ブラームス 交響曲第1番2

たいこ叩きのブラームス 交響曲第1番試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、奥行き感と深みのある響きがとても良いです。ただ、ライブの時のような異様な緊張感はありません。充実した美しい響きで、わずかに速目のテンポで見事にまとめ上げています。アンサンブルも完璧で非の打ち所が無いほどにすばらしい演奏です。

二楽章、美しいオーボエのソロ。静寂感もあり、オケの集中度も高いようです。ピンポイントで定位するヴァイオリンソロ。孤独感や寂しさも伝わってくる演奏でした。

三楽章、優雅に。と言う指定に対しては、テンポが速過ぎるように感じます。せせこましい感じで落ち着きがありません。

四楽章、ホルンの朗々とした旋律は素朴な雰囲気ではなく、近代的でした。第一主題はとてもテンポが速いです。どんどん追い立てるようにテンポを煽って行きます。最後は歓喜に満ちた輝かしい演奏でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、ゆったりとしたテンポ。生き物のように一体感があって、しかも木目の細かいシルクのような美しい響きです。抉り取るような厳しい表現。美しいオーボエ・ソロ。表現が統一されていて見事なアンサンブルで生き生きとした生命感に溢れ揺れ動くような演奏です。トランペットだけが突出する場面もあります。指揮に敏感に反応するオケ。厳しいトレーニングもオケが自分のものにして、チェリビダッケの僅かな動きにもしっかりと反応するようになったのだと思います。

二楽章、穏やかさの中に、孤独感や陰影を映すような演奏です。長調で書かれていながら秋の寂しさを感じさせるような音楽です。哀愁に満ちたオーボエ・ソロ。弦楽合奏の分厚い響きとppの繊細さが共存しています。艶やかで哀愁に溢れたヴァイオリン独奏の後ろで張りのある明るいホルン。それにしてもライヴでありながら一糸乱れぬアンサンブルはさすがにすばらしいです。

三楽章、息の長い歌のクラリネット。隅から隅まで行き届いた見事な表現。滑らかに磨き上げられた美しい音色がとても魅力的です。

四楽章、静寂感のなかに小さな音で演奏されるピチカート。明るい音色で歌うホルンに続くフルートも伸びやかです。力強く歌われる第一主題。第二主題みすごく力強い演奏です。トゥッティでは分厚い響きは聴かれませんでしたが、堂々と終えました。

「暗」から「明」への明がもう少し開放的なら良かったのではないかと思いました。

イーゴリ・マルケヴィチ/シンフォニー・オブ・ジ・エアー

マルケヴィチ★★★★☆
一楽章、最初の音が歪みますが、心に打ち込んでくるようなティンパニ。悲痛な雰囲気に溢れた序奏です。寂しげな木管や弦の弱奏。大きな表現は無いのですが、音色がそうなのか、とても切迫感があって、切実な音楽です。また、起伏も激しい演奏です。押したり引いたりの波があって、音楽が生き生きとしています。

二楽章、スクロヴァチェフスキの演奏にも共通するような鮮明で鋭い演奏です。艶やかですが、力もあるヴァイオリンのソロ。ホルンは遠くから響くようです。

三楽章、間接音を伴って距離感を感じさせる美しいクラリネット。

四楽章、深みがあって力強い演奏です。トランペットもパリッと響きます。アルペンホルン風の旋律では少しテンポを落として雄大に歌います。引き締まったコラール。ウォームなサウンドになりがちなブラームスの作品ですが、この演奏ではとてもクールな響きです。第一主題もクールでした。トランペットがピーンと突き抜けてくるので演奏が鋭角的に感じます。アルペンホルン風の旋律が回帰する前の畳み掛けるようなスピード感もなかなかです。スピード感があって華やかなコーダ。コラールも華やかでした。

スピード感があって、起伏の激しい演奏でした。ブラームスにしては鮮明で鋭角的です。華やかなコーダもブラームスとしては異色のものだと思いました。
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マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2005年ライヴ

ヤンソンス★★★★☆
一楽章、すごく深刻なわけでも無く、かと言って穏やかでも無い序奏。主部に入っても極めて常識的な演奏ですが、鮮度の高い音楽です。

二楽章、たっぷりとアゴーギクを効かせて歌うオーボエ。テンポの動きもあります。すごく音量を落としたところから美しく歌うクラリネット。弱音をぐっと落とすことでダイナミックの幅を大きく取っているようです。艶やかで美しく歌うヴァイオリンのソロ。

三楽章、滑らかでたっぷりと歌うクラリネット。生き生きとした動きがあって楽しそうです。トリオでも激しく動きます。とても良く歌います。

四楽章、消え入るような弱音で始まった弦のピィッイカート。とても鮮明な響きです。アルペンホルン風の旋律はふくよかで太い響きでした。ピーンと張ったフルートが美しいです。柔らかいコラール。深みのある第一主題は控えめで柔らかく穏やかです。盛り上がりとともにテンポも速まって行きます。第一主題の再現の前はかなり激しい演奏になっていました。一音一音をとても大切にしているようで、音が立っています。嵐のような怒涛のクライマックス。重量級の蒸気機関車がばく進するような勢いのあるコーダ。

初めはごく普通の演奏のように感じましたが、楽章が進むにつれて生き生きとした表現や熱気が感じられるようになりました。怒涛のクライマックスや物凄い勢いのコーダなどは見事でした。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★★☆
一楽章、ゆったりと堂々としたテンポで、上から降り注ぐような序奏です。しっとりとしたウェットな響きです。いつものクレンペラー同様、テンポの動きなどは全くありませんが感情の起伏は演奏に表れています。クレンペラーにしては激しい表現もあり、普段の泰然自若とした演奏とは少し趣が違います。

二楽章、しっとりとしていて美しいです。録音年代の古さはあまり感じません。この楽章は表情豊かでした。

三楽章、いかにもイギリスのオケと言うようなクラリネット。晩年の無表情で即物的な演奏とは違い表現の幅があります。

四楽章、弦のピィッイカートはあまり強弱を大きく付けませんでした。アルペンホルン風の旋律は雄大です。締まったコラール。サラッとして爽やかな第一主題。次第にテンポを速めますが、テンポの動きは僅かです。オケは引き締まってキビキビと動きます。感情が込み上げるような熱気を感じます。コーダへ向けての盛り上がりもとても良かったです。速いテンポで盛大なコラール。

私にとっては正直、クレンペラーは苦手な指揮者です。どうしても緩さを感じてしまうからです。でもこの演奏は締まりがあって、表情も豊かで、熱気も感じさせる良い演奏でした。
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小澤 征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ

小澤★★★★☆
一楽章、小澤にしては感情のこもった悲痛な序奏です。あっさりとしていますが、美しいオーボエ。基本は速めのテンポです。「運命」のモットーは少しテンポを落として印象強く演奏しました。

二楽章、ゆったりとしていますが、大きく歌うことは無く、自然な流れの演奏です。哀愁を感じさせるオーボエ。クラリネットも透明感があって美しいです。自然体で力みが無く美しい演奏です。ピンポイントで余分な響きを伴わないヴァイオリンのソロ。残照のようなホルン。

三楽章、深みがあって滑らかで美しいクラリネット。トリオの少し前で激しくなりますが、とてもアンサンブルが整っていて、落ち着いています。トリオでも激しくなる部分がありますが、熱気を伴うものではありません。

四楽章、ニュートラルで透明感のある美しい演奏です。あまり間接音を含まないアルペンホルンの旋律。多層的で柔らかい第一主題はとてもまろやかで心地良い響きです。次第にテンポを速めます。伸びやかで柔らかい響きはとても美しいです。アルペンホルンが回帰する前のクライマックスはかなり激しいものでした。コーダも十分な盛り上がりです。コラールも強烈です。

さすがに世界から一流の奏者を集めたオケです。柔らかく美しい響きはさすがでした。演奏は自然体のものですが、振幅は大きく十分な説得力のあるものでした。
一楽章、小澤にしては感情のこもった悲痛な序奏です。あっさりとしていますが、美しいオーボエ。基本は速めのテンポです。「運命」のモットーは少しテンポを落として印象強く演奏しました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第1番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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