マーラー 交響曲第2番「復活」12

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

ギルバート・キャプラン ロンドン交響楽団

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復活のエキスパート、と言うべきか。復活しか指揮しないキャプランによるデビューCDである。
ストコフスキーの復活のコンサートに衝撃を受けて、復活を指揮することを夢見、それを実現したすばらしいモチベーションの持ち主である。
一方で経営者としての才能もあり、このCDはベストセラーとなった。
アマチュアの弱みを「復活」に特化させることで、見事に補ってベストセラーを生み出すと言う、プロモーションとしても、さすが。
また、スコアとパート譜の矛盾点などについても徹底的に研究しているなど、まさにプロ裸足のところも持っている。
演奏の方は、ロンドンsoの上手さも手伝って、特に不満のある演奏ではないが、印象にも残らない。

一楽章から、淡々と進む、オケも力むような部分は皆無と言って良いほど楽に演奏しているようにきこえる。テンポも大きく揺れることもなく、これといった聴き所もない。
クラッシュシンバルが異常に近い、サスペンドシンバルは適度な位置にいるのに・・・・・。

二楽章も淡々と進む。オケの楽員もキャプランの解釈に共感していないのではないだろうか?もっと凝縮された緊張感があってもよさそうなものだけど・・・・・。

三楽章も速めのテンポで進む。表現の振幅があまりないので、演奏と向き合うような聞き方ではなく、BGM的にながれて行く。テンシュテットやバーンスタインのような強烈な演奏の場合は、聞く側にも、それなりの緊張感も要求されるが、キャプランの演奏の場合、なんとなく音楽が流れている感じなのだ。この楽章でも、オケは決してムリはしない。余裕の演奏。

四楽章、美しい独唱だ。

五楽章もオケはムリをしないし、音の密度も希薄に感じてしまう。どこをとっても、すでに他の演奏で聞いた範囲内に収まっているので、聞いていて「おっ!」とか「え?」とか、良い意味でこちらの予想を裏切ることがないのだ。終始安全運転が続く。キャプラン自身が百戦錬磨の指揮者ではないので、オケを引きずり回すような指揮を期待するのもムリではあるのだが、やはり、ちょっと物足りない。
そして、もっとも好きになれないのは、オケの音の密度が薄いからなのだ。これは、楽員たちがキャプランを尊敬していないからではないかと思う。散漫で集中力に欠ける演奏なのだ!
これが、彼の芸風だと言われればそれまでなのだが、ウィーンpoとの再録音も出てはいるが、買う気には到底なれない。
キャプランの作品への共感も分かるし、いろんな研究をしていることも分かる。
しかし、この共感は、マーラーと同等の立場(作曲者と演奏家)での共感ではなく、マーラーの奴隷になっているのではないかと感じてしまうのは、私の聞き方の問題だろうか。
作品への共感があり、指揮者の強い意思が、楽員に高度な要求をして、そのせめぎあいの中から名演奏が生まれてくるのではないだろうか。
マーラーの作曲意図を忠実に再現しようと言う気持ちが強すぎて、キャプラン自身の主張が感じられない。キャプラン自身が感性に従って演奏したのではなく、「楽譜上、こうしなければならない」というのに支配されていて、聞いていてこちらが感情的に盛り上がらないのだ。

これだったら、楽譜の指定を忠実にパソコンに打ち込んでコンピュータ演奏させれば良かったのではないかとさえ思う。その方が完成度は高かったであろう。
録音は、クラッシュ・シンバルが強調されていて、かなり強烈です。また、中低域が薄いために響きが渇き気味に聞こえてしまうのも惜しいところです。

ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

ケンペ★☆
一楽章、ゆっくりと穏やかな第一主題。金管が副付点を演奏するころにはテンポが速くなっていました。第二主題もあっさりとした表現です。角張った部分の無いとても滑らかな演奏ですが、何か物足りないような感じもします。展開部の第二主題は凄く抑えたヴァイオリンの第二主題から始まりました。金管も軽く演奏させていてとてもソフトです。フルートに第二主題が現れ、続くヴァイオリン・ソロはねばりがあり艶やかでした。一般的な荒れ狂いのた打ち回るような第一楽章のイメージとはかなり違います。静かで穏やかで屈折していません。

二楽章、この楽章でも穏やかな弦の主題です。この演奏は「動」と「静」で言うならば、まさに「静」です。動きや躍動感など、生命観はほとんど感じることはできません。

三楽章、軽いティンパニ。表情が付けられたヴァイオリンの主題。遠くにいるクラリネット。音楽にはそれ程起伏もなく、比較的一本調子で流れて行きます。金管も遠くに配置されており、中間部のテンポが遅くなる部分のトランペットはとても美しい演奏でした。最後はテンポを落としてたっぷりと演奏しました。

四楽章、とても心のこもった独唱です。

五楽章、インパクトの後すぐに音を消した銅鑼。録音のせいなのか、常に金管は控え目に響きます。そのために音楽に深い彫りが刻み込まれることが無いように感じます。遠くで広がるホルンとステージ上の木管の対比はなかなか良かったです。テンポもほとんど動かず、タメや間などが無いので、さらに平板に感じます。展開部のホルンは肩透かしでした。再現部の前あたりからトランペットがかなり強く吹くようになって来ました。チェリビダッケが首席指揮者に就任してからの、透明感の高く非常に精度の高い演奏とも違います。かなり大掴みな演奏で、細部にまで神経が行き届いた演奏ではありません。すごく抑えられた合唱です。合唱が入ってからはかなりたっぷりとした表現です。終盤で一気にテンポを速め次にritしましたが、最後で金管のふんばりが効きません。何か間の悪い演奏だった気がします。
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ウイリアム・スタインバーグ/ボストン交響楽団

スタインバーグ★☆
一楽章、低域が薄く、しかももぞもぞとした第一主題。速いテンポでタメも無く割と無造作に進みます。第二主題も思い入れの無いような速い演奏です。展開部は幾分テンポを落として演奏しますが、やはりあっさりとしています。速いテンポだと思ったら途中で急にテンポを落としたりするところは、一時代前の演奏だなと感じさせます。第一主題が出た後はゆっくりです。オケは咆哮するようなことはありませんが、ティンパニは激しく叩きます。再現部の前もかなり速かったです。コーダの前はねっとりとした表現で味わい深いものでした。

二楽章、ほとんど間を取ることなく、息の長い音楽を演奏しています。中間部も三連符の刻みが前へ前へ進もうとします。二回目の主部は速いですが、チェロの対旋律を十分に聞かせてくれます。中間部の再現もすごく速くあまり味わいなど感じません。

三楽章、少し表情のあるヴァイオリンの主題。中間部でも金管は咆哮することなく、淡々と前へ前へと進みます。オケの淡々とした表現とは対照的にティンパニは遠慮なく強打します。

四楽章、この楽章も速めのテンポで淡々と歌われます。

五楽章、前進する勢いのある第一主題。速いテンポのままバンダのホルンに入りました。ハープの演奏も慌ただしい。第二主題もかなり速いです。展開部の前は少し遅かったのですが、展開部に入るとまた、かなり速いテンポでどんどん前へ進みます。推進力はかなり強い演奏です。バンダのトランペット、ホルンはかなり遠くデッドです。再現部冒頭も落ち着いた演奏です。これまでのテンポとは違い穏やかな合唱の導入でしたが、オケだけになる部分でまたテンポを速めました。感情を込めたアルト独唱。ほとんどタメもなくクライマックスになります。

前へ前へと進む推進力はありましたが、かなり淡泊な演奏で、何かを表現しようとしていたとは思えませんでした。
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朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団 1995年大阪ライヴ

朝比奈★☆
一楽章、かなりの残響を含んでいてふくよかな低弦の第一主題。第二主題は大きな表現では無く、いつもの自然体です。特に表現と言うようなものは無く自然に流れて行きます。アップされている音源はかなり歪んでいて聞き取りづらいです。テンポの動きも無く、オケもストレートに演奏しています。ただテンポは遅めでどっしりとした歩みですが、あまり表現や主張が無く、なんとなく演奏しているような印象です。

二楽章、かなり力強く足を踏みしめて進む感じです。舞曲風と言うより行進曲のような感じさえします。ドタバタととても活発です。

三楽章、強烈に歪むティンパニ。豊かな表現で歌うクラリネット、弦も活発に動きます。オケが乗って来たのか、かなり豊かな表現の演奏になって来ましたが、アンサンブルはかなり悪いです。

四楽章、豊かな残響を伴った独唱はとても柔らかく心地良く響きますがかなり歪みます。

五楽章、ゆったりとした第一主題ですが、歪みっぽくてエネルギー感が伝わって来ません。色彩的な動きが無く平板に進みます。ホルンの動機からもストレートです。第二主題もあっさりとしています。展開部はスケールの大きな演奏のようですが、ここも歪みであまり良く分かりません。あまりの直球勝負で、作品によってはそれが魅力になりますが、この曲では少し退屈に感じます。演奏が崩壊しそうになる部分もありました。再現部の前後などはかなり間延びした感じでした。かなり大きな音量で入る合唱であまり緊張感はありません。二重唱の部分はかなり遅かったですが、クライマックスへ向けてテンポを速めました。それでも最後は感動的に曲を閉じました。

ストレートな表現で、ほとんど細工も無く作品への思い入れも感じられない演奏で、間延びした部分や崩壊しそうになってしまう場面もありましたが、最後は感動的に終わりました。
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ロリン・マゼール/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

マゼール★☆
一楽章、鋭くはいるトレモロ。ふくよかな低弦の第一主題。ゆっくりと進行します。シンバルが入る前に大きなタメがあったりします。細くちょっとギスギスした感じの第二主題。展開部の第二主題もフワッとした柔らかさが無く現実的です。展開部もゆっくりと進みます。ウィーンpo独特の羊皮のティンパニのベタッとした響き。音楽が前に進もうとする力がありません。再現部のホルンのトリルの部分でも大きなタメがありました。マゼールらしい仕掛けです。

二楽章、ゆっくりと美しく優しい主題。二回目の主部もチェロと絡んでうっとりするような美しさです。さすがにウィーンpoです。この楽章も前へ進む力が無く、音楽が停滞しているような感じがあります。終わりに向けてさらにテンポが遅くなって行きました。

三楽章、マレットがヘッドに触れる瞬間が際立っているティンパニ。遅いテンポで少し寂しい主題。強弱の変化はあまり大きく付けられていません。活発に動くイメージのある楽章ですが、とても静かで穏やかです。この楽章でも音楽は前に進もうとはしません。

四楽章、独唱はジェシー・ノーマンなのか、やはりソプラノにこの音域を歌わせるのは少し無理があるように感じます。声の質が細いと感じます。

五楽章、トランペットが長い音を強く演奏しますが、他のパートはそれ程大きなエネルギーを発散する感じではありません。良い距離感で残響も豊かなバンダのホルン。マゼールは時に大きな仕掛けをしますが、一つ一つのフレーズを大きく歌うことはありません。第二主題もほとんど表情はありませんでした。フルートとイングリッシュホルンの不安な動機と金管のコラールの間に出るティンパニが強烈でした。展開部の前でも大きくテンポを落としました。打楽器のロールのクレッシェンドの後の短い音もゆっくりでした。このような大きな仕掛けがある割りに、大きな歌は無く、作品への共感は無いのではないかと感じます。テンポの大きな動きも自然に出てくるものでは無く、作為的で計算高い感じがします。再現部も強いエネルギーは無く古風な音がしています。バンダのトランペットのファンファーレはお風呂の中で演奏しているような残響です。静かに歌い始める合唱。バーンスタインがテンポを落としたクライマックスを逆に速く演奏しました。トランペットだけが突き抜けて強いのですが、合唱も含めたほかのパートはあまり熱くなっていない感じです。

マゼールらしい仕掛けは随所にありましたが、作品への共感は感じられませんでした。オケの響きも薄く古風で、前へ進むエネルギーも希薄で、あまり魅力のある演奏ではありませんでした。
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