ブルックナー 交響曲第7番

ブルックナー 交響曲第7番ベスト盤アンケート

たいこ叩きのブルックナー 交響曲第7番名盤試聴記

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、奥行き感とホールの広さを感じさせる伸びやかな冒頭です。自然な息づかいを感じさせます。第二主題のオーボエとクラリネットのピンポイント感と弦楽合奏の広がりの対比も素晴らしいものでした。とても静寂感があります。このブルックナーの曲集の中でもこの録音は遠近感や広がりが良いです。再現部の前の全合奏はゆったりとしたテンポですごい咆哮でした。コーダは神聖な世界にたどり着いたような爽快感がありました。

二楽章、ふわっと始まり次第に力強くなる主要主題。すばらしく美しい音楽が滾々と湧き出してくるようです。非常にデリケートな表現をオケに要求しているようで、もの凄い集中力ですが出てくる音楽はとてもしなやかです。宇宙が鳴り響くような巨大なスケールのトゥッティ。音の洪水のように炸裂するクライマックス。音楽の深みを感じさせるワーグナーチューバ。音楽は常に柔らかく優しい。天に昇って行くような最後でした。

三楽章、ゆったりと波にでも乗っているかのようにしなやかに揺れる音楽です。優しくのどかでどこまでも続く草原を思わせる中間部です。チェリビダッケの音楽は、自然や生命、果ては宇宙までも感じさせるものです。

四楽章、生命感があって躍動的で生き生きしています。第三主題では大きくテンポを落としました。見事なバランスでコーダを演奏しました。

自然や生命に対する賛美が随所に表現されたすばらしい演奏でした。

オイゲン・ヨッフム/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

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一楽章、豊かに鳴るチェロの第一主題はとてもゆっくりと感情を込めるようにダイナミックの変化も大きく演奏されます。第二主題ではテンポを上げ、オーボエとクラリネットが濃密な音色で絡み合います。滑らかな弦がとても美しい。第三主題でもとても美しいヴァイオリンが印象的です。コンセルトヘボウらしくとても濃厚な色彩で音楽を描いて行きます。トゥッティの強さよりも全体の静寂感が印象に残る演奏で、とても静かな感じがします。展開部のチェロの旋律もとてもゆっくりとしたテンポでした。コーダも全開ではなく少し控え目で美しい演奏でした。

二楽章、すごく感情のこもった主要主題が柔らかくとても美しい。ヨッフムの最晩年の枯れた境地が体から自然に出てきているような、とても優しい音楽に心が打たれます。Bも力みの全く無い自然体の柔らかい音楽ですが、しっかりと感情は込められています。この部分は長調で書かれていますが、物悲しい雰囲気がとてもすばらしいです。二回目のAは一回目よりも切迫して迫ってきます。弱い波が押しては返ししながらジワジワと迫ってくるような、聴き手を強制しない自然な演奏です。Bの二回目はさらに音楽の振幅が大きくなってまた静まって行きます。三回目のAは大きなクライマックスを迎えますが、ここでもオケが全開になることはありません。とても美しい響きです。ワーグナーチューバが途中から強く演奏してかなり踏み込んだ表現をしました。最後もとても美しく黄昏た雰囲気でした。

三楽章、濃厚な色彩の演奏が続きます。トゥッティでも荒れることなく美しい。テンポも動きます。中間部は適度な揺れがあり美しく歌われます。テンポも自然な動きに身をゆだねることができます。

四楽章、ヴァイオリンのトレモロがとても潤いのある第一主題でした。テンポはよく動きます。爽やかで涼感のある第二主題。私はこんなに美しいブルックナーの7番を聴いたことがないです。第三主題でもオケを咆哮させることはなく、とても美しい音色の演奏が続いています。再現部の第三主題でもテンポが次第に遅くなります。第二主題もよく歌われて美しい。テンポも大きく動きます。コーダの手前で大きくテンポを落としてコーダへ入りました。最後でも絶叫することはなくとても美しく終りました。

ヨッフム最晩年の枯れ切った音楽が自然に体から溢れ出て、それをコンセルトヘボウの高い技術と音楽性によって作り出された超名演だったと思います。こんなすばらしい演奏とめぐり合えることができるからクラシック音楽はやめられない。

ギュンター・ヴァント/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、厚みがあって暖かいチェロの第一主題。繊細で艶やか、とても感情がこもっていて引き込まれます。第二主題では突然音量を落とす部分もありました。木管楽器は透明感のある清らかな響きです。第三主題の冒頭は抑制的でした。展開部のチェロの旋律の後ろでティパニが絶妙の音色と音量でクレッシェンド、デクレッシェンドしました。コーダのトゥッティも美しい響きでした。

二楽章、Aは伸びやかで柔らかい弦の響きで落ち着いた荘厳な演奏です。オケのアンサンブルも抜群の精度ですばらしい。Bも繊細な表現で大切なものをそっと丁寧に扱うような心のこもった演奏です。Aの二回目は一回目よりもさらに分厚い響きで始まり、金管が加わり抑制はされていますが、濃厚な表現になります。Bの二回目も一回目よりも厚い響きでこの世のものとは思えないような柔らかさです。Aの三回目は次第に力強くクレッシェンドして頂点を築きますが、金管は突き抜けることはなく、バランスは保たれています。ワーグナーチューバが豊かな表現で厳粛な音楽を奏でます。曇り空の雲の裂け目から太陽の光が差し込むような神の降臨を感じさせるワーグナーチューバのすばらしい表現です。

三楽章、いろんな楽器が入り混じって怒涛のトゥッティ。すごい情報量と力強い響きです。中間部は哀愁を感じさせるような少し寂しげな雰囲気が漂います。最後は広大なスケールのトゥッティに圧倒されます。

四楽章、軽やかな第一主題。伸びやかな第二主題。再現部も弱音から強奏まで美しい演奏が続きます。テンポを落としたコーダでも金管が突き抜けてくることはなく、非常にバランスの良いままに終りました。

細部までコントロールが行き届き、大自然や神の降臨をイメージさせるすばらしい演奏でした。

朝比奈 隆/東京都交響楽団

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一楽章、弱い弦のトレモロに乗って歌うチェロの第一主題。第一主題が高音楽器に引き継がれるとサーッと視界が開けるような感覚になりました。シルキーで美しい弦。第三主題の前はそんなにritはしませんでした。良く通るフルート。オケの技術はとても高いです。再び第一主題が演奏される少し前でかなりテンポを落としました。金管も充実した響きです。コーダの前の第一主題もすごくゆっくりと演奏しました。コーダも非常に遅いテンポです。すばらしい金管の強奏でした。

二楽章、柔らかい弦の響きがとても心地よい。(B1)に入る前の重いテューバに支えられた金管のアンサンブルがとても美しかった。1970年代の日本のオケでは考えられないような美しく柔らかく伸びやかに鳴る金管はとてもすばらしい。6連音符に乗った主題が次第に盛り上がるところは、次から次から音が湧き出すように豊かでした。ワーグナーテューバが登場して雰囲気が一変します。遠い彼方に飛んで行くような最後でした。

三楽章、割と強めに入るトランペット。かなり切迫した雰囲気の演奏です。速目のテンポで演奏されています。屈託の無い金管の響きが心地よい。ライヴとは思えないすばらしい響きです。朝比奈とオケが一体になって音楽を作り上げています。

四楽章、速目のテンポで演奏される第一主題。少しテンポを落とした第二主題。第三主題はすごくテンポを落としました。この部分ではトロンボーンが凄い鳴りをしています。オケの響きはすばらしく美しい。展開部の第三主題もすごくテンポが遅い。テンポは大きく動いていますが、必要以上にこねくり回すこともなく、自然な流れの演奏で、朝比奈の演奏と言うより作品そのものを聴かせているような演奏です。コーダに入り一旦テンポを落として徐々にテンポを上げてクライマックスへ向かいます。

自然な流れで、ライヴとは思えない完璧な演奏はすばらしかった。

ロヴロ・フォン・マタチッチ/スロベニア・フィルハーモニー管弦楽団

マタチッチ ブルックナー交響曲第7番★★★★★
一楽章、豊かなホールの響きで音が膨らみます。思いっきり感情をぶつけてくる第一主題です。ゆったりと歌われる第二主題は第一主題とがらっと表情を変えました。ホルンもとても良い雰囲気を醸し出します。第三主題も豊かな表情です。とてもよく歌っています。強奏部分は豪快に鳴らしますし、コントラバスがしっかりと支えていて骨格がしっかりしています。美しい歌と音の洪水にどっぷりと浸っていられます。壮絶なコーダでした。

二楽章、一楽章から一転して穏やかな主要主題(A)です。この楽章でも切々と歌いながら訴えてきます。強奏部分では一音一音確かめるように確実に演奏します。(B)は比較的速目のテンポですが、テンポを動かして歌います。(A)の二回目もテンポを動かして強く訴えてきます。これだけ作品と同化して感情をぶつけてくる演奏の凄さを感じます。強奏部分は本当に豪快です。これがマタチッチの真骨頂か。壮大なクライマックスでした。ビブラートを効かせたワーグナーテューバ。音楽の起伏が非常に激しい演奏です。天に昇って行くように静かに終りました。

三楽章、遠くから聞こえるようなトランペット。ホールに響く残響が尾を引くように音楽を盛り立てます。途中テンポを落としてはとてもゆっくりと演奏しました。ティンパニのクレッシェンドがとても効果的です。一転して安堵感のある中間部。天国で奏でられる音楽のような安堵感です。この楽章でもとても良く歌います。(A)に戻ってからも途中でテンポを落としました。

四楽章、弾むようなリズムで始まり、次第に重くなりました。とても良く歌います。テンポもすごく動きます。マタチッチが作品に込める思いの深さを感じさせるすばらしい演奏でした。

ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2010年ライヴ

ハイティンク★★★★★
一楽章、残響を含んで伸びやかで雄大な第一主題。一音一音慈しむように丁寧な演奏です。潤いのある木管が美しい第二主題。舞い踊るような第三主題。抜けの良いクラリネット、くっきりと浮き上がるフルート。再現部の前のトゥッティは涼しい響きでした。雄大なコーダでした。

二楽章、今にも雨が降りそうな真っ黒な曇天をイメージさせる冒頭の主要主題。Bの直前のワーグナーチューバはこの世のものとは思えないような暗闇の表現でした。Bから一転して明るく穏やかで安らいだ演奏です。また曇天に引き戻すAの再現。非常に神経の行き届いた弱音の表現です。トランペットが登場するといぶし銀のような渋い輝きです。クライマックスは強力なティンパニや弦に覆いつくされるような金管でした。荘厳で祈るような歌のあるワーグナーチューバ。天に昇って行くような美しいホルンで終わりました。

三楽章、締まりがあって密度の濃い主要主題。シャープで美しい響きです。開放されたような穏やかな中間部ですが、音が一音一音立っていて音楽が生きています。

四楽章、躍動的で生き生きとした第一主題。速めのテンポで進み柔らかく穏やかで安らぎを感じる第二主題。力みが無く透明感の高い第三主題。ハイティンクが常任指揮者をしていた時代のコンセルトヘボウの響きに近い深く濃厚な響きになっています。湧き上がるような壮大なコーダ。

大きな表現や主張はありませんが、濃厚で密度の濃い響き、二楽章での祈るようなワーグナーチューバや昇天するようなホルンなど神を感じさせる演奏は見事でした。
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カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1986年ライヴ

ジュリーニ★★★★★
一楽章、冒頭から深い息遣いの歌の第一主題です。とても強い作品への共感が感じられます。第二主題もとても良く歌います。第三主題へ向けてテンポを速め直前でritしました。展開部で演奏されるチェロの旋律も感情のこもった豊かな歌です。同年のスタジオ録音ではもう少し感情は抑えられていたように感じますが、この演奏はかなりはっきりとした感情の吐露があります。

二楽章、強弱の変化を付けて大きく歌う主要主題。一つ一つの音にとても神経が行き届いている演奏です。Bも非常に美しく歌います。Aの二回目はかなり厚い雲に覆われた曇天をイメージさせる演奏です。ワーグナーチューバも荘厳でありながら豊かに歌います。弦や木管がどんどんと重い空気になって行きますが、ホルンによって神が導かれます。

三楽章、ゆったりと伸びやかなスケルツォ主題。金管はかなり強く演奏していますが、美しい範囲です。中間部にはいるとまた豊かに歌います。大きな川の流れのようにゆっくりと流れて行きます。

四楽章、滑らかに滑るような第一主題。何とも感情のこもった第二主題。抑制の効いたコーダでした。

豊かな歌に溢れた美しい演奏でした。作品に対する強い共感が表れたものて、聞いていて引き込まれるような感じがしました。
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サー・レジナルド・グッドオール/BBC交響楽団

グッドオール★★★★★
一楽章、静かなたたずまいの第一主題でとても静寂感があります。ゆったりとスケールの大きな演奏です。第二主題も静かで静止しているようです。澄み切った空気感です。大河の流れのようにゆっくりと自然に流れて行きます。第三主題の前はホルンがかなり激しく咆哮しました。再現部も静寂感と緊張感があります。再現部の第三主題もどっしりとしていてあまり軽々しく動きません。壮大なコーダは見事としか言いようが無いです。

二楽章、こ楽章の主要主題も穏やかでその場に静止しているような感じです。一楽章同様ゆったりと流れる大河のようなたたずまいは非常にスケールの大きなものです。Bは少しテンポが速めですが、ここでも微動だにしない音楽ですが、優雅で美しいです。6連音符に乗って演奏される主要主題は次第にテンポが速くなりクライマックスを迎えます。ティンパニが大きくクレッシェンドします。葬送音楽らしいワーグナーチューバ。美しいホルンでした。

三楽章、遅めのテンポで、ガリガリと刻み付けるような弦。スレルツォ主題からかなり強い金管。がっちりと大地に楔を打ち込んだ上に音楽が成り立っているような強固な構成力。中間部はさらに遅く静かで穏やかです。主部が戻ると再びスケールの大きな主要主題が演奏されます。

四楽章、あまり軽やかさは無く、どっしりとした第一主題。速めのテンポの第二主題はすがすがしい感じです。ホルンが激しい第三主題。コーダに入ってもあまりテンポを落としませんでしたが、最後はゆっくりになってトランペットが響き渡って終わりました。

静寂感に溢れた静かなたたずまいと、地に楔を打ち込んだ上に音楽を構築するような強固なトゥッティとの対比が見事で、壮大でスケールの大きなトゥッティも素晴らしい演奏でした。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★★★
一楽章、ゆったりと深い歌の第一主題。ホールの空間を感じさせる録音でとても美しいです。盛り上がるに従ってテンポを速めました。シルクのように滑らかな第二主題。第三主題の前のトゥッティも充実した美しい響きでした。落ち着いた第三主題。大きな表現は無く正攻法の演奏ですが、響きがとても充実していて非常に美しいです。ゆっくりとしたコーダの高揚感も素晴らしく、見事なバランスの金管も素晴らしいものでした。

二楽章、大きい表現ではありませんが、とても深い主要主題。Bへ入る前のワーグナーチューバは不穏な空気で、分厚い雲に覆われて暗い空のようでした。Bは柔らかく美しい弦が豊かに歌います。音楽は隙間や淀みなく流れ続けます。録音の新しさにもよるものもあるのでしょうが、充実した美しい響きは本当に素晴らしいです。クライマックスは自然な高揚で、力づくではありません。ワーグナーチューバは悲しみに暮れるような表現です。魂が天に昇って行くようなホルンでした。

三楽章、一体になった分厚い弦。伸びやかな金管のスケルツォ主題。トゥッティのエネルギー感は凄いです。静かで穏やかな中間部。

四楽章、ゴリゴリと存在感を示すコントラバス。生き生きと動くクラリネット。祈るように歌う第二主題。第三主題の途中から突然テンポが速くなります。展開部の前のホルンはとても美しい演奏でした。コーダの直前も充実した美しいトゥッティでした。輝かしいコーダでした。

強い主張のある演奏ではありませんでしたが、隙間や淀みもなく流れ続ける音楽、オケが一体になった充実したトゥッティ。どこをとっても見事な演奏でした。特に二楽章の最後の魂が天に昇って行くようなホルンはこれまで聞いた中でも最高の表現でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブルックナー:交響曲第7番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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