マーラー 交響曲第4番3

たいこ叩きのマーラー 交響曲第4番名盤試聴記

オトマール・スイトナー/NHK交響楽団

icon★★★★
一楽章、少し遠目に定位するオケ。静かでひっかかるところの無い滑らかな演奏です。詰まったようなクラリネット。激しい強弱の変化も無く、とても穏やかで自然な音楽です。音楽を慈しむように丁寧に表現して行きます。金管には力強さが無く、テュッティで大きく盛り上がることは無く、当時の日本のオケの状態を感じます。とても淡い表現で強い表現はありません。ひたすら穏やかです。

二楽章、この楽章は動きがありますが、それでも音楽は穏やかです。表現は奥ゆかしく、オブラートにくるまれたような音楽で、刺激的な音は一切出しません。

三楽章、穏やかで安らぎに満ちた音楽です。強い表現は一切しません。自然な音楽の流れをとても大切にしているようです。ヴァイオリンのポルタメントが印象的です。強奏部分はそれなりに強く演奏されますが、全体の流れを崩すほどではありません。ホルンだけマイクが近く、しかも間接音が少ないので、とても浅い響きになるのが気になります。終盤に盛り上がる場面でも、ティンパニだけが大きくなって、他の楽器はそれほど大きくはなりませんでした。この当時はテュッティのエネルギー感が不足していたのかも知れません。

四楽章、発音が聞き取りにくい独唱。この楽章は強弱の対比がはっきりしています。後半はまた穏やかな音楽になりました。

この曲がこんなに穏やかな曲だと初めて感じさせられました。オケの技術がもっと高ければすばらしい演奏になっていたでしょう。

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★
一楽章、明快な演奏です。コントラバスが唸りを上げる。ヴァイオリンのシャープな音。どのパートもとてもリアルで、夢見心地には程遠い感じです。展開部のフルートは見事に揃っています。強いところではトランペットが突き抜けてきます。ショルティはシカゴsoの機能美を見せ付けるような演奏をしています。テンポの動きはありますが、歌や間などはほとんど感じません。

二楽章、模範演奏を聴いているような正確無比な感じがします。楽譜に書かれていることを正確に音にしていて、それ以上でもそれ以下でもない演奏です。ある意味すごい名人芸なのかも知れません。

三楽章、現実です。シャープな音色が現実世界から離れることを許しません。とてもダイナミックで躊躇無く強弱の変化があります。明快に吹き鳴らされるホルン。この楽章のほとんどは静かな曲だと思っていたまですが、こんなに荒れ狂う嵐のような曲だったとは思いませんでした。終盤の盛り上がりは凄い勢いでした。

四楽章、潤いのあるクラリネット。ここまでのオケの演奏とは対照的な柔らかく表情豊かなキリ・テ・カナワの独唱。オケの方は相変わらず起伏の激しい演奏です。この思いっきりの良い演奏はショルティの特徴でもあります。

この曲の優しい面ではなく激しい面を強調して、違う側面を聞かせた演奏にはそれなりの価値はあると思います。それにしても、思いっきりオケを鳴らすショルティの指揮はどの曲でも変わりません。

エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団

icon★★★☆
一楽章、ゆっくりとした序奏。クリアで細部まで見通せるような録音です。ニュートラルな温度感で盛り上がる部分では熱気をはらんできます。音の粒立ちが非常に良く、一つ一つの楽器が明快に定位します。ダイナミックレンジが非常に広く、強奏部分は豪快で分厚い響きを聴かせます。インバルの指揮は極端な表現は避け、作品の自然な美しさを追求したような演奏です。

二楽章、自然で美しい演奏。表現はしますが、踏み外すようなことは無く、とても安定感があります。ピツィカートも音がピンと立っています。

三楽章、現実的な雰囲気の主題で、大きく歌うことは無く淡々と進みます。速めのテンポですが、途中でさらにテンポを速めました。そして今度はゆっくりと終盤の演奏です。ホルンやトランペットが鮮明で強烈です。終盤の盛り上がりは物凄いエネルギー感で迫って来ました。こんなにダイナミックな4番の演奏は初めてです。

四楽章、のどかな雰囲気のクラリネット。発音を凄く意識しているような独唱。発音を意識するあまり、実在感があり過ぎて天使の歌声とは違うような感じがします。

美しい録音とダイナミックな演奏でしたが、あまりにも現実的過ぎるように感じました。
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チョン・ミョンフン/ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団

チョン・ミョンフン★★★☆
一楽章、優しい響きで開始して、僅かにテンポを落としてこれも優しい表情の第一主題に入りました。表情が多彩で楽しげです。ホールの残響も適度に入っていて美しい演奏です。深く歌う第二主題。展開部の手前で一時テンポを凄く速めました。再び優しい第一主題。天国への憧れを歌っているような音楽です。ライヴ録音ですが、とても鮮明に録られていて、コントラバスの動きも克明です。テンポもよく動いていて、作品への思いが込められているようです。最後に現れる第一主題は凄くゆっくりでその後テンポを速めて終わりました。

二楽章、とても良く歌い表現が豊かです。ヴァイオリン・ソロがオケからくっきりと浮き上がるように演奏します。女性的な柔らかな線と優しい表現の演奏です。

三楽章、夢見心地では無い現実的な主題ですが、美しさには魅せられます。切々と語られる音楽ですが、常に柔らかく優しいです。トゥッティでも荒れ狂うようなことは無く、それでも分厚い響きで整然として美しい演奏です。

四楽章、美しいクラリネット、それに続くフルートも美しい。必死にがなり立てるような独唱。天使の歌声とはかけ離れているような感じがします。これまでの柔らかくしなやかな音楽が全く違う方向に行ってしまったようです。

三楽章まではとても良い演奏でしたが、四楽章の独唱でそれまでの音楽がぶち壊されたような印象で残念でした。
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アレキサンダー・ラハバリ/スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

ラハバリ★★★☆
一楽章、少し遠くから響く鈴。ゆったりと美しく演奏される第一主題。奥ゆかしく控え目な表現です。第二主題も控え目で美しいです。どの楽器も非常に美しい音を聴かせてくれます。この作品の美しさを改めて感じさせられますが、弓をいっぱいに使うようなダイナミックさは無く、ちょっとこじんまりと萎縮したような小ささも感じられます。目立った表現は無く、ひたすら繊細な美しさを追求しているような感じがします。

二楽章、細身で美しいヴァイオリン・ソロ。その後も非常に美しい演奏が続きます。踏み込んだ表現やテンポの動き、アゴーギクなどはありません。置きに行ったような勢いの無さが、美しいだけに残念です。

三楽章、静寂の中に美しく演奏される主題。弦の美しさは絶品です。暗転する部分のオーボエも、続く弦も美しいですが、やはり置きに行くような丁寧さとは違う、勢いの無さはここでもあります。ティンパニだけはドカンと入って来ます。終盤の盛り上がりでもティンパニは遠慮なく叩いていますが、トランペットは控え目でした。

四楽章、控え目で美しいクラリネット、ゆっくりとしたテンポです。ほととんどテンポを変えずに独唱になりました。独唱も抑え気味の歌唱です。これだけ抑え気味に聞こえるのは録音のせいなのでしょうか。後半のテンポを落としてからの演奏は独唱も含めて、すごく雰囲気があって良かったです。

非常に美しい演奏でしたが、ダイナミックな部分も聴かせて欲しかったと思います。これだけ美しい演奏ができるのですから、ダイナミックな部分も表現できるともっと注目される指揮者だと思います。
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クラウス・テンシュテット/ボストン交響楽団

テンシュテット★★★
一楽章、デッドな録音です。テンシュテットならではの間があります。アゴーギクもいたるところで見られます。展開部のフルートももう少しホールの響きが伴っていれば、と思います。積極的な表現で作品への共感を感じさせます。テンポもしょっちゅう動いています。

二楽章、テンポが頻繁に動いて、とても感情のこもった演奏です。繊細な弦の表現。動きがあって生き生きしています。

三楽章、落ち着いて美しい開始です。静かな音楽の中に切々と語りかけるような雰囲気を持っています。アゴーギクを効かせたイングリッシュホルン。祈りにも似たオーボエ。表情がどんどん変化して行きます。突き抜けてくるミュートしたトランペット。高揚する部分でもいつものテンシュテットの咆哮ではなく抑制の効いた表現でした。

四楽章、のどかな心地よい雰囲気。残響成分をほとんど含まない録音のせいかソプラノの声質が少し硬いです。独唱をピッタリとサポートするオケはさすがです。

テンシュテットはボストンsoとの組み合わせになると、MEMORIESのベートーベンの交響曲でもそうだったのですが、上品と言うかどことなくよそよそしい演奏になってしまいます。この曲の場合はいつものような突き抜けた爆演は似合わないとは思うのですが、今ひとつ相性が悪いように思います。

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、ゆっくり確実に演奏される序奏。一転して動きのある第一主題。第二主題の前でテンポを速めて、第二主題はゆったりとしたテンポで大きく歌います。ファゴットの伴奏に乗ってオーボエが旋律を歌うところではすごくテンポを落としました。展開部に入ってもテンポはバーンスタインの感情に合わせて自在に動いています。ただ、録音のせいか、奥行き感が無く、音楽が軽薄に響いているように感じてしまいます。

二楽章、美しいクラリネットやホルン。この楽章でもテンポは良く動きます。

三楽章、静かに感情を込めて美しく演奏される主題。別世界へ誘うようなオーボエ。細身で艶やかなヴァイオリンのソロ。心に染み入るような歌です。最後の盛り上がりの部分のティンパニは強烈でした。美しく静まって天上界を表現しているような演奏です。

四楽章、美しいクラリネットでゆったりとしたテンポで始まりました。起伏も激しい演奏です。独唱は天国の楽しさを歌うのに合った明るい歌声です。

一楽章はイマイチでしたが、尻上がりに良くなりました。ただ、バーンスタインの感情が深く表現されているかと言うと中途半端な印象は拭えません。
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