カテゴリー: マーラー:交響曲第3番名盤試聴記

マーラー 交響曲第3番

マーラーの交響曲第3番は、彼の作品の中でも最もスケールが大きく、壮大な交響曲の一つです。この作品は、彼の自然への深い敬意や、人間と宇宙の関係を表現する壮大な音楽的な物語です。以下にいくつかの特徴を紹介します。

1. 楽章構成と長さ

  • この交響曲は6つの楽章から成り立ち、全体で約90分以上もかかる、非常に長大な作品です。
  • 第1楽章は30分以上も続く壮大な行進曲で、軍隊の行進のようなリズムや自然の雄大さが表現されています。
  • 残りの楽章は短く、森や動物、天使、そして母なる大地に関連するテーマが続きます。

2. 自然と宇宙への賛歌

  • マーラーはこの交響曲を通して、自然とその背後にある哲学的な問いを探求しています。彼は「自然が私に語りかける」と言い、自然界のあらゆる要素が音楽として表現されています。
  • 第2楽章と第3楽章は、草花や動物のような自然の生命を象徴し、第4楽章では人間の内なる声(アルト独唱)が神秘的に表現されます。

3. 使用する楽器と合唱

  • マーラーは大規模なオーケストラ編成を用い、特に金管楽器と打楽器を多用してドラマティックな響きを生み出しています。
  • また、アルト独唱や児童合唱、女性合唱も登場し、交響曲に声の要素を加えることで壮大なスケールをさらに強調しています。

4. 哲学的なテーマ

  • マーラーは交響曲第3番について「自然が私に語ること」「天使が語ること」「愛が語ること」などのテーマを付けており、宗教的でありつつも、人間の存在と宇宙の関係について深く問いかけています。
  • 終楽章でのテーマ「愛が私に語りかける」は、全体のクライマックスであり、壮大でありながらも温かさや安らぎを感じさせる部分です。

5. 第3番の意味

この交響曲はマーラーの個人的な哲学を反映した作品として位置づけられ、自然、宇宙、愛、人間というテーマを音楽で表現した彼の思索が詰まっています。その壮大なスケールと深いメッセージ性から、聴衆に強烈な印象を残す名曲として知られています。

たいこ叩きのマーラー 交響曲第3番名盤試聴記

クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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★★★★★
一楽章、金属音のような響きを伴うホルンの咆哮。通常「ズン、ズン」と響く大太鼓がウィーンpo独特の中心から離れた場所を叩くため「ドー、ドー」と響きます。ミュートしたトランペットも激しく入って来ます。第二主題のホルンも激しい。トロンボーンはグリッサンドを強調します。とても面白い曲として聴かせてくれます。オーボエの第三主題は美しい。太い響きのトロンボーンソロ。ウィーンpoが開放されて楽しそうに演奏しているように感じます。展開部で現れるホルンの第二主題もいつものウィーンpoの奥ゆかしさからは想像できないような暴れっぷりです。ただ、アバドの指揮なので、アゴーギクを利かせるようなことはなく、テンポが動くこともなく音楽は淡々と進んでゆきます。再現部手前のトロンボーンに第一主題が現れるあたりから、もうブチ切れたように荒れ狂うブラスセクションの濃密な演奏に圧倒されます。荒れ狂っていてもアンサンブルはきっちり決まるところはさすがウィーンpoです。コーダはほとんどテンポを上げることなく終わりました。

二楽章、潤いのある木管群がとても美しい。楽譜に書かれていることに忠実な演奏で、それ以上のことはしていないようですが、ウィーンpoの奏でる音楽には、どっぷりと身をゆだねたい気分にさせる魅力的な演奏です。

三楽章、ここでも潤いのある木管群に惹きつけられます。トゥッティの一体感もウィーンpo独特のすばらしい響きです。ポストホルンはかなり奥まったところから響いてきます。一楽章のブチ切れて荒れ狂うような咆哮と同じオケとは思えないような静寂感です。この楽章ごとの描き分けは見事です。とてもロマンティックで癒されます。

四楽章、ホールの豊かな響きを伴って、重くも柔らかいコントラバス。独唱ははっきりとしくっきりとした輪郭の歌唱です。合間に入るホルンの表情がとても豊かです。独唱も大きな抑揚で訴え掛けてきます。独唱をしっかりと支える弦。この作品がウィーンpoのために書かれたのではないかと思うほどしっくりとした演奏です。

五楽章、ホールの響きを伴ってたっぷりとした児童合唱の「ビム、バム」です。美しい合唱が次第に遠のいて消えてゆきました。

六楽章、穏やかで安堵感のある冒頭の演奏です。安らかで揺り篭に揺られているような感覚になります。潤いに満ちた美しいクラリネットの高音。弦の厚い響き。アバドの指揮と言うよりもウィーンpoが実力を如何なく発揮したと言う演奏のように思います。まあ、ウィーンpoの実力を最大限に発揮させるのも指揮者としてのアバドの能力なのでしょうが・・・・・。金管による主要主題の再現も奥まって美しく響きます。輝かしいコーダ!ウィーンpoの実力を見せ付けた見事な演奏だったと思います。

ベルナルト・ハイティンク/シカゴ交響楽団

icon★★★★★
一楽章、細身で筋肉質のホルンの第一主題。ティンパニの質感がとても良い。とてもバランス良く和音を響かせるトロンボーン。ハイティンクらしく特に強調することなく、自然な第二主題。ショルティ時代の筋骨隆々でスカッと割り切れた演奏とはかなりイメージが違います。艶やかで美しいヴァイオリン独奏でした。とても良く鳴る明るいトロンボーンの独奏は独特の節回しで、どう説明して良いのか分かりませんが、今まで聞いた演奏とは違っていたので、ちょっと違和感がありました。ハイティンクは遅めのテンポで着実に音楽を進めて行きます。展開部に入る前にはもの凄いクレッシェンドがありました。柔らかいイングリッシュ・ホルン。極端な表情付けはありませんが、と言うより表現は抑制されていますが、統一感があり、登場する楽器がどれも色彩感豊かで生き生きとしています。シカゴsoもバレンボイム、ハイティンクと受け継がれて、ショルティ時代の強烈な個性は影を潜めて、普通のオケになったんだなぁと感慨深いものがあります。もちろんオケの技量とすれば超一流なのですが、強烈に鳴り渡る金管を中心に据えた音楽では無くなりました。ハイテンクの音楽も中庸で、テンポの大きな動きも無く、とても落ち着いた美しい音楽をしているのも影響しているのでしょう。再現部の前も落ち着いていて狂喜乱舞するような絶叫ではありませんでした。最後は少しテンポを上げて終りました。ハイティンクはいたるところで絶叫させるようなことはなく、展開部の前一箇所のみを頂点にして、他は抑えぎみにして大きな流れを作りました。

二楽章、レイ・スティルのようなぎゅっと締まった特徴的なオーボエではありませんが、チャーミングで美しい演奏でした。速いパッセージがとても滑らかにつながります。奥まったところから鋭く突き抜けて来る金管。ショルティ時代に比べると金管が強調されなくなった分、ささくれ立ったような弦がとても潤いのある美しい音になりました。表情の変化もあってとても豊かな表現です。繊細な弦の響きが美しく、歌に溢れた演奏でした。

三楽章、生き生きとした表情のクラリネットとピッコロ。この楽章でも金管を無用に強奏させることはなく、流れの良い演奏です。透き通るような透明感のある美しい演奏です。この美しさは出色です。遠くから響く、ちょっと鋭角的な音のポストホルンでフワーッと全体を包み込むような柔らかさはありませんが、夢見心地にさせてくれる美しい演奏でした。羽毛に触れるような繊細な弦。全体のバランスがとても良くて、強奏でも金管が突出してくることはありません。

四楽章、とても静かに、丁寧に歌い始める独唱。独唱の合間に入る締まったホルン。まるでクリスタルガラスを見ているような美しい輝きと繊細さがすばらしい。繊細な弱音はショルティ時代には聞くことが出来なかった美しさです。

五楽章、控え目な「ビム・バム」、合唱は全体的に音量を抑えた演奏のようです。消え入るようなppが吸い込まれそうな美しさです。

六楽章、速めのテンポであっさりとした、それでも安らぎと深みのある冒頭。この楽章でも弦の繊細な美しさは特筆に値します。静寂感と集中力の高さも凄いです。遠くから響くクラリネットも非常に美しい。大きい波に揺られるような深い音楽。ハイティンクは小細工など全くすることなく、堂々と作品と対峙しています。安らぎに満ちた音楽に浸る喜びを心底感じます。スケールの大きな強奏部分がすばらしい。この楽章では、ここまで抑えてきたオケが全開です。ティンパニの強烈なクレッシェンドの頂点で炸裂するクラッシュシンバルも見事です。ピッコロのソロに続く金管の感動的な主要主題の再現。シカゴのブラスの凄さを思い知らされる尋常ではない凄いエネルギー感の主要主題の強奏。コーダの力強いティンパニ!壮大ですばらしい六楽章でした。

一楽章のトロンボーン・ソロの独特の節回しを除いては完璧な名演でした。特に弱音の透明感は素晴らしかった。とても滑らかな大人の音楽でした。

ジュゼッペ・シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、ダイナミックな第一主題の演奏。続く行進曲はドラが効果的。この演奏でも構成がとてもしっかりしている印象です。色彩がとても濃厚で輪郭がくっきりしています。艶やかなヴァイオリンソロ。表現の幅が広いトロンボーンソロ。展開部の前後は凄い咆哮でした。登場してくる楽器がそれぞれ原色でとても濃厚でマーラーのオーケストレーションが鮮明に現れます。展開部の手前、トロンボーンの第一主題以降も咆哮の連続でとても濃密でした。再現部のトロンボーンソロは十分に歌われていて心地よい。コーダは凄い追い込みでした。すばらしい。

二楽章、最初の音を長めに演奏したオーボエ、アゴーギクを効かせて歌います。続いて登場する楽器も美しい。オケのアンサンブルに一体感があってとても良く統率が取れています。とにかく色彩感が豊かできらびやかです。

三楽章、生き生きとして表情豊かな演奏です。緻密なアンサンブルでマーラーのスコアを見通せるような感じがします。暖かみがあり美しく表現豊かなポストホルン。強弱の振幅も幅広く、ホルンの咆哮もなかなかです。

四楽章、オケを押しのけて前へ出ることもなく、常にバランスを取って控え目ながら十分な振幅のある独唱。独唱とオケの掛け合いも絶妙です。

五楽章、ちょっと爽やかさに欠ける児童合唱。この楽章でも強弱の振幅は凄く広いです。楽譜に指定してあれば、躊躇無く強奏してくるブラスセクション。楽譜を忠実に再現したと言う意味ではとてもすばらしい演奏です。

六楽章、揺り篭に揺られるようなとても心地よい安心感のある美しい弦楽合奏。美しいホルンと艶やかなヴァイオリンソロ。音楽が高揚してきても熱気を帯びることはありません。とても冷静に楽譜に書かれていることを忠実に再現しています。突き抜けてくるトランペット。美しい金管の主要主題。幸福感に満ち溢れる感覚がとても心地よい。すばらしい演奏でした。

ジェイムズ・レヴァイン/シカゴ交響楽団

icon★★★★★
一楽章、遠めに定位するホルン。レヴァインの演奏にしてはスッキリとした響きで、埃っぽさがありません。第二主題も気持ちよく鳴ります。静寂感の中からオーボエの第三主題とヴァイオリンのソロが美しく響きます。僅かに不純物が混じったようなトロンボーンのソロ。控え目な第四主題。頂点ではシカゴsoのブラスが見事な響きで演出します。展開部のトロンボーン・ソロの後のイングリッシュ・ホルンは細身で美しかったです。続くヴァイオリのソロもとても美しかった。再現部へ入る前の強奏部分は見事と言う他ないシカゴsoの面目躍如と言ったところか。マーラーの指示通り、力強い演奏でした。

二楽章、穏やかに始まって、少し音量を上げるオーボエ。穏やかにヴェールに包まれていた演奏が、突然目覚めて生き生きとしだしたり、変化に富んでいます。ヴァイオリン独奏が艶やかでとても美しいのはRCAの録音によるものでろうか。途中で一旦テンポを速めました。また、テンポが戻って長閑な雰囲気です。

三楽章、とても余裕があって伸び伸びとした演奏です。テュッティの下降音型は巨大な響きですばらしかったです。遠くから響くポストホルンも柔らかく美しい。巨大なテュッティと静寂感のある弱音の対比も見事です。二回目のポストホルンの前の金管の咆哮もすばらしかった。力みもなく、オケの自発性にまかせて爆発させるような自然な音楽作りです。

四楽章、深みのあるコントラバス。柔らかい響きを伴った独唱がとても美しい。温度感はほどほどにありますが、静寂感はしっかりあります。「巨人」の埃っぽさは何だったのかと思うくらい、この演奏では明瞭で透明感があります。

五楽章、アクセントの強い「ビム・バム」です。モノトーンのような女声合唱。合間に入る金管の響きには清涼感があります。

六楽章、安堵感があって癒されるような主要主題です。湧き上がってくる感情をぐっと抑えているような清楚で奥ゆかしい演奏です。木管の対旋律も控え目で美しい。曲が進むにつれて次第に熱気をはらんできます。ゆっくり流れる大河のように豊かな音楽です。シカゴsoのフルパワーを要求することなく控え目な頂点。マットな響きの金管の主要主題の再現。弦の分厚い響きに埋もれるようなマットな響きの金管の壮大なコーダでした。

「巨人」とは一転して、とても制御の効いたすばらしい演奏でした。

エリアフ・インバル/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

インバル★★★★★
一楽章、速めのテンポで演奏されるホルンの第一主題。主題の後はゆっくりとしたテンポになりました。ミュートを付けたトランペットも強く入って来ます。強弱の振幅も大きく色彩感も非常に濃厚な演奏です。音楽が前に進もうとする強い力があります。オーボエの表情が豊かな第三主題。続くヴァイオリンのソロも艶やかで美しかったです。太い音のトロンボーン・ソロは終始強めに、そしてテヌートぎみに演奏されています。控え目でこもった第四主題。インバルの指揮は迷いが無く、すっきりと割り切れているようで、聴いている側もすがすがしい気分になります。細部まで見通しが良く、混沌とすることは無く、響きにも清潔感があります。

二楽章、滑らかに歌うオーボエの主要主題。透明感が高い弦楽合奏。中間部はせきたてるようにテンポを僅かにあおりました。艶やかですが、音に力のあるヴァイオリンのソロ。二回目の中間部でもテンポが何度も変わりました。とても優しく音楽的な二楽章でした。

三楽章、弦のピツィカートからくっきりと浮かび上がるクラリネット。主部はとてもダイナミックでオケの底知れぬパワーを感じさせます。中間部のポストホルンは間接音を十分に含んでとても美しい音色を聞かせます。ポストホルンの周りを彩る楽器も強く主張して来ますので、色彩感はとても濃厚です。インバルの指揮はマーラーのオーケストレーションを明確に印象付けるものですが、その中にも情感豊かな音楽も表現されており、聞いていてとても心地良いものです。最後はテンポを速めずに終わりました。

四楽章、すごく静かで神秘的な低弦。この静かな低弦に比べるとかなり大きめの独唱。ホルンなども加わって独唱とバランスが取れたようです。とても良く歌うオケ。朗々と歌う独唱。

五楽章、児童合唱と女声合唱の声質が明らかに違っていて、色彩感を損なわないので、とても良いです。この楽章でも朗々と歌う独唱。とても賑やかでした。

六楽章、速めのテンポですが、感情の込められて振幅の大きい主要主題です。副主題部になっても、こんこんと湧き出る泉のように豊かな音楽です。いや、泉言うより大河の流れと言った方が合っているかも知れません。とても豊かで巨大な流れです。二回目の第1楽章の小結尾の主題が回想される直前はティンパニの強烈なクレッシェンドなどもありすごく激しい演奏でした。三回目の第1楽章の小結尾の主題の再現も激しい演奏でした。続くピッコロも伸びやかで豊かな歌でした。荘厳な金管の主要主題の再現。非常に感動的なクライマックス。輝かしく壮大で力強いコーダ。

見事な演奏でした。正にブラヴォー!
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ケント・ナガノ/ベルリン・ドイツ交響楽団

icon★★★★★
一楽章、豪快に響き渡るホルンの第一主題。第二主題もなかなか強烈です。トランペットも突き抜けて来ます。第二主題までの激しさから一転して第三主題の繊細な弦。細身の音で表現の幅が広いトロンボーン・ソロ。色彩感は濃厚ではありませんが、初夏の風を感じるような爽やかな演奏です。展開部へ入る前から展開部のホルンの第二主題も激しい演奏です。静かに物思いにふけるようなトロンボーン・ソロ。ゆったりと歌うイングリッシュ・ホルン。キラキラと光を放つようなヴァイオリンのソロ。トロンボーンの第一主題は控え目に入って次第に大きくなりました。再現部の前は思ったよりスッキリしていました。コーダはもの凄い速さでした。

二楽章、奥ゆかしく歌うオーボエの主要主題。最後の主部が戻ったところはとても穏やかな演奏です。

三楽章、装飾音符を強調するようでおどけたような表現のピッコロの主題。屈託無く鳴り響きホルン。切れ込み鋭いヴァイオリン。フワッと柔らかいポストホルン。割と速めのテンポで進むため、感傷に浸る余裕はありません。主部の再現は線が細いですが、目まぐるしい色彩の変化は見事でした。

四楽章、細目で控え目な独唱。オケの響きの中を泳ぐような独唱です。キラキラと光をちりばめたようなヴァイオリン。独唱には感情が込められていますが、とても静かな演奏です。

五楽章、まだ未成熟と感じさせる児童合唱の声質。児童合唱と比べると十分に成熟している女声合唱。この楽章はオケが控え目です。

六楽章、速めのテンポで淡々と、前へ前へと進む主要主題。ナガノの指揮は感情移入するタイプの演奏ではなく、作品をあるがままに演奏しているようです。第1楽章の小結尾が回想されるところは最初弱く始まって次第に大きくなって去って行きました。セッション録音らしく美しい響きが収録されています。二回目の第1楽章の小結尾が回想される前の金管は輝かしく感動的でした。回想も全開で激しいものでした。細く通るピッコロ。金管の主要主題は再び淡々と速めのテンポで進みます。スケールの大きな壮大なクライマックスはすばらしい。輝かしいコーダも見事です。

自然体の演奏でしたが、セッション録音の美しい音色と広いダイナミックレンジ。そして圧倒的なクライマックスがすばらしい演奏でした。

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マーラー 交響曲第3番2

たいこ叩きのマーラー 交響曲第3番名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

テンシュテット★★★★☆
一楽章、速めのテンポで畳かけるような冒頭第一主題でした。ティンパニに打撃が強烈です。第二主題のホルンも思いっきりの咆哮で気持ち良い。とても丁寧に演奏されるトロンボーンソロ。クラリネットの第4主題以降もホールの残響も適度に録音されていて気持ち良い。打楽器のインバクト部分では若干歪みっぽい音がとます。ビブラートを効かせたトロンボーンソロ。色気を感じさせるヴァイオリンソロ。めまぐるしく変わるオーケストレーションを見事にコントロールして色彩豊かな音楽を聴かせてくれます。再現部以降のトロンボーンソロもところどころにタメがありなかなかの演奏です。コーダからはかなりテンポを上げました。

二楽章、アゴーギクを効かせて歌うオーボエ。テンポも大きく動いています。表情豊かで、締まった表現です。オケの集中力も高くテンシュテットを中心に一体になっているのが良く分かります。

三楽章、表情豊かな木管。トランペットで始まる冒頭。ポストホルンの手前で大きくテンポを落としました。美しい音を響かせるポストホルン。遅いテンポを受けてフルート、クラリネット、ホルンと続きます。ホルンの咆哮もすばらしい。

四楽章、消え入るような弱音。音量の変化が大きく豊かな表現です。テンポの動きや音量の変化など、作品と一体になっています。

五楽章、爽やかな少年合唱と女声合唱です。

六楽章、静かにしかも感情のこもった演奏です。感情が内側へ内側へと凝縮していくような強固な塊が出来ていくように感じさせる演奏です。中間部では金管の咆哮も抑えぎみでした。コーダも爆発することはなく見事なバランスで演奏されました。

所々ミスも散見されましたが、見事な演奏だったと思います。

エリアフ・インバル/東京都交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、暖かみのあるホルンの第一主題。かなり激しい弦のアタック。思いっきりの良い打楽器の一撃。激しいホルンの第二主題。フランクフルト放送soとのセッション録音に比べるとかなり劇的で激しい起伏を感じさせる演奏です。美しいヴァイオリン独奏。明るく美しいトロンボーン独奏。速めのテンポで積極的で勇壮に進む行進曲。スネアドラムが演奏を引き締めます。オケは凄く上手く、言われなければ日本のオケだとは思わないでしょう。かなり前からどんどん早くなっているのですが、再現部の手前でテンポをかなり上げて凄い高揚感です。再現部の直前、音量が落ちるのに合わせてテンポを戻しました。コーダではかなりテンポを上げ怒涛のうちに終わりました。

二楽章、テンポも動いて歌うオーボエ。内へ向けて凝縮するように繊細な弦。無邪気な子供のように快活で生気に溢れ生き生きとした音楽です。極端ではありませんが、ライヴらしくテンポが動いてとても豊かな音楽です。

三楽章、ゆったりとしたテンポの中からくっきりと浮かび上がるクラリネット。空間再現がすばらしい。しっかりとした足取りです。生気に満ちて生き生きとしています。トゥッティの厚みは今一つの感がありました。遠近感もとても良い。間接音を伴ってとても良く歌うポストホルンが神秘的でとても美しい。所々かなり強奏はしますが、咆哮と言うほどの激しさではありません。むしろ抑制の効いた演奏のように感じます。

四楽章、静寂の中から深い響きの低弦の序奏。くっきりと明瞭に浮かび上がる独唱。インバルの指揮は必要以上にねばったり歌ったりはせずに、整然と音楽を進めて行きます。清らかで心洗われる透明感のある歌唱がすばらしい。

五楽章、発止として元気な児童合唱。女声合唱もとても上手い。ここでもくっきりとした独唱。途中に入る金管も合唱のバランスを崩さずとても良い合いの手を入れてきます。

六楽章、大切な物をそっと扱うように、奥ゆかしいけれども、とても感情の込められた主要主題。川の流れのようにとどまることなく流れ続ける音楽がとても感動的です。速めのテンポで安らぎよりも力感のある演奏です。トゥッティの中から突き抜けて来るトロンボーン。次々に音が溢れ出す全管弦楽による主要主題。少し速めのテンポで豊麗な響きの見事なコーダでした。

全体に速めのテンポで元気の良い力感に溢れる演奏でした。

ベルナルト・ハイティンク/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ハイティンク★★★★☆

一楽章、ウィーンpoらしいピーンと張ったホルンの第一主題。ティンパニの強打。第二主題は下のパートも良く聞こえるバランスの良いホルンの演奏でした。細身で艶やかなヴァイオリン・ソロの第三主題。静かで控え目なトロンボーン・ソロ。シカゴsoとの録音のような独特の節回しはありません。第四主題も大きく歌うことはありません。ハイティンクらしく、余計な力は入れずに、自然な演奏の中から作品の美しさを描き出す演奏です。引っかかるところは全く無く自然に音楽が通り過ぎて行きます。再現部の直前も混沌とすることは無く、非常に簡潔でした。屈託無く伸び伸びと鳴り響くオケはとても美しいです。コーダへ入りテンポは速めますが、テンポの変化はほどほどです。

二楽章、平穏で美しい演奏です。音楽の起伏も自然に盛り上がり、自然に静まる感じで力みは全くありません。色彩感はウィーンpoらしく豊かですが、バーンスタインの演奏のような超濃厚な色彩感ではありません。旋律を演奏する楽器が極端に前には出てきません。とても穏やかで音楽の揺り篭に揺られるような心地良さです。

三楽章、演奏の特徴は特に無く、ただ自然な美しい音楽が流れて行きます。BGMにでもなりそうな引っかかるところの無い演奏です。ピッコロも細身で美しい。遠くから聞こえるポストホルンがとても柔らかい。強奏部分でもオケが大暴れすることは無く、しっかりと制御されています。

四楽章、極めて静かに演奏されるコントラバス。静かなコントラバスに合わせるように、そっと歌い始める独唱。とても細部までバランスなどには注意を払われているようです。

五楽章、天使の歌声にふさわしく遠くから響く「ビム、バム」。女声合唱は近いです。

六楽章、深みがあり、穏やかで美しい主要主題。とても繊細な楽器の扱いで、作品への愛情を感じます。この楽章の美しさは極上です。木管もホルンもすばらしい美しさです。二回目の第1楽章の小結尾が回想される部分のホルンはすさまじい咆哮です。枯れた雰囲気の金管の主要主題の再現。コーダ直前のクライマックスは洪水のように次々と音が溢れて来て壮大でした。コーダは力強い歩みでした。

強い主張は無いものの、とても美しくクライマックスのスケール感も大きい良い演奏でした。
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クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

アバド★★★★☆
一楽章、伸び伸びと鳴るホルンの第一主題。分厚くうなりを上げるコントラバス。第二主題も勇壮に鳴り響きます。あまり歌わないオーホエの第三主題。続くヴァイオリン独奏は艶やかで美しい演奏でした。明るい響きのトロンボーン独奏。陰影のあるクラリネットの第四主題。とても色彩感が濃厚で、音楽の流れもとても良いです。展開部もすごく分厚い響きに圧倒されます。オケが積極的でとても良く鳴らされています。さすがベルリンpoと言うような極上の音が続きます。再現部の前の頂点はウィーンpoとのスタジオ録音のような怒涛の演奏ではなく、テンポも落ち着いた冷静なものでした。録音が歪みっぽいのが残念です。

二楽章、ゆったりとしたテンポで歌うオーボエ。中間部では若干テンポの動きがありましたがタメや間などは無く、音楽は流れるように進んで行きます。二度目の中間部はかなり速いテンポで活気のある演奏です。

三楽章、ピッコロの主題も流れるように滑らかな演奏です。トゥッティでのエネルギー感はさほどありませんでした。それよりも音楽の流れを重視しているようです。中間部のポストホルンは、間接音を含んで柔らかい響きです。テンポは速めで、サクサクと進みます。最後の主部はひたすら美しい。アバドは余計な自己主張などを加えずに、力で押すことも無く、作品の持っている美しさを表現しようとしているようです。

四楽章、すごく抑えた音量で開始しました。明るい声の独唱。内に秘めたようなオーボエ。ふくよかなホルン。伸びやかなヴァイオリン。どれも美しい。

五楽章、浅い響きの児童合唱。女声合唱も浅い響きです。中間部はテンポを落としました。

六楽章、ゆっくり丁寧で美しく穏やかな主要主題。ホルンの深い響き。弱く美しいクラリネットの高音。ただひたすら伸びやかに流れる音楽です。非常に美しい音楽が奏でられているだろうに、録音が歪っぽいのがとても残念です。これも録音の問題だと思うのですが、トゥッティのエネルギー感がほとんど伝わって来ません。コーダも力強く輝かしいような感じはしますが、録音の問題で定かではありません。

とても美しく流れの良い演奏だったのですが、録音の悪さがとても残念です。良い録音状態でもう一度聞き直してみたい演奏でした。
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セミヨン・ビシュコフ/ケルンWDR交響楽団

ビシュコフ★★★★☆
一楽章、軽い第一主題。その後は引きずるように重い。美しく歌うヴァイオリンの第三主題。オケの色彩が非常に濃厚でくっきりしています。展開部へ入る前はかなりテンポを落としてこってりとした演奏でした。かなり強弱のコントラストも明快で、強奏部分は爆発します。寂しげに歌うトロンボーン独奏。テンポも動き、動きに合わせて歌います。強弱の変化やテンポの変化がこの演奏の特徴になっています。コーダの入りはすごく遅くそれから急加速して終わりました。

二楽章、中間部でもテンポが動いて積極的な表現の音楽です。テンポが動いて良く歌っています。二度目の中間部はテンポを速めにして演奏して、とても活発で生き生きとした音楽です。

三楽章、良く歌い、楽器の絡みも美しい演奏です。トゥッティはコントラバスの厚みのある響きもありますが、トランペットの鋭い響きが勝っています。美しいポストホルン。この楽章の最後はゆったりとしたテンポを維持して終わりました。

四楽章、柔らかくオケに溶け込むような独唱。グリッサンドするようなイングリッシュホルンとオーボエ。

五楽章、控えめな児童合唱。あまりコントラストを感じない女声合唱。

六楽章、にじみ出るような愛情。ビシュコフはこの作品を心から愛しているのが伝わって来ます。一楽章の小結尾部の再現はそんなに激しいものではありませんでした。とても色彩感が豊かで表現の幅も広い演奏で、なかなか聞かせます。最後の一楽章の小結尾でオケが爆発しました。コーダは壮絶な絶叫でした。

深みは感じない演奏でしたが、色彩感豊かで、歌もあり、クライマックスで爆発する表現の幅の広い演奏は魅力的でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第3番の名盤を試聴したレビュー

マーラー 交響曲第3番3

たいこ叩きのマーラー 交響曲第3番名盤試聴記

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★
一楽章、少し浅い響きのホルンから始まりました。8本のホルンで演奏されているとはとても思えない見事なアンサンブルの第二主題。あっさりと明るい響きのトロンボーンソロ。続く行進曲は速目のテンポで進みます。展開部のホルンも残響成分をあまり含まないせいか、浅い響きです。大太鼓の超低域の響きがズシーンと響きます。テンポの動きも少なく、淡々と音楽が進んで行きます。再現部手前のホルンの咆哮はすごいものがありました。音場の奥行き方向にはあまり再現されず、全ての音が前へ出てくるので、響きが浅く感じられるようです。そのせいか、音楽も淡白に感じます。コーダはかなりテンポを上げました。

二楽章、ゆったりと歌うオーボエ。その後のめまぐるしい変化を上手く表現しています。

三楽章、明快な木管の響きです。全ての音が前に出てきて、マーラーの作品があられもない姿になってしまっているように感じてしまいます。これがショルティの意図なのかも知れないのですが・・・・・。ポストホルンもかなり手前で演奏しているようです。ポストホルンは柔らかく美しい音です。

四楽章、かなりはっきりと歌い始める独唱。強弱の変化も激しく表情豊かな独唱です。オケはほぼ弱音を保ったままでした。

五楽章、はずむような発音で「ビム・バム」でした。グロッケンがカチーンと来ます。

六楽章、粗末に扱うと壊れそうな器を丁寧に扱うような、美しい主要主題。夢見るようなホルン。一転して激しいホルンの咆哮。また、美しい弦。大河の流れのように次から次から音の大洪水です。ピッコロのソロから美しいメロディが次から次へと受け継がれて行きます。コーダへ向けて強いアタックのトランペット。感情表現は抑えて作品の細部まで、あからさまにした演奏だったと思います。

ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、とても軽いホルンの主題。強烈なティンパニ。第二主題のホルンは力強い演奏でした。よく鳴るトロンボーン独奏ですが、元気が良くて、ちょっと落ち着きが無いような感じがします。第三主題に基づく行進曲はゆっくり目です。抑え気味の第四主題。展開部の冒頭はすごく激しい演奏でした。色彩感は濃厚で、強い音なのですが、「巨人」の演奏ほどの強烈さはありません。ヴァイオリン独奏もoff気味です。展開部のヴァイオリン独奏の後からはテンポがゆっくりになっています。トロンボーンの第一主題はクレッシェンドしました。その後の狂乱する部分は楽器の数が少ないのでは無いかと思うほど、あっさりとしていて、寂しいと言うか肩すかしでした。再現部でも元気の良いトロンボーン独奏ですが終わりに向けてかなり大人しくなりました。コーダの強奏は圧倒的です。

二楽章、オーボエの主要主題でテンポが動きました。中間部でも一音一音に力があります。テンポはたまに動いていますが、自然で心地良い動きです。

三楽章、トランペットが突出して来たりして、とても色彩感は濃厚です。柔らかい響きで歌うポストホルン。登場する楽器がどのパートも引き締った表現でとても克明に描かれて行きます。残響成分が少なく音場が平面的な感じがします。堂々とした足取りで終わりました。

四楽章、細い声の独唱。締まったホルンの響き。表現の幅が広く訴えかけてくる独唱。

五楽章、元気の良い児童合唱。女声合唱も一人一人の声が聞き取れるような粒立ち。この合唱も残響成分が少ないので、奥行き感がほとんどありません。トランペットが異常に突出します。

六楽章、速めのテンポですが、切々と歌う主要主題は感動的です。一楽章の小結尾部の再現はとても激しく、その前の部分との描き分けがなされているようです。二度目の一楽章の小結尾の再現はそれまでの静寂を打ち破るように激しく咆哮するような感じでした。テンポは速めですが、その分音楽が生き生きとしていて、生命感を感じます。最後に現れる主要主題はとても感動的でした。強力なティンパニとトランペットによる完全燃焼です。

六楽章の感動的な弱音部と完全燃焼する終結部はすばらしいものでした。
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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、見事に揃ったホルンの第一主題。積極的に突き抜けて来る金管。第二主題は全開と言うほどではありませんでした。オーボエの第三主題に続き艶やかなヴァイオリン独奏。少しタメがあったりするトロンボーン・ソロ。行進曲調になり明るく華やいだ雰囲気です。とても色彩感豊かな演奏です。展開部の前は音の洪水のような凄い演奏でした。勇壮なトロンボーン。小太鼓も強打します。紳士的で折り目正しいトロンボーン・ソロです。ウィーンpoのこの楽章の演奏は伝統があるのか、アバドの演奏でもそうでしたが、とても力強くしかも華やかでとても良い演奏です。最後すごくテンポを速めて終わりました。

二楽章、癒されるような穏やかなオーボエの主要主題。繊細で美しいヴァイオリン。テンポも動いて感情を込めた歌です。中間部は一転して活発で動きのあるめまぐるしい音楽です。艶やかで瑞々しいヴァイオリンのソロはしずくが滴り落ちそうなくらいです。テンポを落としてこってり濃厚な表現があったかと思うと、すごいスピード感で音楽を裁いていくような部分もありなかなか聴き応えがあります。脱力していくように終りました。

三楽章、控え目なピッコロの主題。クラリネットも控え目で美しい。中間部の少し前から音量が一段階上がったようで、目の覚めるような音になりました。遠くから響くポストホルンが柔らかく美しい。夢の中で響くようなポストホルンとステージ上の実在感のある木管との対比がとてもすばらしい。主部が戻ると色彩感豊かな眩いばかりの演奏です。最後はすごくテンポを上げて終わりました。

四楽章、コントラバスの静かな序奏から自然に浮かび上がるような独唱。独唱の合い間に登場する楽器の音色は油絵のようにとても濃厚です。振幅の大きい歌を聞かせる独唱です。

五楽章、オケの響きとは一転してモノトーンのような合唱です。オケは生き物のように強弱の変化をさせて表現します。

六楽章、穏やかで深い主要主題。音量を抑えて大切に静かに語りかけるような演奏です。副主題部のホルンが遠くから響くようで美しい。一楽章の小結尾部の回想も抑え気味で、叫びたい気持ちをグッとこらえているようです。クラリネットの対旋律もすごく美しい。二回目の一楽章の小結尾部の回想は一回目より激しい演奏でした。金管の主要主題の再現ではトランペットのハイトーンが出にくかったのか、少々雑な印象でした。コーダでも絶叫するようなことは無く穏やかで壮大な演奏でした。

バーンスタインの演奏にしては、感情を吐露するような演奏ではなく、むしろ感情を抑え気味にした演奏だったのが以外でした。
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ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク★★★☆
一楽章、第一主題の後の重い低音。第一主題も第二主題も両方でしたが、ホルンの演奏で途中で音を抜くような演奏だったのが不思議でした。第三主題はテンポを落としてたっぷりと演奏しました。明るい響きのトロンボーンのソロ。クラリネットの第四主題の後ろで演奏されるスネアドラムがとても良い音色です。第四主題以降はとても軽快で歌に伴って強弱の変化もありなかなか良いです。展開部の直前はかなり激しい演奏でした。展開部のトロンボーン・ソロは音量も若干控え目です。ヴァイオリンのソロはオケに埋もれるようなバランスでしたが、細身で艶やかでした。ハイティンクの演奏にしてはテンポも動いて情感豊かです。再現部の前は狂気乱舞するような雰囲気ではなく、割と落ち着いた演奏でした。再現部のトロンボーンは再び提示部のような明るい音色です。ホルンの第一主題の再現はとても勇壮でした。

二楽章、僅かな抑揚とテンポの動きのあった主要主題。色彩感も乏しく平板な演奏でした。

三楽章、小さく可愛いピッコロ。少し慌てているようなホルン。遠くから鋭い音のポストホルンです。主部が戻ると中間部の静から一転して動きのある活気のある演奏になりました。

四楽章、静かな低弦。独唱も静かな歌いだし。独唱が強く歌っても、距離があるので耳障りではありません。音楽は常に自然な流れです。

五楽章、児童合唱と女声合唱の声質が違うのでコントラストがはっきりしています。また、合唱が奥まっていて距離感もとても良いです。

六楽章、静かで美しい弦楽合奏の主要主題。控え目に丁寧に旋律が次々と折り重なって行きます。第1楽章の小結尾の主題が回想されても大暴れすることは無く、穏やかに淡々と進みます。とても美しいのですが、奥深い所から湧き上がって来るような音楽では無いような感じがします。金管の主要主題の再現では音の始末が少々乱暴なところもありました。最後まで余力を残した演奏でした。

総じて美しい演奏でしたが、ハイティンクらしい細部まで徹底して行き届いた演奏ではなかったのが少し残念でした。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★☆
一楽章、ふくよかな響きのホルンの第一主題です。ミュートを付けたトランペットは伸ばす音の最初は強く吹きますが伸ばす音は直ぐに弱くなります。第二主題も総じてふくよかですが、あまり奥行き感はありません。木管のコラール風の動機も伸ばす音は抜くように演奏しました。僅かに節回しのあるトロンボーン独奏。展開部へ入る前はゆったりとしたテンポで壮大な演奏でした。展開部のホルンの第二主題もビーンと鳴ることは無く、柔らかくふくよかでした。探るようにゆっくりと演奏されたイングリッシュ・ホルン。艶やかと言うより少し枯れた雰囲気のヴァイオリン独奏。トロンボーンの第一主題も押さえた感じでした。再現部の前の色んな楽器が乱舞するような部分ではティンパニが強烈にクレッシェンド、デクレッシェンドを繰り返しましたが、他の楽器はきっちりと整理されているような整然とした演奏でした。

二楽章、豊かに歌うオーボエの主要主題。弦の繊細な表情。中間部はコントラストがはっきりしていて鮮明です。

三楽章、舞曲のように軽快な主部の演奏。ホールの残響をあまり含んでいないので、奥行き感には乏しい録音です。かなり遠くから響くポストホルン。良く通るフルート。遠くから響くポストホルンは柔らかい響きではありませんが、聞き惚れるような演奏です。主部が再現すると再び軽快な舞曲風です。遠いポストホルンに聞き入ってしまいます。不思議な魅力です。

四楽章、体全体から声が出ているような独唱。合い間に入るホルンはとても締まった響きです。オーボエがグリッサンドするような表現です。デッドな録音のせいか枯れた響きのヴァイオリンの独奏。

五楽章、デッドな録音の影響で、合唱の声質がとても鮮明です。中間部でも見事な独唱。

六楽章、静かに淡々と演奏される主要主題。込み上げる感情をぐっと内に秘めるような演奏です。副主題部も大きな表現はありません。二回目の第1楽章の小結尾の主題が回想は激しいものでした。ここまでの比較的淡々とした演奏とは対比される大きな表現です。三回目の第1楽章の小結尾の主題が回想も激しく壮大でした。くすんだ響きの金管による主要主題。コーダの前のトゥッティはオケのパワーを感じさせる力強いものでした。コーダは速めのテンポで終わりました。

ポストホルンや独唱など傑出した部分もありましたが、ヤンソンスは作品を遠くから眺めて、淡々と描いて行くような演奏でした。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

icon★★★
一楽章、軽い響きの第一主題。スヴェトラーノフの演奏と言うことで、爆演を予想していましたが、力みのない演奏です。第二主題も絶叫することはなく、あっさりとしています。部分的にテヌートぎみに演奏するトロンボーンソロ。時折打楽器が強く入って来ます。展開部のホルンの第二主題も音を割ることもなく大人しい演奏です。ただ、打楽器は強烈に入って来ます。再現部前の頂点では、ホルンだけが異常に弱く変なバランスです。特に強烈な主張もなく、マーラーの多彩なオーケストレーションも楽しむことは出来ない演奏で、ちょっと期待外れです。トランペットはかなり強烈なのですが・・・・・・。コーダかなりテンポを上げてスリリングでした。ただ、シンバルが遅れていました。

二楽章、ゆったりとしたテンポで歌うオーボエ。消え入るような弦もなかなか良いです。遅いテンポでとても丁寧に音を大切に扱っているような演奏です。とても穏やかで聴いていて安堵感があってとても良いです。スヴェトラーノフがこの楽章でこんなに良い演奏を聴かせてくれるとは思いませんでした。別世界へ連れて行かれたような感覚になります。

三楽章、この楽章も遅めのテンポで豊かな表現です。相変わらずホルンは弱い。遠くから響くポストホルン、なかなか美しい。このテンポがこの曲の良さを再認識させてくれます。スヴェトラーノフのイメージは常に爆演でしたが、これだけ弱音で美しい音楽を作っていたのに驚きです。

四楽章、細い声の独唱でもう少し響きが欲しいところです。

五楽章、声楽陣にはマイクポジションが近いのか、美しいのですが、少し響きが足りないように感じます。

六楽章、弱音部分はとても美しい演奏です。ホルンも弱音部分ではバランスも良いし美しい響きです。強奏部分でも荒れ狂うことなく抑制の効いた美しい演奏をしています。最後の音はものすごく長く演奏しました。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈 マーラー交響曲第3番★★★
一楽章、大阪フィルもこの頃になると良い音がします。豊かに鳴り響く木管。ゆったりとしたテンポの第二主題。オケは限界近い咆哮はしません。余力を残しています。艶やかなヴァイオリン・ソロ。音に不純物が混じったようなトロンボーンのソロの最初の音。展開部のホルンも咆哮と言うほどの強烈な吹奏はしません。テュッティの強力なエネルギー感は不足しているように感じます。スネアやティンパニの動きが克明に表現されています。テンポは変化することなく堂々と進みます。コーダはすごくテンポを上げました。

二楽章、自然な歌が心地よく響きます。大阪フィルの音色は極上とまでは行かないものの大健闘です。若干のテンポの変化があったり、流れる音楽に浸ることができます。

三楽章、どの楽器もくったく無く鳴り、気持ち良いです。テュッティは相変わらず余力を十分に残した演奏です。美しいヴァイオリン・ソロ。適度な距離感を持ったポストホルンがとても良い雰囲気です。

四楽章、明るい声質で表現豊かなアルト独唱。

五楽章、全体に力強さに欠け、存在感の薄い合唱。

六楽章、安堵感に満ちた暖かい主要主題、とても美しい。頂点でフルパワーの咆哮!強大なエネルギーです。金管の主要主題の再現はもう少し神秘的であって欲しかった。最後は体力の限界か、ほとんどティンパニと弦だけになりました。

パーヴォ・ヤルヴィ/HR交響楽団

ヤルヴィ★★★

一楽章、豊かな残響を伴って伸び伸びと響くホルンの第一主題。第一主題の後はとてもゆっくりと演奏しています。オケを良く鳴らし、濃厚な色彩感の演奏です。第三主題は一般的なテンポになっています。艶やかなヴァイオリン独奏。比較的ニュートラルな響きのトロンボーン独奏。展開部のホルンの第二主題はかなり強く吹いているようですが、奥まった感じでした。オケを限界近くまで鳴らすようなことは無く、美しい響きを保って演奏しています。また、ライヴでありながらオケのほころびなどは全くと言って良いほど無く、見事なアンサンブルを聞かせています。

二楽章、テンポを動かしながら歌います。中間部は前へ前へと食らいつくように進みます。音楽が生命感に溢れていて、とても心地良い音楽です。

三楽章、踊るようにリズム感の良い演奏です。とにかく良く弾みます。とても柔らかいポストホルンはフリューゲルホルンで演奏しています。

四楽章、非常に注意深く演奏される序奏。丁寧な音楽の運びです。オーボエやイングリッシュホルンの音が上がるところをグリッサンドするように演奏しています。

五楽章、とても抑えた児童合唱。途中でほとんどテンポを落とさずに進みます。女声合唱も遠くから聞こえます。

六楽章、淡々と演奏される主要主題。テンポも速めでサクサクと進みます。一楽章の小結尾部の再現もあまり激しくはありません。二度目の副主題部はかなりテンポが速くなりました。内面へ深く浸透するような音楽にはなっていません。強力なティンパニと壮大なクライマックスでしたが、ほとんどの部分を速めのテンポで演奏したところは私の好みには合いませんでした。
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