ベートーヴェン 交響曲第7番3

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第7番名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1966年東京文化会館ライヴ

カラヤン★★★☆
笛吹のクラシック音楽ライヴ と オーディオの記事の笛吹さんから音源を送っていただきました。ありがとうございます。

一楽章、最初の音のアンサンブルが乱れます。後年のライヴのような強烈な加速はありません。速いテンポで舞うような第一主題。この演奏でも分厚いトゥッティのエネルギー感は凄いです。前へ強烈に進もうとするような推進力もあまり感じません。

二楽章、この楽章も速いテンポで悲しみを強く印象付けるような演奏では無く、暖かみを感じさせる演奏です。豊かな歌のある演奏です。

三楽章、重量感のあるスケルツォですがスピード感もあります、ただ後年のライヴのような猛烈に前進するようなスピード感ではありません。

四楽章、この楽章は凄いテンポで進みます。ただ前へ進もうとする推進力はあまりありません。コーダは物凄い加速でさすがですが、やはり後年の周囲の物を蹴散らして進むような力強さは感じられませんでした。

カラヤンらしい速いテンポで勢いのある演奏でしたが、後年のライヴのような猛烈な勢いで突き進むような力強さは感じられませんでした。

朝比奈 隆/新日本フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、8番の時の、自然体の雰囲気とは少し違うような感じがします。時折激しさも垣間見せます。
ホルンは細身の音ではありますが、ピーンと張りのある音で見事なアンサンブルです。自然に熱を帯びてくる感じで、オケを引きずり回すような、乱暴なことは全くありません。
大枠を伝えたら、あとはオケの自発性に任せているらしく、朝比奈と新日フィルもアンサンブルしているような一体感が良いです。

二楽章、もっとのめり込んでも良かったような気も若干しました。

三楽章、やはり、テンポは遅めですが、違和感はありません。雄大な自然を連想させてくれるような演奏です。ただ、ゆったりしたテンポ設定と躍動感のある音楽のと融和するところが見つけにくいようで、8番ほどしっくりきていないような印象はあります。

四楽章、一般的なテンポの範囲のような気がします。終番から畳み掛けるようにテンポが速くなりティンパニのすごいクレッシェンドがあり、音楽がどんどん前へ前へと進んで行きます。これも見事なピークを作って熱狂的に終わりました。

クラウス・テンシュテット/ボストン交響楽団

テンシュテット★★★
一楽章、ボストンsoとの共演、私のイメージからすると、アメリカのオケとしてはとても端正で木質系の響きを持っていて、テンシュテットとの相性には疑問を持つのですが、果たしてどのような演奏になるのでしょうか。
テンシュテットの演奏としては、大人しいです。一楽章から激しかったことから言えばカラヤンのライブの方が、激しい演奏でした。
テンシュテットの指揮に対して120%やってしまうロンドンpoと80%程度でとどめておくボストンsoの奥ゆかしさの違いのようにも感じます。
響きもベルリンpoのようなグラマラスな響きではなく、細身で薄い響きです。室内楽のように編成が小さいように感じられます。

二楽章、思い入れがすごく込められている演奏です。いつもの外へ爆発する方向よりも、内面へ向かって、切々と訴えかけいくるような感じがします。

三楽章、やはり、ボストンsoの奥ゆかしさと、テンシュテットの全てをさらけ出すようなスタイルは合わないような気がします。

四楽章、猛烈に畳み掛けるような終わり方でも無かった。テンシュテットの指揮だからと過剰に期待しなければ、まとまりの良い演奏だったと思います。
ベートーベンの7番に関しては、爆演だったら、カラヤンを聴いた方が良いです。

ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク

icon★★★
一楽章、細い音です。古楽器の特徴なのか、幻想交響曲の録音に比べると残響成分も適度に含まれているので、聴きやすい演奏です。音の細さから受ける印象なのか、演奏自体が細身で、ヘド7のイメージからするとひ弱な感じになっています。
古楽器で幻想を演奏するような無茶なところはあまりないので、幻想のときに感じた、学術的な価値しか感じられないような演奏ではなく、音楽になっています。
薄い響きなので、モダン楽器の演奏よりも透明感があります。十分に盛り上がって熱い終結部でした。

二楽章、それぞれの楽器の響きが細いので、寂しい楽曲がさらに寂しさを増しています。演奏スタイルも時代考証をして、表現も工夫しているのだと思うのですが、この楽章は平板な感じは否めません。

三楽章、躍動感があって楽しい表情です。やはり響きの細さはずっと付きまといます。当時の楽器や演奏スタイルなど研究して、当時の演奏を再現してみる試みは評価できます。
しかし、それは数ある演奏の中においては、一度聴けばそれで良いことで、この演奏をベストCDとして挙げる人がどれだけいるのか、私は疑問です。

四楽章、間が長い冒頭でした。音に豊かさや伸びやかさがないので、詰まった印象になってしまいます。
音楽的には、思っていたより熱い演奏で好感がもでました。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、ライブでは、もの凄いスピード感のある、すばらしい演奏を聴かせてくれたのですが、スタジオ録音になると、よそ行きの演奏になってしまうのか、剛速球のピッチャーがフォアボールを恐れて玉を置きに行っているような演奏で、ポイントは外していないのですが、度肝を抜くような剛速球を投げ込んできません。
カラヤンは歴史上で最も多くの録音を残した人なので、録音に対する考え方は、私たち凡人以上にいろんな側面から考え抜いた末に、この演奏を残したわけですから、カラヤンにとっては必然性があったのでしょう。
それは、後世に残るものとして、造形的に完璧であることを望んだのでしょうか。
でも、演奏を聞く側としては、カラヤンとベルリンpoがOB覚悟のドライバーのフルショットを見てみたいと思うのが、本音だと思うし、それが仮にOBになったとしても、そのことに果敢にチャレンジしたことを褒め称える人の方が多いと思うのですが・・・・・。

二楽章、この楽章もテンポが速くて味わいがありません。
三楽章、
四楽章、この楽章はスピード感もあってなかなか良いです。ただ、ライブのような猛進するような迫力はありません。

カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

>icon★★★
一楽章、「運命」で感じた猛烈なスピード感は影を潜めて、しっとりとした表情です。
繊細な音の扱い。ウィーンpoがとても透明感の高い締まった音を出しています。
テンポも音楽に合わせて自由に動きますが、作為的な感じはありません。ウィーンpoがクライバーの指揮に献身的な演奏をしているのが伝わってきます。相思相愛だったんでしょう。

二楽章、比較的速めのテンポで推進力を重視しているような演奏です。推進力がある分、深みを感じることができません。

三楽章、推進力があるので、スポーツカーのような俊敏さはありますが、スケールの大きな演奏にはなりえません。しかし、推進力や躍動感は凄いものを持っています。

四楽章、とても精緻な音楽で、ちょっと触れば壊れてしまいそうなガラスアートのような透明感と繊細さを併せ持った貴重な記録だと思います。
この曲のスタンダードとして位置づけるような演奏ではありませんが、クライバーの芸術性の高貴さが表出された名演奏だと思います。

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、録音が古いせいか、埃っぽい音です。
アクセントの処理などアティキュレーションに関しては徹底されているのが伺えます。ティンパニ打撃音はほとんど歪んでいます。
ムラヴィンスキーの演奏は弛緩するなどということは有り得ず、殺気立ったような厳しい演奏です。これは他のベートーヴェンの交響曲でも共通するところです。
ただ、この録音はちょっと酷いです。私は、録音が悪いと、そのことが気になってなかなか音楽が聴けないタイプなので、この演奏に浸れません。

二楽章、レニングラードの大ホールの録音機材が相当悪かったのか、アメリカでは1960年代なら、かなり良い音のステレオ録音のはずですが、1964年でこの音は酷すぎます。しかもモノラル。

三楽章、ムラヴィンスキーの芸術性の高さからすると、録音に恵まれなかったのは大変残念なことです。

四楽章、オケの熱演が感じられないわけでしないのですが、録音の歪みが酷くて、演奏が滑稽に聞こえてしまう部分もあり、私のような聴き方をする人間には、この演奏の良さを伝えることは不可能です。
ただ、ドイツ、オーストリアから遠く離れた偏狭の地で、ある種独特の音楽文化を築いてきたロシアの偉人たちには敬意を表したいと思います。

ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団

バルビローリ★★★
一楽章、パートの受け渡しがとてもスムーズな良い感じのスタートです。上昇音階が次第にテンポを速めます。繰り返される上昇音階は高弦だけが走って、間の悪い部分もありました。第一主題のフルートソロに呼応するコントラバスのアクセントが強めで存在感がありました。次第に熱気を帯びてきて、激しい音楽になってきました。再び現れるオーボエをはじめとする木管のソロで一瞬の静けさを取り戻し、また、畳み掛けるように激しい演奏になっていきます。ホルンの強奏で音が歪むのが残念です。

二楽章、淡々と演奏が始まりました。深く沈みこむような表現ではなく、無用な感情移入は避けているように感じます。歪みっぽい録音はいかんともしがたい・・・・・。

三楽章、

四楽章、遅めのテンポで開始しました。熱狂的な高揚感よりも冷静さの方が強く感じられるように思います。ちょっと重いです。

クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1987年東京ライヴ

アバド★★★
一楽章、くっきりと締った木管が浮かび上がる序奏。楽しげに動く第一主題。猛烈に前へ進むようなスピード感はありませんが、美しい演奏です。テンポの変化も全くと言って良いほどありません。

二楽章、ウィーンpoの伸びやかで美しい弦がとても印象的です。弱音の繊細さもとても美しいです。

三楽章、この楽章も美しいのですが、前へ進む力強さはありません。表現にも尖ったところは無く滑らかで繊細な女性的な演奏のように感じます。

四楽章、ほとんど加速することなく楽譜通りの演奏です。流れるような滑らかな演奏はアバドらしいです。コーダでも全くテンポは変わらず落ち付いていました。

繊細で流麗な美しい演奏でしたが、テンポの動きも無く、優等生的で燃焼度が高い演奏には感じませんでした。
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リッカルド・ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団

ムーティ★★★
一楽章、軽い響きの4分音符。アクセントなどもあまり強く無く、サラッと流れます。第一主題も軽快です。テンポは色んなところで動きますがスタジオ録音ではありがとな、お行儀が良い演奏で、まとまりは良いのですが、暴走するような危うさは全くありません。

二楽章、軽く静かでしかも華やかな主題。アメリカのオケらしい華やかさです。あまり深みはありませんが、良く歌っています。メナの演奏の強烈なティンパニを聴いてしまうと、この演奏のティンパニはいかにも弱い。弱音では室内楽のような繊細さです。

三楽章、力が抜けて、ほどほどのエネルギー感であまり力漲る躍動感はありません。トゥッティでもトランペットが飛びぬけて来たりはしません。とても常識的な演奏です。トリオでは良く歌います。

四楽章、一転して速めのテンポでぐいぐい進みますがカラヤンのライヴのような強い推進力はありません。コーダへ向かってはかなり激しくなりました。最後の追い込みはなかなかでした。

弱音部の繊細な美しさや四楽章コーダへ向けての激しさはありましたが、全体としてはお行儀の良い優等生的な演奏でした。
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ダニエル・バレンボイム/ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団

バレンボイム★★★
一楽章、軽い4分音符に続く木管の豊かな歌。集中度の高い弱音部分。踊るように飛び跳ねる第一主題。重くずっしりと刻むリズム。さらりと流れる部分と、叩き付けるようにリズムを刻む部分との対比がなかなか良いです。

二楽章、アタッカで入りました。あまり表情を付けずに淡々と演奏される第一主題。テンポも粘ることはありません。トリオでは歌いましたが、主部はほとんど表情を付けずに演奏しています。

三楽章、ここもアタッカで入りました。一転して活発に動いていますが引き締まった演奏では無く、どこか緩い感じがします。

四楽章、かなりの快速で飛ばしています。演奏の温度感が高く、ピーンと張りつめたような緊張感は感じません。コーダへ向けてオケを爆発させました。

最後はそれなりの盛り上がりはありましたが、全体的には緩く、緊張感の乏しい演奏でした。
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カール・ベーム/ロンドン交響楽団 1977年ライヴ

ベーム★★★
一楽章、遠い音場感です。遅いテンポで一貫しています。音楽は淡々と流れて行きます。ほとんどテンポを変えずに、しんし、僅かに間を取ってから第一主題に入りました。テンポの動きは少しありますが、音楽の起伏はあまり大きくありません。

二楽章、控えめで厳かな第一主題。続く変奏でも物悲しさが伝わって来ます。少し離れた録音なので、響きのまとまりが良く小粒ながら美しい演奏です。

三楽章、滑らかで美しい流れるような演奏です。大きな表現はありませんが、キリッと引き締まった清涼感のある響きで見通しの良い演奏です。

四楽章、ベームのライヴにしてはクールで燃焼度があまり高くないような感じがします。コーダはそれなりに盛り上がりましたが、ベームの絶頂期の白熱したライヴとは違って衰えを感じてしまいました。

清涼感のある涼しげな響きで、サラリと演奏された感じがあります。最後はエネルギーの放出もありましたが、燃え上がるような演奏ではありませんでした。
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ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン/オランダ放送室内フィルハーモニー管弦楽団

ズヴェーデン★★★
一楽章、まとまりの良いまろやかな響きです。あまり表情の無い第一主題。強奏部分ではホルンが吠えます。

二楽章、抑えた音量で静かに美しく演奏される第一主題。非常にまとまりが良く美しい弦です。

三楽章、一転して活発で生気に溢れる演奏です。トリオはいろんな楽器が絡み合って良く歌います。主部に戻ると弦の弱音部分がとても精緻で神経を使っているようです。

四楽章、速いテンポですが、あまりスピード感はありません。

柔らかくまろやかで美しい響きでしたが、表現はいたって普通の演奏でした。
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投稿者: koji shimizu

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