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たいこ叩きのシベリウス 交響曲第1番名盤試聴記
レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団
★★★★☆
一楽章、静寂の中に深みのあるクラリネットの序奏主題。ゆったりとしたテンポの第一主題。雄大なトゥッティ。金管に第一主題が移るところはかなり荒々しい表現です。ティンパニの強打はかなり強烈です。シベリウスの音楽にしては熱い演奏です。金管の咆哮やティンパニの強打など、今まで聞いてきたシベリウスのイメージとは違う演奏です。
二楽章、フワッとした柔らかい第一主題。ロマンティックな雰囲気に満ちています。第二主題は静寂感がありますが、やはり温度感は高いです。中間部で動き回るチャーミングな木管。巨大なチューバの響き。かなり激しい金管。弱音部分の美しい歌もなかなか聴かせてくれます。
三楽章、活発に激しく動きます。トロンボーンもティンパニも激しい演奏です。北欧の春を感じさせる中間部。これまでのシベリウスのイメージを変えさせるような演奏です。
四楽章、感情のこもった序奏主題。木管もとてもよく歌います。積極的な表現の第一主題。憂いを感じさせる第二主題。強弱の振幅がすごく大きく、強奏部分の激しさはまるでマーラーを聴くような感覚です。第二主題の再現はとても美しいものでした。
これまでシベリウスは静寂感と冷たい感じをイメージしていましたが、この演奏はそんなイメージを覆すような演奏でしたが、この激しさもシベリウスの一面なんだと思い知らされました。
オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団
★★★★☆
一楽章、ウェットで陰のある序奏主題。第一主題は遠くから響く感じでとても雰囲気があります。第一主題のトゥッティはテンポを速めて激しく演奏します。全体に速めのテンポでぐいぐいと前へ進みます。
二楽章、深い霧の中から響いて来るような、ゆったりとしていてとても静かで穏やかな第一主題。潤いがあって美しいトリオのホルン。この潤い感はオケ全体にあって、とても美しい演奏です。
三楽章、再び速めのテンポで躍動感に満ちた演奏になります。強い表現はありませんが、作品の良さがにじみ出るような演奏です。最後は激しいティンパニと共にテンポをさらに速めて終わりました。
四楽章、しみじみと歌う第二主題。オケが全く混濁せずに美しい響きを聞かせます。シベリウスらしい自然の美しさを感じさせる演奏です。ただ、響きは暖かいので、北欧の冷たさは感じません。
大きな表現はありませんでしたが、にじみ出るような作品の美しさが印象的でした。自然を感じさせる演奏ではありましたが、冷たい空気感はありませんでした。
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ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団
★★★★☆
一楽章、くっきりと浮かび上がりますが、少し乾いた響きの序奏主題。感情のこもった第一主題ですが、録音の古さか木目が粗いです。絶叫せずにコンパクトにまとまった第一主題のトゥッティ。オーマンディらしくon、offのはっきりとした明快な演奏です。
二楽章、間があったりして感情が込められていますが、淡々とあっさりと感じる第一主題。第二主題もあっさりと流れて行きます。無駄なものを取り去ったようにシンプルに聞えます。主部が戻るとたっぷりと歌う、哀愁に満ちた第一主題になります。
三楽章、生き生きとした躍動感のある積極的な演奏ですが、木目の粗い弦が気になります。この当時のCBSの録音の特徴だった乾いた響きも感じます。
四楽章、深く感情が込められた序奏。鋭く切り込む第一主題。たっぷりと歌われる第二主題。オーマンディの作品への共感が良く表れた演奏です。豊かに歌う演奏はとても感動的です。
オーマンディの作品に対する共感がとても良く表れた演奏で、感動的な表現も多くなかなか良い演奏でした。ただ、当時のCBSの録音の乾いたザラザラとした響きは少し残念でした。
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ウラディーミル・アシュケナージ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
★★★★
一楽章、細身で濃いクラリネットの序奏主題。とても静寂感があります。鋭く濃厚な色彩の第一主題。トゥッティは全開にはならず余裕があります。シベリウス独特の冷たい空気感はありませんが、涼しげで爽やかな響きです。
二楽章、穏やかで美しい第一主題。清涼感があって、キチッと整ったアンサアブルですが、強い個性は感じません。
三楽章、強烈なティンパニと躍動感のある弦と木管。トリオのホルンも控えめで締まった響きで美しいです。
四楽章、歯切れの良い第一主題。速めのテンポでどんどん進みます。第二主題は広々とした雰囲気は無くむしろ狭い空間を感じさせます。フィルハーモニアoにしては濃厚な色彩です。強い個性が無く清涼感のある爽やかな響きがとても印象的です。
強い個性は無く、極めて自然体の演奏でした。清涼感のある美しい響きが印象的でしたが、シベリウスらしい冷たい空気管は感じられませんでした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団
★★★
一楽章、長く尾を引くティンパニの上にくっきりと浮かぶクラリネット。感情のこもった第一主題。続くホルンは少し歪みぎみでした。金管が演奏する第一主題は期待通りの粘着質の熱い咆哮でした。トランペットに続くホルンは異様な響きです。北欧の厳しい寒さを感じる演奏とはほど遠く温度感はかなり高いです。トゥッティでは音が交錯して見通しが悪くなります。かなり荒々しい演奏です。
二楽章、深みはありませんが、穏やかで美しい第一主題。中間部のホルンは独特の響きです。力のこもった演奏なのですが、木目が粗く少し乱暴な感じがします。容赦なく吹く金管。
三楽章、積極的な表現の主題。ここでも容赦なく吹きまくる金管が下品です。トリオのホルンは細い音でビブラートを掛けています。
四楽章、朗々と演奏される序奏主題。第一主題も温度感は高く、寒さは感じません。第二主題も朗々と歌います。第二主題の再現では絶叫するようなトランペット。
正に爆演と言うにふさわしい、強烈な演奏でした。シベリウスの寒さを感じさせる演奏ではなく、むしろ暑苦しいほどのとにかく強烈な演奏でしたが、かなり雑に感じました。
イーゴリ・マルケヴィチ指揮 イタリア放送トリノ交響楽団
★★
一楽章、乾いた響きであまり陰影のない序奏主題。一転して伸びやかで柔らかい第一主題。軽く演奏される第一主題のトゥッティ。音楽が熱気を帯びることは無くとても冷静に進みます。
二楽章、静かで優しい第一主題。中間部のホルンもとても穏やかで安らぎを感じさせます。強い感情移入はありませんが、淡々と美しい演奏が続きます。第一主題が戻る前に大きくテンポを落としました。
三楽章、マットで詰まった感じのティンパニ。自然な歌のホルン。畳み掛けて終わりました。
四楽章、活発に動く第一主題。全く誇張の無い第二主題。展開部に入ってもホルンはそれなりに激しいですが、トランペットは控えめです。大きなクライマックスを築き上げることなくちょっと肩透かしで終わりました。
全体に控えめで大きな振幅が無く、あっけなく終わりました。
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