マーラー 交響曲第2番「復活」6

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

山田 和樹/日本フィルハーモニー交響楽団

山田 和樹★★★★☆
一楽章、薄いですがきめ細かい弦のトレモロ。第一主題ひコントラバスがあまり存在感を主張しません。金管は咆哮することなく、落ち着いた精緻な演奏をしています。第二主題も粘ったり感情移入するような濃厚な表現では無く、あっさりと演奏します。展開部冒頭は特に美しさは感じません。速めのテンポを基本にして感情の没入は無く、淡々と作品そのものを表現しています。第一主題が出た後のティンパニはかなり強打しました。コル・レーニョもリアルです。決して暴走しない安定感はあります。

二楽章、ここでも速めのテンポが基調ですが、テンポの動きや間は大きいです。オケも地に足が着いた安定感のある演奏で、とても良いです。一楽章とは対照的にテンポが動きます。

三楽章、重いティンパニ、ゆっくりと丁寧な主題。木管も滑らかです。とても穏やかに進みます。中間部の主題を演奏するトランペットも軽く暴走することなど全く無く、完全に制御されています。録音もこれ見よがしに強調する部分も無くとても自然です。

四楽章、まろやかな金管のコラール。あまり感情を前面に出さず、作品そのものを忠実に演奏しています。

五楽章、打楽器も加わって厚みのある響きですが、オケは全開にはならず、余裕を残して冷静です。あまり残響を伴わず距離感もあまりないバンダのホルン。第二主題も淡々と演奏されます。テヌートで演奏される美しい金管のコラール。展開部に入る前に大きくテンポを落としました。展開部も余裕を持ったバランスの良い演奏です。打楽器のクレッシェンドは長く大きく演奏されました。打楽器はダイナミックですが、それに比べると他の弦や管は大人しいです。打楽器が入ると一気に音量が増します。再現部冒頭も金管は突き抜けては来ず、打楽器が入ると一気に音量が増します。遠いバンダのトランペット。バンダのティンパニは響き渡ります。極端に音量を落としていない合唱はかなり力強いです。独唱の後の合唱は音量を上げてさらに力強くなります。クラテマックスでも美しい合唱。オケが全開になっても荒れた響きにはなりません。

かなり冷静に作品を最後まで運びました。オケや合唱は完璧に制御されていて、美しい響きを保ちました。感情の深い表現はありませんでしたが、作品そのものを忠実に表現した演奏だったと思います。オケの上手さもなかなかのものでしたが、クライマックスでの開放感はあまりありませんでした。

サー・ゲオルグ・ショルティ ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、ほかのショルティの演奏同様、強いアタックで弦のトレモロから開始、克明な表現で強弱の変化も激しい演奏です。
冒頭部分はシカゴsoとの演奏とほとんど差はありません。
シカゴsoとの録音ほどマルチモノが強調されていないので、ショルティの音楽を聴くのであれば、こちらの演奏の方が抵抗は少ないでしょう。
同じオケながら、キャプランの時の音とも、違う。ショルティの音です。
キャプランの時には、散漫に聞こえたロンドンsoが、別のオケのように音が集中して届いてきます。
ウィーンpoもメータとブーレーズでは違うオケのような音がしていました。
この演奏では、ショルティの持つ、独特の突進力のような男性的で力強い面が表現されています。
ショルティはリズムの刻みをはっきりアクセントぎみに演奏するので、細部の動きが聞き取りやすいのでしょう。
この刻みの処理が音楽全体を聞こうとするときに、すこし邪魔に感じる人もいるかもしれません。
キャプランの時はがっかりさせられましたが、ここで聞くロンドンsoはさすがに上手い。これがいつものロンドンsoだ!
1966年の時点で、ショルティはすでに、この曲の解釈を確立していたのでしょう。1981年のシカゴsoと同じ演奏です。
オケが変わっただけです。ただ、大きい方のドラがほとんど聞こえない。

二楽章、ここでも粒立ちのはっきりしたショルティ独特の表現です。指揮も弦もよく歌っているのですが、メロディーよりも刻みの方が強調されているような感じがして、なんだか落ち着かない。どっぷりと音楽に酔いしれることはできない演奏です。
やはり、シカゴsoの時より程度は少しマシですが、オンマイクが気になります。
バイオリンがキーキーうるさい。もう少しホールの響きが含まれていれば良いのに。

三楽章、ここもシカゴsoとの演奏と同じで、オケが変わっただけです。
がっちりとした構成力はさすが。安定感抜群で、分厚い響きを作り出すことにかけては天才的だと思います。
シカゴsoの録音よりも木管が近くて金管が遠い感じかな?
強弱の変化もはっきり付けています。Tpのヴィブラートがちょっと不自然な感じがします。
それにしても、突然のffの思い切りの良さには感服します。
メータのような一筆書きのような豪快さとは違って、細部の表現にもこだわっているのですが、ffを何の躊躇もなく思いっきり突進してくるのは、ショルティならではの醍醐味です。

四楽章、ちょっと速めのテンポ設定です。木管も美しいし、テンポの動きも良い感じですが、天国的とは程遠く現実的で天国に召されることはない。

五楽章、この録音から15年も経ったシカゴsoとの演奏がほとんど同じと言うことは、ショルティ自身が、この「復活」解釈に、この時点でものすごく自信を持っていたと言うことなんだろう。そして、ショルティの音もすでに確立していたということか。
ショルティはウィーンpoを指揮しても、シカコsoのようなシャープな響きを作ってしまいますからね。
その昔、あるウィーンpoのメンバーが「ショルティの首を絞めてやりたい」と言ったという逸話が残っているらしいのですが、ショルティは昔から伝統的に守ってきたウィーンpoの響きをある意味否定してしまったわけですから、オケのメンバーとっては屈辱的なこともあったのかもしれませんね。
それでも自分の音楽や自分の響きを作り出そうとする、妥協のない姿勢は一人の人間としてもすばらしいことだと思います。
今は、オケにゴマを摺りながら、オケの機嫌を損ねないようにしながら、妥協の連続のようで、個性の強烈な表出がほとんどない。つまらない時代になってしまったものだ。
この演奏は好き嫌いは別にしても、ショルティの強烈な主張がある。
これは、巨匠としての重要な要件だと思います。
あれ、この演奏もティンパニが一拍遅れて入っているところが・・・・・。
表現力も十分、ブラスセクションも実に気持ちよく鳴り響く。吹きまくりと言った方が良いか。
弱音部やバンダもシカゴsoの演奏とほとんど同じです。
合唱の入りも・・・・・。しかし、ホールの残響成分をほとんど取り込んでいない録音は、デッカとショルティの組み合わせでは定番になっているようです。
弦の旋律もよく歌っているのですが、残響をともなったふくよかな響きではないので、音楽的に聞こえないのが残念なところです。
ソプラノ独唱はシカゴsoとの録音より、こちらの方が良く歌っています。
終結部へ向けて若干テンポが速くなっているか。
終結部の圧倒的なパワーはシカゴsoには若干劣るかもしれませんが、そんなに遜色はありません。

録音もリマスターされていて、古さを感じさせませんし、なかなか良い演奏でした。
シカゴso、ロンドンsoどちらか一つはもっていても良いと思います。

クリストフ・エッシェンバッハ/フィラデルフィア管弦楽団

icon★★★★
一楽章、エッシェンバッハの強烈なキャラクターが取りざたされていますが、そんなに特異な演奏とは感じません。むしろ淡々と音楽は流れて行きます。
隅々まで見通せるような精緻な音楽作りがなされているような感じがあります。オケをよくコントロールしているようで、ライブでありながら、極めて統制の取れた演奏です。

二楽章、ふくよかな響き。テンポが動くことは一楽章でもあったのですが、ライブの即興感はなく、事前に設計された音楽を設計通りに再現しているようなところを感じます。

三楽章、どの楽器も美しい音を奏でているのですが、なぜか音楽に引き込まれない。
構築物としての完成度は極めて高いと思うのですが、音楽の高揚感は全くと言っていいほどありません。
これがエッシェンバッハのスタイルなのか?
エッシェンバッハが薫陶を受けたカラヤンがもしも「復活」を指揮していたら、こんな演奏だったかも知れない・・・・・・。

四楽章、金管のコラールも非常に美しかった。

五楽章、冒頭の金管の咆哮もさすがフィラデルフィアo、トロンボーンのコラールも美しい。ガリガリすることなくクールでカッコ良い「復活」です。
この作品をここまでクールに演奏できるものだろうか?
あの、ショルティでさえベルリンpoとのライブでは内面から燃え上がるような演奏をしていたというのに・・・・・・。
精緻で磨き抜かれた音楽で、内面的な部分はほとんど感じられませんが、これも一つの芸術のあり方でしょう。中途半端な演奏を聴かされるより、スパッと割り切れていて気持ちが良いです。
消え入るような合唱。流麗な音楽。これだけ高揚感なくクールに、しかも音響的には見事に完璧な構造物を見せ付けられると、エッシェンバッハって異次元の生き物なのかと思ってしまいます。
カラヤンよりも徹底しているかもしれません。バーンスタインやテンシュテットとは対極にある演奏です。ただ、それが徹底されていることをすばらしいと判断するか、内面性を伴わない音楽なんて音楽じゃないと言うか・・・・・・。とても悩むところです。

それでも、この演奏の存在価値はあると思います。

デヴィッド・ジンマン チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

icon★★★★
一楽章、低音域に暖かみのある良い音色です。ベートーヴェンの全集では賛否両論渦巻いているようですが、この演奏は今のところノーマルな演奏ですし、とても美しいです。
少しヴェールを被ったような奥ゆかしい美しさで、ギョッとするような生音は聞こえてきません。
フルートのソロもホールトーンを伴った美しい響きがします。ただ、感情がこみ上げてこるような演奏ではなく、作品を遠くらか見ているような冷静な演奏のようです。
一楽章が終わってCDを入れ替えるのは良いですね。

二楽章、とても響きが軽やかで暖かみのある音色はとても良いです。アゴーギクなどもほとんどなく表情は多少ありますが、無表情に近いです。
ただ、音色に暖かみがあるので、エッシェンバッハの演奏ほど冷徹な感じは受けません。

三楽章、オケの高い技術力もすばらしい。この技術集団を統率して音楽を組み上げるジンマンの手腕もすごいと思います。思いますが、感動が伴わないのか、近年の新譜には多いような気がしてなりません。

四楽章、太い声の独唱で、存在感があります。

五楽章、金管も良く鳴っていて、十分響いていますが、余裕を十分残した鳴りです。バンダも良い距離感があって美しいです。
ホールの響きが豊かなので、心地よい音が流れて行きます。どこをとっても申し分ない響きがしています。弱音部分のバンダとの絡みも美しい演奏でしたし、合唱も整ったアンサンブルです。
合唱や金管のffでも独唱の声はちゃんと聞こえる録音です。(ちょっと不自然かも)
この演奏も基本的にはエッシェンバッハと同じ部類に入るような気がします。
構築物としての美しさは完璧です。文句の付けようがありません。エッシェンバッハのクールな演奏を取るか、ジンマンの少し暖かみのある音色を取るかです。
しかし、このようなタイプの演奏に感動があるのかは疑問です。楽譜を完璧に音として再現するという行為を一つの芸術として評価はすべきでしょう。

いろんな演奏があるから楽しめるのですが、聴いた後の感慨と言うのか、心に残るものはあまりありません。

大野和士楽団/ベルギー王立歌劇場管弦楽団

icon★★★★
一楽章、低域がふくよかな録音です。ホールの響きを伴っているからか、トゲトゲしさのない演奏です。控え目なブラスセクションと弦楽器のバランスが取れています。
展開部二度目の第二主題を演奏したフルートはとても豊かな歌でした。再び現れる第一主題ではテンポがすごく動き、遅くなりました。その後も遅いままです。テンポは自在に動いています。
再現部の表現も少し音を切るような表現で独特でした。金管が突出して来ないのですが、ティンパニを含む打楽器はかなり存在感があります。終始抑制の効いた演奏で、爆演にはなりえません。

二楽章、テンポも自然な動きで、作品からも適度に距離を置いた品の良い演奏になっています。オケも超一流とは言えませんが良い演奏をしています。

三楽章、控え目なティンパニ。細かな表情付けもされていますが、録音会場のせいかあまり克明には聞き取れません。金管の咆哮などもなく大人しい演奏で、少し淡白に感じます。

四楽章、美しい独唱。ソロ・ヴァイオリンにはもう少し艶やかさが欲しいところです。

五楽章、打楽器は爆発しますが、控え目なブラスセクションです。速めのテンポで進みます。展開部の前は音を短めに演奏してテンポを上げました。行進曲調の部分で輝かしいトランペットを聴くことができました。
バンダのホルンはあまり豊かな響きではありません。バンダのトランペットは良いバランスでした。
合唱は極端なppではありません。少し速めのテンポで淡々と進みます。合唱の人数もそんなに多くないようです。最後のトゥッティはフルパワーの演奏でした。

作品にのめり込むこともなく、ディテールの美しい演奏でしたが、他の巨匠の演奏に比べると一回りスケールの小さい演奏だったように思います。

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