ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」2

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第5番「運命」名盤試聴記

朝比奈 隆/新日本フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、この全集一貫して言えることですが、ゆったりと堂々とした演奏です。一歩一歩踏みしめるような安定感があって、小細工など全く似合わない実に立派な演奏です。
テヌートを多用されていて、雄大さがさらに強められているように感じます。
これだけテンポが遅くても音楽が緩慢にならないところもすばらしい。

二楽章、テンポが遅いので、一音一音丁寧に演奏されています。日本のクラシック音楽界の重鎮として、朝比奈は尊敬されていたんだなあと感じるに十分な音楽です。
ヘタをすると音楽が散漫になりかねないテンポ設定でも、緊張感が維持されているのは、朝比奈の力量と言うようりも、人柄というか楽員との強い信頼関係が出来ていたのではないかと想像します。

三楽章、どこかのパートが突出して上手いとか感じることはないのですが、ブレンドされた響きが美しい演奏です。

四楽章、かなり余裕をのこしたファンファーレでした。私が抱いていたベートーベン像を良い意味でこの演奏は、覆してくれました。ベートーベンと言うのは、もっとゴツゴツした男っぽいものだと思い込んでいました。

こんなに優しいベートーベンには初めて接したし、それがものすごく説得力がある。最後まで力みの無い自然体。人間臭さから神に近づくと、こんな演奏ができるようになるのでしょうか。全集としても出来不出来の差もあまりなく、ライブでありながら、すばらしい完成度です。

クラウス・テンシュテット/キール・フィルハーモニー管弦楽団

テンシュテット/ライブ★★★★☆
一楽章、冒頭から、強烈。鮮血飛び散るような殺気立った演奏です。畳み掛けるようなテンポにオケが必死に喰らい付いていくようです。テンシュテットの演奏はいつもそうですが、大変起伏が激しい。

輪郭がクッキリした音楽。ティンパニとともに雪崩を起こすように襲い掛かってきます。

ミスもありますが、ミスなんかどうでも良いような気迫です。

二楽章、ティンパニはたびたび間違えています。オケは決して上手くはありませんが、必死さは十分伝わってきます。

三楽章、朝比奈のように楽譜に書かれていることに忠実に演奏する、自然体とは対照的な演奏です。テンシュテットの天性の音楽性なのか、意図した仕掛けなのかは判断がつきませんが、聴く者を引き込む力を持っているすごい演奏であることは間違いありません。

四楽章、咆哮するトランペットのファンファーレ!アンサンブルはかなり乱れますが、テンシュテットにとっては些細なことなのでしょう。自分の心の中の音楽を再現できれば、小さなミスはどうでも良い。

トロンボーンとホルンもティンパニも全力。まさに狂気です。

カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、速い!畳み掛けるようなテンポで始まったと思ったら、ホルンの主題で一気にテンポが落ちて、次第にテンポが上がって・・・・・・。

鮮血ほとばしるような、非常にホットな演奏です。すごい集中力。

表情もすごく豊かです。

二楽章、一楽章から一転して、ゆったりしたテンポです。緊張感が静寂感とともに伝わってきます。すばらしい!

三楽章、湧き上がる感情をストレートにぶつけてくるクライバーの演奏には凄みを感じます。また、リズムの躍動もこの演奏の特徴です。

四楽章、強弱の振幅もすごく広い、テンポの動きも湧き上がる感情を抑えることなくストレートです。オケもクライバーの好演に必死に応えているようです。ウィーンpoからこれだけ本気の演奏を引き出した指揮者も少ないのではないかと思います。

剛速球を投げ込まれたような演奏でした。すばらしい!

エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、弦と弓のこすれる音がザラザラと響く第一主題。瑞々しく艶やかな響きです。ゆったりとしたテンポで歌う第二主題。音楽に活気があって推進力があります。テンポも大きく動く部分があります。

二楽章、豊かに歌う第一主題。明るく突き抜ける気持ちの良いトランペットの第二主題。色彩感が豊かで美しい響きは聴いていてとても心地良いものです。自然な流れの中で豊かに歌う音楽もとても良いです。

三楽章、注意深いですが、それでも歌う冒頭。気持ちよく鳴るホルンの主題。

四楽章、明るく鳴り響く第一主題。湧き出すようなエネルギーを感じさせる演奏です。コーダから終わりへ向けて少しアッチェレランドしました。

瑞々しく艶やかな響きで、豊かに歌い推進力のある演奏はなかなか良かったです。
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ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団 1966年

オーマンディ★★★★☆
一楽章、低域を伴った豊かな響きの第一主題。艶やかで美しい響きです。木管が美しく歌う第二主題。テンポは変化なくすっきりと進みます。

二楽章、ゆったりとたっぷりと歌う第一主題。一楽章のすっきりとした演奏とは対照的にねっとりとした表現です。きりっと立った木管が美しいです。

三楽章、テンポも動いて歌う冒頭。張りがあり元気なホルンの主題。トリオの低弦の動きもゴリゴリと活発です。コーダの最後は猛烈なクレッシェンドでした。

四楽章、ゆっくりと刻み付けるような第一主題。さすがに豊麗な響きです。適度にスピード感もあり、集中力も感じる演奏です。楽譜に無い、一旦音量を落としてクレッシェンドする部分もありました。

フィラデルフィアoの豊麗な響きを存分に引き出した演奏で、艶やかで美しい演奏でした。ゆったりとねっとりと歌う楽章やスピード感のある楽章など変化のある演奏でなかなか良かったです。
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オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ

icon★★★★
一楽章、テンポの動きと高揚感が一体になっていて、それでいてバランス感覚もとても良い。
この全集を通して一貫しているのは、節度がある格調高い演奏です。品のある大人のベートーベン

二楽章、とても美しくてガラス細工のような繊細さ。細部の細部にいたるまで研ぎ澄まされた、ハッタリとは無縁の演奏です。
少し古めかしいトランペットの音にも伝統を感じます。旋律を大げさに歌うこともありません。
スタジオ録音ならではの均整の取れたベートーベンです。

三楽章、金管の咆哮と言うような凶暴なシーンもありません。
この曲は、このオケでスヴェトラーノフの指揮で聞いたことがありますが、スヴェトラーノフが指揮をしても、このいぶし銀のような音色を失うことがありませんでした。そして、暴走することもありませんでした。
ウィーンpoとは違う伝統を持っている良いオーケストラだと思います。

四楽章、トランペットのファンファーレもテヌートにしないので、あっさりしています。アッチェレランドも一糸乱れぬアンサンブル。熱気を帯びてはきますが、爆発はしません。
ベルリンpoのようなグラマラスなところもありません。でも、この繊細さはすばらしい。

ドイツにはすごいオーケストラが地方都市にもあるところが音楽文化の深いところですね。

ハインリッヒ・シフ/オランダ放送室内管弦楽団

シフ★★★★
一楽章、速いテンポでフェルマーターも短い第一主題です。切迫したような緊張感があります。オケの響きは透明感があって美しいです。

二楽章、この楽章も速いテンポで弾む第一主題。柔らかい第二主題。とても良く歌います。ティンパニのクレッシェンドがありました。

三楽章、ここでも良く歌う冒頭。張りのある響きのホルンによる第一主題。トリオは凄く速いテンポで駆け抜けるようです。

四楽章、トランペットが突き抜けて来ないので柔らかい感じになる第一主題。コーダは大きく盛り上がること無く終わりました。

暗から明を強調したような演奏では無かったのですが、演奏の所々にこだわりがあり個性を感じさせられました。美しい演奏でしたし良かったのですが、個人的にはトランペットが突き抜けて、最後は解放されるような演奏が好きです。
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チョン・ミョンフン/ソウル・フィルハーモニー管弦楽団

チョン★★★★
一楽章、割と速めのテンポで進みますがとても柔らかい響きで、金管は奥まっています。あまり歌わずに淡々と進む第二主題。

二楽章、テンポが動いて歌う第一主題。奥まったところから鳴るトランペットの第二主題。弦や木管の近さに比べると、金管はとても遠いです。

三楽章、淡々と進む主部。トリオはスピード感があります。

四楽章、速いテンポの第一主題ですが、やはりトランペットは奥まっていて強くは響きません。引き締まった厳しい表現もあります。オケが一体になった集中力も感じさせます。コーダへ向けて熱気が伝わって来ます。コーダのアッチェレランドも素晴らしかったです。

四楽章は素晴らしい熱気と一体感でした。ただ、そこに至るまでが淡泊で、フワッとした演奏だったのが残念でした。
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クルト・マズア/フランス国立管弦楽団

マズア★★★★
一楽章、深みがあって柔らかい第一主題はフェルマーターが短めでした。あまり歌うことなく自然体で進む第二主題。

二楽章、この第一主題も大きく歌うことは無く、淡々と進んで行きます。付点の短い方の音を強調するような第二主題。変奏も奥ゆかしい歌です。展開部で現れる第二主題でティンパニがクレッシェンドしました。

三楽章、あまり強く吹かないスケルツォ主題。トリオもガツガツと刻み込むような演奏ではなく、軽いタッチです。ここまでの演奏は楽譜に忠実に自然体で中庸の演奏と言う感じです。

四楽章、エネルギーをぶつけてくるような感じはなく軽い第一主題。少しずつ熱気を感じるようになって来ました。常にオケを限界まで鳴らすことはせず、常に柔らかい響きで音楽を作っています。とても軽くスマートな演奏でした。

深く感情移入せずに、自然体で中庸な演奏で、オケを限界まで鳴らすことも無く、常に柔らかく美しい響きで音楽を作ったスマートな演奏でした。作品の姿を知るには良い演奏だったと思います。
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オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

★★★★
一楽章、非常にゆったりとした第一主題。広大な雰囲気の第二主題。提示部の反復はありませんでした。再現部の第二主題も大きく歌うことはありませんが、自然体でおおらかな演奏です。

二楽章、ゆっくりと淡々と演奏される第一主題。変奏でもあまり動きはありません。鋭角的な強弱の変化は無く、なだらかに変化して行く音楽です。

三楽章、柔らかく、ゴリゴリしないトリオの低弦。この楽章もとてもゆったりとしたテンポです。自然体で作為的な部分は一切ありませんが、楽器の受け渡しはくっきりとしています。

四楽章、力強い第一主題。これまでの楽章に比べるとテンポは速めです。トロンボーンが強烈で、ここまでの音楽の流れからすると違和感があります。コーダの加速もわずかでした。

非常にゆったりとしたテンポで巨人の歩みのような演奏でした。常に自然体で、おおらかな流れでスケールの大きいものでしたが、ライヴならではのトロンボーンの突出などが違和感があったのがちょっと残念でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1988年ライヴ

カラヤン★★★★
一楽章、速いテンポの第一主題です。第二主題も速いテンポで表情もあまり無く淡々と進みます。展開部の前のホルンはゆっくりでした。コーダで現れる第一主題はテンポを落として叩き付けるように演奏しました。

二楽章、この第一主題も速めです。レガート奏法のトランペットの第二主題はいかにもカラヤンらしい演奏です。変奏に入ってもあまり歌いません。

三楽章、冒頭のフェルマーターへ向かっても大きくritはしませんでした。ホルンの主題は豪快に鳴り渡りました。トリオの低弦も意外と整然としていました。

四楽章、伸びやかに響く第一主題。オケは気持ちよく鳴ります。奥から響くようなトロンボーン。次第に熱くなる演奏はなかなかです。レガートで音がつながったトランペットの主題にはちょっと違和感を感じます。コーダもアッチェレランドもかなり思い切って速くなりました。

あまり歌わずにスマートな演奏でした。歌わないことで外観を美しく保つのが目的だったのでしょう。それでもライヴらしく四楽章では熱がこもってきました。ただ、レガートで演奏されるトランペットには少し違和感を感じてしまいました。
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リッカルド・ムーティ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ムーティ★★★★
一楽章、厚みのある第一主題。速いテンポでグイグイ進む第二主題。展開部に入って僅かにテンポが落ちてそれまで前へ進む力が強い演奏でしたが、黄昏れるような感じです。再現部以降も落日のような一抹の寂しさをまとったような演奏でした。

二楽章、あまり大きく歌うことの無い第一主題。奥まったところでキラキラと輝くようなトランペットの第二主題。変奏からはテンポも動いて豊かに歌います。生き生きとした表情の木管。

三楽章、速いテンポの冒頭部分。威勢の良いホルンの主題。低弦が確実に刻むトリオ。くっきりと明朗で立体感のある演奏です。

四楽章、前の楽章のコーダのテンポ感からするとかなり速いテンポの第一主題。そのままのテンポで進みます。唸りを上げるホルン。かなり強力にオケをドライブしています。力強く前に進みます。

一楽章の黄昏た雰囲気から四楽章の勝利までとても明快に描かれた演奏で、オケも非常に強力にドライブされた演奏でしたが、四楽章冒頭の第一主題がそれまでの流れからすると速すぎる感じがあったのが残念でした。
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