マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」2

たいこ叩きのマーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」名盤試聴記

クリストフ・エッシェンバッハ/パリ管弦楽団

エッシェンバッハ★★★★☆
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」ゴツンと重い響きのパイプオルガン。合唱の響きに比べると控え目に感じる金管。速めのテンポできびきびと進みます。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」深い感情移入は無い独唱。広がりのある合唱の弱音。奥まっている金管。鐘が入る部分の弦の揺れはなかなか良かったです。
「われらが肉体の脆き弱さに」カデンツァのように少し遊びのあるヴァイオリン独奏。盛り上がった後の、細かい動きはかなり音量を落として緊張感のあるものでした。ほとんど歌わないフルート。柔らかい声質のバス。遠くで響く金管。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」テンポを速めて、歓喜の表現です。次第に感情が高ぶってきたのか壮大なスケールです。渾然一体となった物凄い音響。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」圧倒的な合唱のエネルギー感。くっきりと浮かび上がる独唱。
「父なる主に栄光あれ」やはり合唱のパワーに比べると、オケは少し押されているような感じがしますが競い合うように歌い上げる圧倒的な熱演です。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り」鋭いアクセントで入った弦のトレモロ。緊張感のある冷たい空気感。寂しげな雰囲気を上手く表しています。和音の響きも深く充実した響きです。深みのある余韻を伴って響く合唱。
「永遠の愉悦の炎」芯のしっかりした声質のバリトン。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」軽く演奏するトランペット。情感豊かな独唱。オケの動きも克明に表現しています。
「霊の世界の気高い人間がひとり」ゆったりとして、奥行き感を感じる合唱。オケだけになる部分でテンポを速めました。テンポはよく動いていますが、オケも合唱もよく付いて行っています。
「地上の残り滓を運ぶのは」ここでもカデンツァのように比較的自由に弾くヴァイオリン独奏。穏やかな女声合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」感情が込められて硬質で実在感のあるテノール独唱。訴えかけてくるようなヴァイオリン。落ち着いた足取りの指揮です。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」若々しいソプラノ独唱。独唱の強弱にあわせるオケ。ゆっくりとしたテンポで進みます。控え目な金管。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」僅かに遅いテンポでマンドリンに入りました。現世的な児童合唱。
「悔い改むる優しき方がたよ」ゆったりとしたテンポで、たっぷりと歌うテノール独唱。バックのオケや合唱も克明です。起伏の大きな合唱。
「移ろい行くものは なべて」非常に厳かな雰囲気の合唱。控え目なソプラノ独唱。クレッシェンドして一旦止めて、女性合唱だけ残して、再び演奏を始めました。最後はゆっくりと、バンダも含めて壮大なクライマックスでした。

ライヴでありながら、静寂感と壮大なクライマックスのスケール感は見事でした。
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レナードバーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」柔らかいパイプオルガン。遠い合唱。輝かしい金管ですが、あまり響きに厚みが感じられません。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」あまり大きな感情移入をしていないような独唱。弱音の合唱は美しい。次第にテンポを速めます。奥まったところで響く感じの金管。鐘は強調されています。
「われらが肉体の脆き弱さに」合唱もヴァイオリン独奏も控え目で抑えた表現です。一旦盛り上がって、急激に静かになった後は、躍動感のある、めまぐるしい動きです。感情のこもったフルート。また、落ち着いたどっしりとした響きになります。やはり奥まった金管。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」歓喜に溢れた表現です。追い立てるようにテンポを上げたり、テンポの変化が頻繁で、劇的な感情表現です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」あまり絶叫しない合唱。輝かしい金管。ホルンの咆哮もすさまじい。途中でテンポを落としてこってりとした表現もありました。
「父なる主に栄光あれ」テンポを速めて切迫した表現もありました。オケと合唱が渾然一体となった演奏はなかなか充実しています。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」フワッとした弦のトレモロの入りでした。深みのある音楽。テンポが動いて強い感情移入です。強い意志と振幅の大きな表現。すごく抑えた集中力の高い合唱。ピーンと張った緊張感がすばらしい。
「永遠の愉悦の炎」感情を込めて朗々と歌うバリトン。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」声質が統一感のあるバスが引き継ぎます。バスの後ろで動くオケの緊張感も維持しています。
「霊の世界の気高い人間がひとり」一つ一つの音に力があって、集中力の高さが感じられます。輝かしくビンビン響く金管。
「地上の残り滓を運ぶのは」憂鬱な雰囲気のヴァイオリン独奏。次第に盛り上がる女声合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」透明感が高く優しいテノール独唱。後ろで支えるオケも繊細な表現です。優しく染み入るような繊細な弦の合奏。ゆっくりと波が押し寄せるように次から次から歌う合唱。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」張りのあるソプラノ独唱。僅かに沈むアルト独唱。ピンと立ち上がる輝かしい金管。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」ゆっくりとしたテンポでマンドリンが演奏します。楽しげなソプラノ独唱。微妙なテンポの変化で感情移入を伝えようとするバーンスタイン。すごく感情のこもったソプラノの絶叫。
「悔い改むる優しき方がたよ」力の感じられるテノール独唱。合唱もオケも力がこもって熱気に溢れてきます。
「移ろい行くものは なべて」荘厳な合唱。最後の合唱の部分で大きくテンポを落としてたっぷりとした表現です。轟き渡るトランペット。

演奏が進むにつれて熱気が溢れてきました。ただ、響きに厚みがなく壮大なスケール感が無かったのが残念です。
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リッカルド・シャイー/ライブツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

icon★★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」重いパイプオルガン。ゆったりとしたテンポで壮大なスケール感です。マイルドな響きで、落ち着きがあります。金管の響きもとてもマイルドです。途中でテンポが動きました。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」淡々と歌われる独唱、合唱の弱音は非常に抑えられたものでした。オケも細心の注意を払って演奏する弱音部。金管も全体の響きに溶け込んでいるような感じです。
「われらが肉体の脆き弱さに」控え目でクローズアップされないヴァイオリン独奏。盛り上がりも急激ではなく、なだらかです。その後の細かな動きもどっしりとしています。大きく歌うフルート。大河の流れのようにゆったりと音楽が流れて行きます。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」ここでもゆったりとしたテンポでブレンドされたマイルドな響きです。巨大な物がゆっくり動くような重量感です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」柔らかい響きのトゥッティ。ゆったりと確実な歩みです。
「父なる主に栄光あれ」良くブレンドされて突出するパートはありません。とてもマイルドで豊かな響きです。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」シンバルが先に鳴ってから弦のトレモロが始まりました。穏やかな雰囲気です。安らぎさえも感じるような穏やかさです。音量が一段上がって、悲壮感を感じるような響きです。弱音の合唱もあまり緊張感はありませんがくつろげる響きです。
「永遠の愉悦の炎」オフマイクぎみで柔らかいバリトン。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」軽い金管。必要以上の感情移入はしていない、バスの独唱。後ろで動くオケはあまり克明に捉えられていません。
「霊の世界の気高い人間がひとり」間接音を含んで、この世のものとは思えないような柔らかい響きの合唱。金管も非常に柔らかい。
「地上の残り滓を運ぶのは」細身のヴァイオリン独奏。アルト独唱も豊かな響きにブレンドされて柔らかい。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」テノール独唱の後ろで、柔らかく控え目で神経の行き届いたオケ。オケの強奏も柔らかい。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」オケに溶け込むようなソプラノ独唱。フワーッと広がりのある金管の強奏。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」ソフトな響き。サラッとした児童合唱が美しい。ソプラノ独唱のクライマックスでテンポを落としました。聖母が遠くから響いてきます。
「悔い改むる優しき方がたよ」太く柔らかテノール独唱はあまり感情移入していないように感じます。ソフトな金管。
「移ろい行くものは なべて」静かに荘厳に歌い始める合唱。バンダも含めてマイルドな金管。圧倒的なエネルギー感はありませんでした。

ソフトな響きで圧倒的なエネルギー感はありませんでした。ライヴ収録では難しいのか。

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マルクス・シュテンツ/ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

icon★★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」分厚い響きのパイプオルガン。深みのある響きの合唱。速いテンポでグイグイと引っ張って行きます。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」クローズアップされ、感情の込められた独唱。広がりのある合唱の弱音。独唱の絡みがとても有機的です。独唱に比べると金管は奥まっています。鐘は拍を間違えているようです。
「われらが肉体の脆き弱さに」くっきりと浮かび上がるヴァイオリン独奏。合唱にも厚みがあります。突然動き出す音楽。バスの独唱が入る前の揺れは良かったです。飛びぬけては来ない金管。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」速いテンポで進みます。金管はあまり強調されません。独唱陣だけになる部分で一旦テンポを落としました。次の「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」へ向けて、すごくテンポを落としてねばっこくたっぷりとした表現です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」凄く速いテンポであっさりとした冒頭です。合唱の弱音は余韻が残るようで美しかったです。次々と浮き上がる独唱。
「父なる主に栄光あれ」速めのテンポで祝祭的な雰囲気満点です。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」大きめに入ってデクレッシェンドした弦のトレモロ。割と大きめの音量で緊張感の無い演奏です。ピッィカートが終ってアルコの部分から少しテンポが一旦速くなりましたがすぐにテンポは落ち着きました。美しい合唱。
「永遠の愉悦の炎」伸びやかで明瞭なバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」軽く音を短めに演奏したトランペット。バリトンに比べると若干硬いバス。独唱と対等のバランスで演奏するオケ。
「霊の世界の気高い人間がひとり」速めのテンポです。どのパートも明瞭に響かせています。合唱の表現もはっきりくっきりしています。
「地上の残り滓を運ぶのは」あまり強弱の変化が無かった女声合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」芯のしっかりしたかなり大きな存在感のテノール独唱。後ろのオケもかなりしっかりと音を出します。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」豊かな表現のソプラノ独唱。あまり大きな起伏は作りませんでした。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」すごく感情をこめたソプラノ独唱。爽やかな児童合唱。ソプラノの高音にあまり伸びが無かったように感じました。
「悔い改むる優しき方がたよ」テノール独唱と合唱のコントラストがすばらしい。感情は抑えぎみでした。マンドリンのトレモロも聞こえます。軽いトランペット。力強いトロンボーン。
「移ろい行くものは なべて」ハーモニーが美しい合唱。天から響くようなクライマックスの合唱。柔らかいトゥッティの響きで終わりました。

速めのテンポできびきび進む音楽で、祝典的な盛り上がり満点の演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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