R・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」ベスト盤アンケート
たいこ叩きのR・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」名盤試聴記
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1973年
★★★★★
導入部、重量感のあるパイプオルガン。テヌートで演奏されるトランペット。二つの音は速く間隔を詰めて演奏します。硬質なティンパニ。色彩感豊かで最後に残るパイプオルガンも鮮明です。
世界の背後を説く者について、推進力のある冒頭。多声的で柔らかく伸びやかな弦のコラール。その後大きく盛り上がり、カラヤンのスタジオ録音らしく完璧なバランスの演奏です。
大いなる憧れについて、爽やかな響きで、豊かな表現の弦。色彩感もとても豊かです。カラヤンのライヴを聞くようなスピード感のある演奏です。
喜びと情熱について、オケ全力投球するような凄みがあります。溢れ出すような豊かな弦。トロンボーンが強く抜けて来ます。
墓場の歌、とても濃厚に歌うオーボエ。とても豊かな色彩のパレットです。他の演奏とは格が違うような感じがします。
学問について、凄く音量を落としたコントラバス。強弱の振幅もとても大きいです。後半の動きのある部分のも木管も通常よりも音量を落としてさりげなく演奏するのもなかなかです。
病より癒え行く者、伸び伸びと鳴り響くトロンボーン。すごい情報量です。前のめりでスピード感と凄みがあります。集中力もとても高いと思います。
舞踏の歌、艶やかで伸びやかなヴァイオリンの美しいソロ。色気たっぷりの濃厚なソロです。トゥッティの物凄い情報量と弓をいっぱいに使うような弦のスピード感と全開の金管のパワーは凄いです。
夜の流離い人の歌、嵐のように渦巻くトゥッティ。弦だけになるとこれまでの嵐が嘘のように静まります。
絶頂期のカラヤンとベルリンpoの演奏にあっぱれです。前のめりで凄みのある表現。物凄く振幅の大きな演奏で、表現もとても豊かでした。この曲のベストだと思います。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団
★★★★★
導入部、超低域を含んでゴロゴロと力強いパイプオルガン。割とシャープなトランペット。続く二つの音は豪快に金管が鳴って間を開けて演奏しています。ミュートしてゴムが弾むように力強いティンパニ。分厚く豪快に鳴り響くトゥッティは爽快でもあります。
世界の背後を説く者について、混沌とせずに非常に明快です。柔らかく伸びやかな弦のコラールは非常に美しい。
大いなる憧れについて、メロディをくっきりと浮かび上がらせます。コントラバスも動きがはっきりと聞き取れます。
喜びと情熱について、とても良く交通整理されていて、分かりやすい演奏です。トロンボーンもほぼ全開です。
墓場の歌、あまり歌うことはなく、どちらかと言うとメリハリをはっきりと付けてダイナミックで明快な演奏をしています。
学問について、コントラバスの分厚い響きに他の楽器が乗ります。とても色彩感が豊かで眩いほどです。
病より癒え行く者、背後で複雑に動く弦がありますが、金管がくっきりと浮かび上がります。自然の動機のトゥッティは凄く分厚い充実した響きでした。トランペットやクラリネットもくっきりと明快です。
舞踏の歌、美しいヴァイオリン独奏。いろんな楽器の動きが手に取るように分かります。豪快に鳴るオケのパワーに圧倒されます。もの凄いエネルギーです。
夜の流離い人の歌、衝撃音よりもしっかりと音程が聞き取れる鐘。極端な弱音で演奏されることはありません。弱音でも明快に楽器を鳴らします。
オケを豪快に鳴らした明快な演奏で、ダイナミックです。とにかくオケが高性能です。これだけ豪快に鳴らし切られると圧倒されます。素晴らしい演奏でした。
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年
★★★★★
導入部、かなり低い音も含んでいるパイプオルガン。間接音を含んで遠くから響くようなトランペット。続く二つの音は速めです。ティンパニは軽く遠目に響きます。トゥッティでも全開にはならず、テンポも速めで力みの無い演奏です。
世界の背後を説く者について、静寂感の中から弦のトレモロが響きます。弦のコラールは間を取ったりして歌います。とても美しいです。とても積極的な表現意欲を感じさせる演奏です。夢心地のような美しさです。
大いなる憧れについて、コントラバスは残響を伴っていて動きははっきりしません。
喜びと情熱について、波が押し寄せるように浮き沈みする表現。見事に鳴り響くオケ。ベルリンpoの機能美を見せつけるようです。
墓場の歌、静かですが、複雑に動くパートがさらりとやってのけます。
学問について、重量感のあるコントラバス。モノトーンのようなマットな色彩からヴァイオリンが登場してから華やかで色彩感が豊かになります。
病より癒え行く者、トロンボーンも抑え気味でマットな響きです。自然の動機のトゥッティは巨大な響きでした。トランペットは奥まったところから軽く演奏されるのが次第に強くなります。
舞踏の歌、ニュートラルですが、僅かに艶を感じさせるヴァイオリン独奏。とても表現が積極的でカラヤンがR・シュトラウスを得意にしていたのが分かる気がします。自信を持って表現しています。洪水のように溢れ出す豊かな音。トゥッティのエネルギー感は凄いものがあります。
夜の流離い人の歌、硬質な鐘の響き。広い空間を感じさせる弦。静寂の中に響く弦とクラリネット。このクラリネットも豊かな表現です。
導入部をこれ見よがしの演奏はせずに、後に続く部分を充実した表現で演奏しました。弱音の静寂感とトゥッティの巨大な響きの対比も見事でした。カラヤンの自信に溢れた表現も素晴らしかったです。
ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
導入部、割と近く、明快に響くトランペット。抑え気味のトゥッティ。音像大きく柔らかく伸びやかなティンパニ。ゆっくりと降りてくるトロンボーン。ゆったりと大きいスケールの演奏です。
世界の背後を説く者について、伸びやかで豊かに歌う弦のコラール。ロスpoの弦がとても分厚く伸びやかです。
大いなる憧れについて、デッカの優秀な録音で、細部まではっきりと聞こえます。とても立体的で生き生きとしています。
喜びと情熱について、明快な動きのホルン。とても表現が積極的です。トロンボーンやチューバもくっきりと浮かび上がり濃厚な色彩感です。
墓場の歌、清涼感のある弦。この頃のメータの表現意欲が旺盛で生き生きとした演奏がとても良いです。
学問について、活発で生気に溢れた躍動感のある演奏です。
病より癒え行く者、オケが一体になって動くアンサンブルは見事です。演歌のこぶしが回るようなねっとりとした濃厚な表現です。もうこれ以上表現を付けられないと思うくらい表現し尽くされています。
舞踏の歌、艶やかでクローズアップされたヴァイオリンのソロ。ソロも木管もとても豊かな表情です。活発に舞い踊ります。濃厚で鮮明な色彩。強く突き刺さるトランペット。分厚く情報量の多いクライマックス。
夜の流離い人の歌、情報量の多いトゥッティ。表現意欲も旺盛でとても豊かに歌います。
この頃のメータを象徴するような豊かな表現の演奏でした。ねっとりとした濃厚な表現はなかなか聞き応えのあるものでした。
アントニオ・パッパーノ/ローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団
★★★★★
導入部、深みのあるパイプオルガン。遠くから響くトランペット。二つの音をしっかりと分けて演奏します。オケは少し離れたところにいて、トゥッティでもはっきりと弦が聞えます。
世界の背後を説く者について、淡々とした弦のコラール。
大いなる憧れについて、爽やかな響きの弦。僅かに遠い金管。
喜びと情熱について、奥まったホルン。起伏が大きく濃厚な色彩と積極的な表現です。響きも引き締まっています。
墓場の歌、清涼感があって美しい弦。
学問について、深みのあるコントラバスとその上に乗る高弦のサラサラとしたコントラストも見事です。
病より癒え行く者、鮮明な録音もあって、細部の動きも明快です。トランペットは明るくくっきりとしています。
舞踏の歌、たっぷりとお色気たっぷりのヴァイオリンのソロ。熱気のあるトゥッティも見事です。
夜の流離い人の歌、鮮明な色彩と彫りの深い表現。弦だけになるとゆったりとしたテンポでロマンティックな表現です。
積極的な表現で、鮮明な色彩感と熱気を感じさせるトゥッティと聞き所の多い演奏で、なかなか良かったです。
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ファンホ・メナ/BBCフィルハーモニック
★★★★★
導入部、かなり力強いパイプオルガン。二つの音は分かれています。速いテンポのティンパニ。全体に速いテンポであっさりと演奏します。
世界の背後を説く者について、鮮明で情報量が多いです。テンポが揺れて歌う弦のコラール。細部の動きも克明に表現されます。
大いなる憧れについて、程よく歌い、起伏にとんだ立体的な演奏です。
喜びと情熱について、表現意欲が旺盛で、大きな起伏のある演奏です。トロンボーンはあまり突き抜けて来ませんが、オケが一体になった盛り上がりはなかなかです。
墓場の歌、くっきりと浮かび上がる木管。
学問について、コントラバスはゴリゴリと硬質な響きです。登場してくるパートがとても鮮明に描かれています。
病より癒え行く者、うごめくような低音楽器の動きが克明に描かれています。激しさもあります。
舞踏の歌、くっきりとしていますが、速めのテンポであっさりと進むヴァイオリンのソロ。動機の変化に伴って雰囲気がガラッと変化します。激しいトゥッティ。
夜の流離い人の歌、激しいまま突入します。次第に落ち着いて弦だけになると伸びやかで広大な雰囲気です。ヴァイオリンのソロも豊かに歌います。
これ見よがしな導入部では無く、作品を全体として捉えた演奏で、表現の振幅もとても大きく起伏に富んだ演奏でした。
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ルドルフ・ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデン
★★★★★
導入部、トゥッティをかなり抑えて演奏しています。ティンパニは硬くミュートされたような音です。三度目のトランペットの後は速いテンポであっさりとした演奏でした。
世界の背後を説く者について、速めのテンポであっさりと演奏される冒頭。柔らかい弦のコラールですが、あっさりとしていて大きく歌うことはありません。
大いなる憧れについて、激しい起伏は無く、比較的穏やかな表現ですが最後で急激に盛り上がりました。
喜びと情熱について、この部分はティンパニのクレッシェンドも含めて動きもありかなり激しい表現です。
墓場の歌、あっさりとしたオーボエ。
学問について、かなり抑えたコントラバス。
病より癒え行く者、ここではかなりオケを開放して強い響きの自然の動機でした。トランペットのハイトーンは少し苦しそうでした。かなりエネルギッシュです。
舞踏の歌、大きな表現は無く、自然に流れていくヴァイオリンのソロ。オケが一体になって動く感じはとても見事です。トゥティのパワー感もなかなかです。激しく吠える金管。
夜の流離い人の歌、強く鳴らされる鐘。弱音をことさら抑えることなく豊かな表現です。
あっさりとした表現があったかと思うと激しく吠える金管もあったりと、とても多彩な表現でした。さすがにR・シュトラウスを得意にしていたケンペらしい演奏でした。
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クラウス・テンシュテット/シカゴ交響楽団
★★★★★
導入部、シカゴsoらしく明快に鳴り響く金管。ティンパニも重量感があります。堂々とした演奏でした。
世界の背後を説く者について、イコライザーでいじってあるようなメタリックな響きの弦のコラール。多声的な響きは感じられませんでした。
大いなる憧れについて、ザラザラとした響き。唸りを上げるコントラバス。かなり起伏の激しい演奏です。
喜びと情熱について、粘っこい表現です。トロンボーンも思いっきり突き抜けて来ます。かなり金管が吠えます。
墓場の歌、オーボエや弦もくっきりとしていて濃厚です。
学問について、後半の木管や弦は活発な動きで躍動感があります。
病より癒え行く者、オケはかなり積極的に演奏しています。自然の動機の前はかなりテンポを動かしました。巨大な自然の動機。登場する楽器も明快な色彩で描かれていて濃厚です。
舞踏の歌、一音一音に感情が込められたようなヴァイオリンのソロ。豊かな表現で活発に動くオケ。生き生きとしてとても活発です。クライマックスで全開になります。
夜の流離い人の歌、激しく金管が吠えます。感情のこもった弦。
テンシュテットらしい振幅の大きな、感情のこもった濃厚な表現の演奏でした。オケもテンシュテットの要求に見事に応えています。
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