ドヴォルザーク 交響曲第8番2

たいこ叩きのドヴォルザーク 交響曲第8番名盤試聴記

オトマール・スウィトナー/シュターツカペレ・ベルリン

icon★★★★☆
一楽章、しっとりとした弦の響きです。表情は控え目な印象ですがテンポは動きます。このテンポの動きで高揚感を生み出しています。

二楽章、豊かな響きが心地良い演奏です。表情は控え目ですが、とても品の良い演奏です。木管の短い音がホールの残響を伴って心地よく響きます。音楽にどっぷりと浸かることができる良い演奏です。

三楽章、音楽の自然な流れに身を任せるような演奏がとても良いです。誇張したような表現など一切ありません。

四楽章、ドイツ的な少し陰影を感じさせるトランペットのファンファーレでした。確実な足取りで音楽が進みます。自然体の音楽作りがスウィトナーの音楽に対する確固たる自信を裏付けるようなそんな演奏です。

ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、ゆったりしたテンポで歌い込まれます。筋肉質で贅肉を切り落とした演奏はセルの特徴です。色彩の変化も見事に描き分けされます。
音色が明るいので、哀愁の表現は今ひとつか?

二楽章、とてもチャーミングな表現で魅了されます。

三楽章、鮮明に録音されているのですが、残響が少なく、弦の響きに豊かさがありません。表情は豊かです。

四楽章、勇壮に轟くトランペットのファンファーレ!表情が生き生きしていて豊かなのがこの演奏の特徴です。

最後のアッチェレランドは見事でした。

ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団 1975年大阪ライヴ

クーベリック★★★★☆
一楽章、ゆっくりと感情のこもった序奏。活動的で生き生きとした第一主題。ただ、残響が少ないのか、響きが浅く奥行き感や厚みがあまり感じられません。思い切ったタメがあったりします。第二主題も生き生きとしています。アンサンブルの精度の高く、オケが一つになったような見事なアンサンブルです。とても表現の豊かな演奏でした。

二楽章、とても静かで静寂感がかります。豊かに歌います。柔らかく優しい中間部の冒頭から次第に力強くなります。

三楽章、デッドな録音なので、弦が少しキツイ響きでザラザラしています。ワルツの揺れは心地良く感じます。中間部はとても活発で華やかです。

四楽章、強く芯のあるトランペットのファンファーレ。感情のこもったチェロの主題。録音がデッドな分、トゥッティの力強さはなかなかのものです。コーダは感情の高まりをストレートに表現した激しい表現でした。

クーベリックの感情をストレートに表現した素晴らしい演奏でした。オケもとても精度の高いアンサンブルで応えていました。録音がデッドで弦の響きがキツイ感じだったのが唯一残念な部分でした。
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クリストフ・フォン・ドホナーニ/クリーブランド管弦楽団

ドホナーニ★★★★☆
一楽章、とても整ったアンサンブルで引いたりふくらんだりして豊かに歌います。ティンパニがコーンと強く響きます。引き締まって俊敏な反応のオケ。第二主題も生き生きとしていて豊かな表情です。アメリカのオケらしく明快な反応の演奏です。

二楽章、豊かに感情のこもった表現の主要主題。凍りつくようなヴァイオリンでしたが、ティンパニが入ってから暖かくなりました。中間部は戯れるような楽しげな表現です。ヴァイオリンのソロが美しいです。スケールの大きなトゥッティにトランペットが強く突き抜けます。

三楽章、哀愁をたたえた主要主題。機能的で精緻な演奏で透明感があります。

四楽章、硬質で強いトランペットのファンファーレ。あまり歌わずカチッとしたチェロの主題。コーダで明快に鳴り響く金管が爽快です。

引き締まった響きと豊かな歌。機能的で精緻なオケの見事なアンサンブルも聞応えがありました。
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マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ヤンソンス★★★★☆
一楽章、ゆっくりとしたテンポで深い息遣いで歌う序奏。躍動感のある第一主題。テンポの動きもあって、深みのある演奏です。第二主題も豊かな表現です。引きずるように重いコントラバス。歌に溢れた豊かな演奏です。劇的なコーダでした。

二楽章、この楽章でも深い歌でテンポも大きく動きます。フルートは速いテンポでクラリネットはゆっくりと演奏されます。中間部はのどかな雰囲気です。ヴァイオリンのソロもテンポが動きました。

三楽章、ゆっくりと始まり少しテンポを上げた主要主題。とても感情のこもった表現です。中間部もゆっくりと最初は抑えた表現でした。コーダは力強いものでした。

四楽章、速いテンポで少しせっかちなトランペットのファンファーレ。静かですが、感情を込めて歌うチェロの主題はゆっくりとした足取りです。その後の盛り上がりでは一気にテンポを速めて華やかな演奏になります。展開部から再現部にかけての強奏はオケが一体になって攻め込むような気迫に満ちた迫力でした。コーダも力感に溢れて追い込みも興奮を高めるものでした。

とてもよく歌い、表現の振幅も大きく、特に強奏部分の一体感のある迫力はなかなかのものでした。
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小林 研一郎/ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団

小林 研一郎★★★★☆
一楽章、きりっと立ったフルート。力強く躍動感のある第一主題。華やかで豪華に鳴り響くトゥッティ。第二主題とその後ろで動く弦の表情もとても豊かです。小林の唸り声が聞こえます。トランペットに現れる序奏も伸びやかで力強いです。とてもオケを豪快に鳴らしていろんな音が豊かに響く演奏です。

二楽章、ゆっくりとたっぷり歌う主要主題。中間部は春の訪れのような暖かく楽しげな雰囲気です。艶やかで美しいヴァイオリンのソロ。小林の唸り声はかなり頻繁に聞こえます。トゥッティはオケを存分に鳴らします。色彩感も濃厚でとても豊かに歌います。

三楽章、最初ゆっくりと始まる艶やかで粘りのある主要主題。ゆっくりとしたテンポで一音一音確かめるような歩みです。中間部は揺れ動くように舞う演奏です。

四楽章、伸びやかで滑らかなトランペットのファンファーレ。力があって活気を感じるチェロの主題。遅めのテンポで濃厚に描かれて行きます。金管が屈託無く伸びやかに鳴り響きます。コーダは圧倒的と言うほどではありませんでしたが、過不足無く鳴り響きました。

基本的に遅めのテンポで丁寧に描いた演奏でした。金管がとても良く鳴り、豪快な面の魅力の演奏でした。
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カルロス・パイタ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

パイタ★★★★
一楽章、速めのテンポで淡々とした序奏。力強い第一主題。ホルンが激しく咆哮します。金管はやはり強烈です。気持ちよく鳴り響きます。ティンパニも強烈です。

二楽章、主部は静寂感があって美しいです。ここでも金管がかなり思い切って鳴らされます。大きな表現は無いものの中間部も美しいです。

三楽章、自然な表現の主部です。キワモノと言われるような奇抜な表現はあまり無く、とても自然です。コーダは活発で元気な演奏です。

四楽章、明るいトランペットのファンファーレ。大きくは歌いませんが自然なチェロの主題。金管は強いですが、パイタの演奏で良くある、絶叫にのような限界に近い咆哮ではありません。目が覚めるようなトロンボーンの強奏。コーダはさすがに強烈な金管でした。

パイタの演奏らしく金管が強い演奏でしたが、いつもの限界近い咆哮は無く、意外と自然な演奏でした。
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ズデニェク・コシュラー/スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

コシュラー★★★★
一楽章、一つに聞こえる序奏。速めのテンポで演奏される第一主題。爽やかで美しいオケの響き。あまり大きく歌ったりはしません。金管は激しく咆哮します。トランペットに現れる序奏は速めのテンポでやはりあっさりとした表現です。

二楽章、お国物ですが、あまり深みのある表現はありません。作品への共感よりも、距離を置いて作品に書かれていることを忠実に再現しているようです。中間部もあまり活発にはならず穏やかです。主部が戻った部分は落ち着いた良い演奏です。

三楽章、速めのテンポで深みのある歌です。心地良く揺れます。中間部は活発さはありませんが、柔らかい表現です。コーダは大きい響きでした。

四楽章、自然な響きのトランペットのファンファーレ。チェロの主題はかなり速いテンポでどんどん進んで行きます。ホルンのトリルが現れる部分は少しだけ速くなって、ホルンが強調されています。トロンボーンも気持ちよく鳴り響きます。金管は積極的に表現します。コーダは金管が見事に鳴り響いて輝かしいものでした。

金管が豪快に鳴り響く演奏でその部分は爽快でした。ただ、表現は抑え目であまり大きな歌や表現はありませんでした。
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アレキサンダー・ラハバリ/ブリュッセル・フィルハーモニック

ラハバリ★★★
一楽章、伸びやかに美しく歌う序奏。活気があって力感に溢れる第一主題。音の鮮度も高くとても瑞々しい演奏です。マーラーでも感じたのですが、音楽が小さくまとまってしまうようなところはこの演奏でも感じられます。トランペットに現れる序奏はかなり強く演奏されます。

二楽章、木管の弱音がとても透明感があって美しいです。ヴァイオリンのソロも美しいですが、その後ろの木管が豊かに残響を伴ってとても美しい演奏でした。

三楽章、ねっとりと尾を引くような演奏では無く、キビキビと動く明朗な主要主題。感情のこもった大きな表現はありませんが、美しい演奏です。

四楽章、チェロの主題も三楽章の主要主題と同様に明朗な演奏です。ホルンのトリルはあまりはっきり聞こえません。トランペットのファンファーレが戻る部分は速いテンポもあってとても勢いがあって大きな波が押し寄せてくるような迫力がありました。コーダはあまり急加速はありませんでした。トランペットは芯のしっかりとした響きですが、トロンボーンやホルンは響きの中に埋もれてしまってはっきりと響きませんでした。

感情を込めた表現はありませんでしたが、キビキビとした明朗な演奏でした。ただ、大きなスケール感が無く、小さくまとまってしまうような感じがしました。
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カレル・アンチェル/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1960年ライヴ

アンチェル★★★
一楽章、速めのテンポで太い線で描かれる序奏。速いテンポではつらつとした第一主題。大きく歌うわけではありませんが、とても力強い音楽です。積極的な演奏で金管も吠えます。

二楽章、テンポが動いたり大きく歌うわけではありませんが、とても生き生きと動きのある演奏です。ティンパニのクレッシェンドも激しいです。短い音は特に短く演奏して音を際立たせています。

三楽章、一転してゆっくりと歌う主要主題。中間部は力強い感じの演奏です。一つ一つの音にとても力があります。

四楽章、たどたどしい感じのトランペットのファンファーレ。刻み付けるように強いチェロの主題。ホルンのトリルが現れる部分はあまり強く無く、軽い演奏でした。とてもデッドでオンマイクの録音なので、とても音が強く響いているのだと思います。コーダはかなりの追い込みと迫力でした。

積極的な歌はありませんでしたが、とても音に力があって力強い演奏でした。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ハレ管弦楽団

ホーレンシュタイン★★
一楽章、暗くテンポが感情のままに動く序奏。録音が古く倍音成分が少ないようで、響きが少し寂しいです。テンポは大胆に動きます。

二楽章、録音が古く鮮明な音は聞けません。AMラジオを聴いているような感じです。中間部は優雅な表現です。

三楽章、アウフタクトをゆっくりと演奏してその後は速めのテンポです。

四楽章、ゆっくりと朗々と歌うトランペットのファンファーレ。淡々としたチェロの主題。ホルンのトリルの部分でもあまり大きな盛り上がりはありません。またこの部分のテンポがあまり速くならず少し間が持たない感じがあります。コーダはテンポの大きな動きもあり圧倒的でした。

テンポの大きな動きのある演奏でしたが、表現の振幅はあまり大きく無く、淡々とした表現でした。録音が古くAMラジオを聴いているようなナローレンジの録音では細部や微妙な表現を聞くことはできませんでした。
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ビクトル・パブロ・ペレス/テネリフェ交響楽団

ペレス
一楽章、感情を込めて濃厚に歌う序奏。巨大な響きにはなりませんが、カチッと決まるアンサンブル。トランペットに序奏が戻る部分は強めのトランペットでしたが、他のトゥッティではあまり金管は強く無く、振幅はあまり大きくありません。独特の表現もたまにありました。

二楽章、編成が小さいのか、透明感があって、アンサンブルも割と整っていますが、厚みのある響きや強弱の変化はあまり大きくありません。ヴァイオリンのソロは細くひ弱な感じでした。

三楽章、細く寂しい主要主題。とても響きが薄いです。響きが薄い分、スッキリとしているとは言えますが・・・・・。コーダもコントラバスがあまり聞こえず薄い響きです。

四楽章、トランペットはあまり伸びやかでは無く、奥まっています。あまり大きな感情の起伏は感じないチェロの主題。テンポの動きもほとんど無く淡々と演奏されます。あまりにもテンポが動かないので、待ちきれなくなります。ホルンのトリルが現れる部分も大きな盛り上がりにはなりません。小さい編成のバランスを考えてか、トロンボーンもあまり強くは吹きません。コーダも興奮を高めるような圧倒的な迫力や追い込みはありませんでした。

編成が小さいのか、かなり薄い響きで、テンポもほとんど動かず、踏み込んだ表現もあまりありませんでした。振幅があまり大きくないので四楽章のコーダも高揚感無く終わりました。
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Tomas Netopil/パルマ国立歌劇場管弦楽団

Netopil
一楽章、普通に演奏されているのですが、何か表面だけが鳴っているような感じで上滑りしているような感じがします。トランペットに序奏が戻る部分でもトランペットは強く鳴っているのですが、他のパートが付いてこない感じで、一体感がありません。コントラバスもしっかりと鳴っているのですが、何故か全体の力が感じられないのは不思議です。

二楽章、柔らかい響きなのですが、力の無い弦。柔らかく穏やかと言えば、そうとも言えるのですが、寂しい感じがします。

三楽章、艶やかな主要主題。中間部は穏やかであまり活発な動きはありません。かなり響きが安定してきて深い響きになってきました。

四楽章、ねっとりとしたチェロの主題。ホルンのトリルが現れる部分はほとんど盛り上がりを感じられない程音圧が高まりませんでした。トランペットのファンファーレが戻る部分は強く響きました。コーダはトランペットやトロンボーンが突き抜けて来ますが、少し雑な演奏になってしまいました。

前半の表面だけ鳴っているような上滑りしているような響きで弱々しい演奏から、後半は少し力強くなりましたが、その分雑にもなってしまった演奏でちょっとがっかりでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ドヴォルザーク:交響曲第8番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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