ブラームス 交響曲第3番2

たいこ叩きのブラームス 交響曲第3番名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、一体感のある生き物のように動く音楽。美しいクラリネットの第二主題。精緻なアンサンブルが見事です。集中力の高いすばらしい演奏です。

二楽章、美しい木管のソロが続き、この楽章でも一体感のあるすばらしいアンサンブルを聴くことができます。

三楽章、速目のテンポで作品に深くのめり込むような陰影は感じません。ここでもこの当時のベルリンpoのアンサンブル能力の高さを如実に感じさせてくれます。

四楽章、トゥッティの怒涛の響きに圧倒されます。最後も美しく曲を閉じました。

ピエール・モントゥー/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

モントゥー★★★★☆

一楽章、録音年代の古さから木目の粗い音です。ライヴならではの感情移入による起伏の激しい表現はなかなか魅力的です。モントゥーの作品への共感がすごく伝わってくる演奏です。指揮台の上で「もっと!もっと!」とオケに要求しているのが目に映るような演奏です。

二楽章、とても豊かで生き生きとした表現です。

三楽章、

四楽章、トゥッティでのエネルギー感はすばらしい。モントゥーの作品への深い共感によって生まれた演奏だと思います。

ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団 1991年ライヴ

マゼール★★★★☆
一楽章、マットであまり艶の無い渋い第一主題。消え入るような第二主題。伸び伸びとした穏やかな演奏が続きます。コーダも荒れ狂うような表現では無く節度ある演奏でした。

二楽章、とても穏やかな主要主題。中間部も静かで穏やかです。これだけ静かな演奏も珍しいのではないかと思います。最後は涼やかな響きで終わりました。

三楽章、アゴーギクを効かせて大きく歌います。柔らかいですが、しっかりと地に足のついた中間部の木管。マットですが柔らかいホルン。

四楽章、動きのある第一主題。第二主題も豊かな表情です。展開部もとても表情が豊かです。オケの響きはブレンドされて一体感があり、トゥッティの激しさもありますが、とても整ったバランスです。ライヴとは思えない静寂感です。

四楽章では激しい表現もありましたが、しっかりとコントロールされたバランスの良いトゥッティでした。その他はとても穏やかな演奏でした。ブレンドされた一体感のある響きもライヴとは思えない美しさでした。
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ベルナルト・ハイティンク/ヨーロッパ室内管弦楽団 2011年ライヴ

ハイティンク★★★★☆
一楽章、マットな第一主題。控え目で奥ゆかしい表現の第二主題。ハイティンクらしく穏やかで大きな表現の無い演奏ですが緻密で見通しの良い演奏です。金管が咆哮したりすることは全くありません。

二楽章、ニュートラルな響きであっさりとした表現のクラリネット。反応の良い引き締まった表現が続きます。はっきりとした色彩とオケが一体になっての動きは見事です。

三楽章、チェロの旋律は最初のテンポから進むにつれて少し速くなりました。大きくはありませんが、過不足無い表現です。主部が戻ったホルンは柔らかく美しい演奏でした。

四楽章、弱音でうごめくような第一主題。相の手で入る弦の締まった表現。その後も引き締まった表現が続きます。トゥッティでも決して荒々しくはならず整然と落ち着いた表現です。コーダはテンポを落として静かで澄んだ演奏になりました。

大きな表現や金管の咆哮も無く、穏やかな演奏でしたが、引き締まった表現やはっきりとした色彩、コーダの澄んだ響きの演奏などなかなか聞かせどころの多い演奏でした。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

ショルティ★★★★☆
一楽章、いつもながらに明快で目の覚めるような第一主題。動きが手に取るように分かります。現実的で夢見るような雰囲気は無いクラリネットの第二主題。とても鮮やかで、全ての音が前面に出てくるような明晰さが特徴です。表現意欲が旺盛でエネルギーが放出されます。分厚く充実した響きも見事で怒涛のようなトゥッティです。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで潤いのあるクラリネットの主要主題。中間部のコラール風の旋律も独特の陰りを感じさせます。とても積極的な演奏です。

三楽章、とても大きな表現で歌う主要主題。しかもテンポが速めで次から次へと畳み掛けてくるような表現です。中間部も活発にどんどん前に進むエネルギーがあります。ホルンで再現される主要主題は哀愁を感じさせるものでした。

四楽章、トゥッティのがっちりとした構築感のある響きはさすがです。とても力強い演奏です。金管が明快に鳴り響きます。凄いエネルギーで前へ進もうとする推進力があります。

とても力強い演奏で、曖昧さの無い明快な表現でした。がっちりとした骨格の構築感のある分厚い響きと前へ進もうとする推進力のあるエネルギーの放出も凄いものでした。ザンデルリングとは対極にある表現のように感じました。
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ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン/オランダ・フィルハーモニー管弦楽団

ズヴェーデン★★★★☆
一楽章、僅かにoffぎみで距離のあるオケ。豊かな表現の第一主題。優雅に歌う第二主題。次第にテンポが速まり豪快な演奏になります。コントラファゴットがしっかりと存在を主張します。かなり勢いのある演奏で、スピート感があります。

二楽章、クラリネットにはもう少し潤いや艶やかさがあっても良いように思います。一楽章の豪快さとは打って変わってとても繊細な表現を聞かせます。

三楽章、豊かに歌うチェロ。とても積極的な表現の演奏です。中間部は速めのテンポで憂鬱な雰囲気があります。積極的な表現の分、僅かに雑な感じもあります。

四楽章、薄暗い雰囲気の第一主題。思い切りの良い豪快な演奏はここでも健在です。弓をいっぱいに使うような豪快さと弱音の繊細さを併せ持ったなかなか良い演奏です。

思い切り良く豪快な演奏と、弱音の繊細さ併せ持った演奏でしたが、時に僅かに雑になる部分がありました。
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ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、速めのテンポの冒頭です。続くクラリネットのソロは夢見心地のような魅力的な表現です。激しく演奏される部分でもワルターらしいチャーミングで暖かみのある演奏です。

二楽章、弱音部の緊張感を録音が伝えきらないところが残念です。フレーズ終わりの間の取り方などもとても良い感じです。

三楽章、この楽章も速めのテンポで進みます。

四楽章、トゥッティでも力むことなく自然に音楽が流れて行きますが音楽に秘められた熱気は十分に感じられる演奏です。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★★★
一楽章、まろやかな響きのブラスセクションでした。安定感のある演奏です。節度ある表現で好感が持てます。管楽器のソロは極上とは言えませんが美しい響きです。ホールの響きを伴って深みのあるテュッティです。中庸の良い演奏だと思います。

二楽章、少し滑らかさに欠けるクラリネットのソロでした。ここでも朝比奈は極端な主張をすることなく自然体で音楽を進めます。自信に溢れた堂々とした演奏です。

三楽章、第一主題のクレッシェンド、デクレッシェンドは大きく表現しました。

四楽章、決して力むことなく見事に頂点を作ります。弱音部の繊細な表現などは長年のコンビで息のあったところを聴かせてくれます。

クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

アバド★★★★
一楽章、速めのテンポで動きのある第一主題。奥ゆかしい響きのクラリネットの第二主題。その後に続く部分も優雅です。カチッとした弦のアンサンブル。とても活動的で生き生きとしています。コーダではテンポを少し速めて絡み合う楽器が激しくぶつかり合うような表現でした。

二楽章、ここでもクラリネットとファゴットの主要主題は控えめでとても奥ゆかしい表現です。曇天の中に僅かに光が差し込むような表現です。

三楽章、豊かに歌うチェロの主要主題。フルートが少し寂しげに歌います。ブラームスの音楽にしては少し温度感が低い感じがします。

四楽章、筋肉質で動きのある第一主題。振幅の大きい演奏で消え入るような弱音からトゥッティの激しい演奏の幅か広いです。

奥ゆかしい弱音から、爆発するようなエネルギーまで表現の振幅の大きな演奏でした。ただ、ブラムスにしては温度感の低い演奏に感じました。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★★
一楽章、冒頭から人を寄せ付けないような孤高の演奏です。第二主題もいつものようにほとんど歌いません。色んな声部がくっきりと克明です。最後に現れる第一主題もそっけないものでした。

二楽章、自然に滲み出る穏やかでのどかな主要主題。最晩年の無表情な音楽とは違い、自然で控え目な音楽があります。

三楽章、今にも雨が降りそうな曇天をイメージさせる主要主題。フワフワと浮遊感のあるような動きがあります。柔らかく穏やかな中間部。

四楽章、大きく歌うわけではありませんが、何とも言えない表情があります。第二主題の前はそんなに激しくはありません。最晩年の「無」の境地のような演奏とは違い活発な動きもあります。

大きな表現はありませんでしたが、内側でうごめくような表現のある演奏でした。全体的には穏やかで「静」の演奏で、最晩年の「無」の境地へ向かう片鱗を垣間見せるような演奏でもありました。
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ヘルベルト・ブロムシュテット/北ドイツ放送交響楽団

ブロムシュテット★★★★
一楽章、ゆったりと強弱の変化のあるモットーから一転してドカンと入って速めのテンポで歌う第一主題。こぶしが効いているような独特の歌い回しの第二主題。振幅は大きく強い音で克明に刻み付けるような表現です。第一主題が常に速いのはAllegro con brioを忠実に表現するためなのか?

二楽章、いつもながらの自然体の演奏です。陰影を感じさせる中間部の旋律。大きな表現は無く淡々と進んで行きます。

三楽章、伸ばす音でグーッと引っ張って戻すような主要主題の表現。とても現実的な中間部の木管。一転して弦は夢見るようで美しいです。ホルンに主要主題が再現されても最初の表現と同じで少し不自然な感じがします。

四楽章、弱音ですが、力のある第一主題。第二主題の前は深みのある美しいしかも激しい演奏でした。第二主題の後も力強い演奏です。コーダのコラールも美しいです。第一楽章の第一主題はほとんど聞き取れないくらいでした。

とても美しく充実した演奏でした。響きにも深みがあり激しい部分ではかなり思い切って金管に吹かせているようであま普段のブラームスでは聞けないような響きの演奏でした。ただ、いくつか不自然な表現があったのかとても引っかかりました。
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投稿者: koji shimizu

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