マーラー 交響曲第6番「悲劇的」2

たいこ叩きのマーラー 交響曲第6番「悲劇的」名盤試聴記

キリル・コンドラシン/南西ドイツ放送交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、少し離れた距離で、涼やかな響きの演奏です。第二主題は少しねばりましたが、全体にあっさりとした表現です。ロシアの指揮者と言うと、爆演をイメージしがちですが、極めて冷静で精緻な演奏です。ライヴとは思えない完成度です。表題よりも、純音楽的なアプローチの演奏のようです。

二楽章、すごく速いテンポの演奏です。中間部は一旦テンポを落としますが、楽譜に書かれていることに忠実なようで、必要以上にアゴーギクを効かせたりはしません。颯爽としていてスタイリッシュでクールな演奏でなかなか魅力的で、個人的にはこういう演奏も好きです。

三楽章、この楽章も速めのテンポで進みますが、各楽器が織り成す繊細な絵模様がとても美しく、切なさも感じさせる演奏です。突出してくる楽器もなく、見事なバランスで制御の行き届いたすばらしい演奏です。速いテンポのおかげで、女々しくなることがなく、とても潔い演奏に感じます。

四楽章、ギーレンの演奏でも温度感の低い、しかも非常に透明感の高い演奏をしていたオケでしたが、この演奏でも同様に決して熱くはならずに精緻な演奏をしています。速めのテンポで爽快に飛ばしていく演奏には胸がすきます。作品の表題性にはあまり捉われず、純音楽的なアプローチで、こちら側も深みに沈みこむことはありません。もの凄い高速テンポで畳み掛ける後半部分。

速いテンポで爽快にスッキリとこの作品を聴かせてくれました。

マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★★☆
一楽章、ガツガツと深く刻まれる低弦。オケが近く、明確に提示される第一主題。音楽の変化の激しさが強調されたようなめまぐるしい変化です。木管の経過句はよく歌いました。展開部に入っても、荒れ狂い叩きつけるような激しさです。静寂な部分でも常に動きのある演奏で、とても活発です。力感にも溢れとても力強い音楽になっています。人生の激しい葛藤を描いているような演奏でした。

二楽章、この楽章も速めのテンポでせきたてるような凄く激しい開始です。良く歌い積極的な表現の演奏です。基本的には速いテンポですが、テンポを落とすところではグッと落として緩急を付けています。

三楽章、柔らかく豊かに歌われる主要主題。時に木管が音を短く切ることがあるので、流れが止まるような感じがします。クライマックスではテンポを速めて、かなり激しい演奏でした。この演奏は感情の叫びを強く表現しているようです。悲劇的と言うよりも怒りさえも感じる演奏です。

四楽章、ティンパニとともに出るホルンが激しい。チューバのコラールのところで入るハープや弦の弾く音も強いです。金属的で明るい音のカウベル。第一主題のアレグロ・エネルジコは速いです。コツンと言うような硬質なハンマー。緩急の差がすごくあって、鮮明に描き分けられています。再現部に入っても激しい金管。最後のティンパニも速いテンポでした。この楽章は健康的に感じました。

とても良くオケをドライブした演奏で激しい部分は凄味がありましたが、四楽章が健康的で悲劇的とはかなり雰囲気が違っていたのが残念でした。
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レイフ・セーゲルスタム/デンマーク国立放送交響楽団

セーゲルスタム★★★★☆
一楽章、豊かな響きを伴った低弦の刻み。スネアも良く響いてクレッシェンドします。トロンボーンも良い音で鳴っています。ミュートをしたトランペットが強く響きます。クラッシュ・シンバルも強烈です。モットーが終って、木管だけになるとすばらしい静寂感の中で歌います。第二主題はテンポを動かして歌いました。展開部からはダイナミックレンジの広い音楽が続きます。カウベルが響き、ホルンが提示部のコラール風の旋律を奏する部分では思い切ってテンポを落として感情を込めた演奏になります。その後もかなり遅いテンポで推移します。劇的な再現部。確かめるようにゆっくりと演奏されます。テンポは遅いのですが、粘着質ではなく、サラッとしています。コーダは一転して速いテンポで追いたてます。劇的で感情の起伏の大きな演奏でした。

二楽章、一楽章に比べると軽い演奏。トランペットがクレッシェンドしました。中間部でテンポを落とし繊細な表現です。再現される中間部もとてもゆっくりしています。物悲しい哀愁に満ち溢れた演奏でした。

三楽章、美しく感情がジワジワと染み出すような慈愛に満ちた主要主題。悲しげでうつろな副主題。中間部ではホルンが積極的に歌います。弱音部分は非常に美しいです。再び副主題が現れる時にはテンポはさらに遅くなりたっぷりとした表現です。クライマックスでは絶叫することはなく、抑えた表現でした。

四楽章、はっきりと演奏される主題。盛大にモットー。思いの外浅い響きのチューバのコラール。ティンパニはバリバリと言っています。アレグロ・エネルジコへの移行はあまり大きなテンポの変化は無く、いつの間にかと言った感じでした。各楽器のつながりが有機的で、音楽が生き物のように動きを伴って提示されます。ドンと言う音のハンマー。トゥッティでは激しく金管が吹きますが、色彩感は淡白でサラッとした響きです。最後のティンパニは速めであっさりと終わりました。

全体に遅いテンポでしたが、引きずるような重さは無く、サラッとした響きと、感情のこもった表現の演奏でした。
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へルムート・ヘンヒェン/ネーデルラント・ フィルハーモニー管弦楽団

ヘンヒェン★★★★☆
一楽章、ソフトな低弦の刻み。第一主題も柔らかい響きです。サラッとした滑らかな肌触りです。モットーのティンパニも柔らかい打撃です。ホルンも咆哮することは無く、トランペット以外はとても柔らかいです。奥行き感のあるトロンボーン。柔らかいモノトーンのような色彩の中にトランペットだけが、ピーンと響いてきます。遅めのテンポで柔らかく丁寧で奥ゆかしく歌う音楽には、表題とは違う落ち着きがあります。

二楽章、三拍とも同じ強さで叩くティンパニ。すごく速いテンポの冒頭でした。トリオでは普通のテンポに落ちました。柔らかく、遠くから響いてくるようなロマンティックな雰囲気があります。ティンパニは常に三拍とも同じ強さです。浅い眠りを引き裂くようなトランペット。テンポを落とすところでは思い切って落として豊かに歌います。一楽章同様、トランペット以外はとても柔らかい響きで、悲劇的な悲しみに打ちひしがれるような痛切な響きではありません。

三楽章、すごく静かに演奏される主要主題。静寂の中に浮かび上がる木管。静けさを維持したまま音楽は進みます。中間部へ来て、少し音量も上がり動きもあるようになりました。クライマックスではかなり音量が大きくなって、弱音からの振幅はすごく大きいですが、悲しみがあふれ出すような雰囲気ではなく、とても落ち着いて、冷静な演奏でした。最後は波が押したり引いたりしながら終わりました。

四楽章、やはり柔らかくフワーッと盛り上がる響き。奥から響く鐘。柔らかい響きの第一主題ですが、トランペットだけが浮くように別物として響きます。オケ響きの中になじんだホルンの跳躍。激しい部分でも荒れることは無くとても丁寧な演奏です。一度目のハンマーはバツンとかなりの衝撃でした、ハンマーからオケが目を覚ましたように豪快に鳴りましたがしばらくするとまた落ち着いた柔らかい響きになります。二度目のハンマーの打撃もすごい音量です。再現部に入るとまた小さい音量の序奏の主題です。また、何も無かったかのように穏やかに音楽が進みますが次第に演奏は高揚してきます。最後は速いテンポでティンパニが演奏して終わりました。

静寂感と柔らかい響きで演奏されて、四楽章のハンマーの打撃でそこまでためたエネルギーを開放するような音の洪水にはエクスタシーさえ感じるような効果的な演奏でしたが、「悲劇的」の表題とは遠い穏やかな演奏でした。
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マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ヤンソンス★★★★☆
一楽章、豊かな残響の中に響く低弦のガツガツとした響き。弦楽器に比べると控えめな金管。モットーの後はゆっくりとしたテンポでたっぷりと歌います。第二主題でテンポを速めます。提示部の反復がありました。さすがコンセルトヘボウと思わせる見事なアンサンブルです。展開部の後半にはとても豊かな歌がありました。再現部は激しさを増しています。コーダでも必要以上にオケの音量を要求していません。

二楽章、アンダンテ・モデラートが二楽章です。ゆったりと丁寧に始まりました。すごく心のこもった歌です。間を取ったり、波が押し寄せて引いて行くように、音楽が押したり引いたりしてとても自然な揺れです。一つ一つの楽器がくっきりと立っています。中間部はホルンが奥まっているので、鮮明な色彩感ではありませんでした。クライマックスではテンポを煽りながら哀しみが溢れ出す様を描き出しました。艶やかなフルートが美しく残りました。

三楽章、豪快に鳴るティンパニと低弦。艶やかで柔らかいヴァイオリンの主要主題。トランペットが突き抜けて来ます。音の鮮度が高く生き生きとしています。中間部で、小さく定位するオーボエ。響きに透明感があって、とても美しい演奏です。アーティキュレーションの表現もしっかりしていて、明快です。

四楽章、華やかな主題。奥行き感のあるコラール。第一主題は快速です。深みがあり透明感の高い非常に美しい演奏です。ハンマーの前後も流れの良い美しい演奏で、色彩感も豊かです。二度目のハンマーの後は指示通り「ペザンテ」になりました。再現部の序奏の主題も華やかで美しい響きです。表題を意識した演奏ではありませんが、個々に描き分けられる楽器が非常に美しいく深みがあります。

深く感情的にのめり込むような演奏ではありませんでしたが、深みのある色彩感豊かな音色で、オケを限界近くまで鳴らさずに非常に美しい演奏でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1977年ザルツブルクライヴ

カラヤン★★★★☆
一楽章、推進力のある第一主題。凄い緊張感が伝わってきます。第二主題もせきたてるように進みます。提示部の繰り返しはありません。伸び伸びと美しく響く金管。きちんと描き分けられた色彩感豊かな演奏です。スタジオ録音には無い激しさです。

二楽章、登場する楽器がキリッと立っていて、濃厚な色彩感です。オケはさすがに上手く、とても安定感があります。大きく歌ったり深く感情移入するような演奏ではありませんが、非常に整った美しい演奏です。

三楽章、静かで穏やかな主要主題。深い表現やアゴーギクなどはありませんが、整然とした美しい演奏に不満はありません。大きな起伏も無く進みますが、作品からにじみ出るような哀しみが伝わってきます。クライマックスもそんなに大きな盛り上がりはありませんでした。

四楽章、豪華な響きです。内面に深く踏み込むことはありませんが、ライヴならではの金管の乱舞が良いです。アレグロ・エネルジコへ向けての加速はあまり強烈ではありません。造形的な美しさを保っています。一回目のハンマーは期待したほど大きな盛り上がりではありませんでした。金管はかなり強く吹きますが、それでもしっかりと制御されています。二度目のハンマーり後、トランペットがかなり強く演奏しますが、それでも美しいです。次第に熱気を帯びてきて、咆哮寸前の強奏ですが、それでも美しい響きです。ライヴでこの複雑な曲をここまで美しく演奏できるとは驚きです。

ライヴでありながら完成度の高い、美しい演奏でした。切れ味鋭いスッキリとした演奏で、内面へは踏み込まず、ひたすら美しさを追求した演奏だったようです。
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