シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレート」2

たいこ叩きのシューベルト 交響曲第9番「ザ・グレート」名盤試聴記

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、ホールの響きを伴ってふくよかなホルンの序奏です。合いの手で入る弦も優しい響きです。第一主題は重厚な響きでことさら強く演奏することは無く、それがかえって作品の巨大さを表しているような感じがします。ゆったりとした足取りで進みます。オーボエが演奏する第一主題も優しくしなやかです。第二主題の手前で少しでけテンポを上げました。第二主題は動きがありますが、それでも優雅です。とても静かで雄大なffです。コーダはすごくテンポが遅くなりました。

二楽章、遅めのテンポで歌うオーボエ。美しい弦とオケの見事なアンサンブルがすばらしい。Bへの移行部分をゆっくりと解説するかのように丁寧に演奏しました。Bもとても静かです。この演奏は全くの別世界です。この曲の概念を根底から覆すような演奏です。遅いテンポに静寂感、ffでも力が抜けたようなゆったりとした空間の再現は見事です。盛り上がったところで大きくテンポを落としました。その後も遅いままで進みましたが、途中でまたテンポを上げました。テンポはよく動きます。最後はすごくテンポを落としました。

三楽章、ゆっくりとしたテンポで、荒ぶることもなく整然とした演奏です。とても穏やかで優雅です。アクセントなども強調しないので、ひっかかるところが無く、音楽の流れがとてもゆったりとしています。トリオも非常にゆったりとした大河の流れのように静かに同ずることなく流れて行きます。この曲がこんなに静かで美しい曲だとは思いませんでした。チェリビダッケの演奏は、その曲の新しい側面を見せてくれることがよくあるので、聞くのが楽しみになります。

四楽章、この楽章もゆったりとしたテンポで大きな流れです。柔らかい表情の第二主題。全体の響きから突出することのないトロンボーン。目が覚めるようなティンパニの強打からオケにも緊張感が感じられるようになってきました。最後の音はデクレッシェンドしました。

最後は歓喜に溢れるような雰囲気ではありませんでしたが、この曲の違う面を十分に感じさせる演奏は凄いと思いました。

ブルーノ・ワルター/コロンビア交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、もやーっとした響きのホルン。続く木管はゆっくりとしたテンポでおおらかな表現です。トゥッティは重くありません。テンポは微妙に変化しています。生き生きと躍動感のある第一主題。独特の粘りがあって豊かに歌う第二主題。トロンボーンが登場した後も豊かな表現です。フワーッとした柔らかい響きが魅力的な演奏です。次々と湧き上がるような金管もとても良いです。

二楽章、豊かに歌うオーボエ。テンポも微妙に動きますが、とても自然です。特に目立った表現はありませんが、いかめしく無く、どぎついことも無い暖かい演奏の安心感があります。

三楽章、この楽章でも微妙なテンポの変化があります。

四楽章、少し緊張感のある第一主題。常に温度感があって暖かい演奏です。良く歌う第二主題。力みも無く穏やかです。コーダも絶叫することなく穏やかでした。

暖かく、穏やかな演奏で、豊かな歌と微妙なテンポの動きのある演奏でした。作品を慈しむような暖かみはワルターならではだと思います。

カルロ・マリア・ジュリーニ/パリ管弦楽団

ジュリーニ★★★★☆
一楽章、伸びやかなホルンの序奏。続く弦や木管もとても良く歌います。そしてその歌がとても自然です。フワーッとして広大なトゥッティ。テヌートで演奏される第一主題。活発に弾むイメージがある第一主題が全く違う表現に少し戸惑います。第二主題もジュリーニのさりげない歌があります。重くどっしりとしたテンポです。とても柔らかくふくよかな響き。力みの無い柔らかく美しい響きです。

二楽章、柔らかく美しいオーボエ。トゥッティでもフワーッとした何とも言えない柔らかい響きです。この楽章もゆっくりとしたテンポで優雅に歌います。Bも優雅でとても美しいです。さらにテンポを落として優雅さも極まるような部分もありました。

三楽章、遠くに広がる弦楽器が豊かな残響を伴って柔らかく響きます。とてもゆったりとしたテンポで舞うような雰囲気です。トリオもさりげなく美しい歌です。豊かな響きに包まれてどっぷりと音楽に浸れるような演奏です。

四楽章、一転して緊迫感のある演奏になりました。活発に動くオケ。第二主題は再び優雅な表現になりました。トロンボーンの強奏部分もがなり立てるようなことは無く、余裕を持って軽々と響きます。コーダも十分余裕を持った落ち着いたものでした。

とてもゆったりとしたテンポで優しく優雅な演奏でした。さりげなく自然な歌もとても美しいものでした。常に余裕を持った大人の演奏はなかなか魅力的なものがありました。
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ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1953年

icon★★★★☆
一楽章、遠くから響くホルンの序奏。続く木管はゆっくりと進みます。トゥッティはあまり強奏はしません。とても軽く演奏しています。優しい序奏です。第一主題へ向けて加速しました。第一主題はティンパニがボンついて厚みのある響きです。第二主題の中でテンポが動きます。第三主題の前でテンポが落ちました。柔らかく始まった第三主題が次第に強くなりますが、あまり音量感はありません。テンポはとても良く動きます。テンポを落とした部分では濃厚な表現があります。再現部の第三主題は脱力したようにテンポを落として始まり次第に盛り上がりながらテンポを速めました。このあたりの表現はさすがにフルトヴェングラーと言える表現です。

二楽章、ゆっくりとたっぷり濃厚に歌うオーボエ。クラリネットも濃厚でロマンティックです。Bへ入る前にテンポがさらに遅くなりました。感情の赴くままに動くテンポは絶妙でうっとりとします。1回目のBの最後の部分では止まりそうなくらいに遅いテンポになります。最後も凄く遅いテンポで終わりました。

三楽章、コントラバスがボンついて歯切れが悪い冒頭部分。中間部も感情を込めて歌います。

四楽章、ゆっくりと始まった第一主題が次第に速くなります。どんどん加速して行きます。第二主題でもテンポが次第に速くなります。ベートーヴェンの「歓喜の主題」の引用もゆっくりとしたテンポで始まりましたがトロンボーンが出るあたりでは速くなっています。このテンポの動きに不自然さを感じさせないのがフルトヴェングラーらしいところです。速いところはかなり速くなり、テンポの振幅はとても大きいです。コーダもかなり速いテンポになり最後は遅くなって終わりましたが大きな盛り上がりでは無く勝利を勝ち取った喜びのような表現はあまりありませんでした。

かなりテンポの振幅の大きなロマンティックな演奏でしたが、最後が輝かしい終わり方では無かったのが唯一残念なところです。
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ヘルベルト・ブロムシュテット/シュターツカペレ・ドレスデン

icon★★★★☆
一楽章、暗闇にろうそくの炎が灯るようなホルンの序奏。続く木管や弦はゆったりとしたテンポで伸びやかで良く歌います。艶やかなオーボエが美しいです。巨人の歩みのようなトゥッティ。ゆっくりとしたテンポで噛んで含めるように語りかけてきます。テンポを速めて第一主題に入ります。オケが一体になって弾みます。木管の3連符のクレッシェンドも整って美しいです。陰影をたたえる第二主題。色んな楽器が交錯する第三主題。自然体の演奏ですが、表現はキリッと締まっていて演奏を格調高いものにしています。

二楽章、いつものブロムシュテットと同じく、全く作為的なことは無く、楽譜に書かれていることに忠実に演奏しています。オーボエをはじめとする木管は深く美しい響きです。Bでは少しアゴーギクを効かせるような微妙なテンポの動きもありました。

三楽章、生き生きとした木管がとても美しいです。舞い踊るような豊かな表現です。トリオも豊かに歌います。

四楽章、響きは厚くありませんが、シルクのような肌触りの弦の動きが美しいです。オケ全体で作り出す脈動のような第二主題。ベートーヴェンの「歓喜の主題」からの引用部分はゆったりと深い表現でした。トゥッティでもトロンボーンが全体の響きに溶け込んで一体感のある演奏はとても美しいです。コーダは爆発するような歓喜や勝利の喜びではありませんでしたが、この演奏には良いバランスでした。

自然体でありながら、表現も十分にあって美しい演奏でした。抵抗なく聞けるバランスの良い演奏で、なかなか良かったと思います。
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ジョン・エリオット・ガーディナー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ガーディナー★★★★☆
一楽章、豊かな残響でふくよかなホルンの序奏。生命感があって良く歌います。艶やかなオーボエ。速いテンポの第一主題。シルキーな弦。整ったアンサンブルで弾みます。第二主題も速いテンポです。チェロなども深く切れ込んで来ます。トゥッティはあまり強奏はしません。かなり余力を残しています。豊かで美しい響きで表現も豊かでとても良いですが、金管が全開にならないのがもどかしいです。

二楽章、とても良く歌うオーボエ。弦も潤いがあってとても美しいです。Bは速いテンポで始まりましたが次第にテンポが少し遅くなりましたがまた速くなったりしています。主部が戻ると生き生きと活気のある表現です。ホルンはビービーとかなり吹いていますが、トロンボーンは抑えられています。

三楽章、生き生きとした表情の木管。勢いのある激しい演奏です。主に古楽演奏をしている指揮者からこんなに自然な表現を聞けるとは思いませんでした。トリオも賑やかでかなり積極的な表現です。テンポも動いて濃厚な演奏で、感情を込めた表現とは無縁と思っていた古楽の指揮者からこんなに深く感情表現する演奏を聴くのは初めてです。

四楽章、この楽章も速いテンポで凄く勢いがあります。スピード感が尋常ではありません。キリッと引き締まった表現も見事です。第二主題に入っても勢いは止まりません。次から次へと大きな波が押し寄せるようです。ベートーヴェンの「歓喜の主題」の引用はとても良く歌います。重量感のあるコーダも見事でした。

一楽章、二楽章は少し欲求不満になりそうでしたが、三楽章、四楽章の大きな表現と凄く勢いのある演奏は見事でした。古楽の指揮者からこれだけ感情豊かな演奏が聴けるとは思いませんでした。
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