ブルックナー 交響曲第7番3

たいこ叩きのブルックナー 交響曲第7番名盤試聴記

オイゲン・ヨッフム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1974年ライヴ

ヨッフム★★★☆
一楽章、静かで暗闇の中に響くような第一主題。力みの無い穏やかな第二主題。活発な動きを表現する第三主題。展開部のチェロの旋律は暖かみがありました。トゥッティは厚みのある響きですが、とても穏やかで包み込むような響きです。弱音部分はとても静寂感があって、暗闇の中にぽつんと明かりが灯るような感じです。コーダはトランペットのバランスが弱く録音されているようで、激しく演奏していてもそれが届いて来ないのだと思いました。

二楽章、重厚で暖かい主要主題。Bは流れるようにサラサラと過ぎ行く音楽です。柔らかく包み込むような響きがとても心地良いです。力みが無く自然な音楽の流れに身をゆだねているような演奏で、作為的な部分は一切感じません。クライマックスでのトランペットはとても遠いです。最後のワーグナーチューバからホルンに受け継がれる部分は柔らかくとても美しいものでした。

三楽章、トランペットが突き抜けて来ないので、荒々しさは感じません。ちょっと重い感じがあります。

四楽章、軽やかな動きの第一主題ですが、テンポの動きで重くなる部分もあります。伸びやかに内面から歌うような第二主題。重厚な第三主題。湧き上がるようなコーダ。ここでもトランペットは遠く大きな盛り上がりは感じません。

柔らかく包み込むような暖かい響きで自然な流れの演奏でした。ただ、トランペットが遠く、激しさなどは全く伝わって来ないのが残念でした。
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オットー・クレンペラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

クレンペラー★★★
一楽章、乾いた響きの第一主題ですが、かなり積極的に歌っています。リズミカルに歌う第二主題。第三主題の前は盛り上がりに合わせてテンポを落とし、そのまま第三主題に入りました。第三主題も活発な動きがあります。展開部のチェロの旋律も表現意欲のある演奏でした。コーダは速いテンポで始まってトゥッティからテンポを遅くしてかなり強く演奏しました。

二楽章、主要主題も大きな強弱の変化を付けて表現します。クレンペラーのことを即物主義と言う人もいますが、この演奏を聞くとかなり感情移入があって即物主義とは違うような感じがします。Bも微妙なテンポの動きがあって歌います。クライマックスもかなり激しいですが美しい演奏ではありません。最後のホルンはあまりにも現実的過ぎます。

三楽章、物々しい主要主題。同じリズムを繰り返す部分で一旦音量を落としてクレッシェンドしました。コントラバスやティンパニがかぶってきます。一転してゆったりと安らぎを感じさらる中間部。主部が戻るとかなりいかつい表情の演奏で、威圧的です。

四楽章、第一主題の最後でテンポを落とします。ゆっくりと優しい第二主題。第三主題はまた物々しい表現です。第一主題の再現ではテンポが大きく動きます。スケールの大きなコーダでした。

即物主義と言われるクレンペラーですが、テンポの動きや積極的な歌もあって即物主義のイメージとは違う演奏でした。ただ、二楽章最後のホルンがあまりにも現実的だったのと、響きに美しさが無かったのが残念でした。
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ロベルト・パーテルノストロ/ロイトリンゲン・ヴュルッテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★
一楽章、非常に弱い弦のトレモロ、速目のテンポでも積極的な表情が付けられた第一主題。トランペットに比べて弱めなホルン。大聖堂の豊かな響きが音楽の合間に響きます。アンサンブルが時折乱れます。響きも薄く、ブルックナーの音楽らしくはありません。アマチュアかと思わせるフルート。トランペットが登場すると弦楽器の響きの薄さが際立ちます。全体にフワッとした響きからトランペットだけが異常に突き抜けてきます。

二楽章、大聖堂の響きを伴って柔らかな響きです。すごく編成が小さいように感じる音の薄さ、弦の弱弱しさ。パーテルノストロは強い主張をすることなく、楽譜をひたすら音に変えていっているようで、アクの強い演奏ではないので、初めてこの曲を聴く人には良いかも知れませんが、オケの技術的な面がどうしてもひっかかります。クライマックスでもトランペットがとても強かった。

三楽章、この楽章でもトランペットが異常なバランスで突き抜けてきます。トロンボーンやホルンはほとんど聞こえません。残響はすごい響きで引き込まれそうになります。中間部はのどかな雰囲気でした。あまりのトランペットの強さに辟易としてきます。

四楽章、速目のテンポです。トランペット以外は溶け合った柔らかい響きなのですが、トランペットだけが浮いています。ホルンなどは豊かな表情があって美しいです。他のパートは表情付けもあるようなのですが、一本調子のトランペットに支配された演奏になってしまったのは残念でした。

リッカルド・ムーティ/ミラノスカラ座フィルハーモニー管弦楽団

ムーティ★★
一楽章、ゆっくりとしたテンポでたっぷりとした歌で主題の中でもテンポが動きます。とても感動的な歌です。第二主題に入っても弦の豊かな歌です。第三主題の前はあまり大きな盛り上がりではありませんでした。とても良く歌う演奏です。ゆっくりと堂々としたコーダでした。

二楽章、この楽章も遅めのテンポで音量を落とした弦が美しいです。Bも柔らかく美しい弦が控えめに歌います。主要主題の再現の後半あたりからテンポが少し速くなりました。Bの再現ではテンポが動きます。溢れ出すようなクライマックス。ワーグナーチューバの「葬送音楽」は速めのテンポですが、良く歌いますが神を感じさせる演奏ではありません。低く空を飛ぶようなホルン。

三楽章、トゥッティのパンチ力はなかなかです。トランペットとトロンボーンが旋律を演奏した後同じリズムを繰り返す部分で音量を落とします。伸びやかでのどかな中間部。

四楽章、あまり弾まず躍動感に乏しい第一主題。速いテンポで淡々と演奏される第二主題。途中から遅くなる第三主題。金管はあまり強くなく、柔らかい響きです。かなり頻繁にテンポが動きます。コーダもあまり大きな盛り上がりではありませんでした。

良く歌い、テンポの頻繁な動きなど、ムーティの積極的な表現の演奏でしたが、その表現が空回りしているような感じであまり心に届く演奏には感じませんでした。
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サー・ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団

バルビローリ★★
一楽章、少し混濁する第一主題。テンポの速い第二主題はぐいぐいと進みます。第三主題も速めで、録音もあまり良くないので、美しい響きもありません。展開部のチェロの旋律はゆったりと深い歌を聞かせます。展開部の第一主題は叫ぶような演奏でした。コーダの前の第一主題はとても遅いです。速いテンポと遅いテンポの差がとても大きい演奏です。録音のせいか怒涛のようなコーダでした。

二楽章、ゆっくりとしていますが、音程の悪いワーグナーチューバ。テンポの動きもあって強く感情を吐露します。Bは速いテンポでサラサラと流れます。主要主題が戻るとまた、遅いテンポになりますが、少し間延びした感じがします。クライマックスは絶叫するような演奏で激情型の演奏のようです。最後のホルンに神は現れませんでした。

三楽章、音が短めなトランペット。スケルツォ主題のトゥッティは混濁するのもあってかなり激しく聞こえます。ゆっくりとした中間部。

四楽章、軽快な第一主題。かなり速いテンポになる第二主題。第三主題も混濁するので激しく聞こえますが、テンポは遅めです。第一主題の再現も激しいです。コーダは一旦テンポを落としますがその後猛烈に加速して終わります。

遅めのテンポ感情を込める部分と、速いテンポで一気に進む部分がはっきりと区別された演奏でしたが、表現にあまり深みが無く、トゥッティでの混濁やライヴならではの傷も多くあったのがとても残念でした。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1967年ライヴ

ムラヴィンスキー
一楽章、深い呼吸で歌う第一主題。鋭く交錯する金管。レニングラードpo独特の鋭い木管による第二主題。弦もとても鋭い響きです。第三主題の前もトランペットがかなり鋭く強いです。第三主題はゆっくりとしたテンポで、ほのぼのと進みます。展開部のチェロの旋律も松脂がたくさん弓に付いているような音です。再現部の前もトランペットが強烈でした。トランペットがギンギンと鳴り響いて少しうるさいです。再現部の最後に登場するティンパニはほとんど聞こえませんでした。コーダもトランペットばかりが目立ちます。

二楽章、集中力の高い弱音。ゆったりとしたテンポのBですが、響きが鋭く穏やかさはあまり感じません。二度目のAでもトランペットは非常に強烈です。速いテンポのワーグナーチューバ。最後のホルンに神を感じることができませんでした。

三楽章、かなり力強い演奏です。トランペットが弾む音をスタッカートぎみに演奏しました。この主要主題もトランペットが強烈です。中間部はゆったりとのどかですが、途中でトランペットが遠慮なく入って来ます。デッドな録音もあってとても強烈な音でブルックナーの雰囲気ではありません。

四楽章、速いテンポですが、軽快に弾む感じでは無く、強くシコを踏むようなドタドタした感じです。第二主題も硬質な響きです。第三主題はトランペットもトロンボーンも炸裂です。響きガブレンドされないので、雑な感じもします。

デッドな録音で、強い弦と金管の突き刺さるような強烈な演奏でした。この強烈さは野蛮にさえ感じるもので、ブルックナーの音楽とは思えませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブルックナー:交響曲第7番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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