カテゴリー: ブラームス:交響曲第2番名盤試聴記

ブラームス 交響曲第2番

ブラームス 交響曲第2番ベスト盤アンケート

たいこ叩きのブラームス 交響曲第2番試聴記

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、美しいホルンの歌です。呼応する木管も非常に美しい。そして繊細な弦。弱音時の締まった音とテュッティの広々と広がるような変化がとても心地よい演奏です。ベームの指揮は確信に満ちたテンポ設定で堂々とした演奏を展開します。ことさらに表現を誇張することもなく、安定感抜群の演奏です。

二楽章、それぞれの楽器が紡いでいく音楽がとても美しい!ここでもテンポが動いたりすることはなく、がっちりと下支えしていてとても安定感があり心地よい演奏です。何よりもウィーンpoの音色がすばらしく美しい!

三楽章、弱音時の静寂感が演奏の緊張感を伝えています。すごい集中力で演奏されたことが伝わります。

四楽章、冒頭のデリケートな弦の表現。トゥッティの地の底から湧き上がるようなオケが一体になった力強いffもすばらしい。最後の追い込みも見事でした。

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、伸びやかで豊かな響きです。柔らかな弦の響きが魅力的です。ライヴならではの思い切った表現もあり聴き応えがあります。テンポの動きもライヴならではです。

二楽章、どっしり構えた安定感があります。

三楽章、弦楽器の見事なアンサンブル。オーボエの甘美なメロディ。ウィーンpoならではの魅力を存分に聴かせてくれます。

四楽章、ベームとウィーンpoの自信に溢れた演奏でした。見事な歓呼の表出でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年ザルツブルク音楽祭ライヴ

カラヤン★★★★★
一楽章、明るいホルンの第一主題。ビロードのようにとても柔らかく遠くから響くようなヴァイオリンの経過句。とても流れ良く第二主題に入りました。激しい部分でもオケの一体感があり荒れた感じは全くありません。とても滑らかで美しいです。チューバがしっかりと主張するので、とても響きが分厚く感じます。第二主題の再現は伸びやかでゆったりと多層的でした。コーダはまさに沈みゆく太陽を表現しました。

二楽章、ロ長調ですが、寂しく孤独な感じです。寂しさが溢れ出すようなヴァイオリン。激しさが一楽章の時より増してきているようです。

三楽章、上品な歌い回しで美しいオーボエの主題。Bに入っても急激なテンポの変化は無く自然に移行しました。最後のAはとても豊かに歌い美しかったです。

四楽章、細かく動く第一主題にも表情がありました。突然訪れるトゥッティは巨大な響きで圧倒されます。第二主題は少しテンポを煽って興奮を高めるようでした。テンポの動きがあって締まりのある演奏です。追い立てるように切迫するコーダ。輝かしく見事な終結でした。

表情があり、滑らかで美しい弱音。圧倒的で巨大なトゥッテイ。テンポの動きもあり作品への共感が感じられました。素晴らしい演奏だったと思います。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★★★
一楽章、間があってゆったりとした第一主題。穏やかですが、とても繊細な表現です。ヴァイオリンの経過句もヴェールで覆われたような奥ゆかしい響きです。トゥッティの起伏はあまり大きくありませんが、表現はとても積極的です。第二主題もとても奥ゆかしく穏やかです。クライマックスでも大きな盛り上がりはありませんが、とてもゆったりとスケールの大きな響きです。コーダのホルンもとても良く歌いました。落ち着いた安定感のある演奏でした。

二楽章、第一主題もたっぷりと豊かに歌います。暖かくあまり孤独感を感じないホルン。第二主題も滑らかで美しいです。常にヴェールに包まれたような上品な響きで、決して生音が聞こえてくることはありません。

三楽章、奥ゆかしく歌うオーボエの主題。Bに入ってもヴェールに包まれたような響きは同様で、とても上品です。表現はしっかりと付けられているのですが、ブレンドされた柔らかい響きでとても穏やかに聞こえます。

四楽章、しっかりと歌われている第一主題。トゥッティはブレンドされた柔らかく美しい響きです。第二主題もよく歌っています。表情は締りがあって明快ですが、柔らかい響きに中和されているような感じです。コーダは僅かにテンポを速めて高揚感のある見事なものでした。

ヴェールに包まれたようなブレンドされた柔らかく上品な響きで、ブラームスにぴったりでした。とても良く歌い表現もしっかりと付けられた演奏で、繊細な表現もありましたし、コーダの高揚感も見事でした。
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グスターボ・ドゥダメル/北ドイツ放送交響楽団

ドゥダメル★★★★★
一楽章、ゆっくりと一音一音心を込めるような第一主題。ヴァイオリンもとても繊細な表現です。テンポの動きもありますし、表現もしっかりとしています。押しては引くような第二主題の表現。独奏で登場する楽器がどれも美しいです。強弱の振幅は大きく激しいですが、低域の厚みがあまり無く、ブラームスらしい分厚い響きではありません。コーダは夕日をイメージさせてくれました。

二楽章、凄く感情を込めた第一主題です。とても豊かに歌います。振幅がとても大きく、激しいところでは暴力的なくらい力があります。ただ、少し響きが硬い感じも受けます。

三楽章、楽しそうに歌うオーボエの主題。クラリネットも良く歌います。Bも活発な運動量の演奏です。

四楽章、弱音ですが、しっかりと表情のある第一主題。やはり低域の分厚さはありませんが、シルクのような肌ざわりで美しいトゥッティ。細部に渡ってしっかりと表現が行き届いています。ブラームス的ではないかもしれませんが、生き生きとした表情の演奏は魅力的です。最後は僅かにテンポを上げて喜びに沸きかえる雰囲気を演出しました。

ブラームス的では無いかも知れませんが、シルクのような肌ざわりの美しい響きと、繊細で生き生きした表情の演奏はなかなか魅力的でした。
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クルト・ザンデルリング/シュターツカペレ・ドレスデン

ザンデルリング★★★★★
一楽章、凄くゆっくりとしたテンポでのどかで穏やかな第一主題です。おもむろに歌い始める第二主題。とても落ち着いていて安心感があります。展開部のホルンもとても美しいです。クライマックスでは金管がかなり強く吹いているようですが、とても広大な空間に拡がるような感じで塊になってぶつかって来ません。再現部の第二主題はとても繊細です。コーダのホルンはビブラートを掛けて訴えかけて来ます。

二楽章、物悲しい第一主題ですが、深刻にはなりません。とても優しく語りかけるような演奏です。この楽章もゆっくりとしたテンポで流れる音楽に身をゆだねているのがとても心地良い演奏です。第二主題はシターツカペレ・ドレスデンならではの美しい木管の響きでした。激しい部分でも決してうるさくはなりません。堂々としてどっしりと落ち着いた演奏です。

三楽章、愛らしく可愛いオーボエの主題。とても良く歌います。オーボエと絡むクラリネットやフルートもとても良く歌います。Bは強弱の反応の良い活発な演奏です。最後のAも伸びやかに豊かに歌います。とても安堵感があって落ち着きます。

四楽章、力みの無いトゥッティ。第二主題は大きな川の流れのようにゆっくりととうとうと流れて行きます。第一主題の再現は静かで穏やかです。コーダも力で押すようなことは無く、自然体でとても豊かでした。

ゆっくりとしたテンポで穏やかでどっしりとした演奏で、とてもスケールが大きかったと感じました。流れる音楽にどっぷりと浸って身をゆだねることができる数少ない演奏の一つだと思います。素晴らしい演奏でした。
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カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1988年ライヴ

クライバー★★★★★
一楽章、とても積極的で豊かな表現の第一主題。ヴァイオリンの経過句はとても美しい演奏でした。活力があって色彩感もすごく豊かです。第二主題も生き生きとした生命感のある表現です。登場する全ての楽器に豊かな表情が付けられていて動きの活発演奏です。クライマックスは少しテンポを落として濃厚で低域の厚みのある響きでした。赤く染まった夕日を連想させるコーダ。

二楽章、あまり悲しさはかんじませんが、くっきりと動きのはっきりとした第一主題。第二主題も動きが克明で後ろで動く楽器もはっきりと聞き取れます。トゥッティでも混濁することは無く、とてもキチッとしたアンサンブルです。

三楽章、愛らしく歌うオーボエ。Bに入るとダイナミックに強弱の変化を付けてスピード感のある演奏になります。テンポも動き活発な表現の演奏です。

四楽章、この楽章でも明快な表現の第一主題。トゥッティも筋肉質で躍動感がある表現です。暖かい第二主題が次第に熱くなります。少し速めのテンポで前へ進もうとする推進力があります。コーダの前もテンポが良く変わります。テンポを上げて怒涛のコーダ。凄い高揚感でした。

とても積極的な歌で、楽器の動きも克明でした。表現も多彩でテンポの動きもあり変化に富んだ演奏で飽きることのない演奏でした。テンポを上げて凄い高揚感のコーダも見事でした。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団 1984年

ヴァント★★★★★
一楽章、誇張が無く自然体の第一主題。経過句もとても美しいです。自然に染み出るような歌の第二主題。強弱の変化も必要以上に強奏せずに、オケの自然な盛り上がりに任せているようです。集中力が高く、聞いているうちにこちらが引き込まれるような感じがします。コーダでは朗々と歌うホルンがとても美しいです。

二楽章、自然な表現ですが、とても感情が込められた第一主題。少し寂しげなホルン。第二主題はゆっくりとしていますが、感情が溢れ出るような表現でした。静かですが音に力がある第二主題。

三楽章、オーボエの主題も自然体なのですが、集中力の高さか、周りの空気感が他の演奏とはちがいます。Bに入ってもあまりテンポは変わりません、また、強弱の変化もあまり大きくはありません。

四楽章、ここでも極めて自然な第一主題。ゆったりとした第二主題ですが、自然と湧き上がる感情が表現されています。雄大なトゥッティ。自然な演奏ではありますが、細部まで神経が行き届いています。コーダではアッチェレランドして、湧き立つような歓喜の表現でした。

自然体ですが、過不足なく歌い滲み出るような表現の演奏でした。細部まで神経が行き届いていて、集中力も高く。四楽章のコーダではそこまで抑えていた感情が爆発するような歓喜の表現。全体の設計も素晴らしく見事な演奏でした。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

ムラヴィンスキー★★★★★
一楽章、細身で締まったホルンの第一主題。澄んだ空気感のフルート。冷たい響きで独特の歌がある経過句。ゆっくりとしたテンポで締まった表現の第二主題。金管は盛大に鳴ります。ホルンのビブラートがロシアのオケらしいです。トロンボーンが物凄く突出して来てビックリします。巨大な音楽の振幅でとてもロマンティックです。リス゜ムの刻みが少し甘いような感じもします。

二楽章、一息で演奏するような第一主題。一音一音丁寧に演奏して浮遊感のある第二主題。精度が高く美しい演奏で、一般的なロシアのオケのイメージとは違います。

三楽章、遠くから響くようなオーボエの主題は追い込むように歌います。Bに入ると少しテンポを速めます。豊かな残響で深みのある響きです。

四楽章、レニングラーpoらしい冷たい響きで、こんな響きでブラームスを聴くのも趣きがあります。地鳴りのするようなコントラバスに金管の咆哮。とても強烈です。コーダ期待通りの金管の大爆発で輝かしい響きで終結しました。

冷たい響きで精度が高く、振幅が大きくロマンティックな演奏でした。金管の咆哮が強烈で、ブラームスの暖かくまろやかな響きのイメージとは全く違う異色の演奏でした。
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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1982年ライヴ

バーンスタイン★★★★★
一楽章、豊かな表情で感情の込められた第一主題。あっさりとした第二主題。晩年のドロドロに感情移入したような演奏とは違いとてもオーソドックスな演奏ですが、表現は積極的で美しく生き生きとしています。振幅も大きく、ストレートに感情をぶつけてくるような重量感があります。コーダは地平線に沈む太陽で次第に周囲が暗くなっていく状態をイメージさせてくれるものでした。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで、凄く感情をこめた表現でテンポの動きもある第一主題。静寂の中に響く孤独なホルン。第二主題ではさらにテンポが遅くなって、バーンスタインの感情の赴くままの表現です。強く感情を吐露する演奏で濃厚です。

三楽章、とても積極的に感情を込めて歌う主題。Bはきっちりとアクセントを付けて弾むような演奏です。すごく表現が大きいです。

四楽章、第一主題もとても豊かな表情です。トゥッティのエネルギーも大きくダイナミックです。第二主題は意外とあっさりしています。第二主題の再現はテンポを落として濃厚に表現します。コーダの手前で一旦音量が落ちる部分でもテンポを落としました。コーダは少しテンポを速めていますが、咆哮するほどではありませんでしたが、バランスの良いコーダでした。

豊かな表情で深く濃厚な表現の演奏で、最晩年の強烈な感情移入の片鱗を見せるような演奏でした。でも作品の原型はしっかりと残したバランスの良い演奏でなかなか見事でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第2番2

たいこ叩きのブラームス 交響曲第2番試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、美しい第一主題。磨きぬかれた音色と緻密なアンサンブル。牧歌的と言うより、都会的な雰囲気さえも感じさせる先鋭な演奏です。音楽にも起伏があり、金管の咆哮もありますが、整然としています。見事なくらいです。トゥッティの一体感もすばらしいものです。

二楽章、レコーディングした時期もカラヤンとベルリンpoの絶頂期のもので、ベルリンpoの機能美を如実に表すとても美しいものです。表現も豊かです。少し陰影に乏しいかも知れません。

三楽章、オーボエのとても愛らしい主題。とても美しい木管楽器の絡みでした。テンポが速くなってからのベルリンpoのアンサンブル能力の高さには感心するしかありません。

四楽章、速目のテンポの開始です。ダイナミックレンジの広さもすごいです。すばらしく輝かしい終結でした。見事なアンサンブル能力を見せ付けた演奏だったと思います。

ハンス・クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

クナッパーツブッシュ★★★★☆
一楽章、少し遠くにオケがいます。遅めのテンポで濃い表情付けをして行きます。巨大で堂々とした風格の演奏です。非常に濃厚です。賛否は分かれるかも知れませんが、私はこの演奏は好きです。

二楽章、

三楽章、アゴーギクを効かせて濃厚な表現です。テンポも予想外のところで動いてハッとさせられます。

四楽章、この楽章でも濃厚な表現の演奏があちこちで見られます。コーダでガクッとテンポを落としてそこからアッチェレランドして終るところは圧巻でした。

オトマール・スイトナー/シュターツカペレ・ベルリン

icon★★★★☆
一楽章、美しさにうっとりするような冒頭です。ドイツの伝統的な良さを残した美しい響きに魅了されます。深く艶のある弦の響きと宝石をちりばめたような木管のソロ!再現部手前のクライマックスでは少しテンポを落として刻み付けるように演奏しました。スイトナーらしい端正で美しいすばらしい演奏です。

二楽章、この世のものとは思えないような美しい演奏にずっと浸っていたい気分です。

三楽章、オーボエの魅力的な珠玉のような主題。テンポが速まる部分の切れ味もとても良い。

四楽章、第二主題もねばることなく美しい演奏。コーダではテンポを上げて激しい表現でしたが、オケは荒れることもなく美しい演奏でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、明るく美しいホルンの第一主題。キリッとした木管。繊細な響きのヴァイオリン。控え目なチェロの第二主題。ワックスがかかった高級車を見ているような滑らかで贅沢な美しさです。コーダの優しい弦の合奏。チャーミングな木管。

二楽章、憂鬱な雰囲気にさせるチェロの第一主題。明るいホルンにもう少し深みが欲しいところです。美しく旋律を受け継いで行くのですが、ブラームスらしい分厚い響きはあまり感じません。それでもこの美しさには酔いしれることができます。

三楽章、優しく歌うオーボエ。クラリネットもとても良く歌います。テンポの揺れや間もとても良いです。テンポが速くなってからは弦の敏感なリズムとアクセント。穏やかに終りました。

四楽章、歓喜に溢れるトゥッティ。美しく鳴り響く金管。コントラバスをあまり捉えていない録音のせいなのか、響きに厚みがないのが気になります。コーダへ向けてテンポを上げて歓喜を強く印象付ける演出でした。

すばらしい演奏でしたが、響きに分厚さが無かったのが少しだけ残念でした。

クリストフ・フォン・ドホナーニ/北ドイツ放送交響楽団

ドホナーニ★★★★☆
一楽章、冒頭からとてもよく歌います。澄んだヴァイオリンの経過句。感情の込められた第二主題。あまり強弱の振幅は大きくなく、比較的穏やかな演奏です。テンポの動きや間を空けることもあり刻みつけるような表現です。

二楽章、物悲しい第一主題ですが、動きは活発で明快です。寂しさはありますが、強い孤独感は感じません。第二主題もはっきりとした動きです。

三楽章、表情豊かに歌うオーボエの主題。Bも活発でとても生き生きとした良い動きです。

四楽章、速いテンポで演奏される第一主題。やはり強弱の振幅はあまり大きく無くなだらかです。暖かみのある第二主題。輝かしく見事なコーダでした。

振幅はあまり大きくありませんでしたが、美しく歌う演奏でした。克明に刻みつけるような表現や活発で生き生きとした表現など多彩な表現もありなかなか聞きごたえがありました。
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ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク★★★★☆
一楽章、コンセルトヘボウらしい色彩感の豊かな演奏です。弱音のビロードのような美しさ。良く歌う第二主題。堂々と王道を行くような安定感抜群の演奏です。トゥッティは熱っぽい高揚感があります。澄んだ弱音がとても綺麗です。

二楽章、繊細な第一主題。暗闇を連想させる寂しげなホルン。第二主題はレガートぎみに演奏しますがとても伸びやかで美しいです。強弱の振幅はあまり大きくありません。

三楽章、美しく上品に歌うオーボエ。Bに入っても大きくテンポは速くならず、荒々しくもなりません。

四楽章、少し速めのテンポです。トゥッティが荒れ狂うようなことにはならず、とても穏やかです。コーダもどっしりと落ち着いた表現でした。

堂々と落ち着いた表現で、オケの美しい音色もとても魅力的でした。
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ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、盛大なヒスノイズの中から美しいホルンの響きが聞こえます。踊るようなオーボエとフルートのメロディ!たっぷりとした歌に溢れた演奏です。トゥッティでは中庸な表現でことさらに金管を強奏させることもなく奥ゆかしい演奏です。

二楽章、強い個性が無いだけに聴いていてのけぞるようなことも無いし、癒されるような音楽になっています。

三楽章、どっぷりと音楽に浸れる安心感があります。

四楽章、終結部のアッチェレランドは凄かった!

イシュトヴァン・ケルテス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ケルテス★★★★
一楽章、強いヒスノイズがあります。美しいホルンの第一主題。勇壮に進む第二主題。充実したトゥッティ。再現部の愛らしいオーボエ。どの楽器も極上の響きで登場します。怒涛のように激しく押し寄せてくる強烈なトゥッティ。とても積極的な表現の演奏です。

二楽章、少しザラつくチェロの第一主題。少しメタリックな響きですが、盛り上がるところでは突進してくるような凄みがあります。

三楽章、しっかりと地に足が付いた主題。Bに入ってテンポが速くなってもがっちりとした演奏です。

四楽章、第一主題のトゥッティもかなりのエネルギー感です。第二主題も大きく歌うことはありませんが、とても熱気があります。コーダは興奮を煽るように少しテンポを上げます。かなり劇的な歓呼で終わりました。

録音はザラつきぎみでしたが、かなり情熱的な演奏でした。厚く燃え上がる演奏は惹きつけられるものがありました。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★★
一楽章、落ち着いて柔らかく美しいホルンの第一主題。ヴァイオリンの経過句も明るく美しいです。第二主題はさらにゆっくりとしたテンポで歌います。とても美しいですし、強弱の動きにも敏感に反応していて締りのある演奏です。ブレインの演奏か、ホルンはとても美しいです。締まりがあって迫力のあるクライマックスです。コーダの木管も愛らしい表現です。クレンペラーの晩年は完全に脱力した演奏になりますが、この頃の演奏には力があります。

二楽章、テンポの動きなども少しはありますが、感情を込めた大きな起伏はありませんがその分、盛り上がる部分は雄大な広がりがあります。

三楽章、表情があって、可愛いオーボエの主題。Bでテンポは速くなりますが、すごく速いテンポではありません。

四楽章、弱音で演奏される第一主題にも表情があります。穏やかで安らぎ感のある第二主題。激しいところはかなり激しく振幅の大きな演奏ですが、アンサンブルは整っていてキチッとしています。とても爽やかに終わりました。

愛らしい木管から激しいトゥッティまで、振幅の大きな演奏でした。最晩年の脱力した演奏とは別人のような演奏でした。
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マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2008年ライヴ

ヤンソンス★★★★
一楽章、柔らかく歌うホルンの第一主題。フルートも豊かに歌います。透き通るような弱音のヴァイオリンの経過句。とてもしっかりと表情が付けられています。楽しそうで穏やかな演奏です。クライマックスでは大きくテンポを落として刻み付けるような演奏でした。透明感があって繊細な弱音が特徴です。盛り上がって頂点に入る前に少し間を空けることがよくあります。コーダのホルンが残照のように響きます。木管は活発に動きます。

二楽章、少し弱く始まって探りながら進むような第一主題。寂しげなホルンと木管。引き締まって美しい第二主題。美しく良く歌いますが、強弱の振幅はあまり大きくありません。

三楽章、夢見心地のようなオーボエ。どの楽器も豊かに歌います。Bに入るとシャープに敏感に動く弦。

四楽章、ゆったりと進む第一主題。第二主題に入ると僅かにテンポを落としました。コーダ強く湧き上がるような歓喜では無く制御された落ち着いたものでした。

よく歌う演奏で、繊細な弱音が魅力的な演奏でした。反面ffもの爆発は無く制御された感じで、もう少し解放されても良かったんじゃないかと感じました。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

ショルティ★★★★
一楽章、柔らかく揺れるような第一主題。粘っこく歌う第二主題。テンポの大きな動きは無く、カチッとしたテンポの中で音楽が進んで行きます。金管はいつものようにビンビンと鳴ります。滑らかな弦がとても美しいです。

二楽章、ゆっくりとしていますが、あまり憂いを感じるような表現ではない第一主題。暖かく孤独感もあまり感じさせないホルン。滑らかな木管の第二主題。短い音符で強く入ってくる金管の思い切りの良さはこのコンビの特徴です。

三楽章、豊かに歌う木管の主題。Bに入ってもテンポはほとんど速くなりませんが、早いパッセージを軽々と演奏するオケの能力の高さはさすがです。

四楽章、淡々とサラッと演奏される第一主題。トゥッティと第一主題の対比はとても大きな振幅でこれもオケのパワーを見せつけるような表現でした。ジワジワと力が湧き上がるような第二主題。コーダへ向けて少しずつ力がこみあげるような盛り上げはなかなか見事でした。コーダは少しアッチェレランドして輝かしい終結でした。

良く歌っていて、オケの能力も非常に高く完璧な演奏でしたが、なぜか強く共感できる演奏ではありませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第2番3

たいこ叩きのブラームス 交響曲第2番名盤試聴記

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★★☆
一楽章、豊かな響きです。朝比奈はムリな弱音を要求せずにオケが美しい音色を維持できる範囲で音楽を作っているようです。テンポの変わり目の移行部分では自然なテンポの動きがあります。ダイナミックレンジはそんなに広くはありません。意外と淡々と過ぎていったような・・・・・。

二楽章、

三楽章、冒頭の木管の絡みに弱音の締まった緊張感が感じられませんでした。緊張感は必要ない部分なのかも知れないけど・・・・・。

四楽章、速めのテンポです。テンポを落とす部分ではぐっと落とすので豊かな旋律を聴くことができます。終結部ではかなりテンポを速めました。これは効果的な盛り上がりを演出しています。

カルロ・マリア・ジュリーニ/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

ジュリーニ★★★☆
一楽章、とても豊かに美しく優雅に歌う第一主題。ゆっくりと感情を込めて演奏される第二主題。テンポの動きもあって、とにかく良く歌う演奏です。途中で何度も音が飛びます。クライマックスでテンポを落として深く刻み付けるような濃厚な表現もあります。波が押し寄せるような豊かなコーダの弦。

二楽章、ここでもゆっくりとしたテンポで感情のこもった第一主題です。第二ヴァイオリンの経過句もとても豊かな表現です。第二主題は涼やかな木管が美しいです。

三楽章、この楽章でも豊かに歌うオーボエの主題。主題を繰り返す前に感情の赴くままと言う感じで、大きくテンポを落としました。Bでははなり豪快に演奏する弦。

四楽章、第一主題もとても良く歌います。トゥッティは少し金属的な響きがします。生き生きと動く木管。音楽が有機的に結びついている感じがします。コーダは攻撃的なくらい激しい盛り上がりでした。

すごく良く歌う演奏で感情の振幅も大きくエネルギーもある演奏でしたが、何度も音が飛ぶのがとても気になりました。また、金属的な響きも作品にはあまり合っていないように感じました。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/デンマーク放送交響楽団

ホーレンシュタイン★★★☆
一楽章、ふくよかで豊かなホルンの第一主題。奥ゆかしく歌う第二主題。突然トランペットが突き抜けて来ます。色彩感は淡く水彩画か墨絵を見ているような感じです。ここぞというところでトランペットが突き抜けてくるあたりはポイントをしっかりと押さえているようにも感じます。なかなか個性的な演奏です。

二楽章、悲しさを強く感じさせる演奏ではありません。ホルンも孤独感はあまりありませんでした。テンポはゆっくり目です。第二主題も遅いテンポで静寂感があります。

三楽章、独特の歌ですが良く歌うオーボエ。Bに入ると空気を切るような弦。テンポの動きもあってとても豊かに歌います。

四楽章、ゆったりとしたトゥッティ。テンポが遅い分穏やかに聞こえます。厳しい表現が無いのですが、その分おおらかで雄大に感じます。コーダでもトランペットが突き抜けてきます。

全体にゆったりとしたテンポでおおらかな表現で雄大な演奏でした。
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ジェームズ・ジャッド/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ジャッド★★★
一楽章、ゆったりとした冒頭。ふくよかなホルンの第一主題。清涼感のあるヴァイオリン。あまり音楽に抑揚が無い感じで、第二主題も平板でした。間をとったりして、次第に歌うようになりました。展開部のクライマックスも絶叫することなく落ち着いていますがテンポをゆっくりさせチューバの響きが印象的で厚みを感じさせるものでした。コーダもゆったりとした安らぎのある穏やかな表現です。

二楽章、薄い響きのチェロの第一主題。あまり深い表現はありませんが、美しい演奏です。第二主題も自然に流れて行きます。

三楽章、強い主張はしませんが、美しいオーボエの主題。Bは強弱の振幅が大きく激しさもありました。戯れるような弱音がとても美しいです。

四楽章、凄く抑えた弱音で演奏される第一主題。続くトゥッティはあまり力を入れずに軽く演奏します。第二主題も熱くならず穏やかです。コーダの最後だけ少し熱くなりました。

弱音の美しさを追い求めた演奏のような感じで、トゥッティでもほとんど力を抜いて穏やかな演奏でした。美しさを求めるあまり、表現の深みがあまり無かったのが残念でした。
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リッカルド・ムーティ/ニューヨーク・フィルハーモニック

ムーティ★★
一楽章、冒頭から音揺れとノイズです。画質音質ともあまり良くありません。感情のこもった第二主題。クライマックスはあまり激しさが伝わって来ません。コーダに入ってビブラートをかけるホルン。

二楽章、大きな抑揚を付けて歌う第一主題。

三楽章、速いテンポで歌うオーボエの主題。録音による問題か強弱の変化はあまり分かりません。テンポの動きや間があったりして大きく歌います。

四楽章、この楽章もテンポは速めです。次々に楽器がつながっていく部分のアンサンブルはなかなか良いです。第二主題はゆったりとして豊かな歌です。壮大なコーダでした。

感情の込められた豊かな表現と壮大なコーダなど聴きどころは多かったようには感じるのですが、録音が悪く全体像を把握するのは困難です。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー