カテゴリー: ブルックナー:交響曲第7番名盤試聴記

ブルックナー 交響曲第7番

ブルックナー 交響曲第7番ベスト盤アンケート

たいこ叩きのブルックナー 交響曲第7番名盤試聴記

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、奥行き感とホールの広さを感じさせる伸びやかな冒頭です。自然な息づかいを感じさせます。第二主題のオーボエとクラリネットのピンポイント感と弦楽合奏の広がりの対比も素晴らしいものでした。とても静寂感があります。このブルックナーの曲集の中でもこの録音は遠近感や広がりが良いです。再現部の前の全合奏はゆったりとしたテンポですごい咆哮でした。コーダは神聖な世界にたどり着いたような爽快感がありました。

二楽章、ふわっと始まり次第に力強くなる主要主題。すばらしく美しい音楽が滾々と湧き出してくるようです。非常にデリケートな表現をオケに要求しているようで、もの凄い集中力ですが出てくる音楽はとてもしなやかです。宇宙が鳴り響くような巨大なスケールのトゥッティ。音の洪水のように炸裂するクライマックス。音楽の深みを感じさせるワーグナーチューバ。音楽は常に柔らかく優しい。天に昇って行くような最後でした。

三楽章、ゆったりと波にでも乗っているかのようにしなやかに揺れる音楽です。優しくのどかでどこまでも続く草原を思わせる中間部です。チェリビダッケの音楽は、自然や生命、果ては宇宙までも感じさせるものです。

四楽章、生命感があって躍動的で生き生きしています。第三主題では大きくテンポを落としました。見事なバランスでコーダを演奏しました。

自然や生命に対する賛美が随所に表現されたすばらしい演奏でした。

オイゲン・ヨッフム/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、豊かに鳴るチェロの第一主題はとてもゆっくりと感情を込めるようにダイナミックの変化も大きく演奏されます。第二主題ではテンポを上げ、オーボエとクラリネットが濃密な音色で絡み合います。滑らかな弦がとても美しい。第三主題でもとても美しいヴァイオリンが印象的です。コンセルトヘボウらしくとても濃厚な色彩で音楽を描いて行きます。トゥッティの強さよりも全体の静寂感が印象に残る演奏で、とても静かな感じがします。展開部のチェロの旋律もとてもゆっくりとしたテンポでした。コーダも全開ではなく少し控え目で美しい演奏でした。

二楽章、すごく感情のこもった主要主題が柔らかくとても美しい。ヨッフムの最晩年の枯れた境地が体から自然に出てきているような、とても優しい音楽に心が打たれます。Bも力みの全く無い自然体の柔らかい音楽ですが、しっかりと感情は込められています。この部分は長調で書かれていますが、物悲しい雰囲気がとてもすばらしいです。二回目のAは一回目よりも切迫して迫ってきます。弱い波が押しては返ししながらジワジワと迫ってくるような、聴き手を強制しない自然な演奏です。Bの二回目はさらに音楽の振幅が大きくなってまた静まって行きます。三回目のAは大きなクライマックスを迎えますが、ここでもオケが全開になることはありません。とても美しい響きです。ワーグナーチューバが途中から強く演奏してかなり踏み込んだ表現をしました。最後もとても美しく黄昏た雰囲気でした。

三楽章、濃厚な色彩の演奏が続きます。トゥッティでも荒れることなく美しい。テンポも動きます。中間部は適度な揺れがあり美しく歌われます。テンポも自然な動きに身をゆだねることができます。

四楽章、ヴァイオリンのトレモロがとても潤いのある第一主題でした。テンポはよく動きます。爽やかで涼感のある第二主題。私はこんなに美しいブルックナーの7番を聴いたことがないです。第三主題でもオケを咆哮させることはなく、とても美しい音色の演奏が続いています。再現部の第三主題でもテンポが次第に遅くなります。第二主題もよく歌われて美しい。テンポも大きく動きます。コーダの手前で大きくテンポを落としてコーダへ入りました。最後でも絶叫することはなくとても美しく終りました。

ヨッフム最晩年の枯れ切った音楽が自然に体から溢れ出て、それをコンセルトヘボウの高い技術と音楽性によって作り出された超名演だったと思います。こんなすばらしい演奏とめぐり合えることができるからクラシック音楽はやめられない。

ギュンター・ヴァント/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、厚みがあって暖かいチェロの第一主題。繊細で艶やか、とても感情がこもっていて引き込まれます。第二主題では突然音量を落とす部分もありました。木管楽器は透明感のある清らかな響きです。第三主題の冒頭は抑制的でした。展開部のチェロの旋律の後ろでティパニが絶妙の音色と音量でクレッシェンド、デクレッシェンドしました。コーダのトゥッティも美しい響きでした。

二楽章、Aは伸びやかで柔らかい弦の響きで落ち着いた荘厳な演奏です。オケのアンサンブルも抜群の精度ですばらしい。Bも繊細な表現で大切なものをそっと丁寧に扱うような心のこもった演奏です。Aの二回目は一回目よりもさらに分厚い響きで始まり、金管が加わり抑制はされていますが、濃厚な表現になります。Bの二回目も一回目よりも厚い響きでこの世のものとは思えないような柔らかさです。Aの三回目は次第に力強くクレッシェンドして頂点を築きますが、金管は突き抜けることはなく、バランスは保たれています。ワーグナーチューバが豊かな表現で厳粛な音楽を奏でます。曇り空の雲の裂け目から太陽の光が差し込むような神の降臨を感じさせるワーグナーチューバのすばらしい表現です。

三楽章、いろんな楽器が入り混じって怒涛のトゥッティ。すごい情報量と力強い響きです。中間部は哀愁を感じさせるような少し寂しげな雰囲気が漂います。最後は広大なスケールのトゥッティに圧倒されます。

四楽章、軽やかな第一主題。伸びやかな第二主題。再現部も弱音から強奏まで美しい演奏が続きます。テンポを落としたコーダでも金管が突き抜けてくることはなく、非常にバランスの良いままに終りました。

細部までコントロールが行き届き、大自然や神の降臨をイメージさせるすばらしい演奏でした。

朝比奈 隆/東京都交響楽団

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一楽章、弱い弦のトレモロに乗って歌うチェロの第一主題。第一主題が高音楽器に引き継がれるとサーッと視界が開けるような感覚になりました。シルキーで美しい弦。第三主題の前はそんなにritはしませんでした。良く通るフルート。オケの技術はとても高いです。再び第一主題が演奏される少し前でかなりテンポを落としました。金管も充実した響きです。コーダの前の第一主題もすごくゆっくりと演奏しました。コーダも非常に遅いテンポです。すばらしい金管の強奏でした。

二楽章、柔らかい弦の響きがとても心地よい。(B1)に入る前の重いテューバに支えられた金管のアンサンブルがとても美しかった。1970年代の日本のオケでは考えられないような美しく柔らかく伸びやかに鳴る金管はとてもすばらしい。6連音符に乗った主題が次第に盛り上がるところは、次から次から音が湧き出すように豊かでした。ワーグナーテューバが登場して雰囲気が一変します。遠い彼方に飛んで行くような最後でした。

三楽章、割と強めに入るトランペット。かなり切迫した雰囲気の演奏です。速目のテンポで演奏されています。屈託の無い金管の響きが心地よい。ライヴとは思えないすばらしい響きです。朝比奈とオケが一体になって音楽を作り上げています。

四楽章、速目のテンポで演奏される第一主題。少しテンポを落とした第二主題。第三主題はすごくテンポを落としました。この部分ではトロンボーンが凄い鳴りをしています。オケの響きはすばらしく美しい。展開部の第三主題もすごくテンポが遅い。テンポは大きく動いていますが、必要以上にこねくり回すこともなく、自然な流れの演奏で、朝比奈の演奏と言うより作品そのものを聴かせているような演奏です。コーダに入り一旦テンポを落として徐々にテンポを上げてクライマックスへ向かいます。

自然な流れで、ライヴとは思えない完璧な演奏はすばらしかった。

ロヴロ・フォン・マタチッチ/スロベニア・フィルハーモニー管弦楽団

マタチッチ ブルックナー交響曲第7番★★★★★
一楽章、豊かなホールの響きで音が膨らみます。思いっきり感情をぶつけてくる第一主題です。ゆったりと歌われる第二主題は第一主題とがらっと表情を変えました。ホルンもとても良い雰囲気を醸し出します。第三主題も豊かな表情です。とてもよく歌っています。強奏部分は豪快に鳴らしますし、コントラバスがしっかりと支えていて骨格がしっかりしています。美しい歌と音の洪水にどっぷりと浸っていられます。壮絶なコーダでした。

二楽章、一楽章から一転して穏やかな主要主題(A)です。この楽章でも切々と歌いながら訴えてきます。強奏部分では一音一音確かめるように確実に演奏します。(B)は比較的速目のテンポですが、テンポを動かして歌います。(A)の二回目もテンポを動かして強く訴えてきます。これだけ作品と同化して感情をぶつけてくる演奏の凄さを感じます。強奏部分は本当に豪快です。これがマタチッチの真骨頂か。壮大なクライマックスでした。ビブラートを効かせたワーグナーテューバ。音楽の起伏が非常に激しい演奏です。天に昇って行くように静かに終りました。

三楽章、遠くから聞こえるようなトランペット。ホールに響く残響が尾を引くように音楽を盛り立てます。途中テンポを落としてはとてもゆっくりと演奏しました。ティンパニのクレッシェンドがとても効果的です。一転して安堵感のある中間部。天国で奏でられる音楽のような安堵感です。この楽章でもとても良く歌います。(A)に戻ってからも途中でテンポを落としました。

四楽章、弾むようなリズムで始まり、次第に重くなりました。とても良く歌います。テンポもすごく動きます。マタチッチが作品に込める思いの深さを感じさせるすばらしい演奏でした。

ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2010年ライヴ

ハイティンク★★★★★
一楽章、残響を含んで伸びやかで雄大な第一主題。一音一音慈しむように丁寧な演奏です。潤いのある木管が美しい第二主題。舞い踊るような第三主題。抜けの良いクラリネット、くっきりと浮き上がるフルート。再現部の前のトゥッティは涼しい響きでした。雄大なコーダでした。

二楽章、今にも雨が降りそうな真っ黒な曇天をイメージさせる冒頭の主要主題。Bの直前のワーグナーチューバはこの世のものとは思えないような暗闇の表現でした。Bから一転して明るく穏やかで安らいだ演奏です。また曇天に引き戻すAの再現。非常に神経の行き届いた弱音の表現です。トランペットが登場するといぶし銀のような渋い輝きです。クライマックスは強力なティンパニや弦に覆いつくされるような金管でした。荘厳で祈るような歌のあるワーグナーチューバ。天に昇って行くような美しいホルンで終わりました。

三楽章、締まりがあって密度の濃い主要主題。シャープで美しい響きです。開放されたような穏やかな中間部ですが、音が一音一音立っていて音楽が生きています。

四楽章、躍動的で生き生きとした第一主題。速めのテンポで進み柔らかく穏やかで安らぎを感じる第二主題。力みが無く透明感の高い第三主題。ハイティンクが常任指揮者をしていた時代のコンセルトヘボウの響きに近い深く濃厚な響きになっています。湧き上がるような壮大なコーダ。

大きな表現や主張はありませんが、濃厚で密度の濃い響き、二楽章での祈るようなワーグナーチューバや昇天するようなホルンなど神を感じさせる演奏は見事でした。
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カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1986年ライヴ

ジュリーニ★★★★★
一楽章、冒頭から深い息遣いの歌の第一主題です。とても強い作品への共感が感じられます。第二主題もとても良く歌います。第三主題へ向けてテンポを速め直前でritしました。展開部で演奏されるチェロの旋律も感情のこもった豊かな歌です。同年のスタジオ録音ではもう少し感情は抑えられていたように感じますが、この演奏はかなりはっきりとした感情の吐露があります。

二楽章、強弱の変化を付けて大きく歌う主要主題。一つ一つの音にとても神経が行き届いている演奏です。Bも非常に美しく歌います。Aの二回目はかなり厚い雲に覆われた曇天をイメージさせる演奏です。ワーグナーチューバも荘厳でありながら豊かに歌います。弦や木管がどんどんと重い空気になって行きますが、ホルンによって神が導かれます。

三楽章、ゆったりと伸びやかなスケルツォ主題。金管はかなり強く演奏していますが、美しい範囲です。中間部にはいるとまた豊かに歌います。大きな川の流れのようにゆっくりと流れて行きます。

四楽章、滑らかに滑るような第一主題。何とも感情のこもった第二主題。抑制の効いたコーダでした。

豊かな歌に溢れた美しい演奏でした。作品に対する強い共感が表れたものて、聞いていて引き込まれるような感じがしました。
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サー・レジナルド・グッドオール/BBC交響楽団

グッドオール★★★★★
一楽章、静かなたたずまいの第一主題でとても静寂感があります。ゆったりとスケールの大きな演奏です。第二主題も静かで静止しているようです。澄み切った空気感です。大河の流れのようにゆっくりと自然に流れて行きます。第三主題の前はホルンがかなり激しく咆哮しました。再現部も静寂感と緊張感があります。再現部の第三主題もどっしりとしていてあまり軽々しく動きません。壮大なコーダは見事としか言いようが無いです。

二楽章、こ楽章の主要主題も穏やかでその場に静止しているような感じです。一楽章同様ゆったりと流れる大河のようなたたずまいは非常にスケールの大きなものです。Bは少しテンポが速めですが、ここでも微動だにしない音楽ですが、優雅で美しいです。6連音符に乗って演奏される主要主題は次第にテンポが速くなりクライマックスを迎えます。ティンパニが大きくクレッシェンドします。葬送音楽らしいワーグナーチューバ。美しいホルンでした。

三楽章、遅めのテンポで、ガリガリと刻み付けるような弦。スレルツォ主題からかなり強い金管。がっちりと大地に楔を打ち込んだ上に音楽が成り立っているような強固な構成力。中間部はさらに遅く静かで穏やかです。主部が戻ると再びスケールの大きな主要主題が演奏されます。

四楽章、あまり軽やかさは無く、どっしりとした第一主題。速めのテンポの第二主題はすがすがしい感じです。ホルンが激しい第三主題。コーダに入ってもあまりテンポを落としませんでしたが、最後はゆっくりになってトランペットが響き渡って終わりました。

静寂感に溢れた静かなたたずまいと、地に楔を打ち込んだ上に音楽を構築するような強固なトゥッティとの対比が見事で、壮大でスケールの大きなトゥッティも素晴らしい演奏でした。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★★★
一楽章、ゆったりと深い歌の第一主題。ホールの空間を感じさせる録音でとても美しいです。盛り上がるに従ってテンポを速めました。シルクのように滑らかな第二主題。第三主題の前のトゥッティも充実した美しい響きでした。落ち着いた第三主題。大きな表現は無く正攻法の演奏ですが、響きがとても充実していて非常に美しいです。ゆっくりとしたコーダの高揚感も素晴らしく、見事なバランスの金管も素晴らしいものでした。

二楽章、大きい表現ではありませんが、とても深い主要主題。Bへ入る前のワーグナーチューバは不穏な空気で、分厚い雲に覆われて暗い空のようでした。Bは柔らかく美しい弦が豊かに歌います。音楽は隙間や淀みなく流れ続けます。録音の新しさにもよるものもあるのでしょうが、充実した美しい響きは本当に素晴らしいです。クライマックスは自然な高揚で、力づくではありません。ワーグナーチューバは悲しみに暮れるような表現です。魂が天に昇って行くようなホルンでした。

三楽章、一体になった分厚い弦。伸びやかな金管のスケルツォ主題。トゥッティのエネルギー感は凄いです。静かで穏やかな中間部。

四楽章、ゴリゴリと存在感を示すコントラバス。生き生きと動くクラリネット。祈るように歌う第二主題。第三主題の途中から突然テンポが速くなります。展開部の前のホルンはとても美しい演奏でした。コーダの直前も充実した美しいトゥッティでした。輝かしいコーダでした。

強い主張のある演奏ではありませんでしたが、隙間や淀みもなく流れ続ける音楽、オケが一体になった充実したトゥッティ。どこをとっても見事な演奏でした。特に二楽章の最後の魂が天に昇って行くようなホルンはこれまで聞いた中でも最高の表現でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブルックナー:交響曲第7番の名盤を試聴したレビュー

ブルックナー 交響曲第7番2

たいこ叩きのブルックナー 交響曲第7番名盤試聴記

ニコラウス・アーノンクール/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2007年ライヴ

アーノンクール★★★★☆
一楽章、押したり引いたりしながら涼しげな第一主題。ガット弦を使用しているのでしょうか?ホルンやトランペットが激しく咆哮します。速いテンポで色んな楽器が入れ替わる第二主題。金管はどこでもかなり強く入って来て、少しうるさいくらいです。テンポは速く前へ進む力が強いです。コーダの金管の咆哮も壮絶で気持ち良いくらいに鳴り響きます。

二楽章、ワーグナーチューバの主要主題の後の弦が音の頭を演奏した後すぐに弱く演奏します。悲痛な叫びのような弦。Bはとても速いテンポでしなやかに揺れ動くような演奏です。この楽章でも金管はかなり激しく吹いています。クライマックスで打楽器は入りませんでした。とても動きのあるワーグナーチューバ。空を浮遊するようなホルンで終わりました。

三楽章、速めのテンポで弦も金管も鋭い響きです。この楽章でも金管が吠えてかなり激しいです。主部とは対照的におだやかな中間部はとても良く歌います。

四楽章、この楽章でも速いテンポの第一主題。颯爽と進む第二主題。第三主題はチェリビダッケとは逆にとてもテンポが速くなります。金管も良く鳴らしているのでとても快活な音楽になっています。コーダの前も強烈でした。コーダはトランペットがテヌートぎみに演奏しました。

今まで聞いたことのないような金管の強烈なブルックナーでした。弦も金管も鋭い響きで、今までのブルックナー像とは大きく違う演奏でしたが、この演奏はこれで楽しめました。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団

ヴァント★★★★☆
一楽章、速めのテンポで感情移入を極力抑えるような演奏です。第二主題も粘ることなくサラッと過ぎて行きます。とても誠実で清潔感に溢れた演奏です。かなりクレッシェンドする再現部終盤のティンパニ。整然としていますが、コーダは全開かと思えるほど金管が強く吹きました。

二楽章、無駄な表現が無く、切々と頑なに訴えてくるような感じの演奏です。Bに入る前のワーグナーチューバは不穏な空気が漂います。Bに入ってもテンポの揺れも無く厳格に進んで行きます。精緻な演奏には清涼感さえも感じます。クライマックスへ上り詰める堅固な足取り。そしてクライマックスで炸裂する金管ですが、これもとても統制が取れています。空から神が舞い降りるような美しいコーダのホルンでした。

三楽章、誇張の無い自然体の演奏ですが、吹き荒れる嵐のようなスケルツォ主題です。一転してとても穏やかな中間部です。主部の緊張から一気に開放されます。この表現の変化は素晴らしいです。

四楽章、この楽章でも自然で大きな表現の無い第一主題ですが、美しい響きです。第二主題は速いテンポですが、音量の変化など表現がありました。とても克明で楽器の出入りなどもとても明確で鮮明です。シャープで見通しの良い演奏です。コーダは豪快に金管が鳴って終わりました。

自然体で誇張した表現などは全く無く、作品そのものを聞かせる演奏でした。とても緻密でシャープな演奏で、楽器の動きも手に取るように分かる演奏でしたが、後年のベルリンpoとの録音のような分厚さやスケール感には僅かに及ばなかったように感じました。
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ロヴロ・フォン・マタチッチ/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

マタチッチ★★★★☆
一楽章、すごくゆっくりと感情のこもった第一主題。テンポの微妙な揺れもあります。強烈な盛り上がりでした。かなり激しく咆哮します。第二主題もゆっくりとしています。一つ一つ爪痕を残すような強い音です。コーダも壮大で強烈です。

二楽章、一転して柔らかくしなやかな主要主題。激しい部分はやはりかなりの激しさです。Bに入る前のワーグナーチューバはかなり厚い雲に覆われて暗い空になりました。Bはとても柔らかい表現です。主要主題が戻ってからも金管は強烈です。二度目のBは揺れるような表現で僅かに強弱の変化があります。クライマックスでもトランペットが高らかに主題を演奏しますが録音のせいで荒れた響きになります。ビブラートをかけたワーグナーチューバが歌います。

三楽章、ガツガツと一歩一歩踏みしめるような力強いスケルツォ主題。木管などの細かい動きもとても良く分かります。トゥッティは巨大なスケールです。小節の頭に重点があってとてもリズミックです。中間部はとてもゆっくりとしていてのどかです。主部が戻ると再び巨大で少し暴力的な演奏が現れます。

四楽章、リズミカルで歯切れの良い第一主題の終わりでテンポを遅めます。祈るように美しい第二主題。展開部の第一主題に呼応するトロンボーンがとても美しいです。再現部の第三主題は物凄く激しいです。コーダで遠慮なく絶叫するトランペット。

豪快にオケを鳴らした積極的な表現の演奏でした。普段聞こえない音もたくさん聞こえて新しい発見もたくさんありました。ただ、トゥッティで音が荒れる録音がとても残念でした。
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オトマール・スウィトナー/シュターツカペレ・ベルリン

スウィトナー★★★★☆
一楽章、ふくよかで柔らかい響きの第一主題。自然な歌です。第二主題もうっとりとするような美しい響きです。速いテンポですが、落ち着きのある第三主題。トゥッティでも音が荒れることは無くふくよかな響きを保っています。コーダでエネルギーを解放したような壮大な演奏になりました。

二楽章、静かでしなやかな主要主題。Bはテンポが速めですが、ここでもしなやかな演奏です。何の誇張もありませんので、気が付くとどんどん音楽が通り過ぎます。クライマックスの頂点に入る前のタメなどここぞと言う所で心憎い表現があります。このクライマックスもここまで貯めてきたエネルギーを解放するような壮大なものでした。ワーグナーチューバはかなり速く進みます。ホルンに神は現れませんでした。

三楽章、ゆったりと優しい主要主題。トゥッティは巨大です。心が安らぐ中間部。

四楽章、繊細な第一主題。速めのテンポであっさりと進む第二主題。透明感があって静寂感もとても良いです。第三主題も落ち着いています。再現部の第三主題の最後は大きくテンポを落としました。やはりあっさりと進む第二主題。再現部の第一主題の弦の部分はテンポが速く金管が出る部分ではテンポが遅くなります。コーダに入って一旦大きく落としたテンポを次第に速めてクライマックスへ向かいますが、クライマックスは一楽章のコーダのようなエネルギーを開放するような演奏では無く、金管が控えめな演奏で終わりました。

ふくよかで柔らかく美しい演奏で、透明感がある弱音と、何度か殻を突き破るようなトゥッテイとの対比も見事でしたが、二楽章の最後のホルンに神を感じることができなかったのがとても残念でした。
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サー・コリン・デイヴィス/バイエルン放送交響楽団

デイヴィス★★★★☆
一楽章、とても静かでゆっくりと祈るような第一主題。間を取ったりテンポの動きもあります。清涼感があって美しい弦。第二主題もゆっくりでとても爽やかです。落ち着いて穏やかな第三主題。金管も透明感があって音放れの良いスッキリとした響きでとても心地良いものです。金管全開ですが、すがすがしい響きのコーダです。

二楽章、通常のアダージョではなくスケルツォになっています。この楽章もゆったりとしたテンポです。もったりすることもなく、かといって鋭くなりすぎることもなく、非常に美しい響きの演奏です。中間部もゆっくり目ですが、少し緊張感があって、解放されたような安堵感がありません。

三楽章、ここはアダージョです。ゆっくりと、ゆっくりとそして静かに流れる大河のような主要主題。白波は立たずに穏やかな表面です。Bの直前のワーグナーチューバは黒い暗雲が立ち込めるような雰囲気です。いつくしむように暖かいB。主部が戻るとやはりとてもゆっくりと感情の込められた主要主題です。柔らかく美しい弦。輝かしい金管。ブレンドされた響きはとても美しいです。シンバルが炸裂してトランペットもかなり強く演奏しますが、デイヴィスらしいジェントルなクライマックスでした。速めのテンポのワーグナーチューバ。ゆっくりと天に昇って行くホルンですが、あまり強い印象ではありません。

四楽章、弾みますが、重厚な第一主題。速いテンポで強弱の変化を付け積極的な第二主題。第三主題も激しく荒々しい表現にはならず、ここでもジェントルです。コーダは大きくテンポを落としてから加速します。トゥッティでテンポを落として壮大に終わりました。

ゆったりと落ちつてとても美しい響きの演奏でした。トゥッティでも金管が荒々しく暴走することは無く、常にジェントルな演奏でとても心地良いものでした。
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エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団

インバル★★★★☆
一楽章、柔らかく伸びやかな第一主題。流れるような第二主題。奥行き感があって美しいトランペット。速めのテンポの第三主題。ここまで重量感は無くく軽快な演奏が続きます。展開部のチェロの旋律もとても整っていて、ここまでの印象は凄くシャープで都会的な演奏に感じます。コーダは全開で壮大な演奏でした。

二楽章、ゆったりと伸びやかで静寂感もあります。大きな表現は無く、作品に忠実な演奏です。Bは速めでやはりシャープでブルックナーらしい自然を感じさせる演奏ではありません。演奏事態は見事なアンサンブルと美しい響きなのですが、とにかく涼やかで清涼感に溢れていてブルックナーとは思えません。クライマックスでシンバルは入りませんでした。ワーグナーチューバはふくよかでとても美しいです。最後のホルンは薄くなりながら空へ神が昇って行くようでした。

三楽章、突き抜けるように鋭いトランペットのスケルツォ主題ね金管は屈託無く伸び伸びと鳴り響きます。とても整ったアンサンブルで見通しが良いです。中間部は柔らかい弦が独特の節回しで歌います。

四楽章、リズミカルな第一主題。息の入ったクラリネット。第二主題は速いテンポであっさりと演奏されます。第三主題のフレーズの終わりでテンポを少し落とします。とても充実した美しい響きです。とても良く鳴るオケです。コーダはあまりテンポが遅くなりません。最後も充実した響きで終わりました。

とても美しい充実した響きで、見事なアンサンブルで見通しの良い演奏を聞かせてくれました。感情の入り込む余地は無く、作品そのものを厳格に鳴らそうとしているようでした。ただ、その響きが鋭くブルックナーらしい響きでは無かったように感じました。
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カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、ゆったりと伸びやかな第一主題。高音楽器に移った第一主題ではヴァイオリンの響きがとても美しい。控え目な音量から少しクレッシェンドした第二主題。とても伸びやかで広々とした空間をイメージさせるホルン。第三主題の前は大きくritしました。羽毛のようなヴァイオリンの弱音。かなり強く演奏されたコーダ。

二楽章、この楽章もすごく伸びやかで切々と歌います。(B)は安らぎに満ちた安堵感のある演奏です。音楽を大きく捉えた歌がとても心地よい演奏です。再び戻った(A)の終わりごろにはマイルドなトランペットが聞けました。6連音符に乗せられた(A)の部分では少しずつ少しずつ盛り上がり壮大なクライマックスを演出しました。荘厳な雰囲気のワーグナーテューバです。繊細なヴァイオリン。暗闇にどんどん向かって行くような音楽がホルンに救われて天に昇り終わります。

三楽章、古風な響きの冒頭のトランペット。強奏部分はかなり激しい演奏です。トロンボーンは咆哮と言っても良いような激しさです。中間部はたっぷりと歌います。戻った(A)ではトロンボーンがビーンと言う響きで耳に残る凄い存在感の演奏です。

四楽章、若干遅めのテンポで演奏される第一主題。丁寧に演奏される第二主題。力強い第三主題、金管はかなり強力です。第二主題の再現も強弱の変化がありとても良く歌っています。比較的速めのコーダ、輝かしい終結でした。

とても統制のとれた美しい演奏でした。

クラウディオ・アバド/ルツェルン・祝祭管弦楽団

アバド★★★★
一楽章、静寂の中に細かな動きのある第一主題が提示されます。あまり表情の無い第二主題。次第にテンポを上げて躍動感のある演奏になります。弦は暖かく厚みのある響きですが、金管が入ると鋭いトランペットが目立ってとても鋭角的な響きになりますがその分パリッとしたスッキリとした切れ味になっています。輝かしいコーダでした。

二楽章、アバドの演奏なので、大きな表現はありませんが、整ったアンサンブルで切々と訴えるような演奏です。Bは速めのテンポで歌います。クライマックスはアバドにしてはかなり激しい盛り上がりでした。ワーグナーチューバには神々しさはありませんでした。最後のホルンも朗々と歌います。

三楽章、ガリガリと刻み付けるような主要主題ですが、あまり重量感はありません。ゆったりと穏やかで安らかな中間部。

四楽章、躍動感のある第一主題。静寂感のある第二主題。重量感のある第三主題。重厚で輝かしいコーダはさすがでした。

目立った表現はありませんでしたが、整ったアンサンブルで切々と訴えるような表現や重厚で輝かしいコーダは見事でした。
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セルジウ・チェリビダッケ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1992年ライヴ

チェリビダッケ★★★★
一楽章、ゆっくりとしたテンポで深く感情を込めてたっぷりと歌う第一主題。非常に表現意欲の旺盛な第二主題。第三主題も豊かな表現です。厚みのある豊かな響きです。コーダではかなり思い切って金管に吹かせています。

二楽章、冒頭から良く歌います。Bに入っても音楽は軽くなりません。この遅いテンポでも整ったアンサンブルと厚みのある響きを聞かせます。波が押し寄せてくるようなクライマックス。ワーグナーチューバの後に入るホルンはかなり強く入りました。相当遅いテンポの演奏でしたが、あまり感動はしませんでした。

三楽章、小節の頭を強く演奏する弦。この楽章もかなり遅いテンポです。金管が良く間が持つなと感心します。後に録音するミュンヘンpoとのライヴよりも完成度は低いような感じがします。ミュンヘンpoの時に感じた自然な息遣いやしなやかさが感じられません。中間部もチェリビダッケの微妙な表現は再現されません。かなり剛直な感じの演奏です。

四楽章、とても躍動的な第一主題。この楽章はあまり遅くありません。第二主題に入るとテンポはぐっと落ちて祈るような演奏ですがやはりこの遅さを持て余しているような感じを受けます。第三主題はさらに遅くなります。展開部に入るとまた速めのテンポの第一主題になります。コーダはほとんどテンポを落としません。

遅いテンポの演奏ではありましたが、チェリビダッケの精神性を表現するまでには至らなかったように感じました。38年ぶりのベルリンpoと手兵のミュンヘンpoでは同じように指揮しても短期間では伝わり切らない部分も多かったのではないかと思います。
このリンクをクリックすると動画再生できます。

スタニラフ・スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団

スクロヴァチェフスキ★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで深く歌う第一主題。ホールトーンを含んだ美しい響きです。第二主題の前のトゥッティも伸びやかで美しい響きでした。非常に抑えた音量の第二主題。コーダもゆったりと伸びやかです。トランペットがかなり強く盛り上げます。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで感情のこもった主要主題。テンポも動きます。羽毛のような柔らかさの弱音。混沌とするBの直前のワーグナーチューバ。艶やかで豊かに歌うB。全般にトランペットは強いです。6連音符に支えられた主題は厚みのある低域の上に乗り柔らかい響きです。そしてクライマックスへ向けてトランペットが吼えますが、荒々しさはありません。葬送音楽らしいワーグナーチューバが豊かに歌います。天に上って遠ざかっていくホルン。

三楽章、とても弱い音から始まって、ここでもトゥッティでは強いトランペット。響きは溶け合いませんがかなり強いトゥッティです。下で支える音が強く柔らかい響きの中間部。

四楽章、あまり弾みませんが豊かな残響を伴って美しい第一主題。速めのテンポであっさりと進む第二主題。トランペットが入らないので、比較的大人しい第三主題。コーダもトランペットが強く最後まで音を残しました。

消え入るような弱音から、トゥッティのトランペットの炸裂まで、とても強弱の振幅の大きな演奏でした。大きな表現はありませんでしたが、残響を伴った美しい響きでした。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

ショルティ★★★★
一楽章、サラッとした肌触りの弦が美しい第一主題。第二主題はとても弱い音で始まりました。テンポが遅くなります。金管はショルティ/シカゴsoにしては抑え気味です。第三主題も力が抜けた柔らかくしなやすなものです。この演奏は弱音がとても美しくいつものシカゴsoのはち切れんばかりの金管の強奏はいまのところありません。展開部のチェロの旋律も良く歌います。どっしりと地に足が付いた演奏です。一体になって動くアンサンブルの精度はさすがです。コーダはとてもゆっくりと始まり少し加速して大きな盛り上がりで終わりました。

二楽章、静かに歌う主要主題。弱音の緩やかな美しさに重点を置いている演奏のような感じがします。この楽章もとてもゆっくりとしたテンポで落ち着いた演奏です。Bはテンポの揺れも伴って豊かに歌います。自然に主部へ戻って行きます。厚みがあって豊かな弦。二度目の主部の最後の金管はシカゴsoらしい見事な咆哮でした。クライマックスも巨大なものでしたが、トランペットが軽々と鳴り過ぎているようで、浅い感じがしました。たっぷりと歌うワーグナーチューバ。最後のホルンに神は現れませんでした。

三楽章、ゆったりとしたテンポでビーンと鳴る金管。中間部はさらに遅く安らかな演奏ですが感情のこもった歌です。屈託無く鳴り響く金管はとても気持ち良いものです。

四楽章、落ち着いていてあまり弾まない第一主題。深く語りかけてくるような第二主題。活発な動きのある第三主題。展開部は軽く弾む演奏でした。再現部に入って第三主題は重量感のある演奏になります。軽々と鳴り響く金管はやはりこの演奏の魅力になります。ゆっくりとしたテンポからどんどん加速して充実した響きでコーダを終えました。

軽々と鳴り響く金管がとても気持ちよく、弱音にもとても神経を使った演奏でダイナミックの幅も大きい演奏でした。また、アンサンブルの精度も見事なものでしたが、何故か統一感が無かったような感じがしました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブルックナー:交響曲第7番の名盤を試聴したレビュー

ブルックナー 交響曲第7番3

たいこ叩きのブルックナー 交響曲第7番名盤試聴記

オイゲン・ヨッフム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1974年ライヴ

ヨッフム★★★☆
一楽章、静かで暗闇の中に響くような第一主題。力みの無い穏やかな第二主題。活発な動きを表現する第三主題。展開部のチェロの旋律は暖かみがありました。トゥッティは厚みのある響きですが、とても穏やかで包み込むような響きです。弱音部分はとても静寂感があって、暗闇の中にぽつんと明かりが灯るような感じです。コーダはトランペットのバランスが弱く録音されているようで、激しく演奏していてもそれが届いて来ないのだと思いました。

二楽章、重厚で暖かい主要主題。Bは流れるようにサラサラと過ぎ行く音楽です。柔らかく包み込むような響きがとても心地良いです。力みが無く自然な音楽の流れに身をゆだねているような演奏で、作為的な部分は一切感じません。クライマックスでのトランペットはとても遠いです。最後のワーグナーチューバからホルンに受け継がれる部分は柔らかくとても美しいものでした。

三楽章、トランペットが突き抜けて来ないので、荒々しさは感じません。ちょっと重い感じがあります。

四楽章、軽やかな動きの第一主題ですが、テンポの動きで重くなる部分もあります。伸びやかに内面から歌うような第二主題。重厚な第三主題。湧き上がるようなコーダ。ここでもトランペットは遠く大きな盛り上がりは感じません。

柔らかく包み込むような暖かい響きで自然な流れの演奏でした。ただ、トランペットが遠く、激しさなどは全く伝わって来ないのが残念でした。
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オットー・クレンペラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

クレンペラー★★★
一楽章、乾いた響きの第一主題ですが、かなり積極的に歌っています。リズミカルに歌う第二主題。第三主題の前は盛り上がりに合わせてテンポを落とし、そのまま第三主題に入りました。第三主題も活発な動きがあります。展開部のチェロの旋律も表現意欲のある演奏でした。コーダは速いテンポで始まってトゥッティからテンポを遅くしてかなり強く演奏しました。

二楽章、主要主題も大きな強弱の変化を付けて表現します。クレンペラーのことを即物主義と言う人もいますが、この演奏を聞くとかなり感情移入があって即物主義とは違うような感じがします。Bも微妙なテンポの動きがあって歌います。クライマックスもかなり激しいですが美しい演奏ではありません。最後のホルンはあまりにも現実的過ぎます。

三楽章、物々しい主要主題。同じリズムを繰り返す部分で一旦音量を落としてクレッシェンドしました。コントラバスやティンパニがかぶってきます。一転してゆったりと安らぎを感じさらる中間部。主部が戻るとかなりいかつい表情の演奏で、威圧的です。

四楽章、第一主題の最後でテンポを落とします。ゆっくりと優しい第二主題。第三主題はまた物々しい表現です。第一主題の再現ではテンポが大きく動きます。スケールの大きなコーダでした。

即物主義と言われるクレンペラーですが、テンポの動きや積極的な歌もあって即物主義のイメージとは違う演奏でした。ただ、二楽章最後のホルンがあまりにも現実的だったのと、響きに美しさが無かったのが残念でした。
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ロベルト・パーテルノストロ/ロイトリンゲン・ヴュルッテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★
一楽章、非常に弱い弦のトレモロ、速目のテンポでも積極的な表情が付けられた第一主題。トランペットに比べて弱めなホルン。大聖堂の豊かな響きが音楽の合間に響きます。アンサンブルが時折乱れます。響きも薄く、ブルックナーの音楽らしくはありません。アマチュアかと思わせるフルート。トランペットが登場すると弦楽器の響きの薄さが際立ちます。全体にフワッとした響きからトランペットだけが異常に突き抜けてきます。

二楽章、大聖堂の響きを伴って柔らかな響きです。すごく編成が小さいように感じる音の薄さ、弦の弱弱しさ。パーテルノストロは強い主張をすることなく、楽譜をひたすら音に変えていっているようで、アクの強い演奏ではないので、初めてこの曲を聴く人には良いかも知れませんが、オケの技術的な面がどうしてもひっかかります。クライマックスでもトランペットがとても強かった。

三楽章、この楽章でもトランペットが異常なバランスで突き抜けてきます。トロンボーンやホルンはほとんど聞こえません。残響はすごい響きで引き込まれそうになります。中間部はのどかな雰囲気でした。あまりのトランペットの強さに辟易としてきます。

四楽章、速目のテンポです。トランペット以外は溶け合った柔らかい響きなのですが、トランペットだけが浮いています。ホルンなどは豊かな表情があって美しいです。他のパートは表情付けもあるようなのですが、一本調子のトランペットに支配された演奏になってしまったのは残念でした。

リッカルド・ムーティ/ミラノスカラ座フィルハーモニー管弦楽団

ムーティ★★
一楽章、ゆっくりとしたテンポでたっぷりとした歌で主題の中でもテンポが動きます。とても感動的な歌です。第二主題に入っても弦の豊かな歌です。第三主題の前はあまり大きな盛り上がりではありませんでした。とても良く歌う演奏です。ゆっくりと堂々としたコーダでした。

二楽章、この楽章も遅めのテンポで音量を落とした弦が美しいです。Bも柔らかく美しい弦が控えめに歌います。主要主題の再現の後半あたりからテンポが少し速くなりました。Bの再現ではテンポが動きます。溢れ出すようなクライマックス。ワーグナーチューバの「葬送音楽」は速めのテンポですが、良く歌いますが神を感じさせる演奏ではありません。低く空を飛ぶようなホルン。

三楽章、トゥッティのパンチ力はなかなかです。トランペットとトロンボーンが旋律を演奏した後同じリズムを繰り返す部分で音量を落とします。伸びやかでのどかな中間部。

四楽章、あまり弾まず躍動感に乏しい第一主題。速いテンポで淡々と演奏される第二主題。途中から遅くなる第三主題。金管はあまり強くなく、柔らかい響きです。かなり頻繁にテンポが動きます。コーダもあまり大きな盛り上がりではありませんでした。

良く歌い、テンポの頻繁な動きなど、ムーティの積極的な表現の演奏でしたが、その表現が空回りしているような感じであまり心に届く演奏には感じませんでした。
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サー・ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団

バルビローリ★★
一楽章、少し混濁する第一主題。テンポの速い第二主題はぐいぐいと進みます。第三主題も速めで、録音もあまり良くないので、美しい響きもありません。展開部のチェロの旋律はゆったりと深い歌を聞かせます。展開部の第一主題は叫ぶような演奏でした。コーダの前の第一主題はとても遅いです。速いテンポと遅いテンポの差がとても大きい演奏です。録音のせいか怒涛のようなコーダでした。

二楽章、ゆっくりとしていますが、音程の悪いワーグナーチューバ。テンポの動きもあって強く感情を吐露します。Bは速いテンポでサラサラと流れます。主要主題が戻るとまた、遅いテンポになりますが、少し間延びした感じがします。クライマックスは絶叫するような演奏で激情型の演奏のようです。最後のホルンに神は現れませんでした。

三楽章、音が短めなトランペット。スケルツォ主題のトゥッティは混濁するのもあってかなり激しく聞こえます。ゆっくりとした中間部。

四楽章、軽快な第一主題。かなり速いテンポになる第二主題。第三主題も混濁するので激しく聞こえますが、テンポは遅めです。第一主題の再現も激しいです。コーダは一旦テンポを落としますがその後猛烈に加速して終わります。

遅めのテンポ感情を込める部分と、速いテンポで一気に進む部分がはっきりと区別された演奏でしたが、表現にあまり深みが無く、トゥッティでの混濁やライヴならではの傷も多くあったのがとても残念でした。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1967年ライヴ

ムラヴィンスキー
一楽章、深い呼吸で歌う第一主題。鋭く交錯する金管。レニングラードpo独特の鋭い木管による第二主題。弦もとても鋭い響きです。第三主題の前もトランペットがかなり鋭く強いです。第三主題はゆっくりとしたテンポで、ほのぼのと進みます。展開部のチェロの旋律も松脂がたくさん弓に付いているような音です。再現部の前もトランペットが強烈でした。トランペットがギンギンと鳴り響いて少しうるさいです。再現部の最後に登場するティンパニはほとんど聞こえませんでした。コーダもトランペットばかりが目立ちます。

二楽章、集中力の高い弱音。ゆったりとしたテンポのBですが、響きが鋭く穏やかさはあまり感じません。二度目のAでもトランペットは非常に強烈です。速いテンポのワーグナーチューバ。最後のホルンに神を感じることができませんでした。

三楽章、かなり力強い演奏です。トランペットが弾む音をスタッカートぎみに演奏しました。この主要主題もトランペットが強烈です。中間部はゆったりとのどかですが、途中でトランペットが遠慮なく入って来ます。デッドな録音もあってとても強烈な音でブルックナーの雰囲気ではありません。

四楽章、速いテンポですが、軽快に弾む感じでは無く、強くシコを踏むようなドタドタした感じです。第二主題も硬質な響きです。第三主題はトランペットもトロンボーンも炸裂です。響きガブレンドされないので、雑な感じもします。

デッドな録音で、強い弦と金管の突き刺さるような強烈な演奏でした。この強烈さは野蛮にさえ感じるもので、ブルックナーの音楽とは思えませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブルックナー:交響曲第7番の名盤を試聴したレビュー