ブルックナー 交響曲第9番3
たいこ叩きのブルックナー 交響曲第9番名盤試聴記
エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
一楽章、ムラヴィンスキーの演奏らしく凝縮した響きです。内側へぎゅっと凝縮していく響きで作品の陰影を強く表現する演奏です。トランペットなどは空気を突き破って向かって来るようにさえ感じます。神に捧げると言うよりは、人間の凄みさえ感じる演奏です。
二楽章、歯切れの良いブラスセクション。ドイツの演奏様式とは隔絶された世界でムラヴィンスキーの音楽は作られているようで、ドイツ、オーストリアのオーケストラで聞く演奏とは明らかに違います。強い存在感で迫ってきます。
三楽章、この楽章も一つ一つの音が強い存在感で鳴り響いています。低音域が薄いので、金管楽器が強く聞こえるのかもしれません。それにしても演奏が現実的過ぎて、神に捧げる音楽には程遠い。
カール・シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★
一楽章、もやの中から響くような神秘的な第一主題。川の流れのように朗々と歌われる第二主題。とてもゆったりと歌われるオーボエの第三主題。録音の古さのせいか、特に美しいという印象はありません。
二楽章、弦のピツィカートにも強弱の変化があり表情豊かです。トゥッティも一本調子にならず、表情があります。
三楽章、冒頭の9度上昇の後の2音ほどを短めに演奏しました。テンポは速いです。最初の頂点でトランペットの音型が詰まった感じです。何度か登場しますが、トランペットの詰まった感じがとても不自然です。激しい音楽の展開は上手く表現しています。もっと静かに消え入るように終って欲しかった。
あまりにも現実的過ぎる表現に少し抵抗がありました。
ロヴロ・フォン・マタチッチ/ウィーン交響楽団 1983年ライヴ
★★★
一楽章、冒頭からいきなり巨大なスケール感の演奏です。荒削りですが、広大な頂点です。とても人間味のある、体臭をも感じさせるような第二主題。展開部に入っての頂点では金管が奥まっていてくすんだ響きになっています。再現部は録音のせいか、とても柔らかい。コーダは速いテンポですが、やはり巨大なスケールです。
二楽章、一音一音丁寧な冒頭部分。歯切れの良く豪快にオケを鳴らすトゥッティ。トリオのテンポは速いです。
三楽章、分厚い響きに隠れるような頂点の金管。強く訴えかけて来るワーグナーチューバのコラールが感動的です。第二主題はとてもゆっくりとしていてとても柔らかく美しいです。全開にはならなかったクライマックス。天国を感じさせるコーダの終盤。
巨大なスケールを感じさせる部分や非常に美しい部分があったりもしましたが、荒削りで雑な感じも受けました。
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アレクサンドル・スラドコフスキー/タタルスタン国立交響楽団
★★★
一楽章、暗い雰囲気の第一主題。続く弦と少し音が短めで独特の表現です。そしてテンポも速まります。快活と言えばそうなのですが、かなり速いテンポです。第二主題は浅い響きです。ホルンには奥行き感がありますが、オーボエはとても浅く聞こえる第三主題。とても軽いクライマックス。展開部でもトランペットが浅く、近くに響きます。テンポも速めで味わいがあまりありません。とても元気よく前進します。休止後はゆっくり目でした。再現部からはまた速めに進みます。クライマックスでは全開にはならずかなり余裕を残しています。最後はゆったりとしたテンポで良かったです。
二楽章、この楽章はテンポが速いのでとても活き活きとしています。力強く前に進みます。金管が入っても暴力的にはならず、比較的穏やかな演奏です。トリオはさらに速くなります。録音の問題なのか奥行き感の無い浅い響きがブルックナーにはふさわしくないように感じます。ティンパニが勇み足でアンサンブルが乱れる部分がありました。
三楽章、トランペットは日が昇るような輝かしさはありませんでした。頂点でもスケールの大きな表現にはなりません。第二主題は豊かな表現です。展開部に入って少し深みが出て来ました。ここまで少し飛び抜けていたトランペットも融合した響きになって来ました。音も深く刻まれるようになって来てオケ本来の力を発揮しています。グロテスクなクライマックスもなかなかの表現でした。一転して穏やかになるコーダ。祈りと共に天へ召される感じではありませんでした。
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クラアディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★
一楽章、暗闇から神秘的な響きです。広々とした空間に鳴り響くホルン。続く弦は短めの音で演奏します。少しテンポを煽ります。あまり特徴の無い第二主題。ゆっくり演奏される第三主題。クライマックスでもあまり音は前に出て来ません。展開部の中でも少し音が短めの表現があります。テンポを加速する部分がとても多いです。
二楽章、速めのテンポでとても動きがる快活な演奏です。
三楽章、控えめなトランペット。リミッターが掛かったように強弱の変化が乏しい録音で、広がりはありますが、音が全く迫って来ません。豊かな第二主題。オケは軽々と良く鳴るのですが、ブルックナー独特のどっしりとした安定感や奥深さが感じられません。展開部のクライマックスも壮絶さは無く、普通に音にしただけのような演奏でした。コーダも天に昇るような神がかった雰囲気も無くただ演奏したというような表現でした。
アバドはベルリンpoとの時代は若い頃の勢いが全く無くなり納得できるような演奏はほとんど無かった時代だと思います。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団
★★
一楽章、温度感の低いホールの響きが清潔感を感じさせます。
いつもながらシカゴsoは抜群の鳴りで心地よい響きを聞かせてくれます。ただ、ショルティが指揮する音楽はいつもそのように感じるのですが、明晰であからさまに過ぎるような感じがします。
開けっぴろげで、あられもない恰好をさらけ出すような演奏は、ブルックナーの音楽とは水と油のような感じを受けてしまうのですが・・・・・。
響きに深みがないので、素朴で神格化したイメージとは遠く、ストリップでも見ているような品の無さを感じてしまうのは、私の感じ方の問題でしょうか。
ショルティとシカゴsoの録音はスピーカーよりも音が前へ出てきて、奥まったところに空間が広がらないのが、曲によっては凄く魅力的に聞こえる場合も多くあるのですが、ブルックナーの場合はもう少し奥まったところにある深みが表現されると良いと思うのですが・・・・・。
二楽章、あまりにも表面的に鳴り響く音楽になかなか入って行けません。
三楽章、神に奉げる音楽にはとても聞こえないです。
あまりにも現実的過ぎます。
私は、ショルティ/シカゴsoのサウンドは嫌いではありません。曲によっては凄く陶酔感を持たせてくれる場合もあります。
しかし、ブルックナーの演奏に関しては、とても聞いてはいられません。うるさい音です。
ヘルベルト・ブロムシュテット/グスタフ・マーラー・ューゲント管弦楽団
★
一楽章、浅い響きでせっかちな第一主題。第二主題も速めのテンポであっさりとしています。第三主題に入ってようやくゆっくりとしたテンポになりました。若いオケですが、トゥッティの響きは充実していますし、弦も美しいですが、ブロムシュテットの指揮がとにかく速いです。再現部の前は少しゆっくりとなりましたが、あまり味わいの無い演奏でした。
二楽章、あまり強弱の振幅が大きくありません。速いテンポのトリオが素っ気ない感じです。
三楽章、この楽章も速いテンポで、ほとんど思い入れの無いような演奏に聞こえます。クライマックスでも壮絶さは無く、とても落ち着いた表現で、感情の振幅は感じられません。
終始速いテンポで素っ気ない演奏でした。この速いテンポでブロムシュテットは何を表現したかったのか分かりませんでした。
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