ベルリオーズ 「幻想交響曲」3

たいこ叩きのベルリオーズ 「幻想交響曲」名盤試聴記

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
爆演指揮者と言えば、この人を置いて他にいないでしょう。待ってました!ロジェヴェン大先生。
最近の活躍が聞かれないのはとても残念です。

一楽章、ライブ録音のためノイズがあり、冒頭の静寂感はありません。また、ムラヴィンスキーが指揮するレニングラードpoのような張り詰めた緊張感もありませんが、決してアンサンブルが悪いわけではありません。
いろんなところに「仕掛け」があるようです。
金管、特にラッパが入ってくると、ロジェヴェン節炸裂!下品です(^ ^)思いっきり金管が、かぶってきますし、ブレスを取るのがはっきり分かってしまって、演奏している方が、あまり細部にこだわっていないのが伺われます。

二楽章、弦や木管が演奏している部分では、そんなに異常な演奏ではありません。
むしろ、ムラヴィンスキーに日ごろ鍛えられている精緻なアンサンブルを聞かせてくれます。

三楽章、ライブのせいもあるのかもしれませんが、冒頭部分の木管にもあまり弱音を求めていないようで、他のCDで聞くような切なさのような描写はありません。
さすがに旧ソビエト最高峰のオーケストラです。見事な弦のアンサンブルを聞かせてくれます。
途中、ティンパニのロールが入るところで、テンポがガクッと落ちました。またティンパニの入りも強烈です。
その後は、またもとのテンポに戻って、クラリネットのソロです。緊張感のあるppがないので、演奏が大味に感じられてしまうのが、ちょっと残念です。
遠くで鳴るはずの雷鳴も、落雷のようです(^ ^;

四楽章、ブリっと鳴る金管、思いっきり引っ叩くティンパニ。楽しい演奏の前触れ?
2倍に増強さらた金管が思いっきり吹きまくります。リズムもいい加減。シンバルもこの金管に負けません。 すごいパワーです。いやぁすごい!ここで拍手がしたくなります。

五楽章、これでもか!と吹きまくる金管に思わず笑ってしまいそうです。
ロジェヴェン大先生、ここまでやるとは・・・・・・・!
安っぽい「のど自慢の鐘」。「ブレスを取りました!」と宣言しながら吹いているブラスセクション。もう収拾がつかない、ロジェヴェン大先生も一緒に大乗りで指揮振ってるんだろうなあ!
すごい!ひどすぎる!

演奏が終わってからの聴衆の熱狂もすごいです。生でこの演奏を聴いたら熱狂するでしょう。
確かにすごい。しかし、CDにして何度も聴く演奏ではないと思います。
サプライズがいっぱいあって、間違いなく楽しめます。
でも、繰り返して聴く気にはなれませんね。すぐに飽きるでしょう。
忘れた頃に、また聴けば椅子から転げ落ちそうになるでしょう。 こんな聴き方をするのには良いCDです。
フルネの上品で繊細な「幻想」とは対極にある演奏です。

アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ音楽院管弦楽団

icon★★★★
フィルハーモニアとのスタジオ録音はちょっと理解できなかったのですが、このライブでは別人のような燃焼度のようです。

一楽章、ゆったりとしたテンポで微妙なニュアンスをつけた演奏です。なにより、4年前の録音のムラヴィンスキーのCDとは桁違いの音質の良さ!弦も美しい。
生き生きとした表情が魅力的です。ホルンのビブラートがフランスのオケらしい!
ゆったりした部分と畳み掛けるような部分とのコントラストがとても良い。良い意味でのライブの即興性のような感じがあって聞き応えがあります。
クリュイタンスの棒にオケが食らいついていくような、格闘シーンのような場面も!

二楽章、とても緊張感のある開始です。舞踏会の優雅さはあまりありません。かなり緊張感の高い演奏です。でも微妙な揺れが心地よく表情も豊かで、それでいて下品にならないところが良いです。

三楽章、やはり、この時代の録音では、高いSN比を求めるのはムリですね。どうしても冒頭部分は「遠くで」の表現はできませんね。途中で入るホルンのビブラートがとても違和感があります。
テンポが速まると音楽も高揚してきて、音のスピード感が上がるような不思議なエネルギーをぶつけてきます。これがクリュイタンスの凄さなのか。このスピード感は、フィルハーモニアとのスタジオ録音では、全く感じられなかったことなので、新しい発見でした。すばらしい!

四楽章、かなり明るい音色で始まりました。途中から入る2ndティンパニが強烈に入ってきてビックリさせられます。
伸びやかなトランペットと吹きまくるバストロンボーンのペダルトーン。細かい音は結構いい加減なところもありますが、三楽章でも感じたスピード感は、この楽章でも生きています。
最後のフェルマーターは短く切りました。

五楽章、この楽章もとても表情が豊かです。ブラスセクションのffも、フィルハーモニアのときは、腰抜けのように聞こえましたが、この演奏ではパワフルです。
前三楽章と後半の二楽章を対照的に描いています。後半はかなりグロテスクです。
怒りの日はテューバではなく、オフィクレイドか?すごく浅い音がします。それに続くトロンボーンも全く遠慮なし。
オフィクレイドを使う方が、魑魅魍魎のような怪しさを表現するには適しているかも知れません。少なくとも、この演奏にはピッタリでした。
全開のラッパたちは凄いです!火の出るような演奏とはこんなのを言うんでしょう。

クリュイタンスのライブがこんなに凄いとは思いませんでした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1987Live

カラヤン/ライブ★★★★
一楽章、スタジオ録音と寸分も違わないような完璧なアンサンブルを聴かせて音楽が進みます。さすがカラヤンとベルリンpoです。すばらしい機能美を見せ付けるような演奏です。1987年のライブですが、この演奏を聴く限りにおいては、カラヤンの衰えは感じません。

二楽章、ライブらしく音楽の振幅はあります。ただ、作品自体が深いメッセージ性があるわけではないので、美しく演奏することに重点が置かれているのでしょうか。マイクがオンぎみでホールトーンをあまり拾っていないようで、響きを伴った美しい演奏は残念ながら聴くことができません。

三楽章、ライブでも遠くから聞こえるようなオーボエはさすがです。オケのアンサンブルも乱れることは全く無く、すばらしい合奏力を聞かせます。響きの厚みもベルリンpoならではのすばらしい演奏です。
ただ、あまりにも淡々と音楽が流れて行くのが何か物足りなさを感じてしまいます。ティンパニの雷鳴は良い感じです。やはり上手いですね。

四楽章、基本的には1971年のスタジオ録音と同じ演奏をライブでしたと言えるでしょう。
それほど完璧に演奏できるのがベルリンpoでもあるのでしょう。

五楽章、ライブの即興性のようなものは微塵もありません。設計道りに見事に音にして見せます。テンポはどっしりと構えた安定したものです。
鐘はスタジオ録音の時の低音を伴った太い響きのものではありません。
下品で、茶目っ気たっぷりだったロジェストヴェンスキーのライブとは正反対。カラヤンはライブだからといって特別サービスなどは一切ありません。
金管がユニゾンで演奏する怒りの日はさすがに鳴り渡ります。テンポを煽ることもなく堂々と鳴らし切りました。

ベルリンpoの実力を見せ付けられた演奏でした。ライブ会場にいた人たちはどう感じたのでしょう。
ライブで完璧な音響を聴く快感はすばらしいものだったでしょう。ただ、ライブCDとなると価値は違ってくるので、このCDを聴くのだったら、スタジオ録音のほうが、もっと細部まで見通せるし残響成分も十分に含まれた美しい響きを聞くことができます。
私だったらスタジオ録音を迷わず選びます。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1987年ライヴ

カラヤン★★★★
一楽章、77年のライヴほど極端な弱音ではありませんしテンポも遅くはありません。かなり積極的でダイナミックな演奏です。ホルンが出るあたりからテンポはぐっと遅くなりましたが速い部分は思い切って速いテンポをとります。カラヤンが感情に任せてテンポを大きく動かしているような感じでとても情熱的な演奏です。

二楽章、弦だけでもかなりのダイナミックレンジがあります。かなり力が入っているようで、演奏は硬い響きになっていて優雅な舞踏会の雰囲気はありません。ちょっとうるさい感じがします。

三楽章、コーラングレとオーボエの遠近感はとても良いです。弦楽合奏の分厚い響き。この楽章でもテンポが動きます。密度の高い木管。雷の音が空に広がる様子を上手く表現しているティンパニ。雷が遠くで鳴る様子も上手く表現しています。

四楽章、カラヤンの演奏にしては速めのテンポです。バランス良く響くトランペット。最後の音は短めでした。

五楽章、この演奏では弱音をあまり極端に弱くはしていません。AクラとE♭クラの対比はあまり鮮明ではありませんでした。金管は思い切り入って来ますがちょっと乱暴な感じがあります。77年のライヴと同じ鐘の響きで良い音です。トゥッティの響きはすばらしいです。

カラヤンは60年代~70年代がピークで80年代に入りベルリンpoと対立したり、音楽にも以前の精密さが無くなっているように感じました。
このリンクをクリックすると音源を再生できます。

レオポルド・ストコフスキー指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★★
一楽章、ライヴ録音らしく、少しoffぎみのボヤーッとした響きです。何か腰が重い感じを受けます。テンポの変化は無く、大きな川の流れのように緩やかに流れて行きます。クライマックスでテンポを落としました。ストコ節らしいものは聞かれませんでした。

二楽章、追い立てるような速いテンポです。弦の頂点に続いて出るハープの途中の弦を省いています。とても慌ただしい舞踏会です。

三楽章、コーラングレとオーボエの遠近感はとても良いです。この楽章はテンポの動きもあって大きく濃厚な表現です。低域があまり収録されていないようで、響きが薄いです。夕闇が迫る寂しさはあまり伝わって来ません。ピークが鋭いティンパニ、雷鳴の雰囲気もあまりありません。

四楽章、次第にテンポを速めるティンパニ。速めのテンポですが、極めて普通の演奏です。トランペット、トロンボーンともかなり強く吹いています。最後はかなり速いテンポになり、フェルマーターでも打楽器のロールがありました。

五楽章、独特の表現の低弦。金管は気持ちよく鳴り響きます。低い響きの鐘。トロンボーン、ホルンの怒りの日の後のチューバが凄く遅く演奏します。その後もガクッとテンポを落としてとてもグロテスクな演奏です。金管合奏の怒りの日はマルカートに演奏しました。最後のフェルマーターは、ティンパニとサスーペンドシンバルのロールもありました。

四楽章までは、特に際立った演奏ではありませんでしたが、五楽章のグロテスクさは極まった感じで、このグロテスクを表現するために楽譜を大きく変える演奏はさすがといわざるを得ないです。
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シャルル・デュトワ指揮 モントリオール交響楽団

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一楽章、静寂感があり、間も十分にとった演奏です。シルキーな弦が美しいです。いつもながらに、涼しげな響きです。ホルンはあまりふくよかではありません。「夢と情熱」の表題からすると、情熱の熱っぽいところはあまり感じません。クライマックスでも荒ぶることは全く無く整然としています。

二楽章、冒頭のハープが出る前の盛り上がりも大きくはありませんでした。とても理性的です。舞踏会はとても良く歌い気持ち良く踊れるような演奏です。タメがあったりとても表情豊かでヴァイオリンの艶やかさなどはとても美しいです。

三楽章、オーボエは凄く細く締まった響きではありませんが、美しいです。強弱の変化や楽器の絡みなどは見事です。音楽は決して熱を帯びることはありません。頂点でもコントラバスがエッジを立てて演奏することもありません。感情の爆発とは無縁の演奏です。フランス的なクラリネット。ティンパニの雷鳴が空を覆う感じは良く表現されていますが、このティンパニも爆発はしません。

四楽章、ティンパニの頂点で炸裂するブラスの響きもシャープで美しいです。トランペットもリズミカルで明るい響きです。

五楽章、クラリネットのソロの後の金管は強く吹いているようなのですが、それがエネルギーとなって出てきません。鐘は低い倍音を伴って良い音がしています。あまり表情の無い怒りの日のチューバ。金管はシャープでとても美しいです。金管合奏の怒りの日もあまり力を感じることはありませんでした。

作品の表題はあまり気にせずにひたすら美しく洗練された演奏に徹した感じです。グロテスクなものを感じることは全くありませんでしたが、非常に美しい演奏でした。

クラシック名盤試聴記 ・ベルリオーズ:「幻想交響曲」名盤

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