マーラー 交響曲第2番「復活」7

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

リッカルド・シャイー ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

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一楽章、コンセルトヘボウの深みのある響きを伴って開始されました。金管の咆哮も美しく響きます。シャイーの指揮はアゴーギクを効かせてたっぷりと情感を込めた演奏です。展開部で演奏される弦の第二主題はとても繊細な表現でした。適度なテンポの動きもあって、美しい音楽に浸りながら聞くことができる良い演奏です。

二楽章、ふくよかな弦の響きが美しい。羽毛で肌を撫でられるような繊細な弦の響きはたまらない魅力です。ここでもアゴーギクを効かせて表情豊かな演奏をしています。

三楽章、ホールの長い残響を伴ったティンパニです。コンセルトヘボウの豊かな残響を改めて感じさせてくれます。とても豊かで生き生きした表情が魅力的な演奏です。オケのアーティキュレーションに対する反応も機敏で気持ちが良いです。終盤の2ndティンパニの強打もバッチリ決まります。

四楽章、静かな歌いだし、続くコラールもとても抑えた演奏です。やさしく語りかけるような歌唱、それに応えるように控え目なブラスのコラール。とても美しい独唱でした。

五楽章、爆発を期待しましたが、アンサンブルが整っているせいかとてもコンパクトに聞こえた冒頭でした。バンダのホルンは遠くにいます。テンポも動きます。場面場面を彫琢深く刻み込んで行きます。金管のコラールもホールの残響を伴ってとても美しい。展開部はとてもゆったりとしたテンポで広大な大地を感じさせるような演奏でした。トランペットのバンダも遠くです。合唱に溶け込んだ独唱。トライアングルも絶妙な音色です。独唱、合唱、トランペットがすばらしいバランス!とてもゆったりとしたテンポで演奏が進みます。男声合唱が出たあたりからテンポが速くなりました。合唱が力強く壮大なクライマックスを作り上げました。オケも合唱と同等に力強いクライマックスを作ってくれれば文句なしだったのですが・・・・・。

小澤征爾 サイトウ・キネン・オーケストラ

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一楽章、勢いの良い弦のトレモロから開始です。強弱の変化など積極的な表現です。細部まで表現が徹底されていてすごい統率力を感じる演奏で、オケ全体が殺気立っているような凄い緊張感があります。美しい展開部です。展開部の途中から速めのテンポです。

二楽章、絶妙なバランスで凄いアンサンブル能力を聴かせてくれます。さすがにスーパーオケ。あまりタメがなく表現が淡白に感じます。

三楽章、ここでも細部の表現まで徹底された演奏が続きます。細部まで徹底されている分、金管の咆哮など一種のブチ切れるような表現がなく、制御が行き届きすぎて、とても醒めた演奏のように感じます。

四楽章、独唱とバランスの取れた金管のコラールです。とても存在感のある艶やかな独唱です。

五楽章、冒頭も荒れることなく美しい演奏でした。良い距離のホルンのバンダと美しい木管のソロが続きます。金管のコラールも抑制の利いた美しい演奏でした。展開部でも金管の強奏がありますが、とても美しい。どれだけ激しい部分でも小澤の指揮は冷静なようです。感情に任せて激情するようなことは全く無く、常に細部にも神経を行き届かせているような演奏です。とても静かに始まった合唱。合唱から淡く浮かび上がる独唱。一瞬速いテンポになった男声合唱。あまり高揚感もなく終ってしまいました。日本人の演奏らしく細部まで細やかな神経が行き届いた演奏でしたが、爆発するようなエネルギーや感情表現が無かったのが残念でした。

ヤンソンス ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

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一楽章、ライブ録音のせいか、少しデッドで奥行き感に乏しい感じがします。第二主題の入りもテンポをほとんど落とさずにあっさりと切り替わりましたが第二主題の中ではテンポの動きもありました。展開部の第二主題はゆっくりと祈るような演奏でした。とてもゆっくりとたっぷりと聞かせます。次第にテンポを上げて強奏部分へ、しかし金管が突き抜けてくるようなことはありません。録音のせいか、色彩感に乏しく、モノトーンのような感覚です。再現部の直前もテンポを落とさずにあっさりとしています。ヤンソンスの主張らしいものも感じられない演奏でした。

二楽章、一楽章から一転して表情豊かな演奏です。細部の僅かな強弱の変化も再現しようと神経の行き届いた演奏になっています。それにしても、残響成分の乏しいデッドな録音が演奏への集中を妨げます。

三楽章、尻上がりに表情が豊かになって来ました。オケの集中力も高くなってきているようです。細部の表現までこだわり抜いたヤンソンスの姿勢が伺えます。

四楽章、静かに歌い始める独唱に寄り添う弦。さらに遠くから聞こえるような金管のコラール。潤いのあるクラリネット。次第にテンポを落として天国へ。

五楽章、全体に響き渡るブラス。最初は音を短めに演奏しました。遠くにいるホルンのバンダ。続くオーボエは音を長めに演奏しました。「復活」の動機に続くホルンはとても豊かな響きでした。トロンボーンとテューバのコラールは見事な演奏でした。豊麗な響きの展開部。打楽器のクレッシェンドは頂点に達する前に切られたようで、まだ余力を残していました。ホルンのバンダに対して近いトランペットのバンダ。ゆったりと静かに歌い始めるとても神聖な雰囲気の合唱。合唱と絶妙のバランスで浮かび上がる独唱。少しずつ少しずつ音楽が高揚して行きます。ずっと遅いテンポを維持してきましたが、二重唱からテンポが速くなりました。最後までオケと合唱をコントロールし切ったヤンソンスの指揮でした。楽章が進むにつれて積極的な演奏になっただけに、一楽章の無表情さが残念でした。
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ウラディミール・ユロフスキー ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、気合の入った凄味のある第一主題。速めのテンポでキビキビと進んで行きます。色彩感が濃厚です。第二主題へ向けて少しずつテンポを落として行きました。色彩は濃厚ですが、表現はあっさりとしています。第二主題はゆっくりとしたテンポで始まりました。展開部のフルートの第二主題が伸び伸びと響く。展開部の第一主題が現れた後のコントラバスもガリガリと重量感のあるおとで存在感を示します。テンポも動き、再現部の前にテンポをグッと落として濃厚な表現もありその後徐々にテンポを上げて再現部へ入りました。音色の関係か、とても密度の高い演奏に感じます。コーダの黄昏て行く雰囲気もなかなか良いです。

二楽章、ゆったりと丁寧に演奏される主題。静寂感があって、緊張感と集中力の高さを伺わせます。テンポは動きますが、オケが一体になった動きは見事です。一楽章でも感じたことですが、色彩感はとても濃厚で、この演奏の特徴の一つです。

三楽章、潰れたような音のティンパニ。ヴァイオリンの主題とそれに続く木管の主題もとても表情が豊かです。楽譜の版が違うのか、チェロの旋律などで尻切れトンボになる場面もありました。

四楽章、銅鑼の響きが残った中から独唱が始まりました。とても静かな歌いだしです。続く金管のコラールもおごそかな雰囲気です。少しハスキーと言ったら言い過ぎですが、独特の歌声です。最後は丁寧にテンポを落として天国へ。

五楽章、盛大に鳴る銅鑼。音の洪水の中から僅かに顔を覗かせる第一主題。かなり遠いホルンのバンダ。速めのテンポでキビキビ進む第二主題。ねばったりアゴーギクを効かせるようなことはありません。金管のコラールはとても重厚な響きですばらしかったです。展開部の前でテンポを速めました。展開部からの色彩のパレットを広げた充実した響きも素晴らしかった。テンポの変化も変幻自在でとても濃厚な表現です。トランペットや打楽器のバンダも非常に遠くにいます。ソプラノ独唱の後ろで同じ旋律を吹くフルートがとても強調されていました。二重唱の後少しずつテンポを上げかなりせっかちなくらいになりました。オルガンも加わるところからは一般的なテンポで壮大なクライマックスです。

基本的には速めのテンポの演奏でした。濃厚な色彩感と濃厚な表現。それに一体感のある演奏はなかなかのものでした。これからの円熟を期待したいと思います。

アンドルー・リットン/ダラス交響楽団

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一楽章、控え目な第一主題。清涼感のある弦の涼しげな響きをベースにした演奏です。金管も整って行儀の良い演奏です。第二主題の前でテンポを落としました。第二主題の中でちょっとした間をとったりテンポを動かしたりしてとても魅力的な歌でした。展開部の前で大きくテンポを落としました。展開部の第二主題が終るところでもテンポを落としました。金管の強奏もとても美しいです。第一主題の後のコントラバスの部分もすごく遅いテンポで演奏しました。ホルンにコラール風の旋律が現れるあたりから加速しました。トゥッティでも非常に軽い響きでガツンと迫って来ません。その分とても美しい演奏ではあります。再現部の第二主題もゆったりとしていてこの世のものとは思えないようなとても美しい演奏です。リットンの感情移入もありますが、美しさを追求しているようで、グロテスクなものは全く聞こえて来ません。

二楽章、速めのテンポですが、途中で間を取ったりしてテンポが大きく動きます。この楽章も清涼感のある美しい演奏です。テンポの動きとともに感情が込められて行きますが、美しく歌うことに専念しているような表現です。テンポの動く歌にはこちらも身をゆだねて酔いたい気分にさせられます。とても美しいです。

三楽章、控え目なティンパニ。くっきりと浮かぶ細身のクラリネット。弦もガリガリと弾くことはなく、金管も余力をたっぷりと残し美しい響きを聴かせてくれます。あまりに強奏しないので、あまりスケール感を感じません。箱庭のようなミニチュアの音楽を聴いているような錯覚に陥ります。

四楽章、独唱よりも抑えられた金管のコラール。淡白なヴァイオリン・ソロでした。この楽章でもテンポは動きます。

五楽章、ここでも軽い金管の第一主題。比較的近いホルン。ホルンの動機から続く部分は速めのテンポで動きます。第二主題も速めのテンポであっさりと進みます。細身のトロンボーン。金管のコラールで少しテンポを落としました。展開部もホルンはかなり強く吹きますが、トランペットやトロンボーンは控え目で美しいです。打楽器のクレッシェンドの後もとても軽く吹く金管。再現部に入って、バンダのトランペットが輝かしく美しい。人数が少ないような感じがする合唱。一楽章や二楽章で見られたテンポの動きや間を取ることはなく、淡々と進みます。途中で合唱の音量を極端に落としました。ソプラノの独唱が終ったあたりからテンポが動くようになりました。合唱の出だしでは人数が少ないように感じましたが、かなりの音量がありました。オケを圧倒するような合唱です。ホルン以外の金管は最後まで余力を残していたように感じました。

これだけ、美しさに徹した演奏も良いものでした。
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ラファエル・クーベリック/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1960年ライヴ

クーベリック★★★★
一楽章、長めのトレモロから第一主題が始まりました。過不足なく盛り上がりますが、第二主題への入りはテンポをほとんど落とさず、第二主題も速いテンポです。展開部は抑えた音量から次第に大きくなり、ホルンとの絡みも美しい演奏でした。テンポが動いたりすることはほとんどありませんが、どっしりと地に足の着いた確実な足取りです。テンポは速めに進みますが、感情を込めるところではしっかりと主張しています。

二楽章、一楽章の速めのテンポと緊張感から解放されるような、穏やかでゆったりとしたテンポです。ただ、テンポを動かしたり、ねばったりするようなことは無く、比較的あっさりと進んで行きます。オケには一体感があり、流動的なところが無く、がっちりとした構成感です。

三楽章、この楽章はゆったりと流れるような主題。1960年のライヴだとは思えない音の良さです。強奏部分でもオケには余裕をもって演奏させています。ちょっと押したり、僅かにテンポが動いたりして歌っています。

四楽章、抑え気味の独唱。録音のせいか、細い声に聞こえます。

五楽章、強烈なトランペットの第一主題。金管の第一主題の後、ホルンが出るまでの間はゆっくりと、ほろ酔い気分のようなヨタヨタとした良い感じでした。遠いバンダのホルン。美しいトロンボーンの第二主題。非常に静寂感があります。淡々とした金管のコラール。展開部も絶叫はしません。とても堅実で安定感のある音楽です。打楽器のクレッシェンドもことさら効果を狙ったような演奏はしません。遠くて残響をあまり伴わないバンダのトランペット。再現部冒頭もクーベリックはしっかりとオケを統率していて、暴走は全くありません。静寂の中に響くバンダのホルン。比較的大きめの声で歌い始める合唱ですが、しっかりと実在感があり力があります。男声合唱はあまり編成が大きくないように感じますが澄んだ美しい響きです。ソプラノ、アルトの二重唱の後からの盛り上がりでテンポを上げました。圧倒的なパワー感ではありませんが、感動的なクライマックスでした。

奇をてらうようなことは全くなく、堅実で竹を割ったような爽快感のある演奏でした。質実剛健とはこのような演奏のことを言うのでしょう。
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小澤 征爾/ボストン交響楽団 1989年 大阪フェスティバルホールライヴ

小澤 征爾★★★★
一楽章、激しく重量感のある第一主題。ゆったりとしたテンポで濃厚な表現で進みます。あっさりと爽やかに演奏される第二主題。緊張感の高まる部分と力を抜くところの対比があって、かなり気合の入った演奏です。展開部の第二主題は遠くから響いてくるような美しい演奏でした。引き締まったなかなか良い演奏です。86年のスタジオ録音の素っ気無い演奏とは全く違います。

二楽章、弦が一体になった分厚い響きで優雅な舞曲を演奏します。緊張感のある中間部の弦の刻み。優雅な部分と激しい部分の表情が一変します。

三楽章、強弱の変化をはっきりと付けた主題。大きな表現はありませんが、過不足無く表情を付けた演奏で、とても引き締まっています。トランペットがかなり強いです。

四楽章、柔らかい独唱。感情を込めて歌うオーボエ。

五楽章、鋭く伸びやかな金管の強奏を聞かせる第一主題。程よい距離感ですが、残響はあまり含まないバンダのホルン。僅かな強弱の変化で淡々と演奏される第二主題。ゆっくりと演奏される金管のコラールですが、若干のミスもありました。展開部ではかなり強く金管が演奏します。ボストンsoの金管のパワーに圧倒されます。バンダのトランペットもやはりあまり残響を含んでいません。すごく音量を落として静かに始まる合唱。ソプラノ独唱も伸びやかな歌声です。力強い金管とそれに対抗する合唱で、最後は大きなクライマックスを築きますが、感情が伴わないせいか、何故かあまり感動はありませんでした。

気合の入った引き締まった演奏でした。強力な金管のパワーを見せ付けるようなトゥッティ。大きな表現はありませんが、過不足無く表情を付けた演奏でしたが、最後は大きなクライマックスを築きますが、感情が伴わないせいか、何故かあまり感動はありませんでした。
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投稿者: koji shimizu

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