マーラー 交響曲第2番「復活」

マーラーは、1891年以来、ハンス・フォン・ビューローと親交を結んでいたのだが、1984年にビューローはカイロで客死する。その頃マーラーはこの交響曲の第三楽章まで書き上げていた。一楽章は「葬礼」と言う単一楽章の交響詩として発表しようとも考えていた楽章で、交響曲第一番の主人公である英雄を葬り、二楽章では、この、敬愛する死者の生涯の中の幸福な瞬間、そして枯れの青春時代や失われた純潔さへの悲しい思い出。三楽章は、世界と生とは錯乱した幻影となる。すべての存在と生成に対する嫌悪が鉄の拳をもって彼をとらえ、自暴自棄の叫喚にまで彼を追い立てる。四楽章は、純潔な親交の感動的な声が枯れの耳に響く。最終楽章をいかにまとめるかに苦労していた。同年3月、ビューローの葬儀に出席したマーラーは、式の中で児童合唱がコラールで歌うフリードリヒ・クロプシュトックの「復活」の詩を聞き、それを終楽章の歌詞にすることを思い付いた。そして原詩に自身が手を加えたものをテキストとして書き上げ、その序奏部として「子供の不思議な角笛」から取られた「原光」を付け加えて完成したのです。なおこの曲の管弦楽編成は「第8番”千人の交響曲”」に次いで大きなものとなっています。
マーラー:交響曲第2番「復活」ベスト盤アンケート

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

クラウス・テンシュテット ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1989年ライヴ

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1989年のライブ録音。この時期以降のテンシュテットのライブは異様な緊張感を伴った演奏が多いですが、この演奏はどうでしょうか。

一楽章、粒の揃った弦のトレモロ、確実な足取りの開始です。音色はバーンスタインのような粘着質ではなく、細かい粒子の砂のようなサラッとした感触です。遅いテンポで淡々と進む音楽。第二主題の前にリタルダンドしました。しかしすごくダイナミックです。第二主題は作品を慈しむかのように丁寧に演奏されました。さらにテンポを落として歌う場面も、そしてテンポを速めて激しい表現も。
展開部も遅いテンポで一音一音確かめるように進みます。それにしても遅いところはものすごく遅い!テンポの変化も自然です。この演奏ではロンドンpoがシャープな響きで応えています。テンポの動きが自在でテンシュテットとロンドンpoが作品と一体になっているのが良く分かります。再現部は少しテンポが速くなったのか、それとも遅いテンポに慣れてしまったのか?再現部に現れる第二主題はすごく遅いテンポで作品への共感を強く感じさせる演奏です。これだけ遅いテンポでも弛緩することなく激しくうねる演奏に引き込まれるほどの演奏です。終結に向けてさらにテンポを落として心を込めて行きます。最後の最後でもテンポが大きく動きました。

二楽章、一楽章とは打って変わって暖かい響きで始まりました。この楽章も遅いテンポでたっぷりと歌います。ここでもアゴーギクを効かせてテンポが動きます。歌に満ちた演奏です。弦楽器のセクションがデリケートな表現をします。本当によくテンポが動きますがオケも十分に理解して付いていってます。テンシュテットの内面からにじみ出る作品への共感が伝わるすばらしい歌でした。

三楽章、弦も木管も強弱の変化などすごく表情が豊かです。金管は余力を残しているような感じです。またテンポをぐっとおとして豊かに歌います。作品の隅から隅まで知り尽くしているからできるテンポの揺れです、この揺れにテンシュテットの思いがたくさん込められているように感じます。この頃になるとオケとも阿吽の呼吸でテンポの動きに対応しているようです。金管は終始余力を残しているようでした。ティンパニも強打はしますが、これもまだ余力を残しているように感じました。

四楽章、控え目な歌いだし。美しい金管のコラール。ネスの独唱も心のこもったものです。独唱の最後の音に少し余韻を残して欲しかった音が短かかったのが残念。

五楽章、冒頭から大爆発!すごく遠いバンダのホルン。豊かなホルンや木管の表情。第二主題がトロンボーン、トランペットに引き継がれた直後にホルンの激しい咆哮!ステージ上の木管に消されそうなバンダのホルンです。その後に続くすごいブラスセクションの咆哮と打楽器の活躍!強烈な打楽器郡のロールのクレッシェンド!聴き進むにしたがって手に汗をかいてきました。これほどまでに作品と同化した熱い演奏があっただろうか?しなやかな再現部。鋭い響きのバンダのトランペット。
合唱が入る前の部分はとても神聖な感じでした。ゆったりとしたテンポで静かに歌いはじめる合唱。会場内も一体になって聞き入っているような静寂感です。合唱から浮かび上がる独唱。掛け合いで入るオケもすばらしい響きでとても荘厳な感じの演奏です。遅いテンポのまま歌われる二重唱とオケとの掛け合いも見事でした。この遅いテンポでオケも合唱もよく持ちこたえるなあと感心します。北ドイツ放送交響楽団とのライブのような「爆演」とはちがう。伸び伸びと開放されたすばらしいスケール感!自由で開放されたことを表現したかったのだろうか。ここまでどちらかと言うと抑え気味だったオケをクライマックスで一気に解放!神の領域へ飛び立つのだ。この遅いテンポでの演奏は作品の内面を抉り出すには必然だったのだろう。最後の音もすさまじいものでした。全く弛緩することなく最後まで演奏しきったテンシュテットと奏者たちに惜しみない拍手を送りたい。久しぶりにもの凄い演奏に出会った。

レナード・バーンスタイン ニューヨーク・フィルハーモニック

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この演奏は、あまりにも重い。
個人的には、マーラーの枠を超えてしまっていると思うんですが・・・・・。

一楽章、十分にホールの響きをともなって重量級の出だし。テンポは遅いが遅い設定のまま進むので、わりと安心感がある。テンシュテットのような急激な変化はなく、どっしりと構えたままで、緊張感を伴う感じはあまりない。
オケもffでも節度ある演奏。と思っていたら、テンポが速いところは結構早い。しかし、遅いところが異様な遅さだ。
弱音部をゆったりとしたテンポで、ねばっこく歌う。バーンスタイン節とでも言おうか、ここまでされると「さすが!」と言いたくなる。弱音部の丁寧な歌がとても印象に残る演奏です。

二楽章、この楽章もテンポが遅い。バーンスタインが小学校の低学年に音楽の授業をしているようなほほえましい情景が浮かぶ。バーンスタインの作品に対する愛情のようなものが表出される演奏で、とてもなごやかな雰囲気を作り出している。フレーズの中での動きは少なく、テンポが遅くてもしつこい感じはなく、このテンポに違和感は感じない。

三楽章、この楽章も通常のテンポよりは遅いのだろうけど、このテンポに慣れてきたようで、普通に聞いている。
晩年のバーンスタインの演奏は、総じて異常なくらい遅いテンポの演奏でしたが、テンポを遅くして何か濃厚なものを表現したかったのだろうか?または、細部を抉り出したかったのだろうか?それとも、バーンスタインの感性のままにまかせて演奏したらこうなったのだろうか。
濃厚な表現だったら、テンシュテットの方が強烈だし、細部を抉り出すのであれば、録音の効果もあるがショルティのシカゴsoとの演奏を聴いた方が良いと思う。
この演奏はバーンスタインの心の中で鳴り響いている音楽をそのまま現実のオーケストラで再現したものなのだろうと思う。一般的な演奏からすると異様なテンポ設定で進むがバーンスタインにとっては、ごく自然なままを表出しただけなんだろう。

四楽章、極めて自然に流れる音楽。細部にわたる指示などはあまりせずに、奏者の自発性に任せているような開放感が独特。

五楽章、四楽章の静寂から一転、ニューヨーク・フィルの炸裂。ここでも、テンポ設定はバーンスタインがしているが、細部はオケに任せているような、友好的な演奏だ。バーンスタインの心の中では、オケや合唱独唱のメンバーはもちろん、マーラーも友達だったのではないか。
テンポは遅めではあるが、演奏自体は淡々と進んでいく、しかし、最後にこの遅いテンポをさらに遅くして迎える終盤は圧巻です。これは凄い!こんな結末が待っていようとは・・・・・・。このために前の90分があったのか。
この演奏はどう評価すれば良いのだろうか、私には何がなんだか分かりませんでした。この異常とも言える最後のために、すべてが設計されていたのだとすれば、バーンスタイン恐るべし!!!!。
ベームが晩年、同じように異常に遅いテンポでしかも散漫な凡演を多数残したのに対して、同じように異常に遅いテンポで多数の録音を残しているバーンスタインの演奏が高く評価されるのは、作品を大きく捕らえたがっちりとした設計があるからだろうか。

この演奏も最後は「やられたぁ!」と言う感じです。
初めて「復活」を買う人はこのCDは絶対に買わないように。

ラファエル・クーベリック バイエルン放送交響楽団

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私のクーベリックに対するイメージは「中庸」です。
特に突出する個性は感じないけれども、堅実で王道を行く実力派と言うイメージです。ただ、たくさんの演奏を聴いたわけではないし、スタジオ録音しか聞いていないので、それが正しいかは分かりません。
今回の、復活のライブはとても楽しみな一枚です。

一楽章、わりとおもむろな出だしで、、特に強調することもなくすんなりの導入。ホールの残響も適度に取り込んだ録音です。
ライブとは言え、手兵のバイエルン放送soとの演奏なので、アンサンブルも整っている。ちょっとした、タメにもオケは機敏に反応する。機能性の高い、シャープなオケのように感じる。他のオケのライブCDと比べると、細身な感じです。
最初はクールな演奏からスタートしましたが、音楽が進むにつれて熱を帯びてきました。表情も豊かになってきたし、管楽器にも火が入ったようです。クーベリックの指揮もテンポを自在に動かして生き生きとした音楽を作り出します。
それでも、アンサンブルは乱れません。速い部分はかなりテンポを上げますがオケは安定しています。伸びやかで美しい演奏です。音楽は熱気を帯びてきていますが、安定したバランスで、暴走や突出もなく、クーベリックがしっかり手綱を締めながら音楽を運んで行きます。

二楽章、テンポの揺れは自然です。恣意的な表現はなく、純音楽と言うような清廉さです。クーベリックの指揮もとても丁寧にニュアンスをオーケストラに伝えているような感じがします。金管が入ってきてもうるさくない、綺麗な音です。しっかりコントロールが行き届いた範囲で、節度を保ちながら音楽を進めて行きます。とても安心感があって好感が持てる演奏です。

三楽章、遅めの開始とデッドなティンパニ。抑えたクラリネット、冒頭部分ってこんなに静かだったっけ?と思うくらい滑らかに進められて行きます。ものすごく統率されているようですが、オケのメンバーもクーベリックの音楽に同調しています。ffでも美しい。粗雑なところが一切ありません。これは、数ある「復活」の中で異彩を放つ名演でしょう。見事な演奏。

四楽章、独唱も艶やかで美しい。ヘラクレスザールの特性もあるのかな?わりとあっさりとした運びです。

五楽章、ゆっくりとしたテンポで金管群が伸びやかで見事な美しいffを響かせる。バンダはかなり遠い。バンダの後、木管やホルンのあたりからテンポは速くなる。
コラールの扱いは独特のバランス。その後のクレッシェンド、次の小節の一拍前に入るティンパニが次の小節の頭にクラッシュシンバルと同時に入ってしまう。ここは各オーケストラの打楽器奏者にとって鬼門ですね(^ ^)
とにかく伸びやかに良く鳴るオケだ。そして、音楽も次第に熱気を帯びてくるが、アンサンブルはほとんど乱れない。
バンダはあまり聞こえないくらい遠い。その後のffでテンポが落ちる、これは効果的!
バンダが遠いので、ステージ上のオケとの対比ができない。バンダだけになる部分はなかなか良い効果なのだが・・・・。
その後の合唱も消え入るようなppで始まる。途中からの独唱も頑張らなくても十分なバランスだ。次第に盛り上がって行く音楽だが、宗教的な雰囲気にふさわしい、大聖堂へ向かう隊列のように、厳かに、しかし近づくにしたがって燃え上がる感情がどんどん込み上げてくるような、充実した響き。終結部ではテンポはかなり動く。一度も暴走することなく、見事にまとめ上げた、クーベリック渾身の名演奏です。

暴走することはないけれども、十分な頂点を作り上げているし、熱気のある演奏で、クーベリック独特の世界を垣間見たような気がしました。

ズービン・メータ ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、ものすごく気合の入った冒頭。音のスピート感からして違う。克明な表現、それに呼応するウィーンpoの殺気立ったような俊敏さ。開始三分ぐらい聞いたところで、もうすでに凄いことが起きそうな予感をさせる、空気。
メーターの若いエネルギーが突進してくるような、すごい集中力!
テンポは速めに進むが、内容が凝縮されている感じで、速いことは気にならない。また、ブーレーズで聞いたウィーンpoとは全く別物のようなシャープさがある。
中間部は、一旦ぐっとテンポを落としてまた加速!とにかく激しい。終わり方も予想外の凄さ。

二楽章、洗練された表現と言うより、幼い子供達が戯れるような、少し幼稚で微笑ましいような表現。ここでも他の演奏では聞いたことがない独特の世界を作っている。テンポも速めでちょっと落ちつかないような印象も。

三楽章、表情が豊か。メータは細部の表現にもしっかりリハしたようだ。ここでもテンポはわりと速めで一気に進んで行く。細部の表現まで行き届いているのだが、それよりも一筆書きで、それも太い筆で一気に書くような豪快さを持っている演奏だ!
オケもメータの気迫に必死に食らいついているかのよう。メータはロスpo時代は、こんな凄い演奏をしていたんだよなぁ。どうして今は、鳴かず飛ばずになってしまったのか?

四楽章、安定感があって、神経質な要素は微塵もない。あまりにも線が太くて、天国的な雰囲気は少し希薄か?

五楽章、低弦の鳴りっぷりが良いので、線も太く、安定感にもつながっているんだろう。金管のコラールでもテューバが強めでさらにクレッシェンドするあたりはワーグナーを聞いているかのようだ。
ウィーンpoはffでも限界まで絶叫することはない。メータの若いパワーとウィーンpoの奥ゆかしさが相乗効果を生んでいるのかも知れない。
もしも、ロスpoで演奏していたら、狂気の「復活」になっている危険性と裏腹だったと思う。まあ、それはそれで聞いてみたかった気がしなくもないが・・・・・・。
合唱は比較的小規模か、少し人数が少なく聞こえる。それにしても、常に低音の支えはしっかりしている。本当に、若いメータをウィーンpoがしっかりサポートしていると思う。信頼関係が築かれていたんだろう。
後半、テンポも動いて大きなクライマックスを迎える。感動的な頂点!すばらしい構成力。

本当に、一気にこの大曲を演奏してしまった。すばらしい名演です。理屈抜きに感動がある演奏で、初めて「復活」を聞く人にもお勧めです。

ジュゼッペ・シノーポリ フィルハーモニア管弦楽団

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フワフワ感のある演奏です。ゴリゴリ力で押してくる演奏ではありません。
しかし、作品に語らせるような名演だと思います。
バランス感覚もすばらしい。

一楽章、冒頭から控えめな出だし。しかし、細部の動きやバランスまで徹底されている感じで、集中力も高くシノーポリの統率ぶりがうかがえる。比較的打楽器を抑えた録音になっているせいか、刺激的な部分はあまりなく、抑制の効いたバランスの良い演奏で嫌味がない。その分、狂気のような部分はスポイルされているかもしれない。色彩感も若干乏しいか。

二楽章、小気味良いマーチのような出だし。わりと速めのテンポで、ねばることもなく進む。それにしてもオケは上手い!速めのテンポながら旋律は十分歌わせていて、聞いていて心地よい。フィルハーモニアのメンバーもシノーポリとの演奏を楽しんでいるかのようだ。信頼されていたのだろう。

三楽章、ここでも冒頭のティンパニから抑え目だ。しかし、一つ一つのフレーズをとても大切に演奏しているのが伝わってくるし、歌がある。精神分析医などの側面が強調されがちなシノーポリではあるが、そのような単語から想像する演奏とはまるで違う、人間味のある暖かい音楽。
シノーポリの作品への深い共感とオケの楽員との良好なコミュニケーションがあったからこそなしえた演奏なのではないかと思う。

四楽章、作品を慈しむかのような心のこもった演奏

五楽章、冒頭の炸裂から開始するが、ここでもオケは余裕を残している。バンダも良い距離感があってステージ上のオケとの対比も見事。弱音がホールに広がっていく感じもなかなか心地よい。
7分過ぎたあたりから、オケもフルパワーに近付いてくるし、ここまで控えめだった打楽器も炸裂しはじめる。それでも丁寧な演奏には変わりは無い、決して暴走はしないところがこの演奏の特徴でもある。シノーポリもオケを煽ることもなく、どっしりとしたテンポで音楽を進めていく。
バンダのトランペットの音がステージ裏に響き渡る。音響的効果もすばらしい。
合唱が入ってからも、外へ放出ではなく、内面へ言い聞かせるように歌い始める。独唱陣も伸びやかな歌声を響かせる。弱音部の楽器の絡みのどのパートも絶妙に受け継がれていく。フィルハーモニアってこんなに上手かった?
そして、最後に輝かしいクライマックス!最後の伸ばしでトランペットがクレッシェンドするのには驚かされた。

このシノーポリの演奏には、即興性などはない、緻密に設計されたものを、正確に音に変えて行く作業なのかもしれない。マーラーの内面にあるドロドロしたものを表現できているかと言われれば、その面では弱いかもしれないが、音楽としての完成度はきわめて高い名演奏だと思う。
シノーポリのマーラーはそんなに高い評価はされていないのかも知れませんが、この演奏はすばらしいと思います。奇抜なアイデアなどもなく、正面から音楽に取り組んだ名演奏は貴重なものだと思う。最初に買うんだったらこれはお勧めです。

クラウス・テンシュテット ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
テンシュテットの手兵ロンドンpoとの録音。
良好な信頼関係が生み出す、爆演!
オケも限界を超える!
「マエストロのためだったら俺たちは120%の力を出すんだよ」と言っていたというロンドン・フィルのメンバーたち。すごい信頼関係ができていたんだろう。

一楽章、激しい弦のトレモロそして低弦の旋律、冒頭からフルパワーが伺える。かなり遅いテンポで音楽は進む。全身全霊をかけて一音一音に命を吹き込むようにブラスも全開。とにかくテンポが遅く起伏がものすごく激しい。遅いかと思うと急激にテンポを上げたり、またものすごく遅くなったり、テンシュテットは作品と一体になっているようだ。マーラーの霊が乗り移っているかのようにも感じるくらい緩急自在で強烈な演奏。
すごい世界だ!だんだん引き込まれていく。テンシュテットは本番前には極度にナーバスになっていたと言われているが、これだけ自分の音楽をさらけ出すには、それはナーバスにもなるだろう。
これほどの作品への共感と没入は聴いたことがない。聴いているこちらも打ちのめされるような、凄いとしか言葉が出てこない。

一楽章が終わってから、最低でも五分の休憩をはさむ指定をしたマーラーだが、この演奏なら分かる。休憩しないと、きつい。恐ろしい演奏を聴き始めてしまったと言うのが偽らざる感情です。これが生演奏だったら、怖くて逃げ出すかも知れない。それほど何かにとり憑かれたような演奏だ。

二楽章、少しゆっくりめに開始、一楽章とはガラリと表情が変わる。穏やかだ。前の楽章で徹底的に打ちのめされたのを癒してくれるように、ゆりかごのようにテンポも揺れながら音楽が進んでいく。しかし、それもつかの間、また現実に引き戻される。とにかく振幅の巾が広い。

三楽章、一つのフレーズにも強弱の変化やテンポの揺れがあって息つく暇を与えてくれない。先に何が起こるか分からない。とにかく、普通に想像する以上のことが展開されて行く。ロンドン・フィルのメンバーもテンシュテットの棒によく付いて行っている。楽員たちがテンシュテットを尊敬しているんだろうなぁ。奏者にも相当の負担を強いる演奏だと思う。ただ、シノーポリとフィルハーモニアの演奏の時に感じた美しさはこの演奏にはない。テンシュテットの要求を音にするだけで精一杯なんだろう。
それでも、十分。まだ三楽章なのにオケのメンバーをねぎらってあげたい気分にさせるほど格闘しているのが伝わってくる。本当に稀な演奏だ。

四楽章、信じられないくらい遅い出だし。鳥肌が立った。とにかくテンポが動く、そして十分に感情を込めた独唱。そして天国へといざなってくれる。この楽章はあの有名なバーンスタインの演奏よりも遅い。

五楽章、冒頭から全開!!金管も打楽器も炸裂する。バンダは程よい距離、割と正攻法で進む、しかしオケは本当に120%なのかも知れない。強奏部分では、四楽章とは対照的に前へ前へと進む強い推進力。バンダとフルートの掛け合いはホールの響きも含んだ豊かな感じ。
消え入るようなppで入ってくる合唱。その合唱からろうそくの炎が立ち上るような独唱。合唱もすごい緊張感が伴っている。合唱にオケや独唱がからんでくると、また振幅が・・・・・。思わず天を仰ぎ見たくなる。ffで合唱とオケが一緒になる部分から、アインザッツが合わないところが出てくる。合唱は別録りか?バランスも合唱が強くて旋律が消えるところもある。
しかし、最後の力を振り絞ってブラスの炸裂!CDを聴いてこれほど感動することは、私にとっては珍しい体験です。それぼと強烈な何かを伝えてくる名演です。

最初に聞くCDとしてはお勧めしません。いくつか復活のCDを聴いて「復活」のイメージをある程度持っている人には絶対に聞いてほしい演奏です。ただ、聴き終わると、どっと疲れる。それほど力を持った演奏なのです。スタジオ録音でこれだけ、やりたいことを貫徹する指揮者も珍しいでしょう。
昔は、個性的な巨匠たちが群雄割拠していたんだろうけれど、最近は、音楽大学などでの教育が行き届いてしまって、このような破天荒な演奏をする人がいなくなったのは、業界にとっては大きな損失でしょう。多分、テンシュテットやバーンスタインが巨匠と呼ぶにふさわしい指揮者の最後の世代でしょう。テンシュテットが若くして病に倒れたのは慙愧に耐えない。もっと本当の音楽を残して欲しかった。

クラウス・テンシュテット 北ドイツ放送交響楽団

★★★★★
テンシュテットの本領発揮のライブ録音。1980年の録音です。
強烈な演奏です。重い。
表現の振幅もものすごく、オーケストラのアンサンブルも度々乱れます。
テンシュテットは安全運転とは無縁の指揮者ですね。オケが崩壊しそうになっても、自分がやりたい音楽を追い求めていく、名盤中の名盤だと思います。

一楽章、ライブとは思えないほど明晰な録音。もしかしたら3000Hz~4000Hzあたりにピークがあるのかもしれません。ものすごく遅く重い冒頭部分です。彫りも深く、強烈!テンシュテットは、この演奏でも、もの凄く振幅の激しい演奏をしています。遅い演奏の途中でritしたり、開始五分でもう完全にテンシュテットの世界に引きずり込まれます。
この遅さで、どうしてこれほどの緊張感なんだろう?魔力とでも言うべきか。ロンドンpo盤も凄い演奏でしたが、こちらはライブと言うこともあって、さらに上を行く壮絶な演奏です。
テンポは聞き手の想像を超えて自在に動く、緩急の変化もすごい巾があり、こんな演奏がライブで実現していたことが信じられない。
アンサンブルも乱れますがおかまい無しに前進します。テンポが早くなった部分は、もう騒乱状態のような異常な演奏です。遅いところはまた、これでもかと思いのたけをぶつけてくる、まるで狂気とでも言うべき演奏。

二楽章、この楽章も遅めのテンポで開始。陰鬱な影がしのびよるような不気味さ、何かに追われているかのようにテンポを煽ったり、また極端に遅くなったり、予想外の事態の連続です。
時には乱れるものの、この異常な指揮についていくオケの上手さも特筆ものです。聞き手にも、相当な覚悟を迫ってくる演奏です。軽い気持ちででは耐えられなくなりそうです。

三楽章、スチールの18リットル缶でも叩いたような異様なティンパニの音から始まる。そして、ここでもテンポが動く動く、弦のアーティキュレーションの表現も明確。とにかくテンシュテットの主張が強く、オケは引きずり回されるような、格闘の試合のような真剣勝負です。

四楽章、ここでもテンポは遅いがロンドンpoのときほどではない。楽章終盤でがくっとテンポが落ちて、天国へ!

五楽章、全開始動!テンポ設定はロンドンpoのときとはかなり違う。無音になるところや、フレーズの終わりでテンポが落ちたり、7分過ぎたあたりで、ティンパニから一拍遅れてクラッシュシンバルのはずが、ティンパニと同時にド派手に入ってしまう、それにつられてトライアングルも全然違うところで叩きはじめる(^ ^;・・・・・こういうのはライブにはつきものですね。
その後も一小節前に入るシンバルやその他のパートもアンサンプルが乱れる。それでもテンシュテットはオケを引きずり回す。オケも立て直して、この壮絶怒涛の演奏は続けられる。
弦のアンサンブルも乱れが・・・・これだけの演奏の緊張感を維持し続けるのは並大抵のことではないだろう。テンシュテット自身も大変だろうが、オケのメンバーはすごく疲労していると思う。
テンシュテットは楽員に作品への没入を強く要求したと伝えられている。そして、そのことが楽員の不評を買い、このオケとは喧嘩別れになってしまうのだが、妥協を許さないテンシュテットと言う孤高の巨匠の置き土産だ。
合唱も内声部とのバランスも良く、それが一体となってフレーズに山を作ったり表情豊かだ。
これほどまでに、テンポを動かすところがあるのか!と思い知らされる。作品に没入して一体とならなければ、こんな演奏は絶対できないであろう。テンシュテットにとっては一曲一曲、1ステージ1ステーシ゜が真剣勝負だったんだ。
全開からさらにクレッシェンドがあり壮絶なクライマックス。まさにクライマックスだ!

恐ろしい演奏を聴いてしまった。拍手がカットされているのが残念です。
聴衆の反応はどうだったんだろうか。筆舌に尽くしがたいと言う言葉があるが、まさに私のボキャブラリーでは表現し尽せません。
ここまで、音楽に身を奉げた演奏家を私は知りません。

サー・ゲオルグ・ショルティ ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★
ショルティがベルリン・フィルと残した珍しいライブ録音
シカゴ交響楽団とのスタジオ録音とはかなりイメージが違います。
このライブはシカゴ交響楽団とのスタジオ録音の一年前の演奏です。
まず、シカゴの録音で気になった、異常にマイク位置が近い録音とは異なり、適度に距離があるので、ホールの響きも十分に拾っています。

一楽章、最初のテンポ設定や金管を積極的に鳴らす、ショルティの演奏スタイルはこのベルリン・フィルとの演奏でも同様です。録音の関係でシカゴの演奏より自然に聞くことができますが、かなり気合の入った激しい演奏です。
しかし、そこはライブ、叙情的な部分では、じっくり味わいながら少しテンポが落ちるところが、ショルティも人間だったんだなぁと安心させられます。やはり、緩急の差はシカゴの録音以上にあります。
硬質なティンパニの強打や嵐のようなffなど、シカゴの演奏よりスリリングで聴き応え十分です。まだ、一楽章の途中ですが、ものすごく良い買い物をした気分になっています。テンポの遅い部分も、グッとテンポを落とした演奏で、じっくりと音楽を味わうことができます。すごい名演の予感がしてきました。

二楽章、やり過ぎにもならず、適度な表情付け、比較的あっさりと進む。と思わせておいて、弦の急激なクレッシェンド。また、何もなかったかのような、ゆったりとした音楽。ベルリン・フィルもこの頃が一番コンディションが良い時代だったのでは、ショルティの指揮に応えるベルリン・フィルも本当に上手い!

三楽章、基本解釈はシカゴと同じです。ライブで残響を伴うものの、テヌートやスタッカートの対比やその他のアーティキュレーションの違いも伝わってくるので、アバドのライブのような平板な感じがなくて、こちらも耳をそばだてて聴く状態にさせてくれる。これが本当の巨匠の格なのか。細かいアンサンブルの乱れはあるけれど、そんなことは全く問題にならない。
また、トゥッティの湧き上がるようなエネルギー感もシカゴの録音とはかなり感覚が違います。底から湧き上がるようなff。シカゴの場合は槍で突き刺されたようなffのイメージです。

四楽章、わりと、あっさりと進む、最後は天国的

五楽章、基本的にはシカゴとの録音と同じ解釈で進むが、オケの伝統の違いのような部分も見受けられて興味深い(トロンボーンのビブラートなど)。しかし、ライブならではの部分も。クレッシェンドしながらショルティがねばりにねばる!そして、シンバルとトライアングルは別世界へ?
ソプラノ独唱は明らかにこちらの方が良い。誰かと思ったら、ルチア・ポップだった。上手いわけだ。
最後は、さすがのベルリン・フィルもちょっとバテぎみか?それでも、すばらしい演奏だった。

「復活」の名演、名盤はたくさんあるが、これも十分な名演だった。
一夜限りのノーカットライブでこれだけの完成度の演奏ができる指揮者とオケ・独唱・合唱に惜しみない拍手を送りたい。

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