カテゴリー: シベリウス:交響曲第2番名盤試聴記

シベリウス 交響曲第2番

シベリウス:交響曲第2番ベスト盤アンケート

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第2番名盤試聴記

サー・コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、豊かな残響に包まれて、自然体の演奏です。旧録音のボストンsoとの録音と同じく、大きな表現などは無く、楽譜に書かれていることを誇張せずに自然に演奏していますが、僅かにテンポが遅くなって、少し表現を踏み込んでいる感じがします。オケを良くコントロールしていて、端正な演奏です。木管が浮き上がって、生き生きとしています。

二楽章、静寂の中に拡散していく、低弦のピィツィカート。静かで北欧の雰囲気を感じさせるファゴットの第一主題。第二主題の前に金管がコラール風の演奏をする部分の最後あたり、ホルンの強奏の部分でティンパニが大きくクレッシェンドしました。これはボストンsoの録音では無かった表現です。静かで幻想的なヴァイオリンの第二主題に絡む木管も有機的です。大きな火山の噴火口から噴煙を上げるようなチューバ。ボストンsoとの録音で感じた若干スケールが小さいようなことも、この演奏ではありません。

三楽章、繊細ですが、動きのある弦です。トリオの前で十分な間を空けました。上品に歌うトリオのオーボエがとてものどかです。主部が戻るところでチューバが炸裂します。

四楽章、ゆったりと深みのある弦のモチーフ。朗々と鳴り響くホルン。大きな表現はありませんが、自然体のどっしりと落ち着いた演奏に貫録すら感じます。とてもゆったりと懐の深い展開部の第一主題。第一主題の再現部のトランペットは輝かしい響きでした。第二主題の再現のクライマックスでは金管がかなりのパワーです。コーダでは圧倒的な金管が感動的です。素晴らしい演奏でした。

端正で、大きな表現はありませんでしたが、自然体の演奏に深みがあって、とても美しい響きでした。大きな表現は無いものの、内に込めたような表現は上品で、この作品を格調高いものにしています。また、コーダの圧倒的な金管のパワーも感動的で素晴らしい演奏でした。
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パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、速めのテンポでとても良く歌う第一主題。木管は躍動的で、ホルンもとても良く歌います。オケの編成が小さい利点を生かし意敏感な反応で、強弱の変化も明確です。展開部に入っても速めのテンポで躍動感があります。訴えかけてくるような深い表現。

二楽章、速いテンポで演奏されるピツィカート。北欧の広大な雪原を連想させるようなファゴットの第一主題。奥ゆかしく穏やかな第二主題。室内管弦楽団の演奏ですが、編成の小ささは感じさせません。厚みのある響きです。とても動きがあって活発な音楽です。輝かしいトランペット。コーダのトランペットの悲痛な響きも印象的でした。

三楽章、主部冒頭の力強い弦。強弱の変化にも敏感に反応するオケ。滑らかに豊かに歌うトリオのオーボエはテンポも微妙に動いて、とてものどかです。四楽章へ向けて緊張感が高まって行きます。

四楽章、おおらかな弦のモチーフ。高らかに鳴り響く鋭いトランペット。速めのテンポで生き生きとした第二主題がぐいぐいと進みます。展開部は柔らかく優しい表現です。再現部では金管がかなり強く吹きます。歌に溢れていてとても豊かな表情の音楽です。豊かに朗々と響くクライマックス。力で押すようなことは無く、美しい響きで曲を閉じました。

速めのテンポで、歌に溢れ、躍動感に満ちた音楽でした。室内オケですが、ダイナミックの変化も大きく力強い演奏でした。

レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、ゆったりとしてたっぷりと歌う第一主題。ホルンもアゴーギクを効かせて豊かに歌います。包み込むような柔らかい響きで、すごく感情の込められた演奏です。晩年のマーラーの録音を聴くような自由なテンポの動きと歌です。奥まったところで響くトランペット。

二楽章、すごく遅いピィツイカート。感情のこもったファゴットの第一主題。非常に遅いテンポで濃厚な表現はまさに晩年のバーンスタインの演奏スタイルです。もう、シベリウスの作品と言うよりも、バーンスタインの音楽です。ただ、これだけ自分の音楽として昇華できるだけの能力は凄いと思います。

三楽章、この楽章はそんなに遅くはありません。豪快に鳴らされるティンパニ。後方から突き抜けるトランペット。トリオに入る前に長い間がありました。アゴーギクを効かせて自由に歌うオーボエ。非常にゆったりとしたトリオです。トリオの再現でも非常に人間的で、バーンスタインの感情の赴くままにテンポも動き深く歌われます。

四楽章、うねるような第一主題。展開部の前のピィツイカートもも非常に遅いです。続く展開部もすごく遅いです。この遅いテンポで一音一音に意味を込めるような非常に重い演奏です。スケールの大きな再現部。朗々と歌う弦。オケが一体になって凄いエネルギーが押し寄せて来ます。コーダのトランペットの壮絶な咆哮!

バーンスタインの強烈な個性が表出された物凄い演奏でした。好き嫌いは分かれると思いますが、私はこのような濃厚な表現の演奏は大好きです。
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オッコ・カム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、とても良く歌う第一主題。きりっと立ったオーボエ。ホルンも豊かに歌います。密度は濃くないですが、美しい弦。第二主題も生き生きとしています。深みがあって重厚な演奏です。

二楽章、静寂の中に響く低弦のピィツィカート。哀愁を感じさせるファゴットの第一主題。トゥッティでも絶叫することなく、落ち着いた大人の演奏です。祈るような第二主題が心を打ちます。トゥッティでも深い響きが印象的です。深々と、しみじみと聞かせる音楽は素晴らしいです。ライヴ録音であるとこを感じさせない精度の高い演奏です。

三楽章、流れるような冒頭の弦。感情を込めて歌うトリオのオーボエ。緊張感のある主部。

四楽章、柔らかい第一主題の弦。展開部の前は少しテンポが速くなりましたが、展開部はゆったりとした落ち着いた表現です。くっきりと浮かび上がる木管。テンポの動きも絶妙で、感動的です。輝かしいコーダ。

本場物と言う事もあって、奇抜な表現などは全く無く、正面から対峙した演奏でした。内側からしみ出すような感情表現が感動的でした。
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レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、柔らかくふくよかな響きで歌う冒頭の第一主題。呼応するホルンも歌います。柔らかい弦がとても心地良いです。提示部の最後はかなりゆっくりになって終わりました。展開部に入っても積極的な表現です。展開部の最後もゆったりとしたテンポで柔らかいクライマックスでした。

二楽章、ゆったりとしたテンポのコントラバス、チェロのピツィカート。郷愁に満ちて、北欧の寒さを感じさせるファゴットの第一主題。一旦テンポが速まりますが金管のコラール風のメロディではまたゆっくりとしたテンポになります。大切なものを扱うように丁寧で穏やかな第二主題。トランペットとフルートで再現される第一主題も寒い雪原をイメージさせるものです。1番のような荒々しい演奏ではありません。とても抑制されています。第二主題の再現以降も良く歌います。ピラミッド型で分厚く響くトゥッティ。弦も中低音の厚みがあって暖かく柔らかい響きです。

三楽章、分厚いコントラバス。ゆったりとしみじみとアゴーギクを効かせて歌うトリオのオーボエがとても美しい。ホルンの強奏もありますが、少しくすんだ響きで、鮮明な色彩感ではありません。

四楽章、非常に柔らかい第一主題。第二主題の前の低弦の動きも抑揚があってとても積極的な表現です。第二主題も何とも言えない哀愁を感じさせるものです。ゆったりとしたフルート。続く同じ旋律もゆったりと安らかな雰囲気です。再現部の第二主題は感情を込めた迫ってくるような表現でした。コーダは湧き上がるようなエネルギーを次第に全開にする感動的なものでした。

テンポを落としてたっぷりと歌う部分がとても美しい演奏でした。また、分厚いコントラバスに支えられた柔らかい響きもとても魅力的でした。そして、湧き上がるエネルギーを次第に全開にする感動的なコーダも圧巻でした。

サー・コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、厚みのある響きで、奥ゆかしく美しい演奏です。とても静寂感があります。音が生で突出して来ることは無く、とても品の良い演奏ですが、その分ダイナミックさは削がれているかも知れません。特別強調するような表現は無く、自然体で、作品のありのままを表現しているようです。何も強調しない演奏から、作品の良さがにじみ出るような感じです。

二楽章、哀愁に満ちて非常に美しいファゴットの第一主題。オフ気味に録られた録音は水彩画のような淡い色彩感です。穏やかで安らぎを感じさせる第二主題。トランペットとフルートによる第一主題の再現は北欧の白夜を連想させるような、物寂しさを感じさせます。この楽章でも際立った表現はありませんが、オケにはピーンと張った緊張感があり、とても精度の高い演奏をしています。

三楽章、軽い主部の導入。ゆったりと歌うトリオ。マットな音色で、淡い色彩はここでも同じです。オケを荒々しく演奏させるようなことは全くなく、非常に丁寧で端正な演奏です。

四楽章、ゆったりと流れる川のような弦のモチーフ。あまりにもまとまりが良いので、若干スケールが小さいようにも感じてしまいます。深く染み入るような展開部冒頭。ボストンsoがドイツのオケのような渋い音色で上品な演奏をしています。コーダは輝かしく力強い金管が美しい演奏でしたが、絶叫することは無く、大人の演奏でした。

大きな表現は無く、落ち着いた端正な演奏でした。若干スケールが小さい感じもありましたが、楽譜に忠実な整った演奏は魅力的でした。

ネーメ・ヤルヴィ指揮 エーテボリ交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、1983年の録音です。速いテンポの第一主題。良く歌うホルン。第二主題も速いテンポで躍動感と生命感があります。色彩のコントラストも明確で、エッジのくっきりとした演奏です。

二楽章、静かな中に抑揚のある低弦のピィツイカート。ゆったりとしたテンポも物寂しげなファゴットの第一主題。にじみ出るような哀愁。意外と明瞭に提示される第二主題。テンポも緩急の変化が大きく、かなり起伏の激しい演奏です。

三楽章、テンポはそんなに速くは無いのですが、スピード感はあります。トリオに入る前にかなり長い間を取りました。トリオに入っても大きくテンポを落とすことはありません。感情を込めた演奏では無いようですが、オケを明快に鳴らして、作品の力強さを表現しようとしているようです。

四楽章、湧き上がるように力強い第一主題。展開部に入っても湧き上がるような第一主題の表現は同じです。第一主題の再現部は速いテンポになりました。とても活発で生き生きとしています。もともとシベリウスは色彩感豊かな作曲家ではありませんが、この演奏は個々の楽器が明快に鳴らされるので、色彩感はとても豊かです。コーダの金管は最初レガートに演奏して次第に盛り上がるにつれてレガートしなくなりました。

基本的には速めのテンポで力強く活力に溢れた演奏でした。個々の楽器も明快に鳴らして色彩感も豊かな演奏は魅力的でした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団

icon★★★★☆

一楽章、豊かな響きでゆったりと歌いとても積極的です。爆演を連想させるにぎやかで色彩感豊かな演奏です。突然ビャーッと突き出てくる金管。ソ連のオケらしくホルンがビブラートをかけます。積極的で雄弁な金管が気持よく響き渡ります。

二楽章、ピーンと締まった寒さを感じさせるファゴットの第一主題。ゆったりとしたテンポですが、常にオケのいろんなパートが鳴っていてとても分厚い響きです。金管はかなりねちっこく強烈です。

三楽章、一音一音明確に演奏される弦。トリオでたっぷと歌う木管。合間に入る金管はやはり強烈で一瞬にして空気を変えてしまいます。

四楽章、豊かな響きの第一主題にやはり強烈なトランペットが登場します。第二主題は暖かく柔らかいですが、ここでも金管が空気を突き破って登場します。楽器の出入りがとても良く分かりこの作品のオーケストレーションの巧みさも分かります。シベリウス独特の低音の動きもしっかりと届いてきます。コーダもトランペットがここぞとばかりに吹きますが、はっきりとブレスで音が途切れるのが残念でした。

分厚い響きに強烈な金管。豊かに歌う木管。なかなか聞かせどころの多い演奏でした。これまで思っていたシベリウスの細身のイメージを覆すような恰幅の良い演奏でした。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第2番2

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第2番名盤試聴記

マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★★
一楽章、包み込むような柔らかい響きです。とても良く歌います。第二主題に向けてテンポを煽り緊張感を高めます。テンポが良く動きますが、速い部分はかなりスピード感があります。金管が奥まっていてあまり大きなクライマックスにはなりません。

二楽章、ゆっくりとした足取りの低弦のピィツィカート。控え目に始まって次第に大きくなるファゴットの第一主題。トランペットが特に奥まっていて抜けてきません。非常に柔らかい第二主題。テンポはとてもよく動きます。

三楽章、さらりと歌うトリオ。主部が戻って深みのある低弦。ホルンはしっかりと出てくるのですが、トランペットは奥まっています。

四楽章、ホルンはかなり強く吼えますが、弦のモチーフは穏やかでのどかな雰囲気のある第一主題。深く歌う第二主題。再現部に入る前はかなり加速減速しました。第二主題の再現の低弦のうごめくような音型に入る部分はなだれ込むような感じでした。切々と歌われる第二主題の再現。コーダのトランペットはやはり遠過ぎます。

いろんなことをした演奏で、聴き所も多いものでした。ただトランペットが奥まった録音はとても残念でした。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 フランス国立放送管弦楽団 1956年ライヴ

ホーレンシュタイン★★★★
一楽章、遠くから近づいてくるような第一主題。フランスのオケらしくホルンがビブラートをかけています。劇的で振幅の大きな音楽です。激しい表現でぐいぐいと進みます。

二楽章、ゆったりとした低弦のピィツィカート。一歩一歩確かめるような確実な足取りです。柔らかいファゴットの第一主題。とても彫が深い濃厚な音楽です。動きがあって生き生きとした第二主題。第一主題の再現でもトランペットが濃厚です。ただ事では無いような深いところから音楽が湧き出してきて、かなり感情をぶつけてくるような演奏です。

三楽章、テンポはそんなに速くはありませんが、スピード感があります。とにかく激しいです。ギョッとするような生々しさ。トリオは速めのテンポですが、表現の振幅は非常に大きく、訴えかけて来ます。

四楽章、三楽章の混沌とした中から、ゆったりとしたテンポで伸びやかに勇壮に第一主題が演奏されますが、次第にテンポが速くなって、非常に力のこもった演奏になります。第二主題の木管の音にも力があります。テンポは良く動いています。第一主題の再現部ではかなりテンポが速くなります。第二主題の再現のクライマックスではまるで演歌を聴くような濃厚ベタベタな演奏になります。なかなか個性的です。コーダはもう絶叫です。

非常に濃厚で、ホーレンシュタイン独自の解釈で最後はかなりの粘着質な演奏になりました。すごく個性的で驚きのたくさんある演奏でした。
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グスターボ・ドゥダメル指揮 イェーテボリ交響楽団

ドゥダメル★★★★
一楽章、遅めのテンポで、アゴーギクを効かせてたっぷりと歌う第一主題。柔らかく控え目な木管。柔らかく美しい弦。ゆったりとレガートで演奏される部分と音を短く切る部分の対比がとても明確で雰囲気が一変します。金管もバランス良くブレンドされた響きで突出することはありません。

二楽章、あまり感情が込められていないような第一主題。この楽章でも金管は突き抜けることは無く控え目です。第二主題は穏やかで美しい演奏です。第一主題の再現では、北欧を感じさせてくれました。テンポのメリハリがはっきりしていて、動と静がはっきりしいます。とても良く歌う演奏で、テンポの動きも大きいです。

三楽章、軽い弦の動き。トリオではオーボエはもちろん、他の木管も弦もとても良く歌いますが響きに厚みが無いのと、金管のエネルギー感が無いのが残念です。

四楽章、柔らかい第一主題。控え目なトランペット。木管の第二主題の前の低弦もとても表情豊かでした。テンポを落としてゆったりとした表現は安らぎを感じさせるものです。クライマックスは淡々としています。コーダでも金管は強く吹いているようには感じますが、エネルギーとして伝わって来ません。

基本的にはゆったりとしたテンポでたっぷりと歌う演奏でした。特にテンポを落として安らかな表情はとても良い表現でした。ただ、トゥッティでのエネルギー感が無く、盛り上がりを感じられないのが残念でした。
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ジョージ・セル指揮 クリーブランド管弦楽団

セル★★★
一楽章、速めのテンポですが、良く歌う第一主題。ふくよかなホルン。精度の高いアンサンブルを聞かせる木管。かなり積極的な表現で激しい起伏があります。スタジオ録音だと精密機械のような精度の演奏をするセルもライヴだと、感情もこもって激しい表現の演奏になっています。それでもオケは一糸乱れぬアンサンブルです。ライヴならではのテンポの揺れ動きもあります。

二楽章、北欧を感じさせる幻想的なファゴットの第一主題。第二主題も活発で安らかさはあまりありません。トゥッティの響きがトランペットが突出して厚みがあまりありません。

三楽章、サラサラとした弦の響き。突き抜けて来るトランペットが豪快です。トリオに入る前に長い間がありました。アゴーギクを効かせて歌います。主部が戻るとかなり激しい演奏です。

四楽章、この楽章でもトランペットのエネルギー感がすごいです。静かで憂鬱な雰囲気の第二主題。再現部の盛り上がりではかなりテンポを速めてちょっと落ち着きのない演奏でした。テンポも良く動いています。コーダでは弱めに入ったトランペットが次第に力を増して終わりました。

ライヴらしい変化に富んだ演奏でしたが、常に動きのある演奏で、少し落ち着きの無い感じがありました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★
一楽章、速いテンポの第一主題。厚みのある弦が非常にダイナミックです。ピィツィカートも躍動感があって活発に動きます。第二主題は熱っぽいほどです。金管のファンファーレのアンサンブルの精度は見事です。

二楽章、雪原を感じさせるファゴットの第一主題。凄く広大なダイナミックレンジですが、シベリウスらしい寒さは感じられません。サラッとした肌ざわりの第二主題。雪原の夕暮れを感じさせるトランペットとフルートによる第一主題の再現。豪華絢爛に鳴り響く金管。とても豪華なのですが、感情が込められていたり、作品に対する共感などはあまり感じません。

三楽章、分厚いコントラバス。フワーッと響く金管。トリオの前は畳み掛けるような感じで弦のエネルギーは物凄いです。テンポも動いて深く歌うトリオ。弦の合奏は圧倒的でした。四楽章へ向けて次第にテンポを落として行きます。

四楽章、ゆっくりとしたテンポでトランペットが毅然としていなくて、軟弱でした。この楽章でも弦のエネルギー感は凄いです。展開部は暖かみがあって静かで穏やかです。あまりにテンポが遅くてそれでいて表現が淡白なので間が持たないところもあります。再現部に入る前のクレッシェンドは強烈でした。再現部の分厚く豪華な響きはさすがベルリンpoと感心させられます。コーダは倍管にした金管が圧倒的なパワーで朗々と凄いエネルギーで突き抜けて来ます。この響きは快感です。

倍管にした金管による四楽章のコーダは見事でしたし、弦のエネルギー感も素晴らしいものがありましたが、テンポ設定や表現に統一感が感じられず造形的な美しさが感じられませんでした。

John Storgards指揮 BBCフィルハーモニック

Storgards★★☆
一楽章、厚みのある第一主題。舞うように躍動する木管。彫が深く克明な演奏です。金管は奥まっていて、あまり強く出てきません。彫の深い演奏と思いましたが聴き進むにつれて、淡い感じがしてきました。柔らかくふんわりとした感じがします。

二楽章、ホールに響き渡るティンパニ。豊かな残響を伴った低弦のピィツィカート。大きく歌うファゴットの第一主題。ヴェールに覆われたような柔らかい弦。ティンパニが何度もクレッシェンドしています。第一主題の再現はうつろで不安な雰囲気があります。トランペットが奥まっているので、あまり強弱の変化は感じませんが、反面、ティンパニはかなり強調されていて、これがあまりアンサンブルが良くないのが気になります。コーダに入って弦が音を短く演奏する部分がありました。

三楽章、一音一音丁寧で落ち着いた弦。独特の歌いまわしのトリオのオーボエ。二度目のトリオの直前でもティンパニがクレッシェンドしました。

四楽章、穏やかな弦のモチーフにキリッと鳴るトランペットが対照的です。少し寂しげな第二主題。展開部はとても穏やかです。再現部ではやはり奥から芯のしっかりしたトランペットが響きます。やはりティンパニのアンサンブルの悪さが目立ちます。第二主題の再現部でも金管が前に出てこないので、大きな盛り上がりになりません。コーダも同様です。

金管が奥まっていて、トゥッティのエネルギー感が乏しく、盛り上がりを感じることはありませんでした。演奏にもあまり強い主張は無くあまり印象に残る演奏ではありせんでした。
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トーマス・シッパース指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック

シッパース★★
一楽章、速めのテンポですが、テンポも動いて歌っています。演奏は積極的で、活動的です。かなり自由にテンポが動いています。強弱の変化も独特の表現があります。

二楽章、美しいファゴットの第一主題。安堵感のある第二主題と華やかなフルートなどの木管。音を短く演奏する時があり、しっとりとしたこの作品には合わない表現があります。

三楽章、激しく雑に聞こえるトランペット。この楽章でも木管が音を短めに演奏する部分がありました。

四楽章、この楽章の冒頭でもトロンボーンが音を短く演奏しています。金管の響きが乾いていて硬いです。再現部のクライマックスはかなりテンポが速いです。コーダでもトランペットがフレーズの最後の音を短く演奏したりしました。

音を短く演奏することが度々あり、この作品のしっとりとした部分はあまり表現されませんでした。金管の硬い響きも作品とマッチしているとは言い難いものでした。
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エサ=ペッカ・サロネン指揮 スウェーデン放送交響楽団

サロネン★★
一楽章、速めのテンポで軽快に始まりました。第二主題の前はかなりテンポを上げました。展開部からはテンポを落として粘っこい演奏になりました。テンポは大きく動きますが、強弱の変化はさほど大きくありません。大きく歌うことも無く淡々と音楽は進みます。

二楽章、感傷にに浸るようなことも無く、淡々と演奏される第一主題。極めて静かに演奏された第二主題。サロネンの指揮をする姿からはかなり激しい演奏をしようとしているようなのですが、録音からはそのダイナミックな表現は伝わって来ません。ただ、ティンパニの凄い打撃だけは凄く印象に残ります。

三楽章、丁寧ですが、あまりスピード感の無い主部。テンポも微妙に動きしみじみと歌われるトリオ。

四楽章、速いテンポで流れるような第一主題。この楽章でもティンパニは強烈です。第二主題の前の低弦には動きがありましたが、第二主題はやはり淡々としています。展開部の第一主題は安堵感のある優しい演奏でした。第二主題は一転してすごく速いテンポです。歪っぽくザラついたコーダ。

とても客観的な演奏だったのですが、録音が歪っぽくて、美しさが伝わって来ませんでした。また、ほとんど片チャンネルのみ音が再生される状態で、演奏を捉えにくい状態でした。
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ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1957年

オーマンディ★★
一楽章、速めのテンポですが積極的に歌います。ふくよかなホルン。第二主題に入っても生き生きとした表情は変わりません。展開部の不穏な雰囲気も良く表現されています。録音された年代のせいなのか、トゥッティの厚みがあまりありませんでした。

二楽章、哀愁のあるファゴットの第一主題ですが、胸を打つと言うほど深いものではありません。トランペットは強力です。第二主題も現実的です。トランペットとフルートで再現される第一主題は雰囲気がありました。やはり低域があまりしっかりと捉えられていない録音のようです。

三楽章、活発な動きのスケルツォ。波が押し寄せるような音の洪水です。スタッカートぎみに演奏されるトリオのオーボエ。スケルツォ主部が戻ると再び嵐のような激しい流れです。

四楽章、サラサラと流れる弦に遠くから響くトランペットの第一主題。強奏部分で各楽器が有機的に結びついていないような散漫な印象を受けました。コーダのトランペットは最初は控えめに吹きはじめましたが、ティンパニのクレッシェントに合わせて全開になりました。

オーマンディの演奏にしては少し散漫な感じがしました。低域をあまり捉えていない録音にも問題があるような気がします。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー