ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」2

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第6番「田園」名盤試聴記

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団 1980年ライヴ

ショルティ★★★★☆
一楽章、分厚い響きで歌う第一主題。ショルティの演奏らしくメリハリのはっきりとした演奏です。明快で活発な表現。穏やかさよりも生命感を感じさせる演奏です。強弱の変化にも敏感です。

二楽章、ここでも歌う第一主題。テンポの動きもあります。誇張の無い音楽が自然に流れて行きますが音楽には穏やかさや安らぎよりも、どこかピリッとした緊張感があるように感じます。

三楽章、速いテンポで踊るような主題。主部後半のオーボエから続く主題もとても良く歌います。続く部分もとても表情が豊かです。トリオも活発に動きます。

四楽章、トゥッティのもの凄いエネルギー感はさすがです。

五楽章、冒頭の表現はショルティの不器用さがちょっと出たかも。この楽章でもとても活発に音楽が動くので、あまり穏やかさはありません。

ショルティらしいストレートな表現の田園でした。常に動きがあって穏やかさはあまり感じられませんでしたが、トゥッティの圧倒的なエネルギー感などはさすがシカゴsoと思わせるものでした。完成度の高さもすばらしいものでした。
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セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、5番の時の力強い響きとは違い、柔らかい優しい響きですが、表情は生き生きとしています。くっきりと浮かび上がる美しい木管。弱音の繊細さがすばらしい。いろんなところに微妙な表情付けがされていて、とても丁寧で緻密な音楽です。

二楽章、この楽章でも美しいクラリネットがくっきりと浮かび上がります。美しく優しい音楽なのですが、どこか緊張を要求されているような感覚があって、心底リラックスできません。これはチェリビダッケと言う指揮者に対する先入観からなのか?

三楽章、優しい冒頭から巨大な合奏まで幅広い表現です。ソロ楽器がくっきりと分離して響きます。作品の性格からすると響きが巨大過ぎるような感じがします。

四楽章、豪快に鳴るオケは雷鳴と豪雨を見事に表現します。暗く沈みこむ響きも空を覆う黒雲を象徴するようです。

五楽章、とてもゆったりとしたテンポで喜びを表現します。とても優しく終わりました。

とてもスケールの大きい良い演奏でしたが、二楽章で緊張感を感じてしまったのが残念でした。

ルネ・レイボヴィッツ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

レイボヴィッツ★★★★☆
一楽章、爽やかで清涼感のある第一主題。表現が生き生きしています。響きのバランスが良くどっしりと分厚い響きです。といも表現が積極的で躍動的です。

二楽章、漂うような第一主題。一楽章の躍動感からは一転した表現です。展開部でも揺られるような音楽です。常に動きがあって生命感のある演奏は音楽にどっぷりと浸ることができてとても良いです。

三楽章、軽快に踊るような主題。オーボエの主題もとても良く歌い気持ちの良い演奏です。明るい響きのホルン。

四楽章、嵐の前の不安な感じを良く表現しています。嵐も分厚い響きで押し寄せてくるようです。

五楽章、明瞭に演奏される主要主題。あまりに明瞭で崇高な感謝のイメージがありません。

とても躍動感があって生き生きとした良い演奏でしたが、五楽章が明瞭過ぎて感謝の感じがあまり受け取れなかったのが残念でした。
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フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ

ブリュッヘン★★★★☆
一楽章、速いテンポで細身の第一主題。表現はきびきびしていて心地良い演奏です。ピリオド楽器の鋭い響きが清々しさになって作品に合った演奏のように感じます。

二楽章、繊細な響きの中に美しい歌があってとても良いです。テンポの動きなどはありませんが、誠実な表現です。

三楽章、この楽章でも繊細な響きがとても美しいです。ダイナミックな演奏ではありませんが、細やかな表現の美しい演奏です。

四楽章、低域は薄いですが、トランペットは鋭く響きますが荒れ狂うような嵐ではありません。

五楽章、鋭い響きの主要主題はあまり穏やかさを感じさせず、少し緊張感が漂います。コーダの繊細な表現もとても良かったです。

ピリオド楽器の鋭く繊細な響きを生かした演奏はとても心地良いものでした。
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グスタフ・クーン/ボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団

クーン★★★★☆
一楽章、速いテンポで暖かみのある第一主題。テンポが動いたり、粘った表現などは無く、自然体であっさりとしています。柔らかく暖かい響きは作品に良く合っています。

二楽章、小川のせせらぎの中からかすかに聞こえて来るような第一主題。ゆらゆらと揺れる感じがとても心地良い演奏です。

三楽章、この楽章も速いテンポですが、あまり活発な動きは感じません。トリオの最後のトランペットも大きく前には出て来ません。強弱の振幅はあまり大きく無いようです。

四楽章、ティンパニは強調されていますが、金管はあまり強奏しません。

五楽章、柔らかく穏やかな主要主題。あまり動きの無い演奏がかえって落ち着いた穏やかさにつながっています。

大きな表現など強い主張はありませんでしたが、柔らかく暖かい響きは作品にマッチしていてとても心地良い演奏でした。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/フィラデルフィア管弦楽団

サヴァリッシュ★★★★☆
一楽章、細かく表情を付けられた第一主題。ヴァリッシュのオーソドックスな指揮にとても安定感を感じます。きびきびとしたテンポの運びで、弾むような演奏があったり滑らかな表現があったりと自在です。

二楽章、かなりしっかりと現実的な響きの第一主題。奥ゆかしく上品な歌です。深みがあって、しかもフィラデルフィアoの色彩感豊かな響きがとても魅力的です。大きく跳ねるウズラの鳴き声のオーボエなど、自然の描写もとても良いです。

三楽章、この楽章でも細かな表情付けがされています。テンポは中庸ですが、色彩感はとても豊かです。トリオに入ってからは厚みのある響きで2拍子をしっかりと刻みます。

四楽章、嵐の部分は凄いエネルギーが放出されている感じはあるのですが、実際の音量としての突出はありません。嵐が次第に静まって行く感じもとても良く表現されていました。

五楽章、この楽章も二楽章と同様にかなり現実的な響きで、感謝の気持ちを天に祈るような夢見心地のような雰囲気はありませんがライヴならではの熱気を次第に帯びて来ています。

色彩感が豊かで、細かな表情が付けられた演奏はなかなか良かったですが、オケの持ち味なのか録音のせいなのか、とても現実的な響きで、夢見心地にさせてくれなかったのが少し残念でした。
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オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ

icon★★★★
一楽章、流麗で美しい演奏が始まりました。細部まで表現が行き届いた音楽です。低音域を少し絞った録音なので、清清しく爽やかな音楽に仕上がっています。
パートの技量もバランスが取れているし、音色の統一感もあって、一つの楽器として機能しています。

二楽章、派手さはありませんが、色彩のパレットは十分で、水彩画のように淡い色で描かれて行きます。
ベルリン・フィルのようにどんどん近代化して、都会的な機能性や音量を備えたオーケストラではなく、昔からの伝統に根ざした演奏が断固として存在していて、その上に指揮者の個性が乗っかるような演奏です。
その伝統とスウィトナーの音楽との相性もとても良いようで、ムリなく自然な音楽が紡ぎだされて行きます。

三楽章、歌のある木管、美しく安定感のある演奏で、疲れた心を癒してくれるような優しい音楽です。

四楽章、ティンパニもドカンとは来ません。節度のある演奏です。

五楽章、音楽に酔いしれることができる数少ない演奏の一つだと思います。

すばらしい全集です。

ヨゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、穏やかな冒頭です。安心して音楽に身をゆだねることができます。

ナローレンジの録音が刺激のないマイルドな響きを作っています。クリップスの演奏自体も自然体です。

二楽章、この楽章も穏やかな表現です。

三楽章、トランペットも控え目でマイルドです。ダイナミックの変化も少な目で穏やかです。

四楽章、ティンパニも軽い音で重量感はありません。

五楽章、とても穏やかな「田園」でした。

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、速いテンポで軽快に始まりました。「田舎に着いた晴れ晴れとした愉快な気分」を表すにはこのぐらいのテンポで調度良いのかもしれません。一つ一つの音に生命が宿るような生き生きとした演奏で、安らぎは感じませんが元気付けられるような感じです。アーティキュレーションの指示にもオケが敏感に反応しているのも、生き生きと感じさせる一因かもしれません。

二楽章、穏やかな第一主題が安堵感を与えてくれます。第二主題も美しい。オケが一体になった暖かい響きが魅力的です。クラリネットのソロもアゴーギクを効かせてとても作品への共感を感じさせます。オケも作品に入り込んで何かを引き出そうとしているようで、とても作品向き合っているのが感じられます。

三楽章、テンポも動いています。作品と正対している真摯な態度にとても感心させられます。

四楽章、怒涛のように激しく雷鳴や大地の鳴動を表現するオケ。音がストレートにこちらへ向かって来るような迫力です。

五楽章、穏やかな第一主題も、持って回ったようなところがなく、ストレートに届いて来ます。音に力があって、どの楽器もとてもくっきりと描かれていて強固な感じになります。

力強く、生き生きとした演奏でしたが、常に聴き手にも緊張を要求するような感じがあって、リラックスすることができませんでした。

サー・エイドリアン・ボールト/BBC交響楽団

ボールト★★★★
一楽章、間接音を含んで穏やかな第一主題。淡々と演奏される第二主題。展開部に入っても大きな表現はありませんが、質実剛健と言ったような強靭な意志を感じる演奏です。

二楽章、ゆらゆらと揺れるような中からヴァイオリンの第一主題が静かに表れます。ここでも第二主題はほとんど歌われずに淡々と流れて行きます。ライヴ録音なので限界はありますが、瑞々しい木管やふくよかな弦など、とても美しいです。

三楽章、ここでも主題を大きく歌うことは無く、自然体の演奏です。主部後半のオーボエの主題も美しい。

四楽章、荒れ狂うような嵐では無く、冷静さを保っています。

五楽章、ホルンがとても美しいです。極めて自然な流れで誇張することも無い、純音楽的な演奏でした。

誇張することの無い自然体の演奏で、質実剛健と言った演奏でしたが、四楽章ではもう少し描写があったら良かったと思いました。
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