ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)3

たいこ叩きのムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1985-87年(デジタル)
icon★★★★
柔らかいというか、少し篭もり気味のトランペットで始まったプロムナード。この曲はカラヤンとベルリンpoの機能美を聴くには最適の曲だと思いますが、このCDの録音当時はすでにカラヤンの絶頂期を過ぎており、衰えが感じられる頃でもありました。
このレコーディングの後の来日公演でも冒頭のトランペットがミスをすると言う、ベルリンpoでは考えられないことが起こったりもしました。
この録音では、随所にベルリンpoの上手さを聴く事ができますが、録音の録り方の問題もあるのか、スケール感が感じられない、小じんまりした演奏になってしまっています。
スケールの大きさや表情の豊かさ、ソロも含めた芳醇な響きなどは、旧盤の方が勝っているのではないかと思います。
トゥッティでの輝かしい響きは、さすがベルリンpoと感じさせられる部分も随所にあります。
完璧な演奏ではあったのですが、なぜこんなに小さくまとまってしまったのか、すごく残念です。

相性は良い曲であっただけに1970年代に録音して欲しかったです。

レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★★★
「プロムナード」細い音のトランペットヴィブラートをかけた演奏です。「こびと」残響が少ないのかリアルな音がします。テンポがよく動きます。「古城」あまり甘美な響きのないサックスです。「テュイルリーの庭」遅めのテンポで表情も濃厚です。「ビドロ」一転して速いテンポです。少し雑に感じる部分も・・・・。「殻をつけたひなの踊り」とても情景描写が上手いです。木管の表現力が良いです。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」テンポも強弱も変化があり表情豊かです。「カタコンブ」いろんな表現をしているようです。「バーバ・ヤーガの小屋」表情が豊かで面白い。「キエフの大きな門」思い切った表現が新鮮でハッとさせられます。

聴いていて面白い「展覧会の絵」でした。

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

デュトワ★★★★
速めのテンポで張りのある音色の「プロムナード」。色彩感が鮮明な「こびと」。艶やかなサックスソロを聴かせる「古城」羽毛で撫でられるような弦の 美しい響き。「テュイルリーの庭」では滑らかなクラリネットが印象的です。表現力のあるテューバソロの「ピドロ」。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュ ミイレ」では金持ちと貧乏人の対比がとても上手く表現されていました。「リモージュ」アーティキュレーションに忠実な表現のようです。「カタコンブ」ブラ スセクションの充実した響き!「バーバ・ヤーガの小屋」速めのテンポで軽い感じです。「キエフの大きな門」ここでも軽い感じの演奏です。強大なエネルギー を放出するような演奏ではありません。

ムソルグスキーのロシア的な面よりもラヴェルのフランス的な面を表現したかったのでしょうか。品良く美しい演奏です。

ジャン=クロード・カサドシュ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

カサドシュ★★★★
プロムナード、パリッとした響きで鮮度の高い録音です。演奏も元気の良いものです。
こびと、速いテンポで色彩も濃厚で、トランペットも鋭く突き抜けて来ます。
プロムナード、
古城、強く哀愁を感じさせる表現ではありません。
プロムナード、
テュイルリーの庭、あまり個性の無い標準的な演奏と言う感じです。演奏そのものはそんなに悪くは無いのですが、個性が無い分魅力もあまりありません。
ビドロ、ソロはユーフォニアムでしょうか。清涼感があって美しい弦。
プロムナード、速めのテンポで朗々として色彩感が豊かです。
殻をつけたひなの踊り、この曲はテンポの動きがとても良いです。最後はホルンの激しい咆哮が意外でした。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、弦に分厚さは無く、横柄な大金持ちの雰囲気はあまりありません。ここも速いテンポで、トランペットが輝きのある響きで貧相な感じはありません。
リモージュの市場、ビリビリと響くホルン。とても爽やかで美しい演奏です。
カタコンブ、軽々と鳴り響く金管が心地良い演奏です。ラヴェルの色彩感豊かなオーケストレーションはとても良く伝えています。
バーバ・ヤーガの小屋、こでも色彩感はとても濃厚です。金管も遠慮無く鳴ります。チューバのソロの部分でも透明感が高くとても見通しの良い演奏になっています。所々で金管や打楽器を思い切り鳴らします。
キエフの大きな門、ここも速めのテンポです。整ったアンサンブルで、金管がサクサクと鳴ります。最後はかなり激しい金管でした。

最初はあまり個性の無い演奏のようでしたが、曲が進むにつれて、強い個性が出て来ました。とても美しい弦と、爽快に鳴り響く金管。色彩感も豊かで、透明感も高い演奏で聞き終った時点では満足感がありました。
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グスターボ・ドゥダメル/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

ドゥダメル★★★★
プロムナード、メリハリのはっきりとした演奏で、躍動感がありはつらつとした演奏です。表現も積極的です。
こびと、轟音を上げる弦。とても積極的で大きな表現です。
プロムナード、ホルンも豊かな表現です。歌える部分は全て歌うような意欲的な演奏です。
古城、美しいサックスも歌います。とにかく表現意欲は凄いです。
プロムナード、明るいトランペット。
テュイルリーの庭、ここでも考え尽くされた表現です。
ビドロ、チューバのソロのようで、深みのある響きです。このソロも感情が込められています。凄い大曲を聴いているようなこってりとした重さがあります。
プロムナード、ここでもコントラバスが轟音を上げます。
殻をつけたひなの踊り、鮮明で、まるでひなが目の前を動き回るかのような表現です。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、威張り散らした大金持ちらしい弦の表現です。トランペットもひ弱ではありません。
リモージュの市場、活発で引き締まった表現で、めまぐるしく動く弦。
カタコンブ、分厚くしかも軽々と鳴り響く金管。
バーバ・ヤーガの小屋、叩き付けるティンパニ。凄い勢いの演奏です。ファゴットのソロの後ろのフルートのトリルも音量が変化します。弦のスピード感が凄いです。
キエフの大きな門、最後が途切れてしまいました。思っていた程分厚い響きや咆哮はありませんでした。

考えられる表現を尽くしたような演奏で、とても積極的でした。オケも唸りを上げるような鳴りで、とても良かったのですが、最後が途切れてしまったのが残念でした。

Long Yu/中国フィルハーモニー管弦楽団

Long Yu★★★★
プロムナード、スラーで演奏されているようなトランペット。鮮明な弦とくすんだような金管が対照的です。
こびと、勢いのある弦。木管もキリッと引き締まって浮き上がります。
プロムナード、想像していたよりもオケは上手いです。
古城、少し硬いサックスですが、良く歌います。サックスとは対照的に無表情なファゴット。音符の扱いがちょっと変わっています。
プロムナード、ここでもスラーのトランペットですが、鮮明な弦とは違ってくすんだ響きです。。
テュイルリーの庭、大きな表現で、とてもはっきりしています。
ビドロ、ソロはユーフォニアムです。独特の表現が随所にあります。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、繊細なヴァイオリンと活発に動く木管。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、荒々しい弦。ひ弱さは感じないトランペット。
リモージュの市場、浅く硬いホルン。表現は大きいです。
カタコンブ、かなり強いトロンボーンとチューバ。深みが合って厚いコントラバス。
バーバ・ヤーガの小屋、ギョッとするようなトロンボーンや金管の咆哮。アンサンブルが緩い部分もあります。終わりもバラバラでした。
キエフの大きな門、あまり壮大さはありません。表現はここでもとても積極的です。オケを強く鳴らしますが、テンポが速くて落ち着きがありません。

とても積極的な表現とオケも積極的に鳴らす演奏で、なかなか聞き応えがありました。アンサンブルの緩い部分もありましたが、良い演奏だったと思います。
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フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団

ライナー★★★★
プロムナード、すっきりとシャープで表現も豊かな演奏です。オケも力強くエネルギーに溢れています。
こびと、うなりを上げる弦。克明で、くっきりと浮かび上がる楽器。シカゴsoの第一期黄時代と言われるのも分かります。
プロムナード、とても良く歌う管楽器。
古城、薄く独特の響きのサックス。
プロムナード、明るく明快なトランペット。
テュイルリーの庭、明暗が描き分けられます。
ビドロ、若干硬いですが、美しいソロ。だんだんと力がこもって来ます。ゆっくり目で力強いです。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、活発な木管。美しく繊細な弦。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、かなり荒っぽいゴールデンベルクです。トランペットもそんなにひ弱ではありません。
リモージュの市場、暗い響きのホルン。若干アンサンブルが乱れたような弦。
カタコンブ、頭が強くその後すぐに力を抜く金管。最初はかなり軽いです。
バーバ・ヤーガの小屋、硬いティンパニが心地良い響きです。はつらつとした表現です。
キエフの大きな門、広大な広がりはありませんが、とても良く鳴る金管です。クラッシュシンバルの径が小さいのが少し気になります。トランペットやトロンボーンが強く下のパートがあまり聞えず、底辺を支えていない感じがありました。

とても表現意欲のある演奏で、なかなか良かったです。この頃からのシカゴsoの特徴なのか、金管がとても強力で、コントラバスなどが支え切れていないような感じがありました。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★★
プロムナード、柔らかいですが、くすんだ響きのトランペット。積極的に表現します。
こびと、色彩や表現がこってりしていてとても濃厚です。非常に積極的に歌います。
プロムナード、柔らかいホルン。
古城、ファゴットもサックスも聞き手を引き込むような表現です。繊細な表現の弦など、表現し尽くされている感じの演奏です。
プロムナード、
テュイルリーの庭、速いテンポで活発に動きます。弦が出るとテンポを落として濃厚な表現になります。
ビドロ、美しく豊かに歌うユーフォニアムのソロ。ゆったりとしたテンポで広大です。
プロムナード、全曲を通してとても豊かな表現で積極的です。
殻をつけたひなの踊り、ユーモラスに動き回るひながとても良く描写されています。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、あまり分厚い響きでは無く強大さを感じさせないゴールデンベルク。打楽器が追加されています。
リモージュの市場、ゆっくりめですが、強弱の変化も明快です。
カタコンブ、ドラが強く印象的に入ります。重厚なブラスの響き。
バーバ・ヤーガの小屋、重量感があって表現も大きい演奏です。
キエフの大きな門、ソフトで軽い演奏です。テンポも速めです。最後まで軽く金管を抑えてバランス重視の演奏でした。

とても表現の豊かな演奏でしたが、金管を強く演奏することは無く、振幅があまり大きい演奏ではありませんでした。
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 ・ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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