マーラー 交響曲第5番2

たいこ叩きのマーラー 交響曲第5番名盤試聴記

ジュゼッペ・シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、つんのめった感じで三連符を吹く指定になっているトランペットが本当につんのめっている。
表現は淡白な感じがします。それとマスの響きが寄ってこないのもちょっと気になります。トランペットの付点をテヌートぎみで甘く演奏している。意図的にはずまないようにしている部分があります。後で出てくる付点はしっかりはずんでいました。
木管群が美しいアンサンブル。

二楽章、「巨人」を聴いた時に感じた、小さくまとまった感じはなく、十分熱い演奏をしています。
シノーポリのマーラー独特の対旋律をクローズアップしているので、他の演奏では聞こえない楽器がいろいろ聞こえてきて面白いです。また、シノーポリの唸り声も随所に収録されています。
オケは十分に鳴っていて気持ちが良いのですが、音楽自体はねばることなくサラリと流れて行く感じで、演奏に釘付けにされるようなことがありません。音楽を押し付けてくるようなずうずうしさはないので、下品さは全く無いのですが、反面あっさりと美しい音が流れすぎて、マーラーを聞いているとは思えないような不思議な演奏です。これは、ある意味ではシノーポリが切り開いた新しいマーラーの境地なのかもしれません。

三楽章、とても速い出だしです。シノーポリのマーラーは他の曲でも同じ傾向なのですが、非常にタッチが柔らかくて、ギンギンバリバリしたところがありません。むしろフワッとした感触すらあって、従来のマーラー感からは全く違う面を聴かせてくれます。このようなマーラー像を切り開いたことは高く評価されるべきでしょう。
ただ、これだけ従来のマーラーとは違う演奏をすることは大きな賭けでもあるわけで、好き嫌いは分かれるでしょう。
この楽章でも、聴きなれない音が頻繁に顔を出します。
終結部もかなりテンポが速かった!

四楽章、この楽章はシノーポリの演奏スタイルにピッタリです。淡雪のような、すぐに溶けてなくなるようなロマンチックな演奏になっています。中音域が厚い弦楽合奏でうるさくなることがないので、つかの間の癒しの時間を与えてくれます。

五楽章、四楽章から続けて演奏されるので、まだ夢の中のような始動です。とても上手いつなげ方だと思いました。途中に金管がバーンと入ってきて、次第に眠りから覚めて行く様な、少しずつ少しずつ現実へと戻されていくように、シノーポリによって誘われて行きます。なかなか見事な演出です。
ここでも、聴きなれない楽器が登場してきます。私は音楽を聴くときにスコア片手にというような聴き方はしません。スコアを見ることによって作品に対する理解はもっと深まるかもしれません。しかし、聞き手は聞き手であって、受動的な立場なので、感じるままを感じることにしています。スコアを見て理解を深めて、通常はスコアなしで聴くのなら分かります。しかし、私は常にスコア片手だと、音楽に没頭できなくなってしまうのです。
例えば、歴史的建造物を見に行くとしましょう。その時に設計図面を片手に見に行く人がどれだけいるでしょうか?
夢見心地のまま終わったような、とても不思議なマーラーでした。こんなマーラーの5番は初めての経験です。4楽章~5楽章への流れは予想外で、シノーポリマジックとでも言うべきか。良い体験ができました。5楽章は当然激しい演奏を想像していましたが、本当に最後の最後で起こされた感覚で、それまでは、ず~っと夢の中にいたような感じでした。

これまでのマーラー解釈とは一線を画すものですが、これはこれでかなり説得力がありました。
この演奏を受け入れられない人も多いのではないかと思います。でも数あるマーラーの5番の名演奏の中にこの演奏を提起する(主張する)シノーポリに惜しみない拍手を送りたいと思います。

ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、陰鬱な響きのトランペットのファンファーレ。低音域があまり分厚くないので、全体の響きが薄く感じます。一つ一つの旋律に克明な表現を付けて演奏されています。とても表情豊かでクーベリックが作品に込めたものが伝わってきます。テュッティでも激しい部分は凄い激しさで、輪郭のはっきりくっきりの演奏です。

二楽章、テンポは少し遅めですが、いくつものうねりとなって音楽が湧き出してきます。第二主題が大きく歌われました。展開部でも遅めのテンポを維持しています。チェロの途切れ途切れの音型にすごい静寂感がありました。金管のコラールも輝かしいものでした。クーベリックがオケを見事に統率して一体感のある音楽を作り出しています。聴き手をグイグイと引き込む演奏です。

三楽章、一転して速めのテンポです。表情豊かで楽しそうな雰囲気に溢れています。ソロを吹く管楽器も非常に上手いです。表情豊かで楽しそうなのですが、音色は引き締まって、緊張感もしっかりと維持しています。ライヴとは思えない程の演奏精度ですばらしいです。

四楽章、遠くから自然に聞こえてくるような開始でした。優しい演奏なのですが、残響をあまり伴わないので、ちょっとキツく聞こえます。この楽章でも微妙な表情付けが魅力的です。強奏部分でもムリにがなり立てることもなく美しい演奏でした。

五楽章、美しいホルン。チャーミングな表情の木管楽器。生き生きとした弦楽器群。集中力の高い演奏が続きます。最後の爆発を残して抑え目に演奏しているのでしょうか。全曲を通じて、輪郭のはっきりした彫りの深い演奏です。最後の咆哮も少し余力を残して美しい演奏でした。とても人間味があり表情豊かな演奏でした。作品には十分共感して感情移入もされていますが、ドロドロになる手前で踏みとどまって、作品のディテールなども聞かせてくれるバランスの良い演奏だったと思います。

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、ふくよかな響きのトランペットのファンファーレです。ホールに残響が響き渡ります。すごく遅いテンポで演奏される主要主題。一音一音に魂を込めるように丁寧な演奏です。一音一音に表情を付けるような異様な演奏。 さらにテンポを落として濃厚な表現です。もう完全にバーンスタインの世界です。即興なのか緩急自在に表現します。トランペットの突き抜けた時の輝かしい響きが印象的です。すごいアゴーギク。マーラーが乗り移ったかのように音楽に感情を思いっきりぶつけてきます。壮絶怒涛のテュッティ!もの凄く濃厚な一楽章でした。

二楽章、全開の冒頭です。ウィーンpoらしい木管の繊細な表現。この楽章ももの凄く遅いテンポ。体が引きちぎられそうな感覚になる激しいクレッシェンド!こんな曲だったか?と思うほど遅いテンポ。激しいテンポの変化と金管の咆哮と深々とした弦の響き。この演奏をしながらバーンスタインは正気だったのだろうか?一種の錯乱状態になりながら指揮をしていたのではないかと思うほど正常な演奏とはかけ離れています。聴いているこちらも違う世界へ連れて行かれたような錯覚さえ覚えます。

三楽章、この楽章も遅めのテンポです。一音一音に何か意味合いを持たせているかのように重い。スケルツォとは思えないほど重い。もうこの演奏はマーラーを逸脱してバーンスタインの音楽だと思う。それにしてもここまで自分自身をさらけ出して音楽にすることは凄いことだ!自在な音楽。

四楽章、遅いテンポの中でテンポが揺れて濃厚な表現です。美しい音楽なのですが、バーンスタインの内臓をぶちまけて見せられているようなグロさも感じてしまいます。それほど強烈な主張のある演奏なのです。マーラーの病的な部分も強烈に認識させられます。

五楽章、冒頭からアゴーギクいっぱいです。あまりの重さに疲れてきました。これだけ強烈な主張のある演奏は合う人にとってはたまらない演奏でしょう。しかし、合わない人にとっては苦痛かもしれません。

ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★★★☆
一楽章、安定した輝きのある響きのファンファーレ。思いっきりの良いブラスセクションの咆哮。速めのテンポで進む葬送行進曲。一見、淡々と進むようですが、強い意志が働いているようで、前へ前へと進む音楽は、ウィーンpoとの復活を思い起こさせるものです。メータの絶頂期が蘇ったような豪快な演奏です。音の洪水のように激しく次々と音楽が押し寄せてきます。

二楽章、ここでも激しい咆哮が聞かれます。とても良く鳴るブラスセクションを前面に押し出した演奏になっています。テンポを揺らしたりアゴーギクを効かせたりすることもなく、一直線に突進してくるような表現で、圧倒されます。マーラーのオーケストレーションが克明に表出されて行きます。メータが表現すると言うより、作品に語らせるような演奏になっています。速いテンポで激しさを表現しました。

三楽章、弦だけの部分ではもう少し艶やかな響きと表情が欲しい気もしますが、ブラスセクションが登場するとどっしりとした堂々とした安定感に変化します。テンポの速い部分は豪快で生き生きとしています。本当に気持ちよく鳴るブラスセクションです。

四楽章、この楽章も速めのテンポであまり濃厚な表現はないようです。淡白でした。もう少し踏み込んだ表現があっても良かったのではないかと思います。

五楽章、ホルンに続く木管も美しい演奏でした。津波のように音の洪水となって次から次へと音楽が押し寄せてくるのは圧巻です。メータが鳴りの良いニューヨーク・フィルを利して速めのテンポで一気に描ききった豪快な快演だったと思います。

クラウディオ・アバド/シカゴ交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、暗闇の中から浮かびあがるようなトランペットのファンファーレが次第にクレッシェンドして、テュッティで轟きます。すごく抑えられた主要主題が次第に明確になってきます。とても激しい第一トリオ。全体を通じてトランペットが輝かしくとても力強いです。線は細いのですが、とても強い音楽が続きます。

二楽章、とても濃厚な色彩で強い音楽です。第一主題の周りで演奏される金管がとても激しい。少し落ち着くチェロの第二主題。金管が遠慮なく炸裂します。展開部のティンパニの弱いロールの上で演奏されるチェロは無表情です。金管の上手さは見事と言う他ないくらい凄いです。コラールも非常に輝かしい。

三楽章、勢いの良いホルン。くっきりとした木管の第一主題。合間に入る金管も生き生きとした表情です。ゆったりと落ち着いたヴァイオリンの第二主題。どの楽器も屈託なく良く鳴ります。展開部は次々と楽器は受け継がれて行きますが、流れるように滑らかです。金管はかなり強奏しますが、ひっかかることなくスムーズに流れて行きます。

四楽章、遠くから次第に近づいてくるように次第にはっきりする冒頭でした。かなり抑えられた演奏です。アバドの演奏の場合、感情をぶつけてくるようなことはないので、この楽章も感情が込められて、マーラーと一緒に没入するようなことはありません。こちらも演奏にあわせて感情が高ぶるようなことはありません。非常に美しい音が通り過ぎて行くだけです。遠くへ去って行きました。

五楽章、どの楽器も非常に美しい。第二主題もアクセントは付けられていますが、引っかかるような強いアクセントにはなりません。ブラスセクションの強奏はありますが、絶叫するような咆哮はありません。極めて整った演奏です。感情移入することなく、マーラーのスコアを整然とした音楽として再現するのがアバドの意図したところなのか。

すばらしく美しい演奏でしたが、聴いていてこちらが熱くなるような演奏ではありませんでした。造形としてはすばらしいものでした。

ダニエル・バレンボイム/シカゴ交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、ハーセスの艶のあるファンファーレ。強弱の振幅の大きな主要主題。主要主題の入りはゆっくりと入ります。激しい第一トリオですが、シカゴsoもショルティ時代の吹きまくるような金管ではなく、ほどほどに節度のある演奏です。非常に感情の込められた木管の主要主題。第二トリオから頂点へ向けて少しテンポを速めているか?

二楽章、荒れ狂うような序奏ではありません。大きく歌う第二主題。金管の上手さはさすがです。ダイナミックな演奏で、色彩感もとても濃厚です。金管のコラールも輝かしく美しい。登場してくる楽器が生き生きとしていて、とても有機的です。

三楽章、気持ちよく鳴るホルン。生き生きとした木管の第一主題。登場する楽器がくっきりと浮かび上がり次々に強い自己主張をして存在感をアピールします。一転して穏やかな第二主題。展開部に入って豪快に鳴る金管。繊細ですが、僅かに金属的な響きのヴァイオリンがシカゴsoらしいです。バレンボイムは細かな指示はせずにオケの自発性に任せているようです。

四楽章、遠くから聞こえてくるような幻想的な雰囲気で始まりましたが、ガリガリと鳴る弦によって次第に現実に連れ戻されます。この楽章では金属的な響きのヴァイオリンがちょっとキツくて愛を奏でるような雰囲気ではありません。押し寄せる波が次第に引いて行くように終わりました。

五楽章、かなり強く吹くホルン。続く木管もくっきりとしています。テンポも微妙に動いています。低弦の第二主題も金属的な響きです。再現部の前のクライマックスはテンポを速めてあっさりと演奏しました。最後の金管の鳴りはさすがにシカゴsoだと思わせるものでした。

特に、強調された表現などはありませんでしたが、ハーセスのトランペットやクレヴェンジャーのホルンなど見事に鳴るオケの演奏はすばらしく、聴いていてとても気持ち良いものでした。
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