ベートーヴェン 交響曲第2番

ベートーヴェンの交響曲第2番は、1801年から1802年にかけて作曲され、1803年に初演されました。交響曲第1番に続き、古典派の形式を保ちながらも、さらに独自性が増し、エネルギーに満ちた作品です。この交響曲は、ベートーヴェンが聴覚障害に苦しみ始める中で作曲されましたが、全体に明るさと力強さが溢れています。

曲の特徴

  1. 力強いエネルギーと楽観性
    第2番は、ベートーヴェンの交響曲の中でも特に明るく、楽観的な性格を持つ作品です。ベートーヴェンが聴覚の悪化に苦しみ、絶望的な心境にあったとは思えないほど、前向きなエネルギーが感じられます。特に、第1楽章と第4楽章ではそのパワフルな表現が顕著です。
  2. 長大な序奏と斬新な構成
    この作品は比較的長い序奏を持つことでも特徴的です。第1楽章の序奏部分は壮大で劇的な雰囲気があり、その後、快活な主部が現れる構成です。また、従来の交響曲の形式を基盤としながらも、構成や展開において、ベートーヴェン独自の大胆な工夫が見られます。
  3. ユーモアと遊び心
    ベートーヴェンのユーモアや遊び心が随所に現れています。例えば、第3楽章のスケルツォは、速くリズミカルな動きが特徴で、躍動感に満ちた楽しげな雰囲気を感じさせます。また、第4楽章でもいたずらっぽい要素が見られ、聴衆を驚かせるような瞬間があります。

各楽章の概要

  • 第1楽章:Adagio molto – Allegro con brio
    長く堂々とした序奏に続き、快活で力強い主題が登場します。生命力に満ちた音楽が展開され、ベートーヴェンの情熱が感じられます。
  • 第2楽章:Larghetto
    穏やかで優美な雰囲気が漂う楽章で、柔らかく美しい旋律が特徴的です。聴いていると、温かさと平穏を感じることができます。
  • 第3楽章:Scherzo: Allegro
    スケルツォのスタイルで、リズミカルで活気にあふれた音楽が繰り広げられます。テンポも速く、いたずらっぽいニュアンスがあり、楽器同士の掛け合いが楽しい楽章です。
  • 第4楽章:Allegro molto
    エネルギッシュで開放的なフィナーレ。明るく爽快な音楽が、駆け抜けるような勢いで展開されます。終始前向きなエネルギーに満ち、聴き終わると爽快感が残る締めくくりです。

総評

ベートーヴェンの交響曲第2番は、彼が古典的な交響曲の枠を超えて、自身の個性をさらに発揮し始めた作品です。聴覚障害の影響が出始めた時期にもかかわらず、全体に明るく力強いエネルギーが満ちており、彼の内なる情熱と希望が感じられます。

4o

ベートーヴェン 交響曲第2番名盤試聴記

カール・ベーム/バイエルン放送交響楽団

icon★★★★★
一楽章、勢いのある音です。一発の音に込められたエネルギーの大きさが伝わってきます。
冒頭から気迫みなぎる演奏です。表情も厳しいく徹底されているようです。
ベームのスタジオ録音は優しさが伝わってくる演奏が多くて、その分厳しさやエネルギー感に乏しいことが多いですが、さすがにライブになると凄いです。
最初から音楽の顔つきが違います。

二楽章、一つ一つの表現も行き届いていますし、オケのメンバーもベームの要求に応えようとして、高い緊張感が生まれています。
甘美な演奏ではありませんが、非常に高い緊張感が生み出す空気感や引き締まった表現がすばらしいです。

三楽章、バイエルン放送交響楽団の方が、ウィーン・フィルよりベームの要求に素直に対応してくれるのではないかと思えるほど、オケの真摯な演奏にも感心します。

四楽章、楽譜をめくる音までも克明に録音されています。ラジオ放送用の音源だとのことですが、録音状態もすごく良いです。

終結へ向かう熱気と盛り上がりはさすがです。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー管弦楽団

朝比奈/大阪フィル★★★★★
一楽章、ここでも、堂々したたたずまいが一貫している。作品のはつらつとした若々しさが伝わってくるような生き生きした演奏です。
左右方向に広々とした音場を形成するので、音楽のスケールの大きさをさらに強調するような録音です。
カラヤンの70年代のスタジオ録音が左右方向にはあまり広がりがなかったので、とても窮屈に感じました。その上、中低域に厚みがあるので、音がダンゴ状になってしまって、さらにテンポが速いときているので、辛いところがありました。

二楽章、深みがあって音楽に身をゆだねることが出来ます。

三楽章、歌も自然だし、乱暴なところがない。最後の全集も聞いてみたくなりました。

四楽章、それにしても、ライブ録音でこれだけ完成度の高い演奏を、それも9曲ムラなく実現したことに感服します。

ブルーノ・ワルター/コロンビア交響楽団

ワルター★★★★★
一楽章、ゆったりとした落ち着きと温かみのある演奏です。穏やかに音楽が流れて行きます。音楽に尖ったところが全くなく、マイルドで豊かな演奏です。

二楽章、ことさら強調することもなく、自然に音楽が流れて行きます。

三楽章、温かみのある音楽がとても心地良いです。

四楽章、自然な豊かさはすばらしかった。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ベートーヴェン:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

ハンス・クナッパーツブッシュ/ブレーメン・フィルハーモニー管弦楽団

クナッパーツブッシュ★★★★★
一楽章、勢いをつけてドカーンと来た冒頭でした。積極的に歌います。アクセントを強めにはっきりと付けて演奏しています。テンポも大胆に動きます。音楽にはつらつとした若々しいエネルギーが溢れています。

二楽章、咳払いの中から蝋燭の炎の立ち上るように始まりました。抑揚の幅を大きくとって豊かな歌を聞かせます。繊細な表現があったかと思うと、コントラバスが唸りを上げたり幅の広い表現です。

三楽章、この楽章でも強弱の振幅が幅広くメリハリの利いた演奏です。

四楽章、かなり遅いテンポです。遅かったのは冒頭部分だけで、すぐにアッチェレランドして一般的なテンポになりました。とても色彩感豊かな演奏です。アッチェレランドして怒涛の終演でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、遅いテンポの演奏です。探りながら進むような序奏。第一主題あたりから一般的なテンポになりました。ミュンヘンpoの機敏な反応が強靭な演奏の土台となっています。聞く前には、遅いテンポでベートーヴェンらしい力強さは表現されないのではないかと思っていましたが、十分に力強い。

二楽章、弦も木管も美しい第一主題。フレーズごとにアゴーギクを効かせるようなことはありませんが、曲を大きく捉えて大きな波が押し寄せるような抑揚があって、とてもすばらしいです。

三楽章、この楽章も遅めのテンポです。遅いテンポでもオケは全く乱れることはなく、高い集中力を聞かせます。作為的なことは一切なく真摯に作品と向き合っています。強弱の変化にはとても機敏に反応します。

四楽章、とても生き生きとした表現の演奏です。生命観が湧き上がるような、聴き手を力づけるようなすばらしい演奏でした。

ルネ・レイボヴィッツ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

レイボヴィッツ★★★★★
一楽章、静寂感の中に響く序奏。力強い第一主題。畳み掛けるように前へ進む音楽。展開部に入っても音楽は前に前に進みます。とても活発でダイナミックです。

二楽章、穏やかな第一主題。第二主題もゆったりと穏やかです。一体になったオケの見事なアンサンブルと響きが美しい。音が散漫にならずに、集まってきているようです。

三楽章、軽快に踊るようなスケルツォ。見事な一体感です。

四楽章、活発な動きの第一主題。音楽が前に進むエネルギーはとても強いです。強弱の変化にも敏感に反応して、消え入るような弱音からトゥッティの厚い響きまで幅広い表現です。

穏やかな表現の二楽章から、力強く推進力のある四楽章まで、幅広い表現の演奏でした。オケの一体感も見事でとてもまとまりのある良い演奏でした。
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パーヴォ・ヤルヴィ/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団

ヤルヴィ★★★★★
一楽章、凝縮された力強い響き。活発に動く第一主題。ベートーベンらしい鋭角的な強弱の変化もあります。ザクザクと抉るように音楽が流れて行きます。凄いエネルギーと集中力です。

二楽章、穏やかな中にも活発な動きがあります。弓をいっぱいに使って全力で演奏するような凄みがあります。

三楽章、速いテンポですが、躍動感があり、音楽が常に動いています。

四楽章、この楽章も速いテンポです。凄い勢いで突き進むような疾走感です。緻密に動くいろんな楽器が克明です。

緻密で、しかも躍動感があり、活発な音楽でした。全力で音楽をするような迫力に満ちた演奏は素晴らしかったです。
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クラウディオ・アバド/マーラー室内管弦楽団

アバド★★★★★
一楽章、良く歌います。厳しく精悍な演奏で、颯爽としています。色んな音が重なり合って、情報量が多いように感じます。コーダではかなりの強奏です。

二楽章、速めのテンポでくっきりとした輪郭の演奏です。押したかと思うとスッと引く引き際の良さがとても良い演奏です。優しさよりも力強さのある演奏です。

三楽章、速めのテンポです。極端に強弱の変化を付けることは無く、自然な流れですが、表情は豊かです。

四楽章、速いテンポです。生き生きとした表情です。室内オケですが、強弱の振幅はすごく大きいです。

颯爽とした精悍な演奏でした。表現も緻密でとても良く歌い、いろんな音も聞こえて来る演奏はなかなかでした。
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ロジャー・ノリントン/ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ

ノリントン★★★★★
一楽章、鋭い響きの冒頭。どの楽器も鋭い響きなので、響きが溶け合わず、その分くっきりと浮かび上がります。速いテンポで躍動感のある第一、第二主題。表情も締って生き生きとしています。強弱の変化にも敏感です。

二楽章、良く歌う第一主題。速めのテンポでザクザク進みます。弾むようなリズムで活力を感じます。

三楽章、快速です。強弱の変化も鋭いです。表情に締りがあって、緊張感のある演奏です。トリオに入っても良く歌います。

四楽章、スピード感のある第一主題。シャープな切れ味の演奏でした。

ピリオド楽器の鋭い響きとマッチするような、鋭角的な演奏で、引き締まった表情やスピード感はなかなか良かったです。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

サヴァリッシュ★★★★★
一楽章、力強い二打、続く木管は可憐な表情です。非常に落ち着いた序奏。トゥッティの巨大な響きと弱音の可憐さの対比がとても良いです。力強い第一主題。とても豊かに歌っていて、聞いていて心地良い演奏です。響きも深みがあり美しいです。活発に色んな楽器が動いていて、とても情報量が多いです。豪華絢爛なコーダです。

二楽章、美しい歌です。

三楽章、強弱の変化があって躍動感のある演奏です。スピード感もあります。トリオのオーボエも良く歌います。トゥッティも思い切りが良く気持ちいい演奏です。

四楽章、思い切りが良いので、響きが豊かでとても豪華に響きます。

豪華絢爛な演奏でした。この作品がこれほど豪華に聞こえたことはありません。歌も十分あり、作品への共感を感じさせる演奏でした。
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ヨス・ファン・インマゼール/アニマ・エテルナ

インマゼール★★★★★
一楽章、バロックティンパニの強い二打。鋭い響きのヴァイオリン。ダイナミックの幅が広い演奏です。静かに弱く演奏される第一主題が次第に力を増して行きます。かなり思い切って入る金管。コーダでは輝かしいトランペットの響きが印象的です。

二楽章、割と速めのテンポでサクサク進みます。涼しげな響きで爽やかな演奏です。大きく歌うことは無く、淡々と音楽は進みます。

三楽章、速めのテンポですが、強弱のコントラストは鮮明です。トリオのオーボエは歌いました。

四楽章、この楽章も速めのテンポです。鋭角的な表現ではありませんが、強弱の変化は大きいです。ティンパニはとても思い切りが良いです。力強く心地よい演奏です。

鋭い弦の響きがザクザクと刻まれて、思い切りの良いティンパニがドンと入る演奏はとても心地良いものでした。大きな歌はありませんでしたが、強弱の変化も大きく聞き応えがありました。
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投稿者: koji shimizu

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