R・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」2

たいこ叩きのR・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」名盤試聴記

カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
導入部、重低音までは含んでいないですが、それらしく響くパイプオルガン。モワーッとした響きで始まるトランペット。トゥッティで入る二つの音は速く演奏されます。柔らかいティンパニ。盛り上がりはあり賑やかになりますが、少し響きが薄いような感じがあります。

世界の背後を説く者について、弦のトレモロがモヤーッとした感じになります。弦のコラールは艶やかではありませんが、サラッとしていて美しいです。

大いなる憧れについて、コントラバスが唸りを上げますが、もやもやしていてあまり力がありません。

喜びと情熱について、活発に動きます。オケも集中力が高く、積極的に表現します。

墓場の歌、録音は古いので低域は軽いですが、1958年の録音とは思えない美しい音です。

学問について、混沌としている音楽が次第に目を覚ますように明確になって来ます。

病より癒え行く者、エネルギッシュに音が交錯しますが表現は自然体で、特に濃厚な表現などはありません。控え目なトランペット。音の洪水のように溢れ出しますが眩い色彩感ではありません。

舞踏の歌、ヴァイオリン独奏は枯れた響きです。オケが一体になったガッチリとした骨格はすばらしいです。噴水のように溢れ出す音。色彩感はあまりありませんが、密度は濃いです。

夜の流離い人の歌、鐘は衝撃音が強く響きはあまり聞き取れません。最後はあまり静寂感はありませんでした。

このような曲の場合、録音の古さはどうしてもハンデになりますが、自然体でガッチリとした演奏はなかなか聞きごたえがありました。

マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★
導入部、速いテンポで軽く演奏されます。この部分を豪快には演奏せず、とてもあっさりとした演奏でした。

世界の背後を説く者について、深みのある冒頭。自然な弦のコラール。この部分も粘ったような表現は無く比較的あっさりと演奏されます。

大いなる憧れについて、コンセルトボウらしい濃厚な色彩感と奥行きのある演奏で生き生きとしています。

喜びと情熱について、雄大な響きです。柔らかいトロンボーン。

墓場の歌、豊かに歌うオーボエ。色彩感が濃厚で情報量も多い感じがします。

学問について、最初の部分はとても静かです。躍動感のある木管。

病より癒え行く者、生き生きとした動きのある表現です。木管も生き生きとしています。グロッケンは奥行きを感じさせる響きです。

舞踏の歌、あっさりとした表現のヴァイオリンのソロですが、他の楽器と有機的に組み合わさって演奏されて行きます。

夜の流離い人の歌、あっさりとサラッと流れて行きます。

あまり大きな表現は無く、あっさりとした演奏でしたが、濃厚な色彩感はさすがコンセルトヘボウと言う感じでした。
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ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

メータ★★★★
導入部、色んな音を含んだパイプオルガン。遠く暗闇から響くようなトランペット。金管の二つの音で一気に太陽が差し込むようです。ティンパニは硬質な音であまり響きが残りません。かなり派手な色彩感です。アメリカのオケらしく豪快に鳴り響く金管。

世界の背後を説く者について、混沌とした複雑さはあまり感じさせない冒頭。力が抜けて自由に動く弦のコラール。とても豊かな響きです。

大いなる憧れについて、抑えた部分とトゥッティの振幅がとても大きいです。

喜びと情熱について、ロサンゼルスpoとの旧録音のような積極的な表現ではありませんが動きは活発です。

墓場の歌、清涼感があって艶やかな弦。

学問について、控えめな表現で穏やかに進みます。木管も躍動感は無く穏やかです。

病より癒え行く者、金管は明快に鳴り響きます。トランペットが浮き上がるほどくっきりと演奏します。

舞踏の歌、強弱を明快に付けたヴァイオリンのソロ。情報量が多く豊かな弦。シャープな響きで、一気に爆発するトゥッティはなかなかの迫力です。

夜の流離い人の歌、

ロサンゼルスpoの時代に比べるとメータも大人になったなーと感じさせる演奏でしたが、その分面白みには欠ける感じは確かにありました。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/フィラデルフィア管弦楽団

★★★☆
導入部、左右いっぱいに広がるオケ。ティンパニは速いテンポです。音が短めで少しせっかちでした。

世界の背後を説く者について、ここも速いテンポで落ち着きません。弦のコラールはゆったりと穏やかで美しいです。

大いなる憧れについて、オケは激しく動きますが、整然としています。

喜びと情熱について、フィラデルフィアoとは思えないような渋い響きで、色彩感はあまり感じません。音楽の起伏もあまり大きく無く、自然に流れて行きます。

墓場の歌、オーボエもあまり感情を込めずあっさりと演奏されます。

学問について、伸びやかで穏やかにいろんな楽器が絡みます。木管もあまり躍動感がありません。

病より癒え行く者、サヴァリッシュは表面的な効果には全く気持ちが行っていないのでしょう。純音楽として誠実に演奏することを徹底しているようです。ひっかかるところは全く無くサラッと流れて行きます。

舞踏の歌、速めのテンポで躍動感があるヴァイオリンのソロ。かなり積極的にオケをドライヴしています。トゥッティはかなりのエネルギー感です。

夜の流離い人の歌、とても静かで穏やかな弦。

外面的な効果には目もくれず、ひたすら作品を忠実に音にする演奏でした。オーマンディの頃のフィラデルフィアoとは全く違う演奏だったと思います。
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クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
導入部、超低域はあまり含まれずガラガラと鳴るパイプオルガン。かなり遠くから響くトランペット。続く二つの音は間隔を開けて余韻を残して演奏します。あまり強打はしないティンパニ。モノトーンのように色彩感の無い演奏です。

世界の背後を説く者について、静かに淡い色彩で、柔らかい表現です。

大いなる憧れについて、オフぎみの録音で、あまり激しい動きが伝わってきません。

喜びと情熱について、うねりのようになって激しい演奏をしているようなのですが、この録音からはストレートには伝わってきません。

墓場の歌、ヴァイオリンの冷たい響き。

学問について、極めて抑えた音量で演奏される低弦のフーガ。木管もあまり活発な表現はありません。

病より癒え行く者、自然の動機のトゥッティは分厚く大きい響きでした。不気味な低弦。トランペットやEbクラがR・シュトラウスらしい雰囲気を醸し出します。激しくなってもやはりモノトーンのような色彩感です。

舞踏の歌、テンシュテットらしい踏み込んだ表現もあまり感じません。やはりライヴじゃないと本領を発揮しないのでしょうか。穏やかで広々とした雰囲気です。ホルンはかなり咆哮しています。

夜の流離い人の歌、かなり低い響きを伴った鐘が空気を一変します。ヴァイオリンのソロも艶やかなのですが、色彩感はモノトーンです。

テンシュテットの演奏としては、あまり踏み込んだ表現が無かったように感じました。響きもモノトーンで音場感もオフぎみで熱気が伝わってきませんでした。この頃のEMIの録音の悪さなのでしょうか。

クリストフ・フォン・ドホナーニ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
導入部、くすんだトランペット。アンサンブルがあまり良くありません。音も短めでどっしりとした感じはありません。

世界の背後を説く者について、柔らかく大きなメタがあったりする弦のコラール。録音によるものか、弦の艶やかさはありません。

大いなる憧れについて、マットな弦。左右いっぱいには広がらず少し奥まったオケ。

喜びと情熱について、offな録音によるものなのか、オケの激しさはほとんど伝わって来ません。

墓場の歌、あまり色彩感は無く、穏やかです。

学問について、自然体で淡々と音楽が進んで行きます。滑らかな木管。

病より癒え行く者、くっきりと浮かぶトランペット。

舞踏の歌、楽しそうに戯れるヴァイオリンのソロと木管。表現は控えめですが、節度のある表現です。トゥッティでもオケは全開にならず、落ち着いた表現です。

夜の流離い人の歌、鐘が鳴り響き暗闇に落ちて行くようなトゥッティ。とても落ち着いた弦。

弱音の落ち着いた穏やかな表現はとても良かったですが、絶対に全開にならないトゥッティは少し欲求不満になりそうな感じでした。
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ジュゼッペ・シノーポリ/シュターツカペレ・ドレスデン

icon★★★
導入部、倍音が強くあまり低い響きを伴わないパイプオルガン。速いテンポでくすんだ響きのトランペット。さらに前へ進むようなティンパニ。この演奏もかなりあっさりとしていました。

世界の背後を説く者について、平面的で浅い音場感。感情を込めて歌う弦のコラールですが、多声的な感じはあまりありません。

大いなる憧れについて、モノトーンのように渋い色彩感。激しい起伏はありません。

喜びと情熱について、弦を中心に大きな流れから、トロンボーンが突き抜けて来ます。

墓場の歌、たっぷりと歌うオーボエ。

学問について、かなり音量を絞ったコントラバス。静かに穏やかに進みます。

病より癒え行く者、トランペットは高音が苦しそうです。

舞踏の歌、ゆったりとしたテンポでさらにテンポが動き粘っこい表現のヴァイオリンのソロ。かなり激しく感情がこもった盛り上がりです。

夜の流離い人の歌、弦だけになるととても穏やかで落ち着いた雰囲気です。

モノトーンのように渋い色彩と比較的控えめな表現の演奏でした。
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ロリン・マゼール/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★
導入部、遠くから響くトランペット。ゆっくりと二つの音を演奏します。ティンパニはミュートしたように響きが残りません。全体の響きからティンパニだけが浮いています。マゼールらしくテンポを大きく落とす部分もありました。

世界の背後を説く者について、混沌としてゆったりとした冒頭。テンポも微妙に動きます。ゆっくりとたっぷり歌う弦のコラール。切々と歌い上げて行きます。

大いなる憧れについて、ゆっくりと落ち着いた表現で、あまり起伏の大きな演奏にはなりません。

喜びと情熱について、落ち着いたテンポで音楽も大きな動きは無くどっしりとしています。トロンボーンも遠くから響くようで大きな起伏にはなりません。

墓場の歌、大きな流れの中で描いているようで、激しい起伏や大きな表現はありません。

学問について、静かで穏やかな弦。木管も躍動感は無く穏やかです。

病より癒え行く者、終始遅いテンポで大きな起伏はありませんが、良く鳴るオケを使って明快な響きの演奏です。透明感が高くとても見通しの良い響きです。

舞踏の歌、ゆっくりと一音一音確かめるようなヴァイオリンのソロ。テンポが遅い分音楽の密度も薄くなっているような感じを受けます。オケもこの遅いテンポを維持し切れていないような感じがします。

夜の流離い人の歌、ここも遅いテンポで一音一音丁寧に演奏して行きます。弦だけになるととても静かですが、やはり密度が薄いような感じがします。

とても遅いテンポでしたが、表現は淡白で大きな起伏も無く、少し密度が薄い感じがしました。
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ヘスス・ロペス=コボス/ガリシア交響楽団

コボス★★☆
導入部、大太鼓をダブルストロークでロールしています。奥まってくすんだトランペット。控えめな金管。ティンパニも無理なく美しい響きです。軽く美しい演奏でした。

世界の背後を説く者について、音量を抑えた冒頭。枯れて淡々とした弦のコラール。

大いなる憧れについて、穏やかな弦。コントラバスも唸りを上げることは無く穏やかに進みます。

喜びと情熱について、マイルドな響きでオケに一体感があります。

墓場の歌、

学問について、かなり音量を抑えたコントラバス。ジワジワと感情が込み上げて来るような演奏です。

病より癒え行く者、爽やかな弦。クラリネットも透明感があります。鋭い響きのトランペット。

舞踏の歌、大きな表現は無く、あっさりと演奏されるヴァイオリンのソロ。ティンパニが控えめなので、あまり強烈な盛り上がりにはなりませんが、整った安定感のある演奏です。

夜の流離い人の歌、ここでも控えめな表現で入りました。弦だけになるととてもマイルドな柔らかい演奏です。

とても軽くあっさりとした表現で、私の持っているイメージとは正反対の演奏でした。
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ピエール・ブーレーズ/シカゴ交響楽団

icon★★
導入部、遠くから日が昇るようなトランペット。金管の二つの音はしっかりと離れて演奏されます。シカゴsoの演奏ではありますが、これ見よがしに金管を咆哮させることもなくとても地味な演奏で枯れた響きです。

世界の背後を説く者について、少し遠い金管。落ち着いて美しい弦のコラール。ブーレーズらしい鋭利で冷たい響きです。

大いなる憧れについて、offぎみの録音にもよるのか、とてもあっさりとした淡白な演奏です。

喜びと情熱について、表現の彫が深く無く、平板な表現です。トロンボーンは突き抜けて来ます。チューバは柔らかい響きです。

墓場の歌、作品そのものを忠実に再現する演奏なのだと思いますが、あまりにも表現が無いので、不満になります。

学問について、とても静かな低弦。活発な動きは無く穏やかです。

病より癒え行く者、メータの演奏にくらべると、とても淡白です。響きも浅く、あっさりとしているので、あまり魅力を感じません。オケは整然としていて楽々と演奏しています。

舞踏の歌、offぎみで枯れたヴァイオリンのソロ。目だった表現も無くサラッと流れて行きます。雑念を廃して、作品そのものを忠実に再現することの意味はあると思いますが、聞いていてここまで楽しくないとさすがにまいってしまいます。

夜の流離い人の歌、全く思い入れの無いような淡白な表現。弱音部分の緊張感もありません。

感情移入を避けて、作品そのものを表出した演奏だと思いますが、あまりにも表現が無く、聞くのが退屈でした。ブーレーズの若い頃の先鋭的な演奏から尖った部分を取り去ってしまうと、何を聞いて良いのか分からなくなります。
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ヘンリー・ルイス/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ルイス
導入部、硬い響きのパイプオルガン。二つの音はカラヤンの演奏のように詰めて演奏されます。ティンパニが入っても人工的に付けられた金属的な響きが残ります。速めであっさりとした演奏でした。

世界の背後を説く者について、ここでも速いテンポの冒頭。伸びやかさも無く、硬い響きの弦のコラール。

大いなる憧れについて、表情が硬く、四角四面な感じの演奏です。団子になるコントラバス。

喜びと情熱について、表現が抑えられているような感じがします。トロンボーンは強くはっきりと演奏されました。

墓場の歌、なんとなく演奏されている感じで表現に深みがありません。

学問について、多層的に絡み合う楽器があまり聞えず単純な演奏になっています。木管にも躍動感はありません。

病より癒え行く者、カラヤンの演奏の後に聞くととても不利なのですが、情報量の少なさはどうしても感じてしまいます。かなり寂しい演奏です。

舞踏の歌、右と左に分かれた音場感が不自然です。ゆっくりと歌うヴァイオリンのソロはなかなか良いです。全体の響きが薄く寂しい感じがあります。ホルンが激しく咆哮しますが、全体の響きはやはり薄いです。

夜の流離い人の歌、かなり強く演奏されるホルン。弦だけになってもあまり静まりません。

情報量が少なく、響きが薄く、一本調子で荒削りな感じがしました。
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投稿者: koji shimizu

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