マーラー 交響曲第1番「巨人」4

たいこ叩きのマーラー 交響曲第1番「巨人」名盤試聴記

ジュゼッペ・シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団

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一楽章、シノーポリ独特のフワッとした感じ。バンダの配置は、復活同様絶妙な遠近感です。ゆったりとしたテンポで進みます。
ふくよかなバランスで暖かみのある演奏です。ふくよかなバランスの中にピリッとしたところがところどころにちりばめられていてポイントを押さえているようだ。面白い。

二楽章、今まで聞きなれていない音がいろいろ聞こえてくるのは、新しい発見があって面白いところなのだが、全体を支配しているふくよかな音色が影響するのか、表情にも厳しさが感じられない。

三楽章、チェロのソロはすごく弱くティンパニに隠れてしまいそう。表現は平板な感じがします。ショルティに代表されるような、ギンギンガリガリ言わせるような演奏とは対極にある穏やかな癒し系の「巨人」なのです。

四楽章、やはり音色からそう感じるのか、オケのフルパワーには聞こえない。全体にマットな響きで色彩感も乏しい感じがします。
とても平和な感じ
これまであまり聞こえなかった対旋律を強調したり、時にテンポを落としたり、この演奏独特の部分は持っているのだけれど、それをオブラートにくるんだような、ソフトな肌触りが聴く人によって評価を大きく左右するところでしょう。
穏やかで、スケールの小さいミニチュアを聴いたような感覚に襲われました。
新たなマーラー像を提起したことはシノーポリの作曲家としてのキャリアからも想像できることで、評価すべき点だと思いますが、演奏芸術としての詰めはもう少し必要だったのではないかと感じました。
マーラーの巨大な音響空間を感じさせない演奏は共感しにくい部分で、多分多くの人たちが不満に感じるのではないかと思います。

基本的な解釈は良いとしても、やはり巨大な音響空間の再現をスポイルして欲しくなかったというのが私のストレートな感想です。

ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニック

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一楽章、ゴロゴロと言うノイズの中から、フラジオレットが聞こえます。豊かに響くクラリネット。ミュートをしたトランペット。割と速めのテンポで淡白に進みます。鈍った音のトライアングル。後のコロンビア交響楽団との録音の7年の年数で録音技術が大きく進歩したんだとこの録音を聞くと感じます。薄い弦。ほとんど残響成分を含まない録音からは美しい音を聞き取ることはできません。トランペットのファンファーレの前あたりからテンポを動かしてこってりとした表現でした。

二楽章、急に音が近くなりました。とても動きがあって活気のある演奏です。中間部もかなり速いテンポで優美な雰囲気よりも活発な印象です。スケルツォ主部が戻り再び活気のある演奏で、若さと希望に溢れた演奏のようです。

三楽章、音程が不明瞭なティンパニ。木管や弦には丁寧な表情がつけられています。中間部もどういうわけか落ち着きの無い演奏です。

四楽章、径の小さいシンバルの一撃から始まりました。第一主題の途中で少しテンポを落として克明に印象付けるような演奏です。第一主題部はテンポがよく動きます。第二主題もテンポを揺らしてたっぷりと歌います。とても丁寧に語りかけてくるような感じがします。展開部も大胆にテンポが動きます。再現部では古い録音にもかかわらず美しさの片鱗を見せる弦。後のコロンビア交響楽団との録音のようなコーダで大きくテンポを動かすことは無く、スッキリと終りました。

テンポを動かして訴えかけてくる部分など、マーラーを熟知したワルターならではの演奏でしたが、録音の古さがいかんともしがたい。

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、探るように慎重な冒頭。とても感情のこめられた濃厚なオーボエ。美しいウィンナ・ホルン。着実な足取りです。さらりと自然な第一主題。提示部の反復の前でテンポを上げました。展開部からの沈み込みが深く表現の振幅が広いです。トランペットのファンファーレは速いテンポでしたが、その後テンポが動いています。抑え気味で圧倒的なクライマックスという感じではありませんでした。

二楽章、ゆったりとしたテンポで確かめるような確実な足取りの演奏です。バーンスタインの演奏にしては、感情をこめて歌う部分は少ないです。中間部はさらにたっぷりとした濃厚な演奏で、テンポも動いて作品への共感が感じられます。

三楽章、あっさりとしたコントラバスのソロ。速めのテンポでどんどん進みます。オーボエとトランペットが絡む部分ではたっぷりと歌いました。中間部はヴェールを被っているような美しい音色で夢見心地でした。主部が戻って、また速めのテンポで力強い音楽です。

四楽章、硬いシンバルの音。ゆったりと堂々とした第一主題が提示された後、テンポを速めています。その後またテンポを落として再度速めました。激しいテンポの動きです。テンポも動いて感情の込められた第二主題。速いテンポの再現部。トランペットが音を短めに演奏します。弱まったところで、再びテンポが遅くなります。強くなるに従ってテンポを速めます。バーンスタインはこの頃すでにこの作品を完全に自分のものにしていたようです。ただ、この目まぐるしいテンポの変化には少し落ち着きが無いような印象を受けます。ファンファーレはあまりはっきりとは聞き取れませんでした。ここに至るまでもテンポは頻繁に変化していました。トゥッティでの響きも少し浅いように感じました。最後はテンポを上げて追い込みます。

あまりに頻繁に変化するテンポは落ち着きの無さを感じました。響きにも深みが無くちょっと期待外れの演奏でした。
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オトマール・スゥイトナー/シュターツカペレ・ドレスデン

スウィトナー★☆
一楽章、弦のフラジオレットががとても硬い音に聞こえます。続くクラリネットがとても柔らかい音を聞かせます。トランペットのファンファーレが間接音を伴ってとても柔らかく響きます。編成が小さいように感じさせる第一主題。テンポはほとんど動きません。とても小じんまりとまとまっていて、マーラーを聞いている感覚ではありません。金管も非常に軽く吹いているし、弦も弓をいっぱいに使って必死に演奏しているような雰囲気がありません。

二楽章、カチッとした演奏で、スケルツォの雰囲気ではありません。一般的にマーラーを演奏するオケに共通した近代的でスケールの巨大なオケの印象とは異なり、とても古風で小さい編成のオケが演奏している感じで、独特の雰囲気を持っています。

三楽章、カノン風に現れる主題がテューバも入ってくるようになると騒々しいくらいです。中間部のヴァイオリンも弓の真ん中あたりだけ使っているような小さくまとまる演奏です。主部が回帰して淡々と音楽が進みます。

四楽章、チャイナシンバルをステックで叩いたような音から始まりました。余力をかなり残した金管ですが、何か詰まったような音で開放感がありません。ヴァイオリンの第二主題も今まで聞いた演奏とはちょっと違います。何か窮屈そうな演奏です。展開部でも金管は咆哮することなく、抑えたままです。しかし、チャイナシンバルはナゼこの曲に登場するのだろう?再現部でも古風な響きが印象的です。トランペットのファンファーレも独特の響きです。近代的な分厚い響きはありません。ティンパニも古い時代の音です。華々しい勝利の響きではありません。まるで古楽器で演奏したマーラーのようでした。

ジュゼッペ・シノーポリ/ワールド・フィルハーモニック管弦楽団

シノーポリ★☆
一楽章、遠く淡い響きの序奏。バンダのトランペットはそんなに遠くは無くデッドです。第一主題の入りはゆっくりでした。展開部に入ってもあまり緊張感は感じません。音楽にほとんど表情が無く、のっぺりとしていて平板な感じです。トランペットのファンファーレが鳴っても高揚感もありません。響きにも厚みが無く何か物足りない演奏です。

二楽章、この楽章でもただ楽譜に書かれていることを音にしているだけのようで、無表情で平板です。中間部は少し歌われています。

三楽章、遠いコントラバスの主題。途中で加わるオーボエも平板です。中間部のヴァイオリンはフワッとした音色で夢の世界のようでなかなか良い雰囲気でした。

四楽章、大編成のオーケストラにもかかわらず、響きが薄く奥行き感もありません。演奏会場がデッド過ぎるのか?オケもあまり乗っていないようです。トゥッティで低音が伴っていないので、響きに厚みが全くありません。終盤にテンポが大きく動きました。

録音の問題もあったのだと思いますが、響きが凄く薄く、残響もほとんど感じない響きで、作品への共感なども全く表現されていないように感じました。
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ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、透明感の高い弦です。暖かいトランペット。今まで聞いたマーラーとは温度感が違う。
ビブラートの効いたホルン。「チェコの弦」と言われますが、独特の透明感があり魅力的です。
ハープの三連符がたどたどしい。弦の美しさに比べると管楽器にはバラツキがあるようです。トランペットのffが独特の粘着質の音がして、弦の透明感と合わないような感じを受けます。

二楽章、ホールの影響か、全体に木質系の感じがして、暖かみがあります。ノイマンの指揮はオケの音質を生かした穏やかな表現で、決して襲い掛かってくるような演奏ではありません。

三楽章、トランペットのmfぐらいのアンサンブルは柔らかくて暖かみがあって良いのですが・・・・・・。

四楽章、金管が音を短く切るのがとても気になります。シンバルも硬質な楽器を使っているようで、弦とは水と油のようなことになっているように私には聞こえます。
アンサンブルも良いのですが、金管があまり鳴らないのをムリに力んで吹いているようで、伸びのある音がしないので、うるさいです。
せっかく弦が美しい響きを持っているのに、金管と打楽器が良さを壊してしまっているようで、ちょっと残念な演奏です。
ウルサイ!
この粘着質の金管の響きは1970年代のN響でもこんな音を出していました。もちろん今はすばらしいオケに成長しましたが、まだ技術が世界水準に達していない時にはこのような音になってしまうのでしょう。

音楽がどうのこうのよりも、ffが汚くて残念ながら、あまり聴きたくない演奏でした。

ジェイムズ・レヴァイン/ロンドン交響楽団

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一楽章、太く豊かなクラリネット。突然昔のラジオが鳴り出したようなバンダのトランペット。とても気持ち良く鳴るホルン。レヴァインの音楽には静寂感が無いように思うのですが・・・・・。この演奏でも弱音の緊張感がないし、強奏では騒々しく埃っぽい印象がどうしてもあるのです。

二楽章、伸び伸びと豪快に鳴る弦。遠慮なく強いトライアングル。弱音はありませんが、オケは気持ちよく鳴ります。

三楽章、ここでもティンパニも弱音はなく、コントラバスも演奏しやすい音量で演奏しています。中間部のヴァイオリンはマスクされてヴェールをかけられたような独特の響きが美しかった。表情はあるのですが、少し乱暴な感じがあります。

四楽章、ティンパニがかなり強調されています。第二主題もとりたてて美しいことはなく、色彩感もあまりありません。展開部も雑然としていて落ち着きがありません。響きの純度が高くなく、余分な響きが常に付きまとっているような感じがします。最後はかなりテンポを上げて終わりました。

ちゃんと交通整理されていないような印象の演奏で、雑然としていました。

リボール・ペシェク/チェコ・ナショナル交響楽団

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一楽章、低音も良く聞こえるフラジオレット。あまり潤いの無いクラリネット。比較的近いバンダのトランペット。速いテンポで静かな第一主題です。提示部の反復の前ではほとんどテンポが変わりませんでした。展開部もとても静かです。すごく少ない人数で演奏しているような寂しさです。登場する楽器もくっきりと浮かび上がることはなく、合奏の中に埋もれているような感じです。トランペットのファンファーレもあまり音圧感がなく、とても貧弱なオケの演奏のように感じます。

二楽章、冒頭の低弦にも厚みがありません。メロディを演奏する楽器が前に出てこないので、色彩感もあまり鮮明ではありません。中間部も速めのテンポであっさりと演奏されます。

三楽章、主題の途中で登場するオーボエがあまり浮き出ません。主部の中間部のクラリネットは良く歌いました。中間部のヴァイオリンがあまり鳴っていないような感じがします。オケの響きも極上とは言い難く、色彩感にも乏しい演奏で、アゴーギクを効かせて演奏することも無く、こちらとしては、何を聞けば良いのか戸惑います。

四楽章、小さい径のシンバル。全開ではない第一主題。なぜか鳴らし切らない演奏が疑問です。もっと色んな音が混在しているはずなのにとてもスカスカで寂しい響きです。弱音で淡々と進められる第二主題。展開部に入ってもどこか醒めていて熱気を帯びることはありません。余分な肉を削ぎ落としたような痩せた音楽です。ミュートを付けたファンファーレも弱弱しい。コーダの前後で大きくテンポが動きました。

私には、魅力的な演奏には感じませんでした。
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