マーラー 交響曲第2番「復活」10

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

ヴラディーミル・フェドセーエフ モスクワ放送チャイコフスキー交響楽団

icon★★☆
ロシアの指揮者と言えば、ムラヴィンスキーの高貴さは別格として、そのほかには鬼才、奇才の宝庫のような国だ!
スヴェトラーノフの「復活」も是非聞いてみたいと思っています。重戦車のようなばく進力と繊細さを併せ持つ巨匠の演奏はどんなものなのか、CDが再販されたら、真っ先に買おうと思います。
そして、もう一人忘れてはいけないのは、ロジェストヴェンスキー!!!!!最近の活躍をあまり耳にしないようになっているのが寂しいですが、彼のコテコテのマーラーを是非録音して欲しい。
今回のフェドセーエフですが、私の印象としては、スヴェトラーノフほど重くはなく、ロジェヴェンほどコテコテでもなく、比較的洗練された指揮者だと思っているのですが、果たして、この「復活」はどんな演奏でしょう。

一楽章、非常に軽い出だしでテンポも、今まで聞いたことがない速さだ、今までとは別の曲を聴いているような違和感。低弦の刻みの跳ね方がとても不思議な感じがします。
弦は美しいが、とにかく速い。最初の主題が終わってから、一般的なテンポになった。陰鬱感はとてもよく出ている。チャイコフスキーを聴いているような・・・・・。
アンサンブルは悪い!これまで聴いてきた中でも一二を争う悪さだ。弱音部は割りと良いのだがffになるとシグナルグランプリでも始まったかのようで、バラバラになったりする。ホルンはロシアのオケ独特の締りのある音で、弱音部分では、ポコポコ言っている。
金管がいろんなところで、ペッと言うような意識して乱暴なタンギングをするのだが、なぜだろう。ていねにいテヌートするところもあるのだが・・・・・。
何で、こんなにテンポが速い?何もそこまで・・・・と言いたくなるくらい速いし、速いところが乱暴に感じる。どうでも良いというような扱いをしているような。
金管は適度に距離感があるので、金管がかぶってくることもないし、爆演にはなりえない。

二楽章、この楽章も割りと早めです。こんなにあっさり行ってしまって良いのか?と思ったら予想外のところでテンポが落ちた。ティンパニはたびたび遅れるよ。
何か楽しい演奏で、マーラーの持っている世界観や宗教観のようなものとは無縁の演奏です。淡々と演奏が進む。

三楽章、この楽章は遅めです。でも、一つ一つの音を紡いで行くような綿密さはなくて、かといって散漫な演奏でもない。
シンバル、トライアングルがものすごく遠くにいるので、色彩感も乏しく感じます。でも、どうして聴いていて楽しいんだろう。これまで、聴いてきた、ヨーロッパやアメリカのオケやその文化の中で育った指揮者や演奏家ではない人たちにとっては、常識にとらわれることなく、自分たちが感じたままを音にして行くんですね。

四楽章、とても良かった。聞き惚れました。

五楽章、冒頭はティンパニしか聞こえません(^ ^;金管も聞こえてはくるのですが、バランスは異常です。バンダのホルンがミュートをしているような音に聞こえる箇所もあります。
フェドセーエフ恐るべし、こんな演奏もあるのか!この楽章、ある意味白眉です。共産主義には神は存在しないので、「復活」などありえないことなのだ!
バンダのTpも今まで聴いたことがない音だ、フリューゲルホルンでも使ったのか?
突然、聴いたことのないパートが活躍したり、面白い。
ロシア万歳!と歌っているかのようだ、テンポも動いてなかなか聴かせる。
オケよりも合唱が力強い。最後はやっぱりティンパニだけが聞こえました(^ ^;
いやぁ「復活」ってこんなに面白かったんですね。

ロシアは民主化したとはいえ、やはり共産党が支配しているし、あまり宗教色の強い演奏をすると、当局の検閲が入って、地位を脅かされるのだろうか。
映画音楽のような「復活」でした!

オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1971年ライヴ

クレンペラー★★☆
復活の最も遅い演奏として有名な録音です。

一楽章、全く力みの無い弦のトレモロ。特に表情の無い第一主題。第二主題も感情が込められると言う事は無く、淡々と進みます。確かにテンポは遅いのですが、バーンスタインやテンシュテットのようなアゴーギクなどが無いので、音楽と共に体が引き伸ばされたりする感覚も無く、一つ一つの旋律をじっくりと聞く感じが無いので、演奏時間ほどの遅さは感じません。展開部の第二主題も取り立てて美しいと言うような表現では無く、ひたすら淡々と進んでいる感じです。フルートとヴァイオリン・ソロに第二主題が表れる前からかなりテンポが遅くなりました。再現部の第一主題もサラッとしています。コーダの前はとても広大でした。マーラーの複雑なスコアをとてもシンプルにして見せてもらっているような感じがします。コーダはとても遅い演奏でした。

二楽章、ゆったりと落ち着いた安堵感のある演奏です。中間部はとても遅いです。巨大な川が非常にゆっくりと流れて行くようなスケールの大きさを感じさせます。演奏には全く力みが無く自然体のおおらかな演奏です。さらにテンポを落として終わりました。

三楽章、この演奏を象徴するような穏やかでゆっくりなティンパニ。硬くゴツゴツとした音のルーテ。音楽の起伏はあまり大きく無く、どこまでも広がる草原のようです。ただ、テンポが遅い分、音楽の密度も薄まっているようにも感じます。

四楽章、かなり遠くから響く独唱。トリオのヴァイオリンのソロは音が短めでとても淡泊でした。クレンペラーの指揮に比べると感情表現のある独唱。

五楽章、盛大に鳴る銅鑼。打楽器の音の洪水から僅かに顔をのぞかせる金管。タメが無くダラダラっと音楽が流れて行きます。ホルンの動機が出るまでの間はすごくゆっくりとしたテンポです。ホルンの動機以降はよろけるようにテンポが揺れます。第二主題の「復活の動機」も非常にゆっくりとしていますが、あまり緊張感はありません。バンダのホルンとステージ上の木管のテンポの取り方が違うのか、ズレがあります。展開部の前でも、これでもかと言うくらいにテンポが遅くなります。打楽器のクレッシェンドの後も凄く遅いです。練習をしているような雰囲気さえあります。これだけテンポが遅いのに、アンサンブルの乱れも度々あります。再現部冒頭もものすごく遅いですが、音楽はとてもシンプルに聞こえます。作品をこねくり回すことをせずに、そのまま音にするとこんなにシンプルなんだとクレンペラーが言っているように感じます。デッドで近いバンダ。ステージ上の楽器とあまり変わらないので、遠近感などはありません。弱音に力が込められることの無い合唱。シンバルが完全に落ちてしまっています。合唱の音量に比べてオケの音の密度が薄いので、圧倒的なクライマックスとはなりませんでした。

もの凄く遅いテンポの演奏でしたが、深い感情移入などは無く、淡々とした演奏で、巨大な物を聴いたと言う感じはありませんでした。テンポが遅い分、音楽の密度も薄い感じがあって、重量感などもありませんでした。アゴーギクなどの動きが無いので、間延びした感じもあって、ちょっと残念でした。
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渡辺暁雄/日本フィルハーモニー交響楽団

icon★★☆
一楽章、弱めの弦のトレモロの後にホールの響きを伴って力強い低弦の第一主題。響きを伴って分離の悪い低音域と、響きが乗らずに痩せたヴァイオリンなどの高音域。付点が甘いのは山田の演奏と同じでこの頃の日本のオケの特徴でしょう。速めのテンポでグイグイとオケを引っ張ります。 テンポも動いて渡邉の作品への思いが伝わってくる演奏です。テヌートせずに独特の表情付けのあった第二主題。ホルンが弱いので音楽のつながりを欠く場面もあります。ただ、当時の日本のオケの技量からすればいたしかたないとは思います。激しいテンポの動きもあり劇的な演奏です。終結部のテンポの絶妙な動きなども作品への共感が伺い知れます。

二楽章、速めのテンポで開始されました。音楽の動きに合わせてテンポの動きやタメがあって音楽に引き込まれます。アンサンブルの問題は散見されます。

三楽章、表現は抑制ぎみの演奏です。この楽章では端正な表現が聞かれます。ブラスセクションがパワー不足で突き抜けてくることがありません。

四楽章、遠くから語りかけてくる独唱は表情豊かです。テンポも遅めにとってたっぷりとした表現で天国へいざなってくれました。

五楽章、全開ですが、空気を突き破って来るようなパワーはありません。かなり強めに演奏されるホルンのバンダ。ミスは若干ありますが、集中度は極めて高いです。音楽が一点へ向かって進んでいるような一体感があります。バンダのティンパニは思いっきり良くすばらしかった。わりと大きめの音量で始まる合唱は女声の方がバランス的に勝っています。合唱から完全に浮き上がる独唱。合唱が入ってからは遅めのテンポを取ってゆったりと感情込めた演奏になっています。最後はパワー全開でトランペットも突き抜けて来ました。日本の演奏史を知る上で貴重な音源だと思います。

モーリス・アブラヴァネル/ユタ交響楽団

icon★★☆
一楽章、第一主題の頭の音に強いアタックがあってデクレッシェンドします。速いテンポで弾むように進みます。引っかかるところもなくすんなりと進んで行きます。第二主題もあっさりとしています。展開部の第二主題は美しいですが、ここでもあっさりとした演奏です。金管が咆哮することも無く、あっさりと爽やかな演奏です。明るく開放的な響きによるものなのか、とても軽い雰囲気で深刻さなどは微塵もありません。再現部も速いテンポでどんどん進みます。表現に粘り気は無く、あっさりとしています。コーダの葬送行進曲も軽く明るい雰囲気で重い響きはありません。

二楽章、この楽章も爽やかにあっさりとした演奏です。テンポの動きやタメなどもあまりありません。二回目の主部はチェロの対旋律がかなり強調されています。

三楽章、マットなティンパニはあまり強打しません。表現はあるのですが、遠回しに言うようなとても奥ゆかしい表現です。オケが爆発することも無く、かなり情報が整理されているようで、余計な音はあまり聞こえてきません。響きも浅いような感じがします。

四楽章、控えめでこもったような金管のコラール。独唱も残響が少ないのか、生の声のようで深みがありません。

五楽章、伸ばす音をデクレッシェンドするトロンボーン。やはりここでもオケは全開ではありません。残響を伴ったバンダのホルンはなかなか雰囲気が良いです。やはり軽い演奏です。第二主題もテンポが速く素っ気無い感じです。音は短めに演奏されることが良くあり、合いの手で入る楽器が弱く、マーラーのオーケストレーションを再現しているとは思えません。打楽器のクレッシェンドの後もテンポの速い演奏であまり落ち着きの無い感じでした。再現部のバンダはどちらも響きを伴って良い距離感です。合唱も暗く重い雰囲気は無く軽く明るい歌唱です。幕の内側で歌っているような合唱が突き抜けてきません。最後まで全開になることは無く、軽く明るく演奏されました。

マーラーの演奏に何を求めるかによって評価が分かれる演奏だと思います。とても軽く明るい演奏で、マーラーのドロドロしたものは表現されませんでした。
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ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★☆
一楽章、軽く密度の薄い感じの第一主題。金管も軽く鳴ります。第二主題もとてもあっさりとした表現で粘りません。展開部の第二主題はやはりあっさりとしていますが、朝もやの中から響いて来るような神秘的で美しいものでした。テンポを遅める部分もありますが、基本的には速めのテンポで、あまりタメたりアゴーギクを効かせたりすることは無く淡々と進みます。金管も咆哮するようなことは無くかなり余裕を持って整然としたアンサンブルです。

二楽章、舞曲風で優雅です。テンポは速めですが、録音にもよるのか、ゴリゴリとした感じは無くフワッとした柔らかい肌触りです。テンポが揺れることも無く感情移入するような感じは全く無く作品そのものを聞かせています。

三楽章、この楽章も速めのテンポですが、シルキーで美しい弦と滑らかな木管。弦には少し大きく強弱の変化が付けられています。中間部のトランペットも軽いです。最後に中間部の主題が現れて盛り上がる部分で大きく歪みます。

四楽章、けがれの無い神聖な響きの金管。この演奏で初めてたっぷりと歌ったオーボエ。

五楽章、かなりのエネルギーを放出しているような第一主題ですが、音があまり前に出て来ません。適度な距離感はありますが、残響が少ないバンダのホルン。それに続く部分から第二主題にかけてはテンポが速いです。力強い金管のコラール。展開部冒頭はホルンもトランペットもとても軽く演奏します。余分な音は削ぎ落とされているような感じで、マーラーの複雑なオーケストレーションを聞くことはできません。このように分かりやすく聞かせるところはオーマンディの特徴なのかも知れませんが・・・・・。歪みが激しくなって来ました。かなり静かに入る合唱ですが、ここも淡々としています。二重唱で一旦テンポを落としてそのまま壮大なクライマックスかと思いきや、また少しテンポを上げてのクライマックスです。クライマックスはずっと歪んでいます。

感情移入はせず、無駄な音は削ぎ落として、かなり単純化して聞かせた演奏のように感じました。オケもほとんどの部分で余裕を残した演奏でした。トゥッティで歪むところも残念でした。
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