マーラー 交響曲第3番3

たいこ叩きのマーラー 交響曲第3番名盤試聴記

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★
一楽章、少し浅い響きのホルンから始まりました。8本のホルンで演奏されているとはとても思えない見事なアンサンブルの第二主題。あっさりと明るい響きのトロンボーンソロ。続く行進曲は速目のテンポで進みます。展開部のホルンも残響成分をあまり含まないせいか、浅い響きです。大太鼓の超低域の響きがズシーンと響きます。テンポの動きも少なく、淡々と音楽が進んで行きます。再現部手前のホルンの咆哮はすごいものがありました。音場の奥行き方向にはあまり再現されず、全ての音が前へ出てくるので、響きが浅く感じられるようです。そのせいか、音楽も淡白に感じます。コーダはかなりテンポを上げました。

二楽章、ゆったりと歌うオーボエ。その後のめまぐるしい変化を上手く表現しています。

三楽章、明快な木管の響きです。全ての音が前に出てきて、マーラーの作品があられもない姿になってしまっているように感じてしまいます。これがショルティの意図なのかも知れないのですが・・・・・。ポストホルンもかなり手前で演奏しているようです。ポストホルンは柔らかく美しい音です。

四楽章、かなりはっきりと歌い始める独唱。強弱の変化も激しく表情豊かな独唱です。オケはほぼ弱音を保ったままでした。

五楽章、はずむような発音で「ビム・バム」でした。グロッケンがカチーンと来ます。

六楽章、粗末に扱うと壊れそうな器を丁寧に扱うような、美しい主要主題。夢見るようなホルン。一転して激しいホルンの咆哮。また、美しい弦。大河の流れのように次から次から音の大洪水です。ピッコロのソロから美しいメロディが次から次へと受け継がれて行きます。コーダへ向けて強いアタックのトランペット。感情表現は抑えて作品の細部まで、あからさまにした演奏だったと思います。

ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、とても軽いホルンの主題。強烈なティンパニ。第二主題のホルンは力強い演奏でした。よく鳴るトロンボーン独奏ですが、元気が良くて、ちょっと落ち着きが無いような感じがします。第三主題に基づく行進曲はゆっくり目です。抑え気味の第四主題。展開部の冒頭はすごく激しい演奏でした。色彩感は濃厚で、強い音なのですが、「巨人」の演奏ほどの強烈さはありません。ヴァイオリン独奏もoff気味です。展開部のヴァイオリン独奏の後からはテンポがゆっくりになっています。トロンボーンの第一主題はクレッシェンドしました。その後の狂乱する部分は楽器の数が少ないのでは無いかと思うほど、あっさりとしていて、寂しいと言うか肩すかしでした。再現部でも元気の良いトロンボーン独奏ですが終わりに向けてかなり大人しくなりました。コーダの強奏は圧倒的です。

二楽章、オーボエの主要主題でテンポが動きました。中間部でも一音一音に力があります。テンポはたまに動いていますが、自然で心地良い動きです。

三楽章、トランペットが突出して来たりして、とても色彩感は濃厚です。柔らかい響きで歌うポストホルン。登場する楽器がどのパートも引き締った表現でとても克明に描かれて行きます。残響成分が少なく音場が平面的な感じがします。堂々とした足取りで終わりました。

四楽章、細い声の独唱。締まったホルンの響き。表現の幅が広く訴えかけてくる独唱。

五楽章、元気の良い児童合唱。女声合唱も一人一人の声が聞き取れるような粒立ち。この合唱も残響成分が少ないので、奥行き感がほとんどありません。トランペットが異常に突出します。

六楽章、速めのテンポですが、切々と歌う主要主題は感動的です。一楽章の小結尾部の再現はとても激しく、その前の部分との描き分けがなされているようです。二度目の一楽章の小結尾の再現はそれまでの静寂を打ち破るように激しく咆哮するような感じでした。テンポは速めですが、その分音楽が生き生きとしていて、生命感を感じます。最後に現れる主要主題はとても感動的でした。強力なティンパニとトランペットによる完全燃焼です。

六楽章の感動的な弱音部と完全燃焼する終結部はすばらしいものでした。
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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、見事に揃ったホルンの第一主題。積極的に突き抜けて来る金管。第二主題は全開と言うほどではありませんでした。オーボエの第三主題に続き艶やかなヴァイオリン独奏。少しタメがあったりするトロンボーン・ソロ。行進曲調になり明るく華やいだ雰囲気です。とても色彩感豊かな演奏です。展開部の前は音の洪水のような凄い演奏でした。勇壮なトロンボーン。小太鼓も強打します。紳士的で折り目正しいトロンボーン・ソロです。ウィーンpoのこの楽章の演奏は伝統があるのか、アバドの演奏でもそうでしたが、とても力強くしかも華やかでとても良い演奏です。最後すごくテンポを速めて終わりました。

二楽章、癒されるような穏やかなオーボエの主要主題。繊細で美しいヴァイオリン。テンポも動いて感情を込めた歌です。中間部は一転して活発で動きのあるめまぐるしい音楽です。艶やかで瑞々しいヴァイオリンのソロはしずくが滴り落ちそうなくらいです。テンポを落としてこってり濃厚な表現があったかと思うと、すごいスピード感で音楽を裁いていくような部分もありなかなか聴き応えがあります。脱力していくように終りました。

三楽章、控え目なピッコロの主題。クラリネットも控え目で美しい。中間部の少し前から音量が一段階上がったようで、目の覚めるような音になりました。遠くから響くポストホルンが柔らかく美しい。夢の中で響くようなポストホルンとステージ上の実在感のある木管との対比がとてもすばらしい。主部が戻ると色彩感豊かな眩いばかりの演奏です。最後はすごくテンポを上げて終わりました。

四楽章、コントラバスの静かな序奏から自然に浮かび上がるような独唱。独唱の合い間に登場する楽器の音色は油絵のようにとても濃厚です。振幅の大きい歌を聞かせる独唱です。

五楽章、オケの響きとは一転してモノトーンのような合唱です。オケは生き物のように強弱の変化をさせて表現します。

六楽章、穏やかで深い主要主題。音量を抑えて大切に静かに語りかけるような演奏です。副主題部のホルンが遠くから響くようで美しい。一楽章の小結尾部の回想も抑え気味で、叫びたい気持ちをグッとこらえているようです。クラリネットの対旋律もすごく美しい。二回目の一楽章の小結尾部の回想は一回目より激しい演奏でした。金管の主要主題の再現ではトランペットのハイトーンが出にくかったのか、少々雑な印象でした。コーダでも絶叫するようなことは無く穏やかで壮大な演奏でした。

バーンスタインの演奏にしては、感情を吐露するような演奏ではなく、むしろ感情を抑え気味にした演奏だったのが以外でした。
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ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク★★★☆
一楽章、第一主題の後の重い低音。第一主題も第二主題も両方でしたが、ホルンの演奏で途中で音を抜くような演奏だったのが不思議でした。第三主題はテンポを落としてたっぷりと演奏しました。明るい響きのトロンボーンのソロ。クラリネットの第四主題の後ろで演奏されるスネアドラムがとても良い音色です。第四主題以降はとても軽快で歌に伴って強弱の変化もありなかなか良いです。展開部の直前はかなり激しい演奏でした。展開部のトロンボーン・ソロは音量も若干控え目です。ヴァイオリンのソロはオケに埋もれるようなバランスでしたが、細身で艶やかでした。ハイティンクの演奏にしてはテンポも動いて情感豊かです。再現部の前は狂気乱舞するような雰囲気ではなく、割と落ち着いた演奏でした。再現部のトロンボーンは再び提示部のような明るい音色です。ホルンの第一主題の再現はとても勇壮でした。

二楽章、僅かな抑揚とテンポの動きのあった主要主題。色彩感も乏しく平板な演奏でした。

三楽章、小さく可愛いピッコロ。少し慌てているようなホルン。遠くから鋭い音のポストホルンです。主部が戻ると中間部の静から一転して動きのある活気のある演奏になりました。

四楽章、静かな低弦。独唱も静かな歌いだし。独唱が強く歌っても、距離があるので耳障りではありません。音楽は常に自然な流れです。

五楽章、児童合唱と女声合唱の声質が違うのでコントラストがはっきりしています。また、合唱が奥まっていて距離感もとても良いです。

六楽章、静かで美しい弦楽合奏の主要主題。控え目に丁寧に旋律が次々と折り重なって行きます。第1楽章の小結尾の主題が回想されても大暴れすることは無く、穏やかに淡々と進みます。とても美しいのですが、奥深い所から湧き上がって来るような音楽では無いような感じがします。金管の主要主題の再現では音の始末が少々乱暴なところもありました。最後まで余力を残した演奏でした。

総じて美しい演奏でしたが、ハイティンクらしい細部まで徹底して行き届いた演奏ではなかったのが少し残念でした。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★☆
一楽章、ふくよかな響きのホルンの第一主題です。ミュートを付けたトランペットは伸ばす音の最初は強く吹きますが伸ばす音は直ぐに弱くなります。第二主題も総じてふくよかですが、あまり奥行き感はありません。木管のコラール風の動機も伸ばす音は抜くように演奏しました。僅かに節回しのあるトロンボーン独奏。展開部へ入る前はゆったりとしたテンポで壮大な演奏でした。展開部のホルンの第二主題もビーンと鳴ることは無く、柔らかくふくよかでした。探るようにゆっくりと演奏されたイングリッシュ・ホルン。艶やかと言うより少し枯れた雰囲気のヴァイオリン独奏。トロンボーンの第一主題も押さえた感じでした。再現部の前の色んな楽器が乱舞するような部分ではティンパニが強烈にクレッシェンド、デクレッシェンドを繰り返しましたが、他の楽器はきっちりと整理されているような整然とした演奏でした。

二楽章、豊かに歌うオーボエの主要主題。弦の繊細な表情。中間部はコントラストがはっきりしていて鮮明です。

三楽章、舞曲のように軽快な主部の演奏。ホールの残響をあまり含んでいないので、奥行き感には乏しい録音です。かなり遠くから響くポストホルン。良く通るフルート。遠くから響くポストホルンは柔らかい響きではありませんが、聞き惚れるような演奏です。主部が再現すると再び軽快な舞曲風です。遠いポストホルンに聞き入ってしまいます。不思議な魅力です。

四楽章、体全体から声が出ているような独唱。合い間に入るホルンはとても締まった響きです。オーボエがグリッサンドするような表現です。デッドな録音のせいか枯れた響きのヴァイオリンの独奏。

五楽章、デッドな録音の影響で、合唱の声質がとても鮮明です。中間部でも見事な独唱。

六楽章、静かに淡々と演奏される主要主題。込み上げる感情をぐっと内に秘めるような演奏です。副主題部も大きな表現はありません。二回目の第1楽章の小結尾の主題が回想は激しいものでした。ここまでの比較的淡々とした演奏とは対比される大きな表現です。三回目の第1楽章の小結尾の主題が回想も激しく壮大でした。くすんだ響きの金管による主要主題。コーダの前のトゥッティはオケのパワーを感じさせる力強いものでした。コーダは速めのテンポで終わりました。

ポストホルンや独唱など傑出した部分もありましたが、ヤンソンスは作品を遠くから眺めて、淡々と描いて行くような演奏でした。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

icon★★★
一楽章、軽い響きの第一主題。スヴェトラーノフの演奏と言うことで、爆演を予想していましたが、力みのない演奏です。第二主題も絶叫することはなく、あっさりとしています。部分的にテヌートぎみに演奏するトロンボーンソロ。時折打楽器が強く入って来ます。展開部のホルンの第二主題も音を割ることもなく大人しい演奏です。ただ、打楽器は強烈に入って来ます。再現部前の頂点では、ホルンだけが異常に弱く変なバランスです。特に強烈な主張もなく、マーラーの多彩なオーケストレーションも楽しむことは出来ない演奏で、ちょっと期待外れです。トランペットはかなり強烈なのですが・・・・・・。コーダかなりテンポを上げてスリリングでした。ただ、シンバルが遅れていました。

二楽章、ゆったりとしたテンポで歌うオーボエ。消え入るような弦もなかなか良いです。遅いテンポでとても丁寧に音を大切に扱っているような演奏です。とても穏やかで聴いていて安堵感があってとても良いです。スヴェトラーノフがこの楽章でこんなに良い演奏を聴かせてくれるとは思いませんでした。別世界へ連れて行かれたような感覚になります。

三楽章、この楽章も遅めのテンポで豊かな表現です。相変わらずホルンは弱い。遠くから響くポストホルン、なかなか美しい。このテンポがこの曲の良さを再認識させてくれます。スヴェトラーノフのイメージは常に爆演でしたが、これだけ弱音で美しい音楽を作っていたのに驚きです。

四楽章、細い声の独唱でもう少し響きが欲しいところです。

五楽章、声楽陣にはマイクポジションが近いのか、美しいのですが、少し響きが足りないように感じます。

六楽章、弱音部分はとても美しい演奏です。ホルンも弱音部分ではバランスも良いし美しい響きです。強奏部分でも荒れ狂うことなく抑制の効いた美しい演奏をしています。最後の音はものすごく長く演奏しました。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈 マーラー交響曲第3番★★★
一楽章、大阪フィルもこの頃になると良い音がします。豊かに鳴り響く木管。ゆったりとしたテンポの第二主題。オケは限界近い咆哮はしません。余力を残しています。艶やかなヴァイオリン・ソロ。音に不純物が混じったようなトロンボーンのソロの最初の音。展開部のホルンも咆哮と言うほどの強烈な吹奏はしません。テュッティの強力なエネルギー感は不足しているように感じます。スネアやティンパニの動きが克明に表現されています。テンポは変化することなく堂々と進みます。コーダはすごくテンポを上げました。

二楽章、自然な歌が心地よく響きます。大阪フィルの音色は極上とまでは行かないものの大健闘です。若干のテンポの変化があったり、流れる音楽に浸ることができます。

三楽章、どの楽器もくったく無く鳴り、気持ち良いです。テュッティは相変わらず余力を十分に残した演奏です。美しいヴァイオリン・ソロ。適度な距離感を持ったポストホルンがとても良い雰囲気です。

四楽章、明るい声質で表現豊かなアルト独唱。

五楽章、全体に力強さに欠け、存在感の薄い合唱。

六楽章、安堵感に満ちた暖かい主要主題、とても美しい。頂点でフルパワーの咆哮!強大なエネルギーです。金管の主要主題の再現はもう少し神秘的であって欲しかった。最後は体力の限界か、ほとんどティンパニと弦だけになりました。

パーヴォ・ヤルヴィ/HR交響楽団

ヤルヴィ★★★

一楽章、豊かな残響を伴って伸び伸びと響くホルンの第一主題。第一主題の後はとてもゆっくりと演奏しています。オケを良く鳴らし、濃厚な色彩感の演奏です。第三主題は一般的なテンポになっています。艶やかなヴァイオリン独奏。比較的ニュートラルな響きのトロンボーン独奏。展開部のホルンの第二主題はかなり強く吹いているようですが、奥まった感じでした。オケを限界近くまで鳴らすようなことは無く、美しい響きを保って演奏しています。また、ライヴでありながらオケのほころびなどは全くと言って良いほど無く、見事なアンサンブルを聞かせています。

二楽章、テンポを動かしながら歌います。中間部は前へ前へと食らいつくように進みます。音楽が生命感に溢れていて、とても心地良い音楽です。

三楽章、踊るようにリズム感の良い演奏です。とにかく良く弾みます。とても柔らかいポストホルンはフリューゲルホルンで演奏しています。

四楽章、非常に注意深く演奏される序奏。丁寧な音楽の運びです。オーボエやイングリッシュホルンの音が上がるところをグリッサンドするように演奏しています。

五楽章、とても抑えた児童合唱。途中でほとんどテンポを落とさずに進みます。女声合唱も遠くから聞こえます。

六楽章、淡々と演奏される主要主題。テンポも速めでサクサクと進みます。一楽章の小結尾部の再現もあまり激しくはありません。二度目の副主題部はかなりテンポが速くなりました。内面へ深く浸透するような音楽にはなっていません。強力なティンパニと壮大なクライマックスでしたが、ほとんどの部分を速めのテンポで演奏したところは私の好みには合いませんでした。
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