シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレート」

シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレート」ベスト盤アンケート

たいこ叩きのシューベルト 交響曲第9番「ザ・グレート」名盤試聴記

マルク・ミンコフスキー/グルノーブル・ルーヴル宮音楽隊

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一楽章、とても豊かな残響の中に響くホルンの序奏。続く木管もとても豊かな響きです。ゆっくりとしたテンポでたっぷりと歌います。深い響きのトゥッティ。第一主題へ向けてアッチェレランドしました。爽やかな響きで弾む第一主題。ふくよかで柔らかい響きで歌う第二主題。テヌートぎみに演奏される第三主題。古楽器による演奏ですが、響きの鋭さはあまりありません。むしろマイルドで柔らかい響きです。とても反応の良いオケです。

二楽章、とても表情豊かなオーボエ。歯切れの良い弦。速めのテンポでサクサクと進みます。Bはゆったりと厚みのある響きでとても感情のこもった表現です。古楽の指揮者の演奏でよくある、速いテンポや極端なアクセントなどは無く、とても自然でバランスの良い美しい演奏です。流れていく音楽に安心して浸ることができます。

三楽章、厚みがあり豪快な弦に続く木管がくっきりとチャーミングな表情で浮き上がります。とても活発で豊かな表現です。トリオもたっぷりと感情を込めて湧き上がるように歌います。うっとりするような美しい歌です。強弱に敏感に反応して引き締まった表現の部分もあります。

四楽章、勢いとスピード感のある第一主題。とても積極的で激しささえも感じさせる演奏です。第二主題は一転して柔らかい音色ですが、やはり表現は積極的でダイナミックです。ベートーヴェンの「歓喜の主題」の引用部分も生き生きとした豊かな表現でとても良いです。続くトロンボーンも厚みのある響きの中にブレンドされるようにしかし、力強く響きます。ずっと続くスピード感は素晴らしいです。作品の豊かさを存分に感じさせてくれる演奏です。厚みのある豊かな響きのコーダでした。

とても豊かな表現で、くっきりと浮かび上がる木管やトゥッティの柔らかい響きなど、魅力満載の演奏でした。スピード感やダイナミックな表現もとても魅力的でした。音楽を聴く喜びを感じさせてくれる素晴らしい演奏でした。
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カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、ポンポンと少し弾むようなホルンの序奏。続くオーボエはしっとりとしています。第二主題の前はかなりテンポを上げましたが第二主題では元のテンポです。音楽がダイナミックでトロンボーンなどは遠慮なく吹かれます。カラヤンが指揮するベルリンpoのような豪華絢爛な響きではなく、質実剛健でガッチリとしていて力強い響きです。深みのある弦の響き。彫りの深い克明な音楽。

二楽章、Aはリズミカルな表現で、絶頂期のベームのはち切れんばかりのピーンと張った音楽がすばらしい。Bも速めのテンポで一気に聞かせます。この楽章でもトロンボーンは遠慮なく強奏されます。

三楽章、豪快な弦とそれに続くチャーミングな木管との対比もとても良い。弱音部では小船に揺られるような心地よさです。ガリガリと弾かれる弦の凄味もなかなかのものです。中間部で歌うオーボエやその他の木管。スケルツォ主部が戻ると、また豪快な弦とチャーミングな木管の対比になります。この豪快なエネルギーは晩年のベームには無いものです。

四楽章、この楽章でも凄いスピート感とエネルギーの放出が凄いです。第二主題もとても瑞々しく生命感のある演奏で惹きつけられます。音楽の勢いの凄さに圧倒されます。

ベームの絶頂期の見事な記録でした。凄いエネルギーの放出とスピート感。この曲を一気に聴かせてくれる名演でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、豊かな響きのホルンの序奏。流れるように滑らかな第一主題。巨大なトゥッティ。とても躍動感があります。小気味良いテンポの第二主題。「未完成」のなだらかな表現とは打って変わって、切り立つ壁のようなゴツゴツした音楽で、とても生命感があります。そして、どのパートも美しい。トロンボーンの強奏も胸がすくような心地よい響きです。深い彫琢の弦の刻み。最後はテンポを速めました。

二楽章、速めのテンポで演奏されるオーボエ。瑞々しい弦の響きがとても美しい。Bは流れるようにレガートで演奏されます。生命の躍動を表現しているかのようなA。再び現れるBでも生命感に溢れた演奏です。

三楽章、凄く速いテンポで激しい弦の演奏から開始しました。意図的な表情付けはありませんが、自然な抑揚があり、とても流れの良い音楽です。これでもかと畳み掛けるように音楽が押し寄せてきます。中間部はゆったりととてもゴージャスな響きでカラヤンとベルリンpoの黄金期を感じさせます。スケルツォ主部が戻り、再び速いテンポでガリガリと激しい演奏です。合間に聞こえる優雅な木管のソロ。

四楽章、激しく躍動的な第一主題。引き締まった表現で緊張感があります。優しいけれども躍動感のある第二主題。展開部のトロンボーンの見事な強奏。畳み掛けるような凄いスピード感。

見事な造形美で美しい演奏でした。

ハンス・クナッパーツブッシュ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、拍手が鳴りやむ前に演奏が始まります。速めのテンポで柔らかいホルン。続く木管や弦も生き生きとしています。巨大なトゥッティ。楽しげに弾む第一主題。動きのある第二主題。金管を思い切って咆哮させるダイナミックな演奏で激しいです。とても感情のこもった歌もあります。テンポも速めで活発です。

二楽章、Aのオーボエやクラリネットもとても表情が豊かです。ピアノとフォルテシモの切り替えもとても思いきりが良くダイナミックです。Bに入っても相変わらず表現は豊かです。この作品がこんなに激しいものだったかと再認識させられるほど金管が激しく方向します。

三楽章、ここでも巨大な響きの冒頭。とても表現が大きくて、豪放磊落な印象です。強烈に吹きまくる金管はもうシューベルトの音楽では無いような雰囲気です。

四楽章、凄く積極的で躍動的な第一主題。大きな流れのある第二主題。聞き手にグッと迫ってくるような作品に対するクナッパーツブッシュ独特の共感。とにかく激しく巨大です。コーダの凄いテンポダウンと速いテンポが交互に現れる部分は圧巻です。

この演奏が、この作品の本来の姿かどうかは疑問ですが、この曲をこれだけ面白く聞かせてくれる演奏も珍しいし、とても貴重な存在です。

ハインツ・レーグナー/ベルリン放送交響楽団

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一楽章、豊かな残響をともなってゆっくりと柔らかい響きのホルン。続く木管もゆったりと柔らかく心地よく歌います。トゥッティも重厚で柔らかい響きが魅力的です。第一主題からテンポを速めて活発な動きになります。木目細かい美しい響きです。

二楽章、美しいAのオーボエ。強弱の変化はそんなに大きくなく、なだらかな変化です。Bもなだらかにつながる美しい旋律。シューベルトらしい美しく上品な演奏です。力みが無く自然体の表現の中から作品の美しさがにじみ出てくるような演奏に心が打たれます。

三楽章、生き生きとしていて潤いがあって美しい木管と繊細な弦。自然体で奇をてらうことは全くありませんが、演奏は集中力があって聞き手を引き込む力があります。ゆったりと穏やかに歌う中間部。

四楽章、荒々しくはありませんが、躍動感があり積極的な表現の第一主題。金管は突出してくることは無くとても良いバランスを保っています。

自然体で、とても美しい演奏でした。シューベルトらしい上品な表現と響きで、それでいて集中力も高い演奏で、聞いていて引き込まれるような演奏でした。

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーニー管弦楽団 1975年東京ライヴ

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一楽章、暗闇に明かりがともるようなゆったりとしたホルン。柔らかい弦。艶やかな木管。重厚なトゥッティ。落ち着いて堂々とした第一主題。第二主題もゆっくりとしたテンポでしみじみとしています。弱めに入って次第に大きくなるトロンボーン。ベルリンpoとのスタジオ録音のようなピーンと張った力強さはありませんが、枯れた風情のしみじみとした演奏です。コーダの湧き上がるような力強さもとても良いです。

二楽章、美しいオーボエ。僅かに動くテンポにも自信が感じられます。シューベルトの美しさを十分に伝える演奏です。テンポの動きが自然で、心に沁み入るような弦の旋律。こんなに素晴らしい演奏を日本でしていたとは。金管も適度に前に出てきます。生き生きと有機的に動く楽器。大きな表現はありませんが、共通の言葉を話しているような一体感で音楽が作られて行きます。

三楽章、自然な表現が美しい弦。チャーミングな木管の表情。とても落ち着いた大人の演奏です。伸び伸びとした中間部。穏やかで落ち着いたたたずまいがとても安らかな気持ちにさせてくれます。

四楽章、自然な表現で過不足ありません。穏やかで優しい第二主題。ベートーヴェンの9番の歓喜の主題を引用した旋律はとてもよく歌いました。重厚なトゥッティはさすがです。華やかに解放されるクライマックス。コーダで少し重くなる低弦。

自信に充ち溢れた堂々とした演奏でした。穏やかで落ち着いた弱音から、華やかに解放さたクライマックスまで、とにかく見事な演奏でした。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、録音年代の古くレンジが狭いのが良くわかるホルン。微妙なテンポの動き。のどかな雰囲気のオーボエ。第一主題へ向けて急加速。生き生きとした表情の第一主題。表現も大きいです。第二主題でもテンポが動きます。トロンボーンに旋律が出るところではまたテンポが少し落ちてまた加速します。目まぐるしいテンポの変化。再び第二主題が出るとまたテンポはゆっくりになります。強弱の変化もとても敏感な反応です。最後はテンポを上げて力強く終わりました。

二楽章、ゆっくりとしたテンポです。豊かな表情のオーボエ。この楽章でもテンポがよく動いて、曲を大きく感じさせます。さらにテンポを落として濃厚な表現があります。表現もとても積極的です。感情の赴くままに自在なテンポの変化です。

三楽章、激しく強いエネルギーを放出してくる演奏です。ゆったりとしたテンポで感情を乗せて歌います。美しい歌でとても心地良いです。この楽章でもテンポはよく動きます。

四楽章、速いテンポで勢いのある第一主題。幅広い表現力。落ち着いた第二主題。切迫感のあるテンポの追い込み。フルトヴェングラーとオケが一体になった見事な動きでした。

フルトヴェングラーらしくテンポが自在に変化して、感情が込められた演奏でした。表現の幅もとても広くて充実した演奏でした。

ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団

ヴァント★★★★★
一楽章、柔らかく美しいホルンの序奏。続く弦や木管も澄んだ響きで美しいです。トゥッティは力強く鳴ります。第一主題に入る前はとても堂々としていました。第一主題はテンポが速く躍動感があります。第二主題も特に表情は付けられていませんが、とても澄んだ美しい響きです。第三主題が盛り上がったところでの弦の強弱の変化はとても大きかったです。一つ一つの楽器の音に力があって、しっかりと存在を主張しています。コーダに入ってテンポを落としました。充実した響きです。

二楽章、強弱の変化にも敏感です。抑制的であまり歌いません。Bは自然で柔らかく穏やかで安らぎを感じます。テンポも自然な動きです。トロンボーンがかなり強烈に吹きます。強弱の振幅はかなり大きい演奏です。楽章の終わりごろにはかなりテンポが遅くなりました。

三楽章、純度が高く密度の濃い演奏で、大きな表現はありませんが、絡み合う楽器が有機的で、とても生き生きとしています。祝典的な雰囲気のトリオ。主部に戻るとテンポが速くなりました。

四楽章、とても演奏が引き締まっていて充実した演奏です。スピード感もあって、オケが全力で演奏しているのが分かります。第二主題の最後で全開になりました。ヴァントの気合いがオケに乗り移ったような入魂の演奏。凄い集中力でとても充実した演奏になっています。重い弦と華やかな金管が交互に現れるコーダ。充実した見事な演奏でした。

ヴァント入魂の素晴らしい演奏でした。ヴァントの気迫にオケも応えて充実した美しい演奏を繰り広げました。小細工は無く、正面から堂々と作品と向き合ってこのような充実した演奏ができたヴァントの晩年は素晴らしいものだったんだと実感します。
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ニコラウス・アーノンクール/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

アーノンクール★★★★★
一楽章、間を空けて歌う序奏のホルン。続く木管の部分ではテンポを速めます。トゥッティでは最初の音を強く続く音は少し音量を落として演奏します。第一主題に向けてテンポを速めました。第一主題の最初はとても抑えた表現です。次第に音量を上げて音楽も弾むようになります。テヌートぎみに演奏される第二主題。トロンボーンの第三主題よりも伴奏の弦のほうに重点を置いて波が寄せては引いて行くような表現でした。細部の表現にもこだわりを見せていて、普段はあまり意識しない音に注意が向きます。コーダはかなりテンポが速くなりました。

二楽章、オーボエはテンポも動いて良く歌います。テンポも良く動きます。Bはとても穏やかです。いつものアーノンクールの不自然なアクセントなどは無く、意外と自然な演奏です。

三楽章、速いテンポですが、間を取ったりしてテンポが動きます。しっかりと表情が付いていてリズミカルです。リズムの絡みが見事に表現されています。中間部も良く歌っていて、アーノンクールの演奏とは思えないです。こんな面もあったとは驚きです。とても穏やで盛り上がったところでは華やかな中間部です。

四楽章、速いテンポでスピード感があります。柔らかい表現でここでも良く歌う第二主題。トゥッティでは巨大な響きを引き出します。コーダも堂々としたものでした。

どちらかと言うとキワモノの部類だと思っていたアーノンクールがこんなに正統な演奏をするとは思いませんでした。歌に溢れて自然で柔らかい表現やコーダの堂々とした演奏は素晴らしかったです。
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サー・エイドリアン・ボールト/BBC交響楽団

ボールト★★★★★
一楽章、ゆっくりと語りかけるようなホルンの序奏。続くオーボエや弦もとても優しい表現です。あまり大きな響きにはならない控え目なトゥッティはシューベルトらしいです。第一主題へ向けてアッチェレランドしました。最初強く次第に弱くなる第一主題。テヌートぎみに演奏されます。柔らかく歌う第二主題。次第にテンポが速くなって、シャキッとした表現になって行きます。第三主題も途中からテンポが速くなります。最初は柔らかく優しい表現でしたが、曲が進むにつれて音に力が増してきました。テンポも速くなり、積極的な表現になっています。

二楽章、遠くから響くオーボエ。潤いのある弦が美しいです。Bからも柔らかい響きですが、テンポは速めで表現はあっさりとしています。ホルンがかなり強奏します。テンポを落とした部分の柔らかい表現には味わいがあります。

三楽章、美しく揺れる弦。力強く勢いのある強奏部分と柔らかく優しい弱音部分の対比が見事です。揺れながら歌うトリオ。

四楽章、シルキーな弦が美しいです。クレッシェンドに従って追い立てるような表現も見事です。あまり歌わないオーボエの第二主題。どっしりとした堂々とした歩みです。ベートーヴェンの「歓喜の主題」の引用部分は豊かに歌いました。コーダで一瞬ガクッとテンポを落としました。最後もテンポを落として終わりました。

作品を正面から捉えた堂々とした演奏でした。弱音の柔らかく優しい響きと強奏の力強く勢いのある響きとの対比も見事でした。
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投稿者: koji shimizu

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