マーラー 交響曲第1番「巨人」3

たいこ叩きのマーラー 交響曲第1番「巨人」名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団1985年ライブ

icon★★★★
一楽章、冒頭の木管のバランスが絶妙です。バンダも良い距離感でした。弦楽器が入ってくる部分はすごく控え目です。
金管の咆哮はすさまじいです。弱音部はテンポを落としてたっぷりと歌います。テンシュテットの演奏の特徴だと思いますが、色彩感が豊かで、音楽の輪郭がくっきりと描かれています。

二楽章、すごく美しい音で録られていて、弦の響きなどもとても美しいです。

三楽章、途中で止まりそうになるくらいテンポを落としたり、表現は自在です。
弦楽器のデリケートな音色が魅力的です。アゴーギクも効かせて表情豊かな音楽です。
四楽章、予想していたような爆発ではなく、制御された冒頭でした。
伸びやかに歌う弦。とても気持ちが良い時間を作ってくれます。
金管は限界を超えたような爆発はしません。
後半かなりテンポが速くなりました。美しい「巨人」でした。

レナード・バーンスタイン/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★
1987年の録音

一楽章、ホールに広がるクラリネットの響きが綺麗です。バンダも十分に距離感があって良いです。
復活のときほど重さがないので、すんなりと聴く事ができる演奏で安心感があります。
テンポはかなり遅いですが、オケもバーンスタインといっしょになって楽しんでいるようで、チャーミングな表情が魅力的です。
音楽の盛り上がりとともに自然にテンポが速まって爆発します。嵐のような激しさと、牧歌的なゆったりした部分の振れ幅がものすごく大きい演奏で、作品えの共感がストレートに音楽になっているすばらしい演奏です。

二楽章、とても遅い。コンセルトヘボウの響きがとても美しい。すごく歌います、復活ではこれが粘っこ過ぎて、私には付いて行けませんでしたが、この曲なら大丈夫です。

三楽章、ここは速めのテンポです。切々と歌って僅かにテンポが動いているのか。表情はとても豊かです。一つ一つの旋律に感情が込められているような濃厚な演奏でとても説得力があります。

四楽章、かなりと言うか、相当遅いです。しばらくして少し速くなりました。テンポがすごく動きます、とにかく振幅がすごい。
ホールに広がるエコーは本当に美しい。テンポが遅い部分も十分に歌われていて、聴いていてとても気持ちが良い。音楽に浸ることができる良い演奏だと思います。
テンポの変化は異常と思えるくらいあるのですが、不思議なことに作為的な感じを受けないので、こちらも次第に音楽に引き込まれて行きます。

作品に没入して行くタイプとしては、テンシュテットと共通する部分もあるのかもしれませんが、バーンスタインの音楽は、テンシュテットの激しさとは違い、愛情や優しさに溢れているような感じがします。

ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団

icon★★★★
一楽章、冒頭から絶妙のアンサンブルを聞かせます。バンダはかなり遠いです。内声部を重視したバランスの演奏のようです。締まったホルンのアンサンブル。トランペットの咆哮!しかし、冷静さは失わずに進みます。テンポがガクッと落ちたり、またテンポが戻ったりして終わりました。

二楽章、 マーラーの細部に渡る指示にも的確に反応しています。クラリネットの際立った表現があったりしますが、中庸の域を逸脱することなく音楽は進んで行きます。

三楽章、オーボエが付点を極端にはずんで演奏しました。テンポの変化のつなぎも絶妙です。アゴーギクも効かせて豊かな表現です。テンポが動いてとても表情豊かな演奏です。

四楽章、抑え気味のブラスセクション、ライヴならではのテンポの動きがいたるところで見られます。ここ一発の爆発力はテンシュテット/シカゴsoには及ばないが曲を大きくとらえた息の長い歌があります。たびたびテンポが遅くなります。最後は青春のエネルギーの爆発でした。

ミヒャエル・ギーレン/南西ドイツ放送交響楽団

ギーレン★★★★
一楽章、密度の高いクラリネット。重いファゴット。間接音を含んで適度な距離感のトランペットのバンダ。登場する楽器が濃厚で克明です。トランペットのファンファーレもクレッシェンドしてとても積極的な表現です。速めのテンポで軽快に演奏される第一主題。とても美しいヴァイオリン。提示部の反復の前でテンポを速めました。展開部に入ってもすばらしい静寂です。オケの集中力がとても高く、音が集まってきます。ホルンのアンサンブルもすばらしい。トランペットのファンファーレは爆発的なパワーではありませんでした。コータ゜でのトロンボーンやトランペットの強奏が突き抜けて来る部分は素晴らしいエネルギー感でした。硬質なティンパニもとても良い音色です。

二楽章、木管の主題もとてもアンサンブルが良く気持ち良い演奏です。動きがあって生き生きとした表現です。旋律以外のパートもしっかりと響かせていて、とても見通しの良い演奏です。中間部は速めのテンポで小気味良く進みます。主部が戻って、シャープな響きの演奏が続きます。

三楽章、速めのテンポです。伸びのあるコントラバスの主題。高音が美しいオーボエ。テンポも良く動いてとても音楽的です。ギーレンってもっと無機的な演奏をするのかと思っていましたが、とても有機的で濃厚な音楽です。中間部はとても現実的な響きですがとても美しい。主部が戻って、また速めのテンポでグイグイと前へ進もうとする音楽ですが、次第にテンポを落として静まって行きます。

四楽章、整然としている第一主題。テンポも動きます。このテンポの動きは事前に計算されたもので、テンポの動きに合わせて音楽が熱くなることはありません。美しいですが、あまり表情の無い第二主題。相変わらず整然とした展開部ですが、ホルンは奥まったところにいて、あまり前には出てきません。再び静寂な再現部。とても鍛えられているオケでライヴでも見事なアンサンブルです。最後も整ったアンサンブルでバランスの良い響きで終えました。

磨きぬかれた音色と素晴らしいアンサンブルで濃厚な色彩と見通しの良い音楽はなかなかでした。

フランツ・ウェルザー=メスト/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

フランツ・ウェルザー=メスト★★★★
一楽章、会場のノイズも結構拾っている録音です。奥行き感と残響を伴ったバンダのトランペット。濃厚な色彩感。Ebクラがくっきりと浮かび上がります。すんなりと入った第一主題。提示部の反復の前はかなりテンポを上げました。反復の後の展開部の前はかなり激しい演奏になりました。柔らかいホルン。ハープの存在感もしっかりあります。場面が変わると音楽の表情や色彩感も大きく変わりとても変化に富んだ演奏です。トランペットのファンファーレは若干抑え気味でした。切迫感のあるコーダでした。

二楽章、穏やかで抑え気味の低弦。木管の主題も強くは出てきませんが、とても生命感を感じさせる音楽です。旋律の周りを彩る金管も強く存在を主張するので、とても色彩感が豊かです。中間部はテンポも動いてとても良く歌います。主部が戻って激しいホルン。

三楽章、良く歌うコントラバスのソロ。オーボエも良く歌いました。中間部ではとても繊細なヴァイオリンがとても美しい。主部が戻って、また色彩感豊かで、生気に満ちた演奏です。

四楽章、生き物のように動くオケ。全開ではありませんが、かなり激しい第一主題。ホルンの咆哮は凄いです。独特な強弱の変化を付けた第二主題ですが、これも美しい。展開部の前のホルンもとても美しい演奏でした。展開部でもトランペットは抑え気味ですが、ホルンは遠慮なしに咆哮しています。細心の注意を払って丁寧な再現部。第二主題の再現もとても美しいものでした。ファンファーレはそんなに強くは演奏されませんでした。コーダは相変わらずすさまじいホルンの咆哮に合わせてかなり力の入った演奏でした。

色彩感も豊かで、歌もありなかなかの演奏でした。正規の録音を期待したいです。
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ズービン・メータ/フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団

メータ★★★★
一楽章、残響を伴って美しいクラリネット。バンダはそんなに遠くないです。力みのない穏やかな第一主題。提示部の反復はしませんでした。とても鮮度が高く、生き生きとした表現の演奏です。トランペットのファンファーレも奥行き感があってとても良い雰囲気です。鋭い響きのトランペット。動きの活発なホルン。青春のエネルギーを感じさせる演奏でしたがトゥッティでリミッターがかかったように音の伸びが無くなったのがちょっと残念でした。

花の章、トランペットが鋭く、穏やかさはあまり感じません。美しいホルン。うつろに歌うオーボエ。トランペットに絡む楽器が非常に美しいです。

二楽章、ゆったりとしたテンポで、流れるような部分と、縦に動く部分の対比が明確です。色彩感がはっきりしていて濃厚で躍動感があります。中間部は速めのテンポでとても良く歌い積極的で爽やかな音楽です。

三楽章、オーボエがとても感情を込めて歌いました。とても良く歌う演奏です。中間部の豊かな色彩感と歌に引き込まれます。ファゴットも深い響きです。

四楽章、若干遅めのテンポです。途中でさらにテンポを落としたりしますが、やはりリミッターがかかったような録音で激しさが伝わって来ません。第二主題は包容力のある美しい演奏です。展開部に入ると金管が奥まってしまって、混沌として全体像が掴みにくくなります。トランペットに比べると貧弱なホルン。オケのアンサンブルは良く、一体感があります。再現部でも活発に動く木管。二度目のファンファーレの最後でテンポを落としました。コーダでも鋭いトランペットが突き抜けて来ます。

色彩感も豊かで、歌もあった良い演奏だったと思うのですが、リミッターがかかったような録音で、四楽章のコーダで爆発したのがどうか分からなかったのが残念でした。
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ディエゴ・マテウス/フェニーチェ劇場管弦楽団

マテウス★★★★
一楽章、潤いのあるクラリネット。遠くから柔らかく響くファンファーレ。ソフトで優しい第一主題。若干遠い感じはありますが、美しい演奏です。展開部に入っても一音一音確かめるような確実な歩みです。荒ぶることなく穏やかで美しい演奏が続きます。ミュートを付けたトランペットのファンファーレもとても静かでした。二度目のファンファーレの後も吠えることは無く、抑制された表現です。ベタベタと重いティンパニ。

二楽章、リズミックに歌うヴァイオリンの主題。踊るように動きのある演奏をしています。中間部でも弦の柔らかく優しい主題の演奏です。弱音部は非常に美しいですが、トゥッティの思い切りが少し悪いような感じで、強弱の振幅が狭い感じがします。

三楽章、歌うコントラバスの主題。オーボエは最初音を短く切って演奏しましたが、とても表情の豊かな演奏でした。シンバルが入るところで少しテンポを速めました。テンポは所々で少し動いています。中間部のヴァイオリンも柔らかく優しい演奏でした。このオケの弱音は非常に美しいです。主部が戻るとクラリネットの弾むようなリズムの演奏。弱音時の表情は細部までとても良く付けられています。

四楽章、美しい響きではありますが、エネルギー感には乏しい響きです。美しく歌う第二主題。羽毛のような柔らかな肌触りで本当に美しいです。美しい響きなので歌も心に染み入るような感じです。展開部でも金管は強く吹いているのは伝わって来るのですが、エネルギーとしては強くなりません。録音でリミッターがかかったような不自然な録音でもないのですが・・・・・。再現部ではまた弱音の非常に美しい音楽が演奏されます。全く荒れることなく美しいクライマックスです。最後はテンポを速めて興奮を煽るような演出でした。

とても美しくロマンティックな演奏でしたが、トゥッティのエネルギー感が無かったのが残念でした。弱音の美しさにトゥッティのエネルギーが伴えば文句なしの演奏だったのですが・・・・。

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、この録音でも遅めのテンポを取っています。静寂間があります。この静寂間が何ともいえない緊張感を醸し出しています。
ただ、シカゴsoとのライブほど大きくテンポが動かない。やはりスタジオ録音となると、よそ行きになってしまうのでしょうか。
テンシュテットの録音は、あまり美しい音を聞くことができないのですが、このCDは美しいです。
一音一音を大切に慈しむかのような、演奏です。ライブの鬼気迫るような演奏とはまた違った安堵感や優しさを聴かせてくれます。
ffでは伸びやかなブラスの響きがすばらしい。よくロンドンpoが下手くそだと書かれていますが、どうしてどうして、シカゴsoクラスには及ばないにしても、かなりの演奏をしてくれています。

二楽章、テンシュテットのライブは混濁やアンサンブルの乱れなど関係なしに指揮者の思いのたけをぶつけてくるような演奏をしますが、このCDでは透明感の高い、極めて整然とした演奏をしています。

三楽章、テンポを大きく動かしたり、アゴーギクを効かせたりはあまりしていないので、上品な感じで、やはりテンシュテットの演奏にしては、よそ行きっぽく聞こえます。弦楽器が美しい倍音を伴って心地よく響いています。

四楽章、冒頭の金管の咆哮も多少余裕を残しているような感じで、汚くなることはありません。
ただ、シンバルが近過ぎるのが気になります。
だんだん熱を帯びてきて、テンポも動きだしました。緩急のコントラストがはっきりしていて、このCDではゆったりした部分がとても良いです。
この楽章の途中で入る金管は決してパワー全開にはなりません。美しい響きを聴かせます。
終結部で全開になっても、大暴れすることはなく紳士的な範疇でした。
テンシュテットの演奏にしては細身な感じを受けましたが、シャープな良い演奏でした。

しかし、普段のテンシュテットの爆演を知っている人たちにとっては不満の残る演奏かもしれません。

ヘルベルト・ケーゲル/ライプツィヒ放送交響楽団

icon★★★
一楽章、弦のフラジオレットの低音部分がはっきりと聞こえます。生命感のあるクラリネット。モヤーっとした中から聞こえるバンダのトランペット。締まった響きのホルン。淡々と伸びやかで爽やかに演奏される第一主題。第二主題のあたりで一旦テンポを落としました。爆発することなく展開部へ入りました。ライヴ録音のせいかミュートしたトランペットのファンファーレが弱かった。その後のミュートを外したファンファーレも少し埋もれる感じでした。見通しよく爽やかな演奏でした。

二楽章、すごくゆっくりとした冒頭の低弦の動機。ところどころでちょっと間を空けます。ヴァイオリンの動機のころにはテンポが上がっていますが、再び低弦の動機になるとゆっくりになります。中間部の主題でも間を空ける部分がいくつもあります。テンポの動きに合わせてよく歌います。終結に向けてテンポを煽りました。

三楽章、静寂の中に響くティンパニとコントラバス。ゆっくり始まり次第にテンポを上げるオーボエの旋律。作品を克明に印象付けるかのようにテンポはとてもよく動きます。表現も積極的で聴き手に届いて来ます。中間部のヴァイオリンはヴェールをかけられたようなとても柔らかい響きで惹きつけられました。主部が回復するとまたオーボエがぐっとテンポを落として演奏しました。

四楽章、パカンと言うシンバル。とてもゆっくりと演奏します。いつの間にかテンポが速くなっています。第二主題のヴァイオリンも絶妙な間を含んだ美しい歌です。ヴァイオリンに絡むオーボエも間のある演奏です。展開部からもすごくテンポが変わります。第一主題の再現は速いテンポです。ファンファーレはどちらも他のパートに消されぎみでした。最後はアッチェレランドして終りました。

歌や間もありなかなかの演奏でしたが、四楽章の燃焼度があまり高くないのが残念でした。

ジョルジュ・プレートル/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

プレートル★★★
一楽章、以外に開放的な冒頭。すごく近く大きい音のバンダのトランペット。穏やかな第一主題。提示部の反復の前でテンポを速めました。反復した後はテンポが良く動きました。展開部に入ると静寂感に支配されます。美しくとても流れの良い音楽です。金属的な音で浮かび上がるミュートしたトランペットのファンファーレ。ファンファーリの後一旦静まるところでテンポを落とし、再び盛り上がるのに合わせてテンポを速めました。オケも無理なく鳴らしています。

二楽章、あまり厚みを感じさない低弦。速めのテンポで引っかかるところもなくサラリと流れて行きます。中間部へ入る前に僅かにテンポを落としました。静かに歌う中間部。主部が戻るとホルンの激しい演奏です。

三楽章、あまり歌わないコントラバスのソロ。他の楽器が入って来ても静かです。あっさりとしていますが、なぜか切々と訴えてくるような不思議な演奏です。中間部も何かを強調することもなく流れて行きます。

四楽章、必要以上にオケに強奏はさせません。すっきりとスリムでシャープな響きです。テンポは良く動いています。第二主題もテンポが動いています。とても艶やかなヴァイオリンの演奏です。展開部冒頭では金管にかなり強く吹かせました。再現部はまた開放的な雰囲気でした。再現部冒頭の第一楽章の序奏部分から続く静寂で安らかな弦。ヴィオラの警告的な動機の後はゆっくりとしたテンポです。輝かしいコーダでもテンポが動きました。

良くコントロールされた流れるような演奏でしたが、聞かせどころがはっきりしないところが残念でした。
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