マーラー 交響曲第9番4

たいこ叩きのマーラー 交響曲第9番名盤試聴記

ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団 1969年

セル★★☆
一楽章、非常にあっさりと演奏される第一主題。ほとんど抑揚もなくさらりと流れる第二主題。ためなともなくひっかかるところが無くすんなりと音楽がすすんで行きます。セル好みの締まったホルンの響き。テンポも速めで感情移入などは全く無いように感じます。縦の線がきっちりしていて、とてもシンプルに聞こえます。力で押すようなこともありません。オケは余裕を持って演奏しています。情に流されるような演奏ではなく、理詰めで音楽が構築されていて、こちらも感情が動くことはありません。

二楽章、ホルンのトリルが強調される以外は、特に目立った表現は無く、流れて行きます。Bに入ってもテンポは僅かに速くなりました。トロンボーンも大きく叫ぶことはありません。最後のBはとても速いテンポでした。最後のAはゆっくりですが、やはり感情を込めるような演奏ではありません。

三楽章、

四楽章、全く抑揚なく演奏される序奏。同様に全く思い入れが無いかのように演奏される主要主題。第一のエピソードも速めのテンポで淡々と進みます。タメやねばったり、うなったりすることは無く、この曲をとてもシンプルにストレートに伝えているようです。第二のエピソードも感情移入されていないので、こちらの感情が動くこともありません。消え入るような弱音で演奏されるコーダ。すごい透明感で美しいです。

非常に透明感が高く美しいコーダにはグッと来ました。しかし、そこまでの音楽の運びがあまりにもシンプルで、私には肩すかしのような感じが残ってしまいました。
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ケント・ナガノ/ハレ管弦楽団 1996年5月 東京

ナガノ★★
一楽章、非常に録音レベルが低く最初はかなり聞き取りにくい状態でした。あまり思い入れの無いような第一主題。作品に込められたメッセージは全く関係ないかのように淡々と進められます。第二主題から高まったトゥッティも巨大な響きではありませんでした。展開部の前はかなりテンポを煽ったのは迫力がありました。音色は暖色系で、あまり密度の高い響きではありません。少し緩い雰囲気さえありますので、陰鬱な部分の落ち込みがあまり無く、浅い感じが常にあります。トロンボーンのシンコペーションもトロンボーンよりもチューバの響きが強く、強烈な印象はありません。コーダの前のフルートも静寂感や緊張感は伝わって来ません。

二楽章、暖かいホルン。温度感があり厳しさは感じません。Bは速めのテンポであっさりと演奏されます。Cは暖色系の音色が幸いして、穏やかで温かい演奏です。最後のBはかなり速いです。

三楽章、この楽章は遅めのテンポで非常に落ち着いた演奏です。感情移入などは全く無く、ずっと淡々と進んでいます。オケも咆哮することも無く、とても制御されています。最後のテンポの追い込みもあんまり激しくありませんでした。

四楽章、ほとんど歌わない主要主題。ファゴットのモノローグはとても弱く消え入るようでした。あまりにも素っ気ないこの演奏が私には、ただ演奏しているだけにしか聞こえません。感情的に沈んだり、高まったりすることが無いのです。第二のエピソードもテンポが速く、淋しさも感じられません。

ナガノはこの演奏で何を表現したかったのか、私には分かりませんでした。
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ミヒャエル・ギーレン/北ドイツ放送交響楽団 2010年ライヴ

ギーレン★★
一楽章、ミュートしたホルンが少し長めに尾を引く冒頭。穏やかな第一主題。流れるような第二主題。頂点でも絶叫することは無く、良くコントロールされています。暗闇の中に落とされたような展開部。ずっと暗闇が広がっているような感じです。ハープの動きが強調されています。トロンボーンのシンコペーションはとても長く吹き伸ばされた印象で、ゆっくりしたテンポになっています。色彩感は豊かです。柔らかく美しいコーダ。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで暖かいファゴットと弦。冷たく突き抜けるクラリネットが対照的。舞踊風な音楽と言うよりも、しっかりと足を踏みしめるような確実さがあります。Bは流れを損なわない程度に速くなりました。トロンボーンにメロディーが出る頃にはかなり速くなっています。Cはあまり穏やかさを感じません。二度目のCはすごくゆっくりとした演奏です。最後のAもすごくゆっくりですすが、終わりに向けて脱力いるようにさらにテンポを落とします。

三楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポで始まりました。Bもゆっくりなので、おどけたような雰囲気はありません。二度目のAは引きずるような感じがします。二度目のBは幾分明るい表現になりました。細いトランペット。どうも音楽がチグハグしているような感じがして、しっくり来ません。ハープが出る部分も非常に遅いです。最後もテンポは僅かに上げますが、とても落ち着いています。

四楽章、感情を込めずに無機的に演奏される主要主題。浅い響きのホルン。感情が込められることはほとんど無く、無表情に音楽は進みます。ただ、弦の厚みのある柔らかい響きは魅力的です。第二のエピソードも寂しさはほとんど感じません。なかなか壮大なクライマックス。冷たい冬の別れです。

ほとんど感情移入を断ち切ったマーラーの9番の演奏は、解釈の一つとして認めますが、やはり聞いていて共感できませんでした。
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ディミトリ・ミトロプーロス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1960年

ミトロプーロス★★
一楽章、チリチリと言うスクラッチノイズの中から音楽が聞こえます。倍音成分がほとんど無く、硬い響きです。浮遊感のある第一主題。かなりキツイ響きのトゥッティ。頂点ではかなり激しく動きも大きい演奏です。かなり情熱的な演奏のように感じます。再現部に入っても金管がかなり激しく演奏しています。色んな楽器が活発に動いています。一転して穏やかになるコーダ。

二楽章、この当時の演奏としては、非常に整っていると思います。なかなかスタイリッシュです。もっと良い録音で聞きたかったですね。最後のAはゆっくりとしたテンポになりますが、楽器の動きは克明で抉り出すような表現です。

三楽章、トランペットとホルンの間に演奏される弦が壮絶な響きでした。遅めのテンポで進むが、途中で一旦テンポを落としたりします。危なっかしいトランペットのソロ。最後までほとんどテンポを上げませんでした。

四楽章、ゆっくりと演奏される主要主題ですが、あまり感情移入はしていないようです。第一のエピソードの二回のヴァイオリン独奏の間の弦楽合奏も動きがあって素晴らしかった。第二のエピソードは速いテンポで始まりました。ここでも感情移入はほとんど無いように感じます。クライマックスのエネルギー感はすごいです。

とても客観的な演奏だったように感じましたが、頂点では遠慮なくドカーンと来るところの対比が面白い演奏でした。ただ、やはり録音の古さがいかんともしがたい。
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アンドレ・プレヴィン/ケルン放送交響楽団 2001年

プレヴィン★★
一楽章、力が抜けて穏やかで美しい第一主題。第一主題の途中でひっくり返るホルン。テンポが動いたり、オケが咆哮することも、大きく歌ったりすることは無く、作品を客観的に見ているような演奏です。ティンパニは硬質で非常に軽い響きです。トロンボーンのシンコペーションの前もシルキーで滑らかです。トロンボーンのシンコペーションは何かを発散するようなパワーがありました。葬送行進曲のトランペットのファンファーレも整然としていて、美しい演奏です。

二楽章、Bへの変化も大きなテンポの変化は無く、滑らかに音楽が進んでいます。トロンボーンも抑えた演奏で、マーラーが「きわめて粗野に」と指定したのとはかなり離れた演奏のようです。Cの中にAが現れる前はテンポを落としてAを導きました。

三楽章、深く刻み込まれるような演奏ではなく、とても軽い演奏で、その分流れがスムーズで美しいものとなっています。Bも大げさな表現は無く、軽い演奏です。Aが戻っても決して重くはなりません。再びBが再現した部分では、Ebクラリネットが楽しそうです。Cは滑らかなトランペット。最後は僅かにテンポを速めた程度でした。音楽的な興奮よりも、造形的な美しさを優先していねのでしょうか。

四楽章、ほとんど抑揚の無い主要主題。第一のエピソードのヴァイオリン独奏も何かを表現しようとはしていないようで、淡々と音符を音にしている感じです。こんな演奏なので、聞いていても心が動かされるようなことは無く、作品と共感しようとしても拒絶されるようで、できません。丁寧には演奏されているのですが、内面に訴えて来るものが無いです。クライマックスでも美しくすがすがしいトランペット。コーダも浮遊感のある美しい演奏でしたが、別れの悲しさなど内面に届くことはありませんでした。

プレヴィンはつくづくマーラー指揮者じゃないという事を感じさせられました。
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ヤンスク・カヒッゼ/トビリシ交響楽団

カヒッゼ
一楽章、かなりはっきりとしたチェロとホルン。ゆっくりとした第一主題ですが、どこか安っぽい音がしています。トランペットの高音が突き抜けて来るかと思えば、所々で金管が弱い部分もあり、一般的なこの曲の印象と違います。こんな曲だったっけ?と思うような部分がいくつもあり、不思議な感覚です。演奏するだけで精一杯と言う感じで、表現がどうとか、楽譜に書かれていることを正確に音にするとか言う次元ではありません。トロンボーンのシンコペーションも厚みの無い響きでした。ホルンにビブラートを掛けるのも旧ソビエトの名残でしょうか。コーダも潤いの無い音で味わいもありませんでした。

二楽章、透明感の無いクラレネット。潤いが無くささくれ立ったような弦。Bへの切り替わり時にオケのメンバーが迷ったような怪しい変化でした。トロ ンボーンの旋律がほとんど聞こえません。トランペットのミュートを付けた細かいパッセージも怪しい。管楽器は吹きやすいように吹いているような感じがしま す。音程も怪しいところが随所にあります。

三楽章、トランペットに比べると弱いホルン。かなり頼りない演奏で、聞いていてハラハラします。この曲はこのオケには技術的にかなり無理があるようです。バランスもおかしいところがたくさんあります。

四楽章、テンポを動かして感情移入しようとするカヒッゼですが、音楽は浅く深まることはありません。粗暴な金管が容赦なく吹かれます。トランペットだけが大きく突き抜けるクライマックス。特に何の感慨も無く終わりました。

演奏するので精一杯と言う感じのコンサートで、何かを表現したとか訴えたとかと言う次元ではありませんでした。
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