ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」2

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」名盤試聴記

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、ゆったりとして、とてもシルキーで滑らかな演奏です。清潔感があってすがすがしい響きです。機敏に反応するオケもチェリビダッケに相当鍛えられたのだろう。この演奏では音の扱いがとても丁寧で優しいので、ゴツゴツした「英雄」ではありません。格調高く上品な「英雄」です。微妙な表現も細部まで徹底されています。終盤にトランペットの第一主題の後ろのティンパニのトレモロをクレッシェンドしました。

二楽章、冒頭は悲しみにくれるような葬送行進曲です。続く部分は自然な歌で、作為的なところはありません。ライヴとは思えない美しい音と見事なバランス。ffではかなり強く演奏しているのですが、決して荒々しくは響きません。とてもマイルドで美しい響きです。

三楽章、極めて小さい音からクレッシェンドして入りました。室内楽のような精密でしかも生命観のある演奏。トゥッティの一体感もすばらしい。トリオのホルンは非常に明るい音色で大空に広がって行くようなスケールの大きさで魅了されます。鏡面仕上げのように磨き上げられた美しく滑らかな演奏はすばらしいの一言です。

四楽章、繊細な響きの弦の冒頭。ライヴとは思えない静寂感。精密部品で組みあがっているような精度の高い音楽です。途中からかなりテンポを落として一音一音丁寧に描くように演奏して行きます。ホルンが主題を演奏するクライマックスは凄く強弱に変化を付けて最後はマックスのパワーで壮大な演奏でした。最後は巨人の歩みのように堂々と終えました。

磨きぬかれた美しい音色と、幅広いダイナミックレンジ。すばらしいスケール感の英雄でした。

カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、スピード感のある2和音。独特の華やいだ雰囲気があります。ジュリーニは動物を操るように音楽を自在に操って行きます。反復があります。歌に合わせてテンポも動きます。強弱の変化も激しく、とても積極的に音楽を作っています。同じようにテンポの遅い演奏でもチェリビダッケの静に対して、ジュリーニは動です。ミラノ・スカラ座フィルとの演奏の時に感じた響きの薄さもさすがにウィーンpoでは感じません。逆に凄い音の厚みです。強いインパクトで深い彫琢を刻み込んで行きます。ジュリーニの気迫がウィーンpoにも乗り移ったような凄い迫力で迫ってきます。

二楽章、悲しみにくれるような冒頭です。弱音の悲しみを内に秘めて必死にこらえているような表現から、トゥッティではこらえきれずに溢れ出すような壮絶な感じです。繊細な弱音と奥ゆかしい歌を見事に表現するウィーンpo。ティンパニもトゥッティの壮絶感をすばらしい音で演出します。

三楽章、一転して生命感に溢れた生き生きした音楽です。トリオのホルンはウィンナ・ホルンらしい柔らかい響きです。ジューリーニの指揮に敏感に反応するオケ。ジュリーニが作品に生命を吹き込んだような生き生きした演奏でした。

四楽章、この楽章も動的で生き生きしています。美しい木管。分厚い弦の響き。とても色彩感の濃厚な演奏です。テンポは遅いですが、一音一音に凄い力があって、音楽を克明に刻み込んで行くような凄味があります。クライマックスのホルンも強い音での咆哮でした。最後もティンパニの強烈な三連符で盛り上げました。

重量級の演奏でしたが、生命の宿った生き生きとしたすばらしい名演でした。

フィリップ・ヘレヴェッヘ/オランダ放送室内管弦楽団

ヘレヴェッヘ★★★★★
一楽章、速めのテンポで音を短めに演奏する部分があります。小さい編成を生かした機敏で軽快感のある演奏です。提示部の反復がありました。響きに透明感があり、よく歌い、躍動感もあります。ジンマン程の超高速演奏ではありませんが、とても軽快で重苦しくない気持ちの良い演奏です。バロックティンパニの硬質な響きが気持ち良いです。

二楽章、この楽章も速いテンポですがとても良く歌い表情豊かです。テンポが速めなので、葬送行進曲の感じはあまりありませんが、鮮度が高く清々しい響きが印象的です。金管も軽く重量級の演奏とは一線を画しています。

三楽章、この楽章は速くも遅くもないテンポです。トリオのホルンも良く歌いました。指揮にとても良く反応するオケ。

四楽章、この楽章も速めのテンポです。良く歌う演奏は聞いていてとても心地良いものです。金管も全く吠えるようなことは無く、整然としています。最後ティンパニの三連符が強烈でした。

小さい編成を生かした軽快で美しく、しかも良く歌う演奏は、これまで聞いてきた英雄の演奏とはまた違った一面を聞かせてくれました。重量級の演奏も良いけど、こういう演奏もまた良いものです。
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ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1952.12.8

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一楽章、同じ年のウィーンpoとのスタジオ録音に比べると少し音は悪いですがフルトヴェングラー独特の弱音から強音に向かっての加速はさすがです。刻み付けるような低速部分と凄い勢いを付けて加速する部分の対比が見事です。重いところは物凄く重い演奏で、かなりの重量感です。たっぷりと歌うクラリネット。最近のベーレンライター版の演奏とは全く違う重戦車のような重々しさです。再現部では、フワッと湧き上がるような柔らかい響きでした。ホルンも美しい演奏です。テンポはライヴのためかかなり即興的に突然動きます。

二楽章、すごく遅いテンポで始まりました。悲しみを込めるような悲痛な演奏です。深淵に落ちていくようなどこまでも深い音楽です。Bに入っても遅いテンポはそのままです。こけおどしのような表現は全く無く、堂々と作品に対峙しています。普通の指揮者がこのテンポで演奏したら、音楽が弛緩してしまいそうですが、この演奏は緊張感がピーンと張りつめています。ただでさえ遅いデンポなのに、遅いところではさらに遅くなります。間を空けたりテンポが動いたり自在な変化があります。テンポを落とすところではたっぷりとした豊かな表現です。

三楽章、どっしりと構えたテンポです。この楽章でもテンポの動きが絶妙です。トリオのホルンも表情豊かです。感情に任せたテンポの揺れは自然でとても心地良いものです。力みも無く自然体で伸びやかな音楽です。

四楽章、ゆったりとしたテンポで間があります。テンポを落とすところはすごく遅いです。歌も自然です。この当時のライヴ録音としてはかなり音質は良いと思います。十分に美しいと思える響きです。かなり吠えるトランペットが当日の熱気を物語ります。堂々としたコーダでした。

ウィーンpoとのスタジオ録音よりも感情の起伏の大きな演奏でした。ライヴの録音の制約を考慮してもこの音質であれば十分です。二楽章のテンポを落とした表現や四楽章の力強い金管など、テンポの動きや表現の幅広さなど、どこを取っても最高の演奏でした。
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ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1944年

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一楽章、ゆったりとした主和音。第一主題もゆったりとしたテンポで確かめるようです。基本的にはゆったりとしたテンポでスケールの大きな演奏ですが、所々でアッチェレランドがあって緊迫します。木管が良く歌います。再現部のホルンの第一主題の後に猛烈なアッチェレランドがありました。序盤のゆったりしたテンポから畳み掛けるような激しい演奏。激しくテンポが動きます。この演奏の感情の起伏は物凄いものがあります。フルトヴェングラーの数ある「英雄」の中でもこの1944年盤がウラニアのエロイカと言われて、録音は古いけれども貴重な盤として存在してきたのは、この表現の幅広さがあったからなのですね。

二楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポで感情を吐露します。Bに入る前に大きくテンポを落としました。Cに入るとかなり劇的なテンポの動きで興奮を煽ります。凄い感情移入でオケもそれに応えて一体になった見事な演奏を展開します。

三楽章、表情豊かで美しいトリオのホルン。トリオの終わり付近での大きなリタルダンドも凄く効果的ですが、これも自然に出てきた表現なのでしょう。すばらしいです。

四楽章、怒涛のようになだれ込む序奏。弦のビッィカートが出るところから凄くテンポを落として演奏します。自在なテンポの動きに惹きつけられます。徐々にテンポを上げる迫力のコーダ。

感情の起伏の激しさをそのまま演奏にしたような凄い演奏でした。録音は古いけれど、一聴の価値はあります。
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グスターボ・ドゥダメル/ベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団

ドゥダメル★★★★★
一楽章、予想していたよりゆったりとしたテンポで伸び伸びと生き生きとした演奏です。若いエネルギーがこちらへ向かってきます。テンポの動きもあり緊張感を増したり、フッと緩んだりします。非常に積極的に歌い、躍動する音楽です。凄いエネルギー感です。若さが持つパワーは本当に凄いなぁと思います。こんなに生き生きとした音楽は久しぶりに聴くような気がします。これでもかと言うくらい積極的に歌い表現しています。巨大な編成を生かしたダイナミックな表現です。

二楽章、この楽章でもたっぷりと歌い、哀しみを表現しています。Bへ入っても豊かに歌う木管。潤いのある瑞々しい響きが美しい。Cに入って伸び伸びと鳴り響くホルン。奥深いところから湧き上がるような音楽。ドゥダメルも自然なテンポの動きで、豊かな音楽を奏でています。

三楽章、速めのテンポでとても躍動感のある演奏です。猛スピードで駆け抜けて行くようなスピード感です。トリオのホルンも元気いっぱいで躍動感が凄いです。

四楽章、この楽章も猛スピードの序奏でした。変奏に入っても速いテンポです。若いメンバーが自分達の音楽を精一杯表現している様子がとても心地良いです。若さが音の力にもなっているかのような力強さです。南米のベネズエラにこれほど才能溢れる若者達が大勢いることにも感激します。すばらしいオケです。クライマックスも壮大なスケールで見事でした。湧き上がるようなコーダも素晴らしかった。

若いオケの躍動感に溢れた生き生きとした音楽は素晴らしかったです。歌に溢れて、しかもスケールの大きなクライマックスも見事でした。
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ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2005

ハイティンク★★★★★
一楽章、速いテンポですっきりとした透明感のある響きの演奏です。いつもながらですが、引き締まった表現で細部まで行き届いています。提示部の反復がありました。水も漏らさないような緻密なアンサンブルで、絶え間なく湧き上がるような豊かな音楽です。テンポが大きく動くことはありませんが、美しい歌です。また、音楽に推進力もあります。旋律の歌に合わせて伴奏しているパートも同じように絶妙の抑揚を付けて演奏するあたりは、さすがハイティンクの隠れた技です。

二楽章、この楽章も速めのテンポです。深い悲しみがジワーッと沁み出してきます。会場の静寂感もすばらしいです。ピーンと張りつめた緊張感もなかなかです。泣き叫ぶようなティンパニ。がっちりとした構成感はありませんが、しなやかで美しい音楽です。

三楽章、遠くから自然に聞こえて来るような冒頭部分でした。控えめですが、バランスの良いトリオのホルン。

四楽章、この楽章も速いテンポですがあまり速さを感じさせない落ち着きがあり、ドタバタしません。とても上品で高貴な音楽です。金管が吠えることもありませんし、大きな表現もありませんが、心にジワーッと迫ってくる感動。何もしていないようで、細部まで細心の注意を払った演奏の美しさ。全く力みの無いトゥッティ。

全く誇張の無い、淡々とした演奏のように見えて、実は細部まで行き届いた引き締まった演奏。緻密なアンサンブルで、絶え間なく湧き上がるような豊かな音楽。とても上品ですばらしい演奏でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ベルリンフィル創立100周年記念公演(初日1982年4月)ライヴ

カラヤン★★★★★
一楽章、流れるような第一主題。レガート奏法がとても滑らかで美しいです。緩急の対比もしっかりと付いていて、急のスピード感も凄いです。良く歌い表情もすごく豊かです。表面がツルツルしているような感じの肌触りで、とても美しいです。このツルツル感はカラヤン独特のもので。他の指揮者の演奏では感じなかった特長です。再現部のホルンもマットでしたが、非常に美しく響きました。高性能のスポーツカーのような精密で繊細でしかも超高速でブッ飛ばすことが出来る高機能オケの見事な演奏です。

二楽章、この楽章もレガート奏法で独特の主要主題。非常に美しい弦。カラヤンが元気だった最後ごろのコンサートです。ガリガリと情熱的に刻まれる低弦。Bでもオーボエ、フルート、ファゴットと受け継がれるメロディが非常に美しい。Cに入ると繊細で木目細かな弦が肌を撫でるような心地良さ。ホルンやトランペット、ティンパニもかなり強奏しています。かなり熱気も感じる演奏です。悲しみの淵へ落ちて行くような表現ではありませんが、美しさと言う点では、最上の演奏だと思います。流れるような滑らかさは一貫しています。最後はテンポを落として終わりました。

三楽章、どの楽器も非常に美しいです。シルクのような滑らかさ。トリオのホルンは少し遠くから響くような感じでした。

四楽章、滑らかですが、熱気を感じる序奏。この楽章は速めのテンポでどんどん進みます。ライヴ録音でこれだけ美しい音が収録されていることにも驚きます。音楽が前へ前へと進む推進力があります。トゥッティの深い響きもすばらしい。最後までガッチリと固まった強固な造形美。本当に美しい演奏でした。

もしかしたら、作品の内面性などは表現していないかもしれませんが、これだけ美しい演奏には文句無く惹かれます。精密で繊細、しかも高性能なオケ。レガート奏法の滑らかで流れるような演奏も今となっては貴重な記録です。すばらしい演奏でした。
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クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ティーレマン★★★★★
一楽章、ウィーンpoらしい充実した響きの主和音。最近のピリオド演奏のような速いテンポではなく、伝統的なテンポです。ウィーンpoが自分達の伝統に沿った演奏を自信に満ち溢れた姿勢で演奏しています。提示部の反復がありました。テンポも要所要所で動きがあります。かなり積極的にテンポを動かして濃厚な表現をしています。クレッシェンドに従ってテンポを速めるあたりはフルトヴェングラーを意識しているのでしょうか。勿論ティーレマン独特のテンポの動きもありますが。コーダのトランペットは旋律通りに吹きました。ハッとさせるようなとても良いテンポの動きがあって、音楽がとても濃いです。

二楽章、最近では珍しい遅めのテンポでたっぷりとしています。テンポの動きはすごく自由な感じで、ガクッとテンポを落としたりして、重い葬送行進曲になっています。最近の楽譜至上主義の演奏とは対極をなすような演奏で、昔懐かしい演奏が蘇って来るようです。現代にこのような若手指揮者がいることに非常な喜びと期待を感じます。感じるままに大きく動くテンポ。この動きにウィーンpoも喜んで付いていっているようにも感じます。

三楽章、弾むような生気に溢れた演奏です。スピード感と躍動感があります。明るく明快なトリオのホルン。

四楽章、弱音で緊張感の高い第一変奏。伸び伸びと歌う木管。ダイナミックの幅も大きくかなりの熱演です。かなり間を取ったり、テンポの変化に伴った豊かな表現もあって、なかなか良い演奏です。咆哮するウィンナ・ホルン。堂々としたコーダ。

最近のピリオド奏法の演奏とは一線を画す重量急の演奏でした。ティーレマンは一時代前の演奏を引き継ぐ貴重な指揮者でしょう。テンポを動かしたり、間を取ったりした豊かな表現も良かったです。ウィーンpoもティーレマンに共感して演奏しているようでした。
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ロジャー・ノリントン/シュトゥットガルト放送交響楽団

ノリントン★★★★★
一楽章、主和音の後に豊かなホールの響きが残りました。第一主題が出たところではそんなに速くは感じませんでしたが、すぐに速いテンポになりました。ヴァイオリンがガット弦のような鋭い響きをしています。編成はかなり大きいです。提示部の反復がありました。鋭いトランペット。テンポや強弱の変化など独特の解釈です。凄く動きがあって躍動感に満ちた推進力のある演奏です。良く歌います。ゴツゴツとした男性的な「英雄」です。もの凄いスピード感と集中力です。勿論コーダのトランペットは楽譜通りです。

二楽章、速いテンポです。色彩感はとても鮮明です。トランペットが突き抜けてきます。テンポも動いていて、速いテンポ一辺倒のピリオド演奏とは違います。楽譜至上主義ではなく、ノリントンの主観的な解釈もかなり含まれた演奏です。出すところでは、その楽器をかなり強く演奏させるので、コントラストが明快で濃厚な色彩です。最後はゆったりとテンポを落として終りました。

三楽章、微妙に変化する強弱。生命感を感じる生き生きとした音楽。激しく咆哮するトリオのホルン。

四楽章、B♭B♭B♭とffで八分音符ず三つ並ぶところを最初の音を強くデクレッシェンドするように演奏するのが特徴的です。強弱の変化が明快で、生き生きとした表現はこの楽章でも健在です。とても積極的で激しいとも取れるような表現です。情熱的なホルンの咆哮。突き抜けて来るトランペットが気持ち良いです。

ピリオド奏法の演奏でしたが、ただそれだけにとどまらず、テンポの動きや豊かな表現。ダイナミックの変化も幅広く、躍動感や生命感のある演奏は素晴らしかったです。
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ルネ・レイボヴィツ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

レイボヴィッツ★★★★★
一楽章、速いテンポで清涼感のある響きの演奏です。凄いスピード感です。アンサンブルがきっちりとしていて、とても見通しの良い演奏です。美しい響きで繊細な感じがします。

二楽章、静かに演奏される主要主題。一楽章ほどの速さは無く、ブライトコプフ版の伝統的な演奏に比べて僅かに速い程度です。哀しみを強調するような演奏ではなく、楽譜に忠実に自然体で作品の美しさを表現しているようです。深く豊かな表現もありました。

三楽章、この楽章は速いです。躍動感があって生き生きとしています。オケの反応も良く瞬発力があって良く弾みます。トリオのホルンも豊かな表現で伸び伸びと歌います。

四楽章、三楽章の勢いそのままに四楽章に突入しました。清涼感のある響きがとても美しいです。静寂感もあり、オケの集中力の高さが感じられます。躍動感や生命感がある演奏でとても良いです。クライマックスで朗々と吹き鳴らされるホルン。トランペットは音が短めでした。コーダではさらに加速しているような勢いでした。

速いテンポの演奏でしたが、清涼感のある繊細で美しい演奏でした。生き生きとした躍動感も素晴らしい演奏でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1966年東京文化会館ライヴ

カラヤン★★★★★
笛吹のクラシック音楽ライヴ と オーディオの記事の笛吹さんから音源を送っていただきました。ありがとうございます。

一楽章、冒頭から分厚くグラマラスな響きです。テンポも速めですが、スピード感があって颯爽と進みます。蒸気機関車がもくもくと煙や水蒸気を吐きながらぐんぐんと進んで行くような力強さがあります。当時としては物凄く速いテンポの演奏だったのではないかと思います。息つく暇も与えないように畳み掛けるような演奏で、カラヤンについてよく言われる「表面を徹底的に磨き上げた」と言うような演奏とは違うように感じます。一発に賭ける集中力や意気込みを感じます。

二楽章、アゴーギクを効かせて動く主要主題。感情の振幅がとても大きいです。ガリガリと音楽を深く掘り進むような貪欲な演奏です。激しく強奏する金管。「表面を徹底的に磨き上げた」と言うのはスタジオ録音の演奏のことであってこのライヴでは、音楽の本質を追い求めるようなひたむきさを感じます。テンポを落として大きく歌う部分もあります。

三楽章、適度な温度感のある響きで始まります。トゥッティの分厚い響き。この当時から巨大な編成で演奏していたのだろうか。浅い響きのトリオのホルン。フルスイングするようなスピード感はカラヤンのライヴならではですが、響きの厚みが過ぎて飽和していているような感じがします。

四楽章、この楽章も速いテンポで勢いがあります。ライヴでベートーヴェンを演奏するカラヤンはスタジオ録音とは全く別人のようです。スタジオ録音ではこのようなスピード感は絶対に聞くことができません。前へ突き進むエネルギーは尋常ではありません。クライマックスのホルンも壮絶でした。

スタジオ録音とは全く別人のようなスピード感の演奏でした。この演奏を聴いてしまうと、スタジオ録音は置きに行っているような感じさえします。火のようなフルスイングの演奏を録音でも残していればカラヤンの評価も違ったものになっていたのではないかと思います。

投稿者: koji shimizu

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