マーラー 交響曲第2番「復活」2

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

マイケル・ティルソン・トーマス サンフランシスコ交響楽団

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一楽章、 ホールトーンを伴って深みのあるコントラバスの第一主題。ゆっくりと確実に歩みを進めるような冒頭部分です。明快で鋭いブラスセクション。響きに透明感があります。第二主題もゆったりとたっぷり歌います。展開部もゆったりと、とてもよく歌われて心地よい演奏です。ブラスセクションがとても良く鳴り表現も幅広いです。静寂な部分と最強奏の幅がものすごく広大ですごい演奏に感じます。すばらしく充実した第一楽章でした。

二楽章、中庸なテンポでの開始。フレーズ最後で少しritしたり、表情もとても豊かです。優しさに溢れる響きで、サンフランシスコsoがこれほど音色に幅を持ったオケだとは思いませんでした。うれしい驚きです。ブラスが入ってくると一転して響きが鋭くなります。場面場面の描き分けもとても良いです。アゴーギクも効かせてたっぷりの歌です。

三楽章、速めのテンポの開始です。この楽章も表情豊かです。表情は豊かですが、感情移入してドロドロになる感じはなく、むしろとても爽やかな演奏になっています。テンポもとても大きく動いています。MTTの指揮も変幻自在。

四楽章、静かに歌い始める独唱。美しい金管のコラール。オーボエのソロも歌に溢れています。独唱もこの演奏にマッチした豊かな歌です。

五楽章、大太鼓の炸裂!ブラスの咆哮と打楽器が波のように押し寄せて来ます。程よい距離感のホルンのバンダ。続くオーボエはスタッカートぎみ。美しい「復活」の動機。テンポの動きも自然で理解できるものです。展開部の前はかなりテンポが遅くなりました。展開部からも豊かに鳴り響くブラスセクション。心地よく響き渡るバンダのトランペット。静かに歌い始める合唱。合唱の中から控え目にそして次第にはっきりとした存在感を示す独唱。比較的速めのテンポで歌われた二重唱。その後大きくritして終結部へ。絶叫するような頂点ではありませんでしたが、とても爽やかで見事な演奏でした。

サイモン・ラトル ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、大らかな雰囲気の弦のトレモロに続いて底から抉り出すような第一主題。コントラバスに豊かな響きが乗っかって気持ちの良い響きです。弦の厚みなどはさすがにベルリンpoと思わせるものです。強弱の変化とテンポの動きがあってとても豊かな表情の第二主題。大切なものをそっと運ぶように丁寧にしかも弱く丁寧に演奏された、展開部の第二主題。展開部からは遅めのテンポで進みます。分厚い弦楽器に隠されるように金管は突き抜けてきません。再現部の前はゆっくりと叩きつけるような演奏でした。再び現れる第二主題はとても美しいものでした。最後のドラが強く打ち鳴らされた後の弦は4回強くアクセントで入りました。最後はすごくテンポを落として一音一音刻むように終りました。

二楽章、優しい響きがとても心地よい演奏です。いろんなところでちょっとした間を取ったりしてとても作品への共感が感じられます。突然アッチェレランドしてまたもとのテンポに戻ったりすごく自由に音楽をしています。二回目の主部はチェロの対旋律がとても良く歌って良い雰囲気です。ラトルの感情にしたがってテンポが速くなったり遅くなったりとても伸びやかで解き放たれたように自由です。こんなに自由奔放な演奏に出会ったのは初めてです。

三楽章、硬質なティンパニの強烈な打撃がホールに響きます。強弱の変化などいろんな工夫があります。この演奏を聴いていると新しい発見がたくさんあります。クラリネットは特に幅広い表現をしています。ラトルのベルリンpoのデビューCDになったマーラーの5番では何とも変てこな演奏をしていたように記憶しているのですが、オケとの信頼関係も生まれて、ラトルが自由に音楽をできるようになったんだなあとつくづく思います。この楽章でもテンポは動いています。

四楽章、祈りのようなコジェナーの独唱。続く金管のコラールはすごく遠くから響くような感じが神秘的ですばらしいです。途中でテンポを落としてたっぷりと感情を込めて歌う部分もありとても濃い演奏です。そして、天国へ。

五楽章、重いドラの一撃。分厚い弦をかろうじて突き破って金管が聞こえてきます。バンダのホルンは間接音を伴って良い距離感です。第二主題の後ろの弦のピチカートも強弱の変化がしっかりとありました。ファゴット、クラリネット、フルートとステージ上の楽器とステージ裏のホルンの対比がとても効果的な距離感でした。金管のコラールは美しくしかもずーっと音が繋がっていました。展開部から次第に音楽が熱気を帯びてきます。凄く長い打楽器のクレッシェンド。鳥肌が立つような壮絶な演奏です。再現部に入る前にまたテンポを上げました。バンダのホルンとステージ上のフルートが登場する前はすごくテンポを落としてたっぷりと豊かな表現でした。バンダのティンパニも硬質な音でとても気持ちが良い音です。柔らかくフワッと浮かび上がるような合唱がとても美しい。合唱のきれいな和音の中に浮かび上がる独唱。輝かしく「復活」を歌い上げます。さすがに超一流のメンバーで作り上げる音楽はすばらしいです。ラトルが作品に込めた思いもたくさんあったのだと思います。とても凝った表現もありましたが、オケや合唱が一体になって壮大なクライマックスを築き上げました。本当にすばらしかった。

エリアフ・インバル/東京都交響楽団

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一楽章、すごい緊張感という雰囲気でもなく、かと言って緩い感じでもなくほどほどの温度感で始まった第一主題。ホールの響きを伴って伸びやかで美しい木管。頂点で思いっきり炸裂するシンバル。すごく感情を込めて歌う第二主題。インバルの思い入れの表れたテンポの大きな動きです。展開部の第二主題は非常に遅いテンポで、すごく感情のこもったものです。陰影もすばらしい。フルートに第二主題が現れるころには速いテンポになっていました。テンポの変化も自然で全く違和感がありません。再び第一主題が出た後もすごくテンポを落としました。第二主題の再現もすばらしく美しい。オケの響きには強靭な厚みは感じませんが、とても良く鳴り美しい響きを聴かせてくれます。すばらしい第一楽章でした。

二楽章、柔らかく優しい主題。テンポも絶妙に動いて、ライヴらしい感情表出です。包み込まれるような優しい響きが一楽章とは違った表情を作っています。ピチカートに乗って控え目なピッコロ。すごく歌うわけではありませんが、奥ゆかしく程よい歌とテンポの動きに好感が持てます。

三楽章、ティンパニの良い質感。表情豊かなヴァイオリンの主題に続いてクラリネットも豊かな表情です。インバルの指揮もライヴと言うこともありフランクフルト放送soの録音のような抑制の効いた演奏とは違い、感情移入もあり、テンポも動きとても積極的な表現で、引き付けられます。

四楽章、ゆっくりとしたテンポで心のこもった独唱です。金管のコラールも神聖な雰囲気です。少し細身で清らかで澄んだ声で歌います。さいごはテンホをさらに落としてたっぷりと演奏しました。

五楽章、一転、音で溢れかえるような迫力の怒涛の第一主題。適度な距離のバンダのホルン。速めのテンポでどんどん進みます。ちょっと落ち着きが無いような感じもあります。展開部も速いテンポで力強く進みます。再現部の前は少しテンポを落としました。トランペットのバンダはかなり近いような感じです。かなり抑えた合唱の入りです。基本的には速いテンポですが、所々でテンポを落として情感たっぷりの演奏です。鳴り響く金管とその後ろに広がる合唱が力強いクライマックス。

ライヴ独特の感情の揺れとインバルの見事な統率力でこの大曲をまとめ上げた、すばらしい名演だったと思います。

チョン・ミョンフン/ ソウル・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、凄いエネルギーで厚みのある第一主題。ゆったりとした足取りで克明に描いて行きます。整ったアンサンブル。ブラスセクションも充実した響きでかなり優秀なオケのようです。第二主題に向けてテンポを落としたっぷりと歌われます。第二主題の途中で一旦テンポを落としました。伸びやかで美しい演奏です。展開部の第二主題はすごく抑えた音量で非常に美しく演奏されました。とてもゆったりとしたテンポで濃厚な表現です。ホルンも美しい。響きにも透明感があり、スケールの大きな音楽を展開しています。再び現れる第一主題の銅鑼が強烈です。続くコントラバスの部分はすごくテンポを落としています。ホルンにコラール風の旋律が現れるあたりから少しずつテンポを速めます。トライアングルが透明感の高い美しい音色です。色彩感も濃厚で感情表現も十分でなかなか良い演奏です。再現部の前も叩きつけるようにテンポを落とし直前ではさらにテンポを落としました。再現部の第二主題も非常に美しい。遅いテンポですが、流れる音楽に身をゆだねてどっぷりと音楽に浸ることができます。

二楽章、豊かな響きを伴って柔らかく伸びやかな弦の響き。アゴーギクを効かせた感情のこももった歌が聴かれます。間を空けたりテンポが揺れたりして情感たっぷりです。中間部の終盤でもテンポをritしています。主部の再現では大きくテンポが動くことはないですが、それでもたっぷりとした歌です。中間部の再現では後半にテンポを落としてたっぷりと濃厚に表現します。最後の主部の再現の前にテンポを上げてまたテンポを落として、最後の主部の再現になりました。作品への共感を感じさせる美しく歌に溢れた楽章でした。

三楽章、釜の鳴りを十分に響かせるティンパニ。表情豊かなヴァイオリン、クラリネット。チョン・ミョンフンが作品と同化しているかと思わせる深い共感ぶりです。中間部でマルカートぎみに演奏するトランペット。とても克明に表情が付けられています。ティンパニがとても良い音を響かせています。

四楽章、これも感情のこもった独唱です。あえて抑揚を付けずに演奏しているような金管のコラール。ゆっくりと切々と語りかけるような感情表現たっぷりな独唱です。透明感のあるクラリネット。少しoffに録られているヴァイオリン。そして天国へいざなってくれました。

五楽章、深い響きの大太鼓と銅鑼。圧倒的なパワー感ではありませんが、そこそこの力感を感じさせる金管。怒涛の打楽器のクレッシェンド。間接音を含んで程よい距離感のホルンのバンダ。第二主題を過ぎてバンダのホルンの前で演奏される木管は音を長めに演奏されるのがとても美しく感じました。溶け合って美しく歌われる金管のコラール。展開部の金管も美しい。そして打楽器の活躍がめざましい。再現部に入る前に大きくテンポを落としました。少しこもったようなバンダのトランペット。バンダのティンパニも遠くで響く雷のように強打されます。このオケの打楽器陣は強力です。比較的大きな音量で始まった合唱。大きな大河の流れから少しだけ顔をのぞかせる独唱。独唱も大きなオーケストレーションの一部として、すごくバランスに気を使った演奏です。合唱と一緒ではないソロでは朗々と歌います。男声合唱が音量を上げると、ホールの響きを伴ってとても美しい響きです。圧倒的な合唱のエネルギー感がすばらしい。打楽器のクレッシェンドでねばったり、演奏が進むにつれて演奏が白熱して圧倒的なエネルギーが発せられたのだと思います。

チョン・ミョンフンの感情移入がオケや合唱にすばらしい共感を生み出し最後は圧倒的なクライマックスでした。オケもアジアでトップクラスのオケでしょう。アジアのオケらしく金管のパワーは欧米のオケには及ばないとしても、その他の部分では一流オケとも遜色ない演奏でした。韓国でもこんなにすばらしいマーラーが演奏されていることに驚きます。

レイフ・セーゲルスタム デンマーク国立交響楽団

セーゲルスタム★★★★★
一楽章、第一主題の三回目のフレーズを弱く開始してクレッシェンドしました。ホールの響きを伴って美しい木管。金管の響きも美しく、オケの響きに透明感があります。ゆったりとした第二主題も大きくテンポが動いて、凄く感情が込められています。第一主題が再度現れる部分でも二回目のフレーズの最初の音に間を置いたり、独特の表現です。展開部の第二主題はさらにテンポを落として音楽に酔うようなテンポの動きです。美しい音色に惹きつけられます。弱音にも細心の注意が払われています。フルートの第二主題は一転して速くなりました。第一主題は金管炸裂。続く低弦、コールアングレ、フルートなどの部分はすごくテンポを落として陶酔しているような演奏です。トランペットの強奏部分ではテンポが速くなりました。とにかく激しくテンポが動きます。再現部の第一主題も二回目のフレーズの最初の音を長めに演奏しました。第二主題が繊細で美しい。コーダもゆったりとしたテンポで濃厚です。セーゲルスタムの感情が刻み込まれた演奏で感じるままにテンポが大きく動く演奏でした。

二楽章、最初の音を演奏してから間を置いて次の音へと移って行きました。デンマーク国立交響楽団って始めて聴くオケですが、とても美しい演奏です。とてもゆっくりとしたテンポで感情を込めて行きます。大切な物を大事に扱うような丁寧な演奏です。中間部も遅いテンポでとても情感豊かです。二回目の主部はさらにテンポを落として陶酔しているかのようにたっぷりと歌います。セーゲルスタムの風貌からは想像もつかない透明感の高い、涼しげな音色ですが、濃厚な感情が込められています。最後の主部の再現でも弦のピツィカートもとてもゆっくりした演奏です。とても安堵感のある安らいだ演奏でした。

三楽章、強烈なティンパニの一撃でした。この楽章は一転して一般的なテンポで流れます。とても緻密に表情がつけられていて、細部まで豊かな表情です。中間部の金管の主題も美しい響きでした。テンポを落としゆったりと歌うトランペット。主部が戻ってまたテンポが速くなりました。豊かな表情に生命観を感じさせる演奏です。この楽章でもテンポがよく動きました。

四楽章、柔らかく歌い始めるアルト独唱。意外と淡々とした金管のコラール。セーゲルスタムの解釈に合わせて感情の込められた独唱です。アゴーギクを効かせるヴァイオリン独奏。最後は天国へ。この楽章でもテンポが動きます。

五楽章、重い銅鑼の響き、金管の第一主題の絶叫の途中でテンポを煽りました。ホルンの動機が現れるまでの間もゆったりと濃厚な表現でした。凄く遠いバンダのホルンの動機。テンポが頻繁に動きます。第二主題部の木管は良く歌いました。トロンボーン、トランペットと引き継がれホルンが現れる部分ではテンポを大きく落としました。遠いバンダのホルンの前で木管がスタッカートぎみに演奏します。深みのある金管のコラール。展開部の壮大な響きがすばらしい。打楽器のクレッシェンドの前はテンポを速めました。打楽器の後もテンポは速いままです。テンポはよく動きまてが、オケはちゃんと付いて行っています。テンポを速めて演奏する部分では生き生きとした生命感や躍動感があります。再現部で長く尾を引くバンダのホルンとトランペット。意外と抑えることなく始まった透明感の高い清涼感のある合唱。合唱の中から次第に浮かび上がるアルト独唱。伸びやかな男声合唱。オケのパワー感が溢れるような強力なクライマックスではありませんが、十分輝かしく壮大なクライマックスでした。最後のオケだけになる部分の金管のエネルギー感はすばらしかったです。最後の伸ばす音は銅鑼もロールしていたような音がしました。

セーゲルスタムの感情のままにテンポが動く演奏は古いスタイルかも知れませんし、好き嫌いが分かれるでしょう。私には特にテンポを落としてたっぷりと表現される音楽がロマンティックでとても心に残った演奏でした。

マルクス・シュテンツ/ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

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一楽章、コントラバスの弓から松脂が飛び散るような凄味のある第一主題。ホルンも強くビーッと鳴ります。リズムの切れも良く、スコアに書かれている音符を全てさらけ出そうとするような演奏です。第二主題への移行はテンポも動かさずにすんなりと移りました。振幅の大きな音楽です。展開部はセッション録音らしく鮮明な独特の美しさです。解像度高く鮮明で美しいフルートとヴァイオリンのソロ。テンポを速めるところでは畳み掛けるように劇的でぐんぐん前へ進もうとする強い推進力があります。再現部の前はゆっくりと叩きつけるように、そして最後はさらにテンポを落としました。再現部の第二主題はあっさりと始まりましたが次第にテンポが遅くなり、こってりとした表現です。コーダはゆっくりとこの曲が葬送行進曲だったことを印象付けます。さらにテンポを落として終わりました。

二楽章、すごく歌い細かな表情が付けられた主題。押したり引いたりの揺れが心地よい演奏です。テンポも動いて豊かな表現です。中間部の三連符も繊細です。テンポの動きと強弱の変化が幅広くとても積極的な表現です。基本のテンポは速めでぐいぐいと前へ進みますが、時折テンポを落として小休止のような落ち着きを与えてくれます。弦の入りにアクセントを付けて色彩感を強調するような演奏です。

三楽章、ヴァイオリンの主題にもアクセントが付けられて、続く木管にも表情が付けられています。シュテンツはかなり細部まで表現にこだわったようです。無表情に演奏されるパートは皆無と言って良いほど無くとても生き生きとした音楽になっています。終盤で金管が炸裂します。すっきりとした明るい響きでとても心地良い響きでした。最後にテンポをグッと落としてまた加速して落ち着いたところで終わりました。

四楽章、ドラの響きが残る中から独唱が始まりました。あっさりとしたコラール。人間が歌っている自然な歌声の独唱です。感情が込められた独唱。

五楽章、重い響きのドラ。明るい金管全開の炸裂。遠くから明るい響きのホルンです。第二主題の後ろの弦のピツィカートも強弱の変化があります。ホルンのバンダは遠いですが、かなり強く吹いているようです。チューバが底辺をしっかり支える重厚な金管のコラール。展開部でも金管の充実した響きが聴かれます。初めて聴いたオケですが、かなり上手いです。打楽器のクレッシェンドにもの凄く長い時間を使いました。こんなに長いクレッシェンドは初めてです。再現部に入って、トランペットのバンダは聞き取りにくいほど遠くにいます。トゥッティの金管のマッシブなパワーも凄い力があります。ホルンのバンダとバランスの取れたトランペットのファンファーレ。比較的大きめの音量で歌い始める合唱。合唱から抜き出てくる独唱。弦が歌い次第に高揚して行きます。男声合唱が強く歌う部分でもバックで金管がしっかり鳴っています。広がりのある男声合唱。二重唱の後テンポが速くなってきました。その後大きくテンポを落としてクライマックスへ。圧倒的なパワーのクライマックスでした。

豊かな表情付けと、最後の圧倒的なクライマックスへと音楽を運ぶシュテンツの設計も見事でした。素晴らしい演奏でした。

グスターボ・ドゥダメル/ ベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団

ドゥダメル★★★★★
一楽章、大勢で演奏している感じが伝わってくる響きです。ゆったりとした第一主題。注意深く表現しています。大編成の充実した響きです。第二主題もゆったりとしたテンポで作品を慈しむような表現です。若いメンバーで構成されたオケですが、その若さが溢れ出るような活気に満ちた演奏には惹かれるものがあります。展開部の第二主題はさらにテンポを落としてたっぷりと歌います。テンポは遅いですが、気持ちのこもった密度の濃い演奏です。第一主題が現れる前からテンポを上げました。南米のオーケストラらしく原色の色彩感濃厚な演奏です。第一主題の後の低弦はすごく遅いテンポです。ライヴらしく即興的に大きくテンポが動きます。コーダの葬送行進曲を予感させるように切ない第二主題。夕暮れから日没へと向かうような寂しさを感じさせます。コーダもゆっくりとしたテンポで引きずるような葬送行進曲です。深みのあるドラの響き。最後は速いテンポで一気に終わりました。

二楽章、間をあけて、ゆっくりと語りかけるようなほのぼのとした雰囲気です。同じメロディーでも強弱の変化を付けたりして、多彩な表現です。ドゥダメルは表現の引き出しをたくさん持っているようです。とてもゆったりとしたテンポで歌います。中間部はテンポも速めてかなり激しい表現で、主部とは対照的な演奏です。二回目主部が戻ると夢見心地のような音楽に身をゆだねるような気持ちにさせる見事な音楽です。二回目の中間部もテンポを上げて主部とは対照的な音楽で描き分けています。三回目のピチカートの主部も柔らかい響きでとても心地よい演奏です。最後はハープが美しく立体的にクローズアップされました。

三楽章、遠くで響くティンパニ。二楽章から一転して速めのテンポで生き生きとした表現の演奏です。煽り立てるように前へ前へと進む音楽。勢いを感じさせるクラリネット。ドラの崩れ落ちるような深い響きはこの演奏のスケール感を大きく感じさせるのにとても効果的です。とても積極的な表現をする管楽器。小さいミスはあるけれど、ユース・オーケストラとは思えない完成度です。また、ミスを恐れずに積極的に表現しようとするオケのメンバーの若さが溢れる演奏にとても好感が持てます。

四楽章、この楽章もゆったりとしたテンポで感情のこもった独唱です。チューバの響きが弱く薄い響きの金管のコラール。豊かな表現で語りかける独唱も見事です。最後はさらにテンポを落として濃厚な表現で天国へといざなわれました。

五楽章、遠くから響く金管の第一主題。打楽器の怒涛のクレッシェンド。この楽章もゆっくりとしたテンポで丁寧に進めて行きます。柔らかく長い尾を引いて響くバンダのホルン。第二主題も表現力のある演奏で、ゆったりとしたテンポでも間延びしません。展開部でもユース・オケとは思えない充実した響き。クラッシュシンバルが豪快に、しかもとても良い音で鳴り響きます。若いオケのメンバーが高い集中力で力の限りの演奏をしている姿には感動さえ覚えます。少しくすんだ響きのバンダのトランペット。再現部へ向けてテンポを上げました。静まったところでまたテンポを落としました。柔らかい響きが溶け合うバンダのトランペット。ステージ上のフルートとバンダの演奏がすごく立体的に聞こえます。抑えた合唱で始まりました。合唱の合い間の弦楽合奏川の流れのようにとうとうと豊かな演奏でした。二回目のソプラノ独唱は一回目よりも音量を上げ、バックの合唱も次第に音量を上げてきています。圧倒的な合唱にオケがマスクされたような感じです。クライマックスでは録音の関係でオケをミキシングで絞ったような感じがしましたが、生で聴いたら凄い演奏だったろうと思います。
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サイモン・ラトル/ バーミンガム市交響楽団

ラトル★★★★★
一楽章、勢いをつけたトレモロ。深みのある第一主題。オケが一体になったバランスの良い響き。第二主題に入る前に少しテンポを落としました。感情が込められた美しい第二主題。テンポや強弱も変化します。展開部の第二主題はテンポを落としてゆったりと深く歌われます。響きもヴェールに包まれたような美しい響きです。テンポも動き、激しいホルンの咆哮もあります。再び第2主題がフルートやヴァイオリン・ソロに現れる部分ではテンポが速くなっています。感情を込めて、畳み掛けるようにテンポが速くなったり、再現部の前は凄く遅く演奏しました。再現部に入っても少し間を空けたり、表現が豊かです。感情を叩きつけるように激しい金管のトリル。再現部の終わり頃はすごくテンポを落としてたっぷりと歌います。コーダの終わり近くの弦が何度も同じ音形を演奏する部分の頭に強いアクセントを付けて演奏しました。最後は凄くテンポを落としました。

二楽章、速めのテンポですが、たっぷりと歌われる主題。弦がリズムを刻む部分も迫り来るような力があります。テンポもアッチェレランドしたりritしたり大きく動きます。強弱の変化も激しいダイナミックな演奏です。ピチカートで演奏される主題も表情が豊かに付けられています。

三楽章、強烈なティンパニの一撃。とても克明な表情が付けられた演奏です。集中力の高い演奏であることが伝わって来ます。登場する楽器が鮮明な隈取りで入って来ます。とても色彩感のはっきりした演奏です。最後のドラはかなり強めに叩きました。

四楽章、控え目に入った独唱。美しい金管のコラール。慈しむように歌う独唱です。天国へといざなわれます。

五楽章、怒涛の全開第一主題。弦が強いアクセントで入って来ます。間接音を含んで適度な距離感のバンダのホルン。一音一音魂が込められたような第二主題。対照的にテヌートぎみに演奏されるトロンボーンとトランペット。美しく表情が付けられた金管のコラール。展開部でも全開のホルン。長い打楽器のクレッシェンド。再現部へ向けては速めのテンポで進みますが途中テンポを落とす部分もありました。トランペットと打楽器のバンダは比較的近い距離にいる感じです。静かに歌い始める合唱。伸びやかな独唱。クライマックスでは合唱がオケに負けているようなバランスになります。ゆったりと壮大にクライマックスを作り上げます。バンダも総動員のラストは壮観です。

テンポを大きく動かしたり、アゴーギクを効かせたりすることはありませんが、要所要所で感情移入した表現を聞かせ、最後は壮大なクライマックスを築いたすばらしい演奏でした。
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ズービン・メータ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2000年ライヴ

メータ★★★★★
1975年のウィーンpoとの高い集中力と若いエネルギーを思いっきりぶつけた快演と、後にイスラエルpoと残した超凡演の落差に驚かされましたが、このライヴではどんな演奏を聴かせてくれるのでしょうか。

一楽章、凄いスピード感のある第一主題。音楽にも強い推進力があります。第二主題も速めのテンポですが、思い入れはたっぷりです。キビキビとしたテンポで進みますが、時折大きくテンポを動かすこともあります。ウィーンpoの音色もとても美しく収録されています。展開部で第一主題が現れた後はかなりゆっくり演奏しています。盛り上がりに合わせてテンポを速めますが、再び遅くなったりかなりテンポが動きます。1975年の一筆書きのような豪快な演奏とは違う、年輪を重ねて音楽の濃淡を表現するようになったのか。基本的には速いテンポの演奏ですが、内容はかなり濃厚な演奏です。

二楽章、一音一音刻み付けるような表現もあれば、流れるようにサラサラと音楽が通り過ぎて行ったり、とても表現の幅が広いです。中間部の弦の刻みも克明です。クラリネットが落ちそうになります。音楽の起伏に富んだすばらしい演奏です。メータはニューヨークへ行ってから鳴かず飛ばずになりましたが、この演奏では、昔の輝いていた時代を思い出させるような活気のある名演です。

三楽章、表情豊かな主題。木管の後ろで動く弦の生き生きしていること。美しいトライアングル。この楽章の冒頭でも感じましたが、かなりデッドな録音で、中間部の金管も生音が突き刺さってきます。主部が戻って、再び生き生きとした表現になります。

四楽章、控え目に歌い始める独唱。この演奏の一部であることが非常に良く分かる一体感のある独唱です。

五楽章、怒涛のように押し寄せる第一主題。ホルンの動機に向けて自然に静まって行くのもとても良い感じでした。間接音を含んで適度な距離感のバンダのホルン。第二主題は速いテンポでグイグイ進みます。トロンボーン、トランペットと引き継がれた後はテンポを落としました。速いテンポですが、とても心地よい金管のコラール。勇壮で豪快に音楽は進んで行きます。色彩感も原色の濃厚な印象です。音楽の輪郭もくっきりしていて、メータの若い頃の特徴が再現されているようで、嬉しい演奏です。音量を極端に抑えているわけではないのですが、静寂感のある合唱。独唱も伸びやかな歌声でくっきりと浮かび上がります。トライアングルは全曲を通してとても美しい音で鳴っています。合唱が入ってからも速めのテンポでとてもリズミカルです。終盤でも金管が豪快に鳴り響き見事です。クライマックスへ向けての打楽器の強烈なクレッシェンド。

メータの燃え上がるような内面を見事に音楽として表出した名演でした。
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ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1995年ライヴ

ハイティンク★★★★★
一楽章、強調することなく始まった弦のトレモロ。とても反応の良いオケで緊張感が伝わって来ます。第二主題へはほとんどテンポを変えずに入りました。ハイティンクの指揮ははったりをかますようなことは全くありませんが、細部にはすごくこだわった演奏をしているようです。オケの色彩感もとても濃厚で美しい演奏です。ここぞと言うところで僅かにテンポを落としたりもします。オケはとても良く鳴り、世界最高峰のオケの実力を遺憾なく発揮しています。黄昏れるような再現部の第二主題。コーダのハープの深い響き。テンポを変えずに終わりました。

二楽章、最初の音と次の音に間を空けました。オケの一体感のある見事なアンサンブルはさすがに素晴らしいです。美しい弦。ピーンと通るフルート。過去を回想するのどかな雰囲気がとても良く表現されています。細部に渡る表現の徹底ぶりはすごいです。

三楽章、軽い響きのティンパニ。弦や木管の表情がとても豊かです。オケがハイティンクの棒にしっかりと反応しています。どのパートも登場すればくっきりと浮かび上がりとても色彩感が豊かです。精密機械のように寸分の狂いも無く動くオケは見事としか表現のしようがないほどです。

四楽章、ゆったりと歌う独唱。感情の込められた金管のコラール。感情を込めて自由に揺れる独唱。

五楽章、軽~くそれでも鳴り渡る第一主題。第二主題も締まりがあって緊張感のある演奏です。静寂感と間もなかなか良いです。見事なハーモニーを聞かせる金管のコラール。展開部でも金管が気持ちよく軽々と鳴り響きます。とりたてて極端な表現などはありませんが、きちんと交通整理された見事な統率です。遠いバンダのファンファーレ。再現部へ入ってからもトランペットのバンダはすごく遠いです。合唱に入る前もかなり時間を置きました。合唱は極端に音量を落とした歌声ではありません。独唱も合唱のハーモニーの中を泳ぐような優雅な歌でした。合唱も一体感のあるとても優秀な歌唱です。合唱とオケに若干のアンサンブルの乱れがありました。盛り上がりに合わせてテンポを速めましたが、頂点の直前にritして頂点では元のテンポです。クライマックスでも合唱の表現は豊かで見事な統率です。オケも合唱もとても良いバランスでクライマックスを築きました。

極端な表現や主張はありませんが、細部まで見事な統率力で締めくくりました。感情でドロドロになることはありませんが、すごく美しく「復活」を聴かせてくれました。すばらしい演奏でした。
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エリアフ・インバル/東京都交響楽団 2012年横浜ライヴ

インバル★★★★★
一楽章、フワッと始まったトレモロ、軽いタッチの第一主題ですが、慎重な足取りです。くっきりと浮かび上がる締まった木管。感情を込めてアゴーギクも効かせる第二主題。テンポの振幅も大きく、慎重に進む部分と颯爽と進む部分の対比があります。とても濃厚です。展開部の第二主題は非常にゆっくりとしたてテンポで感情を込めた表現です。軽々と鳴り響く金管。色んな楽器がバランス良く演奏されるので、とても情報量が多いです。ライヴとは思えない透明感の高さと精緻さです。第二主題を一音一音押すようにゆっくり演奏するのが特徴的です。

二楽章、丁寧に歌われる美しい主題。テンポの動きも絶妙です。中間部の弦の刻みもとても丁寧です。乱暴や雑なところが全く無くとても高い集中力の演奏です。日本のオケらしく隅々まで神経が行き届いた良い演奏です。

三楽章、ゆったりと滑らかに上下する主題。中間部のトランペットの主題はテンポを速めて活動的ですが、すぐにテンポを落としてゆったりと濃厚な表現になります。繊細な弦、瑞々しく美しい木管もとても良いです。

四楽章、とても澄んだ空気感です。ゆっくりととても感情のこもった歌です。独唱が静かに語りかけて来ます。

五楽章、炸裂する打楽器、金管は余裕のある美しい響きですっきりと整理された主題。間接音を含んで程よい距離感のバンダのホルン。速めのテンポで淡々と演奏される第二主題。大きく歌う金管のコラール。展開部でも絶叫はしません。感情移入はありますが、きっちりと制御されていてとても緻密な演奏になっているのが印象的でインバルらしいです。再現部冒頭も冷静です。かなり音量を抑えて静かに始まる合唱。美しく壮大なクライマックスです。ここでもオケは冷静です。

感情を込めた歌もありましたが、常に冷静で緻密な演奏で、日本人らして繊細な美しさは出色のものです。パワーで圧倒するような力はありませんでしたが、素晴らしいバランスの演奏でした。
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ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1993年ライヴ

ハイティンク★★★★★
一楽章、重量感のある第一主題。見事に統率の取れたアンサンブル。展開部の第二主題は夢見るような美しいものでした。激しいホルンの咆哮。精度の高いアンサンブルと反応の良い演奏に感服します。大きな主張はありませんが、作品の魅力を存分に引き出しているような演奏です。最後はゆっくり、そしてホルンが大きく吠えて終わりました。

二楽章、柔らかく自然な歌の舞曲です。消え入るような弱音が特徴です。二回目の主題でチェロの対旋律がある主題は羽毛で肌を撫でるような柔らかく美しい演奏でした。このような美しい弱音から金管の咆哮まで、とても振幅の大きな演奏です。

三楽章、音量を抑えながら強弱に敏感に反応する弦の主題。ハイティンクのこだわった微妙な音の扱いがあります。整然と整ったアンサンブルは見事です。

四楽章、美しくバランスの良い金管のコラール。ネスの独唱はいつも最後の音が短い。

五楽章、かなりのパワーを爆発させる第一主題。自然な歌の第二主題。展開部でも爽快に鳴り響く金管。かなりのパワーを発散していますが、力ずくではないのがハイティンクらしいところです。それにしてもベルリンpoの安定感は抜群です。バンダのホルンは残響が少なくあまり遠くにいる感じがありません。トランペットのバンダは残響を含んでいて柔らかく美しいです。静かに歌い始める合唱。独唱の部分はゆっくりです。二重唱のあたりからテンポが速くなりました。ゆったりとしたテンポで、輝かしく壮大なクライマックス。感動的で見事な演奏でした。

いつものハイティンク同様、誇張も力みも無く、自然体の演奏でしたが、金管はかなりの咆哮を聞かせました。ベルリンpoの抜群の安定感と、ハイティンクの堅実な音楽の運びで、何度でも聞ける演奏だったと思います。
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