ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」3

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

レナード・バーンスタイン/ロンドン交響楽団

icon★★★★
LPの当時は4チャンネル録音だったと思います。残響成分が多すぎて細部が分からないような録音でしたが、CDになって余分な成分をカットしたようで、聞きやすくなりました。
春の祭典を音楽的に聴かせてくれています。1974年の録音

第一部:大地礼賛
比較的速いテンポであっさりとした序奏です。かなり奥まったところから鋭い音のトランペット。
春のきざし、録音のせいか密度の薄い弦。ホルンはバリバリとした音です。録音が捉えきっていないだけで、かなり強烈なffを吹いているのは伝わってきます。ダイナミックレンジは狭い録音です。ティンパニも大太鼓も流れているようであまり強烈ではありません。ふくよかなホルン、シャープなトランペット。これも録音のせいか?ズレて聞こえるところもありますが・・・・・・・・・。
誘拐、かなり強烈に演奏しているようなのですが、録音がライヴ過ぎて角が取れてしまっています。
春の踊り、コントラバスが強いですが、重量感はありません。金管のホルタメントも強調されていますが、突き抜けては来ません。
敵の都の人々の戯れ、抉るように激しいホルン。ティンパニも凄いです。
賢者の行列、トランペットも強烈になりました。
大地の踊り、いろんな楽器が入り混じって混濁します。元々の録音の狙いもあったのか、リズムよりもメロディを歌うことに重点を置いているような演奏に感じます。残響成分が多いので、リズムのキレはどうしても悪くなってしまうので、激しいリズムの隙間にあるメロディを感情込めて歌っている演奏です。春の祭典がこんなにメロディアスな作品だったのかと驚かされます。

第二部:いけにえ
序奏、冒頭は速めであっさりしています。聞こえないほど遠くにいるトランペット。特に第二部ではアゴーギクも効かせて表情豊かです。残響成分が多いので金管の響きも気持ちいいし、メロディも歌うので、心地よい演奏になっています。
惜しむらくは、録音がもう少し良ければ、もっと評価された演奏だったと思います。
乙女たちの神秘なつどい、美しく歌うビオラ。色彩感もかなり鮮明です。ホルンもオーボエも歌います。勢いのある11拍子ですが、重量感はありません。
いけにえの賛美、スピード感のある演奏です。かなり乗って演奏している感じで楽しそうです。
祖先の呼び出し、ファゴットのメロディも哀愁に満ちて泣かせるほどです。無機的に演奏されることが多い春の祭典ではありえないことだと思いますが、それをやってのけたバーンスタインも凄いです。
祖先の儀式、打楽器を伴ったホルンはかなり強く演奏しています。
いけにえの踊りでは、ティンパニも思いっきり引っ叩いていますし、金管も吹きまくっているようですが、聞き手側に音が届いてこないので、凶暴な演奏には聞こえません。

録音の仕方によっては全く違う印象になったかも知れませんが、私にとっては、良い演奏でした。

イゴール・マルケヴィッチ/スイス・ロマンド管弦楽団

マルケヴィッチ★★★★
1982年のライブ録音

第一部、ライブとは思えない静寂感。虚飾を取り去ったようなシャープな演奏で、実に整然としています。
金管がかなり控えめな録音で、春のきざしのトランペットやホルンは、遥かかなたにいるようです。
ティンパニは近い。ドラは薄いものを使っている。
ゴージャスな響きはなく、むしろ簡素で作品の素の部分を聞かせてくれているようです。
金管がかぶってこないので、ffでも他のパートの動きも分かる。ライブでこれだけのバランスを保って演奏する能力は凄く高いものだと思います。
春の祭典の狂ったような高揚感もありません。しかし、これだけ複雑な音楽を整然と演奏されるとア然としますね。

第二部、速めのテンポであっさり。とにかくムダな表現をあえて極力避けているようです。
金管の咆哮も感じとしては十分伝わってくるのですが、音圧としては来ないので、ダイナミックレンジが狭い感じで、春の祭典のCDとしては、聴き易いです。
「無駄なものを削ぎ落とすとこんな作りになっているのか」と、今まで聞いていたグラマラスな春の祭典は何だったんだろうと考えさせられます。
ん~。何なんだろう。春の祭典に爆発するエネルギーや豪快に鳴る抜群に上手いオケの演奏を聴きたい人にはお勧めできません。

春の祭典を聞きあさっている人には一度聞いてみて欲しい演奏です。

マイケル・ティルソン・トーマス/ボストン交響楽団

icon★★★★
贅肉を削ぎ落とした、筋肉質でシャープな春の祭典です。若きトーマスの意欲作!

第一部、暗闇の中からロウソクの炎の立ちのぼるようなファゴットの美しいソロ。やはり良い演奏には静寂感があります。ピリッとした緊張感が漂っています。
春のきざし、一体になって締まった弦楽器。暴発しない金管が演奏をさらに引き締めている。大太鼓ももやもやした響きは残さない。小さめの楽器を使っているのでしょうか。
春のロンド、ここで少し穏やかな雰囲気になります。でも、ホルンは細身の音です。ティンパニが強烈に叩きつける部分もありますし、金管の咆哮もありますが、きちんとコントロールされていて、暴走は有り得ません。このあたりは、指揮者の能力の高さをうかがわせます。

第二部、とても繊細な弦楽器の演奏です。整然と整った演奏。この曲を混濁させることなく、聴かせる事ができる指揮者はそう多くはいないと思います。その意味では、マイケル・ティルソン・トーマスの能力の高さは凄いと思います。
極端に突出する部分もないので、この演奏がすごく印象に残るものにはなりにくいかもしれませんが、春の祭典を見事に整理して整然と演奏したことは、実はもの凄いことなのだと思います。

デッドなホールで奏者もあまり音を長く残さずに演奏して、モヤモヤするのを極力排除して、曲の構成を突きつけてきたような演奏でした。ボストンsoはそんなに上手いとは思いませんが、かなり頑張って演奏しています。

ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

メータ/1978★★★★
メータが颯爽とニューヨークへ乗り込んで最初の録音です。

第一部、若干クレッシェンドぎみに入るファゴット。静寂感があって、この先を期待させる序奏です。
登場する楽器それぞれがとても表情豊かです。
トランペットが変わったミュートをつけているような音です。
弦がコントラバスの重い音も伴って力強い音です。ホルンが鳴りきらないような変な音。
トランペット、トロンボーンは強力です。ティンパニも良い音で切り込んできます。テューバも含めた金管が炸裂します。打楽器も躊躇無く来ます。
緩い部分はゆったりとしたテンポでメリハリもあり聞けます。
いろんな打楽器が聞こえて凄い最後。やはり、これぐらい鳴り切らないと面白くないです。

第二部、少し音が粗いかもしれません。繊細な弦を聴くことはできないです。でも、場面場面の表現は上手くできているので、聞き入ることができます。オケのメンバーの集中力も高いようで、ピリッとした空気感を感じることができます。
私は、評論家がどんな評価をしようが、無音時に、このピリッとしてちょっと冷たい空気感が無い演奏は良い演奏だとは思えません。CDであっても、その場のメンバーが作り出す空気がピリッとしていたり、なんとなくザワついていたりすることがあります。
オケのメンバーが集中して、一つのことを成し遂げようとする空気はCDにも収録されるものです。
その面では、この演奏には十分な集中力があるし、実際オケの発する音にも方向性が感じられます。
ホルンは全体を通して独特の音です。ビーっと言う感じの鳴り方ではありません。割った音ではなく、太い音がします。
ティンパニが締まった良い音で気持ちが良い!この演奏では、テューバが随所で良い役割を果たしています。
ホールが少し金属的な響きを持っているようで、木質の柔らかい残響ではありません。

この演奏は、メータとニューヨーク・フィルが新たな門出に期待を込めて、お互いの力を出し尽くした演奏だと思います。

マイケル・ティルソン・トーマス/サンフランシスコ交響楽団

トーマス★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、クレッシェンドして始まるファゴット。ゆっくりとしたテンポでねっとりとした表現です。Ebクラがスタッカードぎみです。鋭く突き刺さるトランペット。
春のきざし、フワッとしていて奥まって静かな印象の弦。テヌートぎみに演奏する部分がありました。キリキリと鋭く響くトランペット。
誘拐、とても軽く演奏している感じで、力を振り絞るような感じはあまりありませんが、ここぞと言うところでは絶叫します。
春の踊り、速めのテンポであっさりと進む弦。ここでも金管の絶叫はかなり凄いです。
敵の都の人々の戯れ、軽いティンパニ。トランペットは鋭く響きますが、他のパートはそんなに強くはありません。
賢者の行列、トランペットは強烈です。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、軽いですが、鋭くシャープな演奏です。怒涛のようなエネルギーはありません。最後大太鼓が大きくクレッシェンドしました。

第二部:いけにえ
序奏、繊細な表現。重い大太鼓。とても少ない人数で演奏しているように小さくなります。トランペットはすごく弱いです。
乙女たちの神秘なつどい、離れたところでサラサラとした響きのビオラ。オフぎみで淡白な響き。大太鼓のバネのように弾む11拍子。
いけにえの賛美、大太鼓がとても強調されている感じです。
祖先の呼び出し、速めのテンポでファゴットも弾みます。
祖先の儀式、遠くて静かです。アルトフルートは歌いました。硬いシンバルが強い中ホルンが響きます。
いけにえの踊り、ミニチュアのように小さい音場感ですが、ティンパニが強烈にリズムを刻みドラも金属的な響きで入って来ます。トランペットも強烈です。ティンパニの音色は抜群に良いです。弦は控えめですが、金管はかなり強いです。最後のティンパニが独特なリズムを刻む部分の音色や金管の突き刺さるような演奏はとても良いです。

とても小さい音場感でした。ほとんどは抑え気味が軽く演奏されましたが、ここぞと言うところでは強烈な表現もありました。ただ、都会的でシャープな感じは常にありました。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

ヴァレリー・ゲルギエフ/ロンドン交響楽団

ゲルギエフ★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、凝った表現のファゴット。あまり強くないトランペット。春のきざしへ向けて加速します。
春のきざし、そのままの勢いで入ります。テンポが速いので、弦は小じんまりしています。ティンパニもあまり強く叩きません。速いテンポで慌ただしいです。
誘拐、速いテンポでオケが全開になることはありません。
春の踊り、オーボエはたっぷりとテンポを落としてねっとりと演奏されます。ドラはとても軽い音です。リミッターがかかったように金管が奥まっています。
敵の都の人々の戯れ、濃厚な色彩ですが、金管の咆哮はありません。
賢者の行列、金管は強く演奏しているようですが、録音の問題か、あまり突き抜けて来ません。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、ドラがとても軽いので、重量感を感じません。

第二部:いけにえ
序奏、ゆらゆらと揺れ動きながらとても静かな演奏です。トランペットが入る前に長い間がありました。トランペットは弱いです。
乙女たちの神秘なつどい、ゆっくりと演奏されるアルトフルート。詰まったように重量感の無い11拍子。
いけにえの賛美、バチッと入る大太鼓。
祖先の呼び出し、テヌート演奏が続きます。ファゴットは豊かな表現です。
祖先の儀式、
いけにえの踊り、テヌートぎみで柔らかく演奏されるトロンボーン。間があったりしました。トロクボーンのグリッサンドをゆっくり演奏しました。最後の音はキーロフとの録音と同じように長く演奏しました。

独自の表現が散りばめられた演奏でした。ただ、キーロフとの録音のような衝撃はありませんでした。
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フランソワ=グザヴィエ・ロト/レ・シエクル

ロト★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、僅かに細い響きのファゴット。トランペットはあまり聞えません。
春のきざし、細く軽い弦とそれに一体となったホルン。ファゴットの合間の弦はかなり音量を落として演奏しました。トランペットやホルンもあまり突き抜けては来ません。
誘拐、ホルンは今の楽器のように豊かにビリビリとは鳴りません。弦の強弱の変化はとても統率が取れていて見事です。
春の踊り、鋭く抉るような金管。リピートがあるのでしょうか?普通は通り過ぎる部分でリピートがありました。
敵の都の人々の戯れ、
賢者の行列、ホルンはかなり弱く演奏しています。トランペットも独特の音色です。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、古楽器による演奏ですが、現代の楽器との演奏と大きな違いは感じません。

第二部:いけにえ
序奏、ヴァイオリンのソロがあまり聞き取れません。暗闇と緊張感を感じさせる演奏です。
乙女たちの神秘なつどい、とてもソフトなアルトフルート。11拍子の前で大きな間を空けて、ティンパニ中心の11拍子でした。
いけにえの賛美、凄いスピード感です。
祖先の呼び出し、ここも速いです。とても歯切れの良い金管。
祖先の儀式、とても静かです。
いけにえの踊り、間をあける部分がありました。

初演当時の楽器での演奏とのことでしたが、ベートーヴェンからの100年の進歩は大きく、現在の楽器と大きな違いは感じませんでした。見た目ではホルンがロータリーではなくピストンなくらいです。間を空けることが何度もありロトならではの研究の成果なのかも知れません。全体としては爆発するような強いエネルギーはありませんでしたが、整った演奏だったと思います。
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クラシック名盤試聴記 ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」名盤 ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」名盤 ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」名盤

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