありません。

喜びと情熱について、弦を中心に大きな流れから、トロンボーンが突き抜けて来ます。

墓場の歌、たっぷりと歌うオーボエ。

学問について、かなり音量を絞ったコントラバス。静かに穏やかに進みます。

病より癒え行く者、トランペットは高音が苦しそうです。

舞踏の歌、ゆったりとしたテンポでさらにテンポが動き粘っこい表現のヴァイオリンのソロ。かなり激しく感情がこもった盛り上がりです。

夜の流離い人の歌、弦だけになるととても穏やかで落ち着いた雰囲気です。

モノトーンのように渋い色彩と比較的控えめな表現の演奏でした。
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ロリン・マゼール/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★
導入部、遠くから響くトランペット。ゆっくりと二つの音を演奏します。ティンパニはミュートしたように響きが残りません。全体の響きからティンパニだけが浮いています。マゼールらしくテンポを大きく落とす部分もありました。

世界の背後を説く者について、混沌としてゆったりとした冒頭。テンポも微妙に動きます。ゆっくりとたっぷり歌う弦のコラール。切々と歌い上げて行きます。

大いなる憧れについて、ゆっくりと落ち着いた表現で、あまり起伏の大きな演奏にはなりません。

喜びと情熱について、落ち着いたテンポで音楽も大きな動きは無くどっしりとしています。トロンボーンも遠くから響くようで大きな起伏にはなりません。

墓場の歌、大きな流れの中で描いているようで、激しい起伏や大きな表現はありません。

学問について、静かで穏やかな弦。木管も躍動感は無く穏やかです。

病より癒え行く者、終始遅いテンポで大きな起伏はありませんが、良く鳴るオケを使って明快な響きの演奏です。透明感が高くとても見通しの良い響きです。

舞踏の歌、ゆっくりと一音一音確かめるようなヴァイオリンのソロ。テンポが遅い分音楽の密度も薄くなっているような感じを受けます。オケもこの遅いテンポを維持し切れていないような感じがします。

夜の流離い人の歌、ここも遅いテンポで一音一音丁寧に演奏して行きます。弦だけになるととても静かですが、やはり密度が薄いような感じがします。

とても遅いテンポでしたが、表現は淡白で大きな起伏も無く、少し密度が薄い感じがしました。
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ヘスス・ロペス=コボス/ガリシア交響楽団

コボス★★☆
導入部、大太鼓をダブルストロークでロールしています。奥まってくすんだトランペット。控えめな金管。ティンパニも無理なく美しい響きです。軽く美しい演奏でした。

世界の背後を説く者について、音量を抑えた冒頭。枯れて淡々とした弦のコラール。

大いなる憧れについて、穏やかな弦。コントラバスも唸りを上げることは無く穏やかに進みます。

喜びと情熱について、マイルドな響きでオケに一体感があります。

墓場の歌、

学問について、かなり音量を抑えたコントラバス。ジワジワと感情が込み上げて来るような演奏です。

病より癒え行く者、爽やかな弦。クラリネットも透明感があります。鋭い響きのトランペット。

舞踏の歌、大きな表現は無く、あっさりと演奏されるヴァイオリンのソロ。ティンパニが控えめなので、あまり強烈な盛り上がりにはなりませんが、整った安定感のある演奏です。

夜の流離い人の歌、ここでも控えめな表現で入りました。弦だけになるととてもマイルドな柔らかい演奏です。

とても軽くあっさりとした表現で、私の持っているイメージとは正反対の演奏でした。
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ピエール・ブーレーズ/シカゴ交響楽団

icon★★
導入部、遠くから日が昇るようなトランペット。金管の二つの音はしっかりと離れて演奏されます。シカゴsoの演奏ではありますが、これ見よがしに金管を咆哮させることもなくとても地味な演奏で枯れた響きです。

世界の背後を説く者について、少し遠い金管。落ち着いて美しい弦のコラール。ブーレーズらしい鋭利で冷たい響きです。

大いなる憧れについて、offぎみの録音にもよるのか、とてもあっさりとした淡白な演奏です。

喜びと情熱について、表現の彫が深く無く、平板な表現です。トロンボーンは突き抜けて来ます。チューバは柔らかい響きです。

墓場の歌、作品そのものを忠実に再現する演奏なのだと思いますが、あまりにも表現が無いので、不満になります。

学問について、とても静かな低弦。活発な動きは無く穏やかです。

病より癒え行く者、メータの演奏にくらべると、とても淡白です。響きも浅く、あっさりとしているので、あまり魅力を感じません。オケは整然としていて楽々と演奏しています。

舞踏の歌、offぎみで枯れたヴァイオリンのソロ。目だった表現も無くサラッと流れて行きます。雑念を廃して、作品そのものを忠実に再現することの意味はあると思いますが、聞いていてここまで楽しくないとさすがにまいってしまいます。

夜の流離い人の歌、全く思い入れの無いような淡白な表現。弱音部分の緊張感もありません。

感情移入を避けて、作品そのものを表出した演奏だと思いますが、あまりにも表現が無く、聞くのが退屈でした。ブーレーズの若い頃の先鋭的な演奏から尖った部分を取り去ってしまうと、何を聞いて良いのか分からなくなります。
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ヘンリー・ルイス/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ルイス
導入部、硬い響きのパイプオルガン。二つの音はカラヤンの演奏のように詰めて演奏されます。ティンパニが入っても人工的に付けられた金属的な響きが残ります。速めであっさりとした演奏でした。

世界の背後を説く者について、ここでも速いテンポの冒頭。伸びやかさも無く、硬い響きの弦のコラール。

大いなる憧れについて、表情が硬く、四角四面な感じの演奏です。団子になるコントラバス。

喜びと情熱について、表現が抑えられているような感じがします。トロンボーンは強くはっきりと演奏されました。

墓場の歌、なんとなく演奏されている感じで表現に深みがありません。

学問について、多層的に絡み合う楽器があまり聞えず単純な演奏になっています。木管にも躍動感はありません。

病より癒え行く者、カラヤンの演奏の後に聞くととても不利なのですが、情報量の少なさはどうしても感じてしまいます。かなり寂しい演奏です。

舞踏の歌、右と左に分かれた音場感が不自然です。ゆっくりと歌うヴァイオリンのソロはなかなか良いです。全体の響きが薄く寂しい感じがあります。ホルンが激しく咆哮しますが、全体の響きはやはり薄いです。

夜の流離い人の歌、かなり強く演奏されるホルン。弦だけになってもあまり静まりません。

情報量が少なく、響きが薄く、一本調子で荒削りな感じがしました。
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