ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」2

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、凄い弱音からffまで冒頭から凄い振幅を聴かせます。オケが気持ちよく鳴っています。テンシュテットのライブ録音で美しい音がしていると感じることはほとんど無いのですが、この録音は美しいです。
マーラーの演奏では、ものすごくテンポを動かすテンシュテットですが、このベートーベンではマーラーの時ほどではないような感じがします。
木管の旋律の受け渡しが美しい、弦楽器も美しい。ホルンも美しい!そして、ティンパニの激しいクレッシェンドもあります。でもここのティンパニはスウィトナーのベルリン・シュターツカペレの方が硬質のマレットを使っているので、激しく聞こえます。
演奏が進むにつれてボルテージも上がってきたようです。かなり熱っぽい終わり方でした。

二楽章、中庸なテンポ、テンシュテットらしく熱気を感じる演奏ですが、マーラーの時に見せる狂気のような姿ではなく、十分紳士的な範囲で、ベートーベンを演奏しています。

三楽章、すごく感情がこもった演奏です。表情が豊かで振幅が大きい!テンポも大きく動きます。朝比奈の演奏のような天国的な雰囲気とは違うのですが、切々と訴えてくるような演奏です。
マタチッチのぐいぐい押してくる演奏とも違う。音の密度が非常に濃い演奏、これはテンシュテットの特徴ですね。

四楽章、アタッカで入るこの楽章は一転して激しい演奏です。いわゆる歓びの歌のメロディを繰り返しながら少しずつテンポが速くなりますが、ここもマタチッチやフルトヴェングラーほど速くはならず、適度な感じでした。独唱が入る前のffも強烈でした。
独唱は適度な位置にいます。堂々とした演奏です。壮大な頂点を築き上げます。このあたりはさすがです。スケールの大きい演奏という観点からすると最右翼の演奏ではないかと思います。
プレスティシモはかなり速いです。さらに若干のアッチェレランド。終わってみれば見事な演奏でした。

終演後のすごい拍手も納得の演奏です。テンシュテットはこの後癌を患って演奏回数が激減してしまい。もう二度と生の演奏を聴くことはできなくなりました。
まだまだ円熟と言うには早過ぎる時期にこの世を去ってしまったことは本当に悔やまれます。もっともっとすばらしい演奏を残して欲しかった。

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
ベームが脳卒中で倒れた後の録音で、身体も思うように動かない状態での演奏です。

一楽章、ゆっくりとしたテンポですが、音楽の振幅は十分にあります。美しい演奏です。
おそらく、ベームとのステージが今後多くはないことを感じ取っている、ウィーンpoのメンバーがベームをサポートしながら音楽を作り上げようとしているような、集中力を感じます。
音楽の足取りはしっかりしていて、力強いです。晩年、弛緩した演奏をかなり残してしまったベームですが、この演奏にはウィーンpoのメンバーの思い入れがひしひしと伝わってきます。
木管のソロの美しさや弦楽器の音の勢いなど、さすがです。

二楽章、この楽章もテンポは遅めです。ホールに響く残響がとても美しいです。ティンパニの音色も厳選されていますね。このテンポとこの雰囲気だと、この音色は良いです。
表情は引き締まっていて、朝比奈の自然体のすばらしさとはまた違ったすばらしさを聴くことができます。

三楽章、ヴィブラートをかけた弦が非常に美しいです。ウィーンpoの良さを存分に聞かせてくれます。朝比奈の演奏よりも、速めのテンポを取っており、ここまではベームの不自由さは全く感じさせません。
とても艶やかな弦や深い響きの木管、ホルンも含めて十分に歌っています。
不自由でも作品に込められた意志を表現しようとしています。

四楽章、表情豊かで雄弁です。歓喜の歌が連続する部分では、もう少しテンポを煽って欲しい気もしましたが、ベームの意志なのでしょう。
超一線級のソリストの独唱は圧巻です。
マーチの前のフェルマーターのティンパニは楽譜通りでした。
マーチはかなり遅いテンポで、独唱を十分聞かせます。壮大な合唱。ベームの巨大さ!感動です。
テンシュテットの狂気のような第九とはまた別の名演だと思います。
また、朝比奈の自然体とも違います。テンポ設定は近いところはありますが、ベームには朝比奈とは違う強い意志が働いています。朝比奈の自然体を貫き通す強い意志もすばらしかったし、ベームの音楽を通してメッセージを伝えようとする強い意志にも大変感銘を受けます。

ベルナルド・ハイティンク/ヨーロッパ室内管弦楽団

ハイティンク★★★★☆
一楽章、冒頭から丁寧で繊細な弦。深みのある第一主題。ハイティンクのことですから、当然大仕掛けはありませんが、重なり合う楽器が手に取るように分かるような細部まで、生き生きとして透明感の高い演奏です。ティンパニのロールの前で音飛びがありました。ティンパニのクレッシェンドはそんなに激しくはありません。このあたりもハイティンクらしいです。

二楽章、落ち着いたテンポです。響きが引き締まってとても密度が濃いです。一つ一つのフレーズにしっかりとした表情があって、とても豊かな表現の演奏です。レガートで演奏されるホルンがとても美しいです。一音一音がキリッと立っていて音に力があります。

三楽章、密度の高い美しい音が受け継がれて行きます。速めのテンポでサラサラと流れているようですが、濃厚でとても美しいです。

四楽章、軽く始まった冒頭。レガートぎみに演奏されるレチタティーヴォ。低弦による歓喜の主題の後のビオラとファゴットの美しいこと。ホールに響き渡るバリトン独唱。この独唱もとても表情豊かです。行進曲で長く響きを残すシンバル。歓喜の合唱もレガートぎみに演奏されているのか、響きが後ろに引っ張られます。音楽は澱みなく進み飽きさせることはありません。最後も落ち着いたテンポで終わりました。

美しく、生き生きとして表情豊かで密度の濃い音楽でした。ただ、ハイティンクの場合、熱狂すると言う事は無いので、最後もとても落ち着いていました。
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小澤 征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ

小澤★★★★☆
一楽章、一音一音粒が立っています。とてもバランスが良いしアンサンブルも良いです。引っかかるところは無くサラサラと流れます。ティンパニのクレッシェンドも抑えぎみであまり大きな起伏はありません。

二楽章、この楽章も引っかかるところは無くあっさりと過ぎて行きます。強く表現したりする部分もありません。それにしてもこの透明感の高い響きは素晴らしいです。このどこにも引っかかるところのない演奏で小澤は何を伝えようとしているのでしょうか。

三楽章、この無色透明な演奏が心に沁みます。とても客観的で作品そのものを純粋に聞かせてくれているような演奏です。色彩も日本画のような淡い色彩ですがとても美しいです。

四楽章、この楽章も力みの無いすがすがしい演奏です。まるでそよ風に吹かれるような爽やかさです。語りかけるようなバリトン独唱。合唱は人数が少ないですが、芯のしっかりとした声です。フェルマーターでティンパニは楽譜通りデクレッシェンドしました。行進曲の最後でテンポを速めました。歓喜の合唱も合唱がとても優秀で発音もはっきりと聞き取れます。

終始無色透明で、大きな感情移入など無い演奏でした。しかし、これだけ虚飾を排して作品の美しさを表現した演奏も珍しいのではないかと思います。
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シュミット・イッセルシュテット/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

イッセルシュテット★★★★☆
一楽章、柔らかく艶やかな弦が静かに演奏する冒頭。第一主題は思い切りよく豪快にそして華やかに鳴り響きます。湧き上がるように力強い第一主題です。美しく歌う第二主題。スピード感もあってなかなかオケも積極的です。コーダでも豪快に鳴ります。

二楽章、良い音で決まるティンパニ。楔を打ち込むように鋭く刻む弦と木管。ホルンの咆哮。弦の積極的な表現。豊かな歌です。

三楽章、自然で美しい歌です。安らかで穏やかなBの主題。サラサラと流れるような演奏も美しい。少し速めのテンポで進みます。強い個性は感じませんが、ウィーンpoの伝統に寄り添った演奏です。

四楽章、バランスの良い冒頭。分厚い響きのレチタティーヴォが情熱的です。1965年の録音とは思えない美しい音です。豊かに広がる合唱。フェルマーターでティンパニはデクレッシェンドしました。堂々と壮大な歓喜の合唱はとても充実しています。Prestissimoも落ち着いたテンポで堂々と終わりました。

ウィーンpoの伝統に根ざした演奏でとても安定感のある演奏で、堂々と落ち着いた表現で強い個性は感じませんでしたが、充実した内容はとても聞きごたえがありました。
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アルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団

トスカニーニ★★★★☆
一楽章、非常にはっきりとした第一主題の断片的な動機。第一主題は残響が少なく、最後の音がすぐに消えます。当時としては非常に速いテンポだったのではないかと思います。即物的と言われるトスカニーニですが、音楽には力があり、とても生き生きとしています。ティンパニのクレッシェンドも激しく、感情的な要素を一切排した演奏では無いと思います。テンポも変化します。コーダは速いテンポで行進曲のような感じですが最後はとても激しくなりました。

二楽章、質実剛健で凛とした演奏です。この力強さはどこから出て来るのでしょうか。音の力は凄いです。フルトヴェングラーのような即興的に動くテンポでは無く、最初から設計されたテンポの動きがあります。躍動感があって前へ進もうとします。

三楽章、歌う弦。速めのテンポで淡々と進みますがテンポの動きを伴った歌もあります。トランペットが出るところではすごくテンポが速くなりましたが、すぐに元のテンポに戻りました。

四楽章、厚みはありませんが、激しさを感じるレチタティーヴォ。このレチタティーヴォの中でもテンポは変化します。4分音符がとても短いです。速めのテンポで颯爽と進むバスの歓喜の主題。合唱は残響があまり無いので、浅く響きます。フェルマーターでティンパニはデクレッシェンドしませんでした。優しい行進曲。歓喜の合唱は力強い歌でした。これだけ古い録音でありながら生命感を感じさせる演奏には感服します。Prestissimoは落ち着いたテンポで最後僅かにアッチェレランドした程度でした。

とても力強く、生き生きとした音楽でした。即物的と言われるトスカニーニですが、いやいやそんなことは無くむしろ人間臭い演奏だと感じました。人間らしい生きる力がにじみ出るような演奏でした。
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