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たいこ叩きのシベリウス 交響曲第4番名盤試聴記
レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団
★★★★☆
一楽章、かなり思い切りの良い音量で始まって次第に収束して行きます。暖かみのある響きでうつろな主題。陰鬱な雰囲気がもたれかかって来ます。くすんだ淡い色彩で響く金管の第二主題。静寂感のある展開部。
二楽章、活発な動きのある主題。表現が柔らかくふくよかで、暖かみがあります。
三楽章、地に足の付いた序奏。作品をそのままさらけ出さずにかなりこなれている感じで、マイルドで聴きやすい音楽になっています。ここは作曲者と同じフィンランド人による演奏のおかげか。共感に満ちて一体感のある演奏です。緻密に組み合わされた音楽がこんこんと湧き出るように流れて行きます。
四楽章、色彩感は渋くくすんでいます。金管も絶叫することは無く、コントラストも強くはありません。
渋くくすんだ響きで暗く沈んだ音楽を演奏しました。セーゲルスタムがかなりこの作品を聴きやすくしてくれているようでした。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1965)
★★★★☆
一楽章、静寂の中に響く沈鬱なチェロの主題。第二主題はこの頃のベルリンpoらしくゴージャスな響きですが、76年の録音のような暖かさは無く、シベリウスらしい寒さは感じます。
二楽章、分厚い響きで、反応の良いオケ。静寂感はとても良いです。
三楽章、伸びやかで澄んだフルートのソロなどはさすがです。ただ、ピーンと張り詰めたような緊張感は無く、響きの厚さの分僅かに緩い感じがあります。
四楽章、グロッケンシュピールが使われています。動きの激しさなども上手く表現されています。
76年の録音のような暖かい響きでは無く、寒さを感じさせる演奏でした。静寂感と激しさもとても良く表現されていましたが、僅かに緩い感じがあって、ピーンと張った緊張感はありませんでした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団
★★★★
一楽章、録音レベルが高いのか、冒頭から全開のような演奏です。チェロの主題が前面に出てきます。混沌としたうつろな雰囲気は無く、むしろ有機的です。とても活発で温度が高い熱気をはらんだ演奏です。
二楽章、強い音で歌うオーボエの主題。続く弦も強いです。不安感よりも力強さを感じる演奏で、作品の本来持っている性格とはかなり違う面を聞かせているようです。
三楽章、暗闇の中で響くような音楽。そして粘るように濃厚な演奏です。よく歌う弦。非常に熱い演奏で、シベリウスの冷たい空気感とはかなり違う演奏です。
四楽章、華やかな主題。チューブラベルを併用せずにグロッケンシュピールのみで演奏しています。金管はやはり強奏します。
この温度感はロジェストヴェンスキーが持っているものではないかと思います。濃厚で熱い演奏で、シベリウスの違う面を聞かせてくれたとも言えるとは思いますが・・・・・
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団
★★★★
一楽章、重苦しい冒頭。うつろなチェロの主題。シベリウスらしく内側に凝縮して行くような音楽。強烈なティンパニの一撃。暗闇の中を探りながら歩くような不安げなコーダでした。
二楽章、豊かに歌うオーボエの主題。凝縮された純音楽といった雰囲気があります。
三楽章、浮遊感のあるフルート。ピーンと張り詰めた寒さを感じさせます。オケは超一流の演奏とまでは行きませんが、献身的な演奏をしていると思います。
四楽章、グロッケン・シュピールが使われています。思い切りの良いホルン。クロッケンはかなり強調されています。咆哮する金管。強弱の振幅はかなり大きいです。
オケの密度はあまり高くは無く、超一流のオケとは言えない演奏でしたが、ピーンと張り詰めた寒さや思い切りの良い咆哮など、聞かせどころはありました。
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クルト・ザンデルリング指揮 ベルリン交響楽団
★★★
一楽章、物々しい冒頭の低弦。視点が定まらないようなうつろなチェロの主題。録音にもよるのか、普段のザンデルリングのイメージとは違いかなり前のめりで積極的な演奏に聞えます。緊張感のある純度の高い演奏ですが、激しさもあるので、シベリウス独特の冷たい空気感はありません。
二楽章、ここでも積極的で生き生きとした表現です。情熱的で激しく熱気を感じる演奏になっています。
三楽章、太く暖かいフルート。クラリネットも大きい音像です。明快で混沌とするような感じは全くありません。
四楽章、この楽章も激しく積極的に動くオケ。かなり現実的で自然を連想させることもありません。
ザンデルリングにしては珍しく積極的で激しい演奏でしたが、その分シベリウスらしい冷たさや自然を感じさせることはありませんでした。
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ウラディーミル・アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団
★★★
一楽章、少し軽いですが、暗い冒頭。暖かいチェロの主題。あまりピーンと張ったような寒さのような緊張感はありません。第二主題も暖かいです。展開部は暗いですが、やはり暖かいです。純音楽的な削ぎ落とされたような無駄の無さはあまり感じられません。かなりふくよかで情報が多い感じに聞こえます。
二楽章、少し楽しげなオーボエの主題。中間部は不穏な空気になります。
三楽章、暗闇に浮かび上がるような木管ですが、やはり暖かいです。柔らかく美しい金管。主題は少し温度が低いですが、木管が入るとまた、暖かくなります。
四楽章、楽しげな第一主題。グロッケンシュピールが使われています。金管はかなり豪快に演奏されていますが、大きな強弱の変化には感じません。
決して悪い演奏ではありませんが、終始暖かい響きで、シベリウスらしさは感じられませんでした。
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ロリン・マゼール指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★
一楽章、松脂が飛び散るような激しいコントラバス。独特な胴の鳴りのチェロの主題。凄く情報量が多い演奏です。第二主題も激しい表現です。積極的に訴えかけて来ます。
二楽章、濃厚に歌うオーボエの主題。凄く弾む中間部の弦。シベリウスらしい冷たさは全く感じられません。
三楽章、冒頭のフルートやクラリネットも暗闇に浮かぶような暗い雰囲気はありません。明快で混沌とした複雑な雰囲気もありません。
四楽章、この楽章も明快な表現です。グロッケンシュピールを使っています。竹を割ったような明快さで、激しく咆哮する金管。
とても力強く明快な表現の演奏で、シベリウスの複雑な音楽をとても簡潔にしてしまった感じで、味わいの無い演奏だったように感じます。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★
一楽章、物々しい冒頭。非常に陰鬱な第一主題。次第に澄んだ空気に変わって行きます。第二主題はこのコンビらしい厚みのある響きです。展開部でも分厚いコントラバス。強烈なティンパニ。温度感は高く、北欧の冷たい空気はほとんど感じません。
二楽章、オーボエは僅かな表現だけでしたが、続く弦はとても大きく豊かに歌いました。音が肥大化していて、シベリウスの清貧のような引き締まった雰囲気がありません。この演奏はシベリウスの音楽では無く、カラヤンの音楽になっているように感じます。
三楽章、美しいフルートなのですが、ピーンと張りつめたような緊張感がありません。浮遊感があって、瞑想するような雰囲気は良く表現されています。
四楽章、暖かく豪華に鳴り響く音楽がどうしてもシベリウスの音楽とは違う感じがします。
分厚い響きで暖かく豪華な演奏はシベリウスとは程遠い感じで、あまり納得できませんでした。