マーラー 交響曲第5番3

たいこ叩きのマーラー 交響曲第5番名盤試聴記

テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団1984年大阪ライブ

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一楽章、気候のせいか、ロンドンでのライブに比べるとオケの鳴りが今ひとつです。
響きが少し重い感じがします。暗く沈んで行く感じはとても良く表現されています。
強弱などの表現が豊かです。

二楽章、積極的な表現と、暗く沈む部分の対比が見事です。表情はとても豊かです。

三楽章、やはり、スカッとした鳴りではないのが残念です。

四楽章、穏やかで優しい演奏です。慈しむような音楽です。

五楽章、じっくりとした冒頭部分です。オケも乗ってきたようで、積極的な表現になってきました。

テンポも動いて元気なクライマックスでした。でも、テンシュテットの演奏としては整然としていたような感じがします。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、タンギングが分かるほど近いとトランペット。悲鳴にも似たファンファーレ。静かにゆったりと奏でられる主要主題。切々と悲しみを表現しています。トランペットだけが近いセッティングのようです。開始5分30秒ぐらいのところのトランペットのファンファーレの部分はすごくテンポを速めました。テンポやバランスなど、他の指揮者とは違う独特のものがあります。第二の中間部の弦のメロディも最初は静かに丁寧に演奏されました。弱音とテュッテイの強弱の変化に大きな幅がありダイナミックです。ただ、強奏部分でも激しく荒々しい表現にはならず、節度ある範囲の演奏になっています。

二楽章、「嵐のように荒々しく動きをもって。最大の激烈さを持って」とマーラーが書いている楽章ですが、荒々しい表現ではありません。どんなに強く演奏しても美しさを維持していて、カラヤンの感情移入の余地は残されていないような演奏です。このあたりが「美しいだけ」と言われたりする所以でしょうか。オケも100%の力で咆哮することはありません。余力を残して美しい音色が維持できる範囲で演奏しているように感じます。整然と整った模範演奏を聴いているような感覚です。

三楽章、元気の良いホルン。快活な表現の冒頭でした。ホルンのソロの上手さに惹きつけられます。この演奏はカラヤンの感情移入を排して楽譜を客観的に音にすることに専念した演奏なのだと思います。とても冷静に演奏が進んで行きます。

四楽章、ゆったりとしたテンポで美しい弦の調べが聴けます。強弱の振幅も広く、愛情を感じる演奏です。このような音楽を演奏させるとカラヤンは上手いですね。永遠に続くのではないかと思わせました。

五楽章、一転して表情豊かな木管のソロでした。金管のffが地面に杭を打ちつけるようなガツンと来るような音ではなく、空へ向かって吹いているような軽さがあります。オケのアンサンブルも見事です。音響の構築物としては完璧だと思うのですが、マーラーの音楽の場合、多少音が汚くても、思いっきり感情をぶつけてくるような演奏の方が個人的には好きです。見事な頂点でした。すばらしい演奏ではあったのですが・・・・・。

ジェームズ・レヴァイン/フィラデルフィア管弦楽団

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一楽章、ビービー鳴るトランペット。強いティンパニの打撃。弦楽器の主要主題には最初ゆっくりと入りました。暖かい響きの弦楽合奏。第一トリオはビービー鳴るトランペットを筆頭に豊麗なサウンドが津波のように押し寄せて来て、とても豊かな雰囲気の演奏です。ティンパニは常に強調されています。葬送行進曲というイメージの重さや厳粛さはありません、むしろオケの技量を最大限に発揮した輝かしい演奏です。トロンボーンやテューバもとても良く鳴ります。第二トリオも陰鬱な雰囲気よりも華やかさがあります。

二楽章、激しさはありますが、見事に整った冒頭です。ヴァイオリンの第一主題に帯同する金管も激しい。とても落ち着いてチェロの第二主題。展開部でもティンパニが強調されています。展開部から行進曲調に至るまでのフィラデルフィアoならではのとろけるような美しい音色はすばらしい。再現部でも強調されているティンパニがとても効果的で胸がすくような打撃です。輝かしく美しい金管のコラール。

三楽章、とても勢い良く鳴りの良いホルン。続く木管の第一主題の響きも魅力的です。ちょっとメタリックな響きのヴァイオリンがとても活発です。一転してマットな響きになる第二主題。展開部の手前は黄昏て行くような独特の雰囲気でした。再現部はフィラデルフィア・サウンド全開の豪華絢爛な響きが凄かった。コーダも華やかでした。

四楽章、消え入るような音量から開始して、抑え気味で淡々とした演奏が次第に振幅が大きくなってきましたが、湧き上がる感情を作品にぶつけるような演奏ではなく、客観的で冷静な演奏です。この楽章のほとんどは抑えた音量の演奏です。少し表情が乏しかったような気がしました。

五楽章、ちょっと乱暴なホルンの第一主題の最初の音でした。あまり表情の無い第二主題。クライマックスは壮大なものでした。ただ、テンポも含めて少し間延びしているような感じがありました。

ディミトリ・ミトロプーロス/ニューヨーク・フィルハーモニック 1960年

ミトロプーロス★★★★
一楽章、かなり遠くにいるトランペット。録音はモノラルです。寂しげに演奏される弦の主要主題。オケはしっかりと豪快に鳴っています。二度目のファイファーレの後は、タメなのか?リズムが詰まっている部分がありました。引きずるように重い葬送行進曲です。第一トリオはすごい勢いで突っ走ります。縦に揺れる木管の主要主題。

二楽章、ゆっくりとした序奏。ヴァイオリンの第一主題にいろんな楽器が絡みつく。一転して落ち着いた第二主題。展開部の序奏の動機は対旋律のチューバが強調されていて、今まで聞いたことの無い音が聞けました。明るい行進曲調になる前の部分は、ねっとりと粘着質の濃厚な表現でした。再現部でも主題に絡む対旋律がかなり強めで、混沌としていて荒々しい雰囲気です。

三楽章、モコモコとこもったホルン。これまでの喧騒から解放されるような第二主題。ウッドブロックのようなホルツクラッパー。集中力が高く、エネルギー感も強い演奏はなかなか魅力的です。

四楽章、間を取って歌います。ゆったりとしたテンポで切々と歌います。内へ内へと感情を込めるような演奏で、外へは発散しません。響きは温度感が低く、どこか冷たい感じです。中間部でも響きは厚くはなりませんが冷たく美しい響きです。

五楽章、第一主題に入る前に少し間をあけました。遅めのテンポでがっちりと地に足を付けて進みます。途中でテンポを落とすところもあります。テンポは動きますが、濃厚な表現ではなく、鉄のような強い意志が働いているような強固な重たい演奏です。再現部の前のクライマックスはかなり余力を残して抑制された演奏でした。再現部はゆっくりとしています。コーダの前のクライマックスはトランペットがかなり強く吹きますが、感情を叩きつけるような演奏ではなく、冷徹な感じの演奏でした。コーダはかなりゆっくりから僅かにテンポを速めました。

重く強い演奏で、地面にしっかりと爪痕を残しながら前に進むような力のある演奏でした。終始冷たい響きの演奏には好き嫌いが分かれるでしょう。
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ヴァーツラフ・ノイマン/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

ノイマン★★★★
一楽章、奥まったところからちょっと詰まった感じのトランペットが次第に鮮明に聞こえてきます。ホルンは軽く鳴り響きます。速めのテンポでリズミックな主要主題。二度目のファンファーレは鋭い響きでした。主要主題はやはり速めでさっさと進みます。第一トリオは伸びやかなトランペットに引っ張られるように他のパートも激しい演奏です。基本的には速めのテンポでサクサク進む音楽です。

二楽章、ゆっくり目で端正な序奏。第二主題では僅かにテンポが動いて歌っています。展開部の序奏も大暴れすることは無く、制御された演奏です。暗闇に沈み込むような第二主題。再現部は速めで強奏部でもあっさりと進みます。金管のコラールの後はテンポをグッと落としています。

三楽章、控えめな第一主題。控えめですが、美しい歌の第二主題。ウッドブロックのようなホルツクラッパー。この演奏は決して爆発はしませんが、その分弱音の美しさや静寂感がとても良い演奏で、肌を撫でるような弦の弱音の美しさはすばらしいです。コーダもゆっくりとしたテンポで落ち着いた演奏でした。

四楽章、控えめながら切々と歌います。感情が込み上げてくるように、少しずつ少しずつ音楽が湧き上がります。再び主部が戻ると安堵感のある安らぎに満ちた音楽が演奏されます。

五楽章、歌う第一主題。テンポも動いて良く歌います。金管の短い音がかなり短く、完全に息を吹き込んでいないような感じがするのが若干不満です。クライマックスではかなりトランペットが強く吹きましたが、それでも全開とまでは行かなく。抑制されたものでした。

抑制の効いた演奏は歌もあり美しかったのですが、音楽の振幅があまり大きく無かったのが、少し残念です。
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オスモ・ヴァンスカ/香港フィルハーモニー管弦楽団

ヴァンスカ★★★★
一楽章、倍音を含んで美しく鳴るトランペット。淡々と演奏される主要主題。第一トリオでもトランペットは伸びやかです。ひっかかるところが無く流れの良い演奏です。第二トリオは抑揚が付けられて歌っています。トゥッティのパワー感は今ひとつです。

二楽章、一音一音大切に刻むような序奏。第一主題の周りにちりばめられた楽器の存在感が大きいです。ほとんど歌わず淡々と進む第二主題。展開部では強奏されますが、美しい響きです。静かな第二主題。ゆっくりと静かに進みます。美しく有機的な演奏なのですが、頂点でのエネルギー感があまり感じられないのが、難点です。

三楽章、香港poはなかなか上手いオケです。濃厚な色彩感はありませんが、サラッとした爽やかな肌触りの響きはとても心地良いものです。ヴァンスカの指揮は余計な感情移入などは避けて、作品のありのままの美しさを表現しようとしているようです。展開部はゆったりとしています。ホルツクラッパーの部分でもテンポはあまり早くなりませんでした。やはりコーダでも爆発的なパワーは感じませんでした。

四楽章、大きく歌うことはありませんが、過不足なく美しい演奏です。呼吸を感じる中間部。

五楽章、かなり強めに入ったホルン。たっぷりと歌う序奏。オケの限界なのか、金管が絶叫するほどの激しい強奏は無く、振幅の狭い音楽になっています。とても美しい演奏なだけにとても残念です。コーダの前のクライマックスでは少しパワーを感じることができました。

とても美しい演奏で、余計な感情移入も排除して、作品の美しさを伝えようとした演奏だったと思います。全体を通して美しい演奏で、ヴァンスカの目的は達せられたと思いますが、トゥッティでのパワー感の無さはとても残念なところで、音楽の振幅が狭い演奏になってしまったのは本当に惜しいところです。
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