ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」4

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」名盤試聴記

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー管弦楽団

朝比奈/大フィル★★★☆
一楽章、朝比奈のベートーヴェンに共通する、どっしりと構えた安定感のあるテンポで音楽が進みます。
新日本poとのライブに比べると残響成分が少ないので、各パートの動きが克明で、微妙な表情も伝わってきます。
朝比奈も晩年の演奏ではありますが、音楽が弛緩しないところがすばらしい。
音楽自体は淡々と進んで行きます。自然体はここでも貫かれていて、仕掛けなどは一切ありません。

二楽章、ゆっくりめのテンポですが、違和感はありません。ティンパニの強打もありません。もう少しメリハリがあっても、と思うほどです。
とても優しい音楽の運びです。

三楽章、新日本poとの録音では、残響成分が多かったせいか、それとも大阪poの持ち味なのか、新日本poとの録音に比べると、ちょっと泥臭いような印象です。
これが「英雄」ではプラスに働いて、自然体ながらも力強い演奏になっていたのですが、この楽章では、天国的な心を洗い流してくれるような美しさではありません。

四楽章、とても端正な演奏です。ただ「英雄」のような豪快さはなく、新日本poとの「合唱付き」のような天国的な自然体でもなく、ちょっと中途半端な感じがします。
会場と録音の問題なのかもしれませんが、オケと合唱の一体感にも乏しいです。合唱の人数も少ないのか、響きが薄いです。

新日本poとの録音よりも、せっかちな感じがして、わずかですが落ち着きが無いような感じがします。
新日本poとの演奏がすばらしかっただけに期待したのですが、オケやホールとの相性やその日のコンディションなど様々な要因が絡んでの結果ですから、多少の出来不出来は仕方がありませんね。

オイゲン・ヨッフム/ロンドン交響楽団

icon★★★☆
一楽章、音が凝縮されていて緊張感の高い演奏です。テンポは中庸。指揮に対する反応がとても良いです。
この反応の良さが、古いドイツのイメージよりもかなり近代的な感じを連想させます。ティパニのロールも激しくクレッシェンドをしますが、それでも演奏全体の印象としては、非常に整った安定感のある印象です。

二楽章、私には、あまり強い主張が感じられないけれど、楽譜に忠実に演奏するスタイルなのであろう。

三楽章、非常に美しい冒頭の弦のアンサンブルでした。しかし、楽章全体は淡々と進んだ感じがします。
堂々と正面突破の演奏で、美しいしオケも積極的ですし、この曲のスタンダードとして十分存在価値があるのではないかと思います。

四楽章、丁寧な開始でした。ロンドンsoからかなり良い響きを引き出しています。ただ、同じように正面突破だったスゥイトナーと比べるとシターツカペレ・ベルリンの古風で透明感のある響きが演奏の価値をすごく高める役割を果たしたと思うのですが、ロンドンsoはその点では極めて現代的で高性能なオーケストラなので、ヨッフムの良さを伝えきれないところがあります。
オケと合唱のズレが若干ありました。二楽章にも少しアンサンブルの乱れはありました。
マーチのファゴットの音が異常に短い。ブルックナー指揮者としても高名なヨッフムですが、この演奏には、スケールの大きさはあまり感じられません。

波のように押しては返しのような音楽表現が随所に見られます。独特の表現で一体になって揺れることができて心地よい音楽作りです。
最後の追い込みも極端にはしませんでしたが、良かったです。

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団1972

icon★★★☆
一楽章、シルキーで滑らかな演奏で、美しいのですが、音楽の勢いのようなものは乏しい感じで、BGM的に流れてしまいそうな冒頭部分です。
同時期のスタジオ録音でも「英雄」はもう少し前へ行く力強さがあったのですが、この演奏は音楽がその場にとどまっています。
それでも、ベームとウィーンpoの組み合わせですから、模範演奏のような安定感は抜群です。奇抜なことが起こることは有り得ません。あくまでも王道を行く演奏なので、初めてCDを買うのには良いかもしれません。

二楽章、軽いティンパニでした。ここでもあまり音楽が前に進もうとはしません。とても美しい音が流れて行くのですが、主張や個性のようなものが感じられないのが、少し残念です。

三楽章、美しいです。ただ、音楽は淡々と進むだけで、感情の表出や天国的な安らぎなどは感じられません。あまりにも素っ気無い演奏で、ちょっとがっかりしました。
もっと味わい深い演奏を期待したのですが・・・・・・。

四楽章、王道と言えば、まさにそのような演奏なのですが、何も起こらないので・・・・・・。
少しテンポを落とした壮大な合唱です。
最後の追い込みもなかなか良かったですが、十分リハーサルしたアッチェレランドで、即興性がないので、聞く側を引き込むような演奏にはなりません。

全体の構成はとても良いと思うのですが、全員の全力投球のような凄みが感じられたら名演奏になったと思います。
スタジオ録音と言うことで、慎重になりすぎた結果なのかと思います。

カルロ・マリア・ジュリーニ/RAI国立交響楽団

ジュリーニ★★★☆
一楽章、アクセントを付けて音と音の間を詰めて演奏する冒頭。とても柔らかい第一主題。美しく歌う木管。柔らかいマレットでクレッシェンドするティンパニはあまり激しさは感じさせません。offな録音なのかレンジが狭いのかヴァイオリンの艶やかさなどはほとんどありません。テンポはあまり動かず深い感情移入はありません。

二楽章、かなりゆっくりとしたテンポです。とても良く歌います。この楽章でも柔らかいティンパニ。録音によるものかも知れませんが、オケの響きにまとまりがあります。ただ、分厚い響きはありません。とてもシンプルな響きです。

三楽章、感情を込めた冒頭部分ですが、続く部分は速めのテンポであっさりと進みます。繊細な表現の弦。かなり強く吹いているようですが、奥まって響くトランペット。柔らかい表現です。

四楽章、柔らかく全く激しさの無い冒頭。レチタティーヴォも穏やかで柔らかいです。歓喜の主題は良く歌って美しいです。バリトン独唱も柔らかい。合唱も柔らかく拡がります。フェルマーターのティンパニはデクレッシェンドなしでした。広々と雄大な歓喜の合唱。ジュリーニらしいゆったりとしたテンポでしっかりとした足取りで進みます。テンポも少し動いています。Prestissimoは今では珍しいくらいゆっくりとした演奏ですがさいごはアッチェレランドして終わりました。

ジュリーニらしい、ゆったりとしたテンポを基調にした演奏で、程よく歌もあったのですが、録音の問題か、音がとても柔らかく激しい表現が全く感じられませんでした。
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ジョージ・セル/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

セル★★★☆
一楽章、集中力の高い冒頭。第一主題は力強く前へ進みます。整然と整ったアンサンブルです。ティパニは大きくクレッシェンドしているようですが、歪んでいるのであまりよく分かりません。テンポは全く動きません。カチッとした枠にしっかりと収まった感じの演奏で、突飛なことは絶対に起こらない安心感があります。

二楽章、サラッとした冒頭。淡々と進む弦。非常に締まった木管のアンサンブル。ティンパニは強烈で激しく歪ます。引き締まってスピード感もあって豊かに歌います。最後のティンパニの一撃も強烈でした。

三楽章、速めのテンポで以外に元気な?演奏です。内面からこみあげるような表現ではなく、外へ向かって発散するような表現です。深く感情を込めることはなく、淡々と進んで行きます。ホルンのソロはたっぷりと歌いました。この楽章ではテンポも動いて情動的です。最後はとてもゆっくりとしたテンポになってたっぷりと歌います。

四楽章、ティンパニやトランペットが激しい冒頭。レチタティーヴォはあまり厚みがありません。この楽章もテンポの動きがあります。すごく抑えた歓喜の主題。合唱がはいるとかなり歪ます。長く伸ばしたフェルマーター。ティンパニはデクレッシェンドしませんでした。速めのテンポで力強い歓喜の合唱。Prestissimoは猛烈なテンポで終わりました。

セルにしてはかなりテンポの振幅の大きな演奏で、情動的な面を見せてくれたと思います。なかなか演奏が良かっただけに録音の悪さが悔やまれます。
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