ベルリオーズ 「幻想交響曲」4

たいこ叩きのベルリオーズ 「幻想交響曲」名盤試聴記

レナード・バーンスタイン指揮 フランス国立管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、最初から感情のこもった歌です。タメがあったり大きく重い音があったり、とても表現力豊かです。いつの間にかテンポは速くなり畳み掛けるような勢いです。音階の上下はかなり速いです。感情の赴くままにテンポが変化しています。生命感と活気に溢れた演奏は、カラヤンのような造形美を追求して磨き上げた演奏とは対照的です。終盤はテンポを落として、情熱が燃え尽きたような感じの演奏です。

二楽章、生き生きとした表情の冒頭。基本的には速いテンポです。舞踏会の華やかさはあまりなく、ちょっと田舎臭い野暮ったさがあります。

三楽章、コーラングレとオーボエは共に舞台上にいるようです。この楽章も速いテンポでどんどん進みます。意外と粘らずにサラッと進んで行きます。ティンパニは両サイドに分かれて置かれていないようで、雷が空に拡がる感じは表現されていません。

四楽章、最初はフワッとした響きのトロンボーン。渋い輝きのトランペット。盛大に盛り上がるティンパニ。途中からすごくテンポが速くなりました。鋭く刻み付けるような弦。狂ったような固定観念。最後の音は凄く短かったです。

五楽章、すごく表情の豊かな低弦。この楽章も速いテンポでバーンスタインの感情のままです。Aクラのソロの最後はティンパニに消されて聞こえません。鮮明なコントラスト。打撃音の強さの割りに余韻が少ない鐘。怒りの日も速いテンポです。造形美よりも感情の表出を優先するバーンスタイン。ちょっと雑な感じもありますが、強い表現意欲が感じられます。猛烈な加速で終わりました。

豊かな歌やタメ。バーンスタインの感じるままに表現しテンポが動いて濃厚な演奏でしたが、その即興性が時に雑になることがあったのが残念な幻想交響曲でした。
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サー・コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★☆
一楽章、消え入るような弱音。ミュンシュの破天荒な演奏の後に聞くととても端正な演奏に感じます。ゆったりと落ち着いたテンポ。大げさな表現もありません。音楽の起伏もそんなに大きくは無く流れの良い演奏です。造形を崩さずに一音一音非常に丁寧な演奏で、好感が持てます。クライマックスでも非常に冷静で、テンポの動きも僅かです。

二楽章、鮮度の高いハープ。ゆったりと優雅な舞踏会です。コルネットが入る版を使っています。歌も奥ゆかしくセンスの良さを感じます。とても上品な演奏で、舞踏会で流れるように踊る姿が想像できます。最後も荒ぶることなく終わりました。

三楽章、非常に遠いオーボエ。基本的には遅めのテンポで、細部まで行き届いた端正な演奏です。テンポが揺れることは無くとても手堅い演奏です。ティンパニも控えめです。

四楽章、この楽章も落ち着いたテンポです。一音一音に神経を集中しているような集中力と丁寧さです。トランペットも美しい。反復がありました。とても丁寧な分、トウッティでの爆発力のようなエネルギー感には不足があります。

五楽章、この楽章でもグロテスクな表現は無く、とても端正です。オケも暴走することなく、抑制の効いた美しい響きです。低い音も混じった柔らかい鐘の響きはとても良いです。チューバの怒りの日は最初の3つの音を強く吹きその後少し弱くなりました。精密機械のように緻密に動くオケ。この精緻さは見事です。最後は少しテンホ゜を速めましたが、分厚い響きは聞かれませんでした。

とても端正で美しい演奏で、冷静に一つ一つ音にして行く緻密な幻想交響曲の演奏でした。ただ、この曲の熱狂や狂気は表現されなかったように感じました。また、トゥッティでの分厚い響きも聞くことができなかったのは残念です。
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イーゴリ・マルケヴィチ指揮 ラムルー管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、ゆっくりと確かめるような導入部。続く弦もすごく遅いです。フランスのオケらしくビブラートのかかったホルン。テンポはよく動いています。予想外に情感豊かな演奏で、ゆったりとしたテンポを基調に大きくテンポが動く演奏には好感が持てます。

二楽章、速めのテンポで不安な雰囲気です。舞踏会になってまた、ゆっくりとしたテンポになりますが、華やかな雰囲気ではありません。この楽章でもテンポが動きますが、マルケヴィチがしっかりとコントロールしているようです。

三楽章、コーラングレはかなり近く、離れたオーボエと対比されます。この楽章でもテンポは動いて歌います。ただ、フレーズの終わりの音の扱いが雑なところが散見されます。また、録音の問題か、またはオケの特質かあまり美しい響きや静寂感は感じません。ティンパニは雷鳴というよりも純粋にティンパニの音です。

四楽章、弱音部分でも極端に音量を落としたりはしません。バストロンボーンのペダルトーンはかなり強いです。残響成分が少ないのか、トランペットも輝かしい響きではありません。最後は凄く短い音で終わりました。

五楽章、クラリネットのソロからテンポは遅くなりました。高い音の鐘。トロンボーンとホルンの怒りの日ではブレスがはっきりと分かります。トゥッティでも色んな音が聞こえる演奏はさすがです。

情感に溢れた演奏でありながらもトゥッティでも細部まで聞こえる精緻な演奏はさすがですが、オケの限界かフレーズの終わりの音の扱いが雑だったり、金管のブレがはっきり分かる幻想交響曲の演奏は残念でした。

ジェームズ・レヴァイン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

レヴァイン★★★
ハッタリなら右に出るものはいないと私は思っているレヴァインなのですが、このCD買った記憶も無ければ聞いた記憶もない・・・・・・果たして演奏やいかに!

一楽章、ベルリン・フィルらしく分厚い低弦。アンサンブルはあまり良くないような感じがしますが・・・・・。さすがに弦だけでもかなりのダイナミックレンジ。それだけに潜在的な表現力はものすごいものを持っていることをうかがわせます。しかし、期待したほど美しい音色ではないのです。
表現も特に感じることもなく、集中力もあまり感じられない。
ちょっと散漫な演奏かな?

二楽章、アクセントの処理が強めで派手な傾向なのですが、音の密度が薄い。密度は薄いけど分厚いサウンドなのだが、微妙にアンサンブルが乱れる。

三楽章、美しい演奏なのだが、カラヤンのように極限まで磨き上げたというような演奏でもないし、レヴァインでベルリン・フィルを聴く価値はどこにあるのだろう?
正直なところ、ここまでは退屈な演奏です。後半に爆演が待ち構えているのか?
リズムの処理と言うか、何かキレが悪いんだなあ。
やはりアンサンブルは乱れます。ベルリン・フィルにしては珍しいくらいところどころで合わないことがあります。
ベルリン・フィルほどのオケが名演を生み出すには、やはり相応の指揮者じゃないとムリなのでしょうか。

四楽章、ティンパニのクレッシェンドがすごい。ファゴットの旋律が妙にテヌートで演奏されている。トランペットの旋律は明るい音色で、断頭台への行進とは無関係に明るい。
カラヤンが指揮するベルリン・フィルに比べると中音域が少し弱いような感じがします。その分、明るい響きにはなるのですが、全体の厚みは削がれてするように思います。
でも、吹っ切れたように明るい演奏には好感が持てます。レヴァインは全く表題音楽としては捉えていないのでしょう。
ここでも、最後のフェルマーターに入る前でアンサンブルが乱れました。

五楽章、さすがにオケは上手いですね。この楽章になると文句無く楽しめます。パワー全開!怒りの日のテューバのソロの一音一音を短めに演奏しています。それに続くホルン、トロンボーンは普通なのですが・・・・・。実に明るい「悪魔の祝日の夜の夢」です!
これぞ、レヴァイン。この明るさ、楽天的な演奏が合っています。

明るく、あっけらかんとした幻想交響曲を聞きたい方は是非どうぞ。音響としての快感を求めるのならこれで良いでしょう。

エフゲニー・ムラヴインスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

ムラヴィンスキー★★★
一楽章、1960年のライブ録音で音は悪い。導入部が比較的テンポが遅かったのですが、それに続く弦の旋律が非常に速い。全体に速いテンポで非常に引き締まった演奏です。
表情もムラヴィンスキーらしく厳しい。またアンサンブルも鍛えられているのがよく分かる演奏でもあります。ただ、録音が悪いので、何を聞いて良いのか、はっきり言って分かりません。
この曲は、オーケストラ・ショーピースのような一面もあって、豪快に派手にアンサンブルもバッチリ決まればかなりの面で合格点になると思うのですが、これだけ録音が悪いとどうしたものか・・・・・。

二楽章、ここでも速めのテンポで進みます。優雅さとも遠いような感じで、淡い恋心とは無縁のような、せき立てるような、どうも私には座りが悪い。

三楽章、冒頭部分はどうしたって遠くから聞こえる草笛には聞こえません。あまりにも近すぎる。全体のバランスからしても木管が近すぎるようで、ちょっと興ざめしてしまいます。
この速いテンポをさらに急き立てて、ティパニが入る、ちょうど中間地点へのもって行き方はさすがにムラヴィンスキーらしい緊張感が出ています。速い、とにかく速いです。

四楽章、かなりダイナミックな導入です。なんだこれは!トランペットの旋律がテヌートで演奏されている。現在では、聞けないような個性的な演奏ですね。

五楽章、録音は悪いですが、オケはやはり上手いですね。細部までしっかり演奏しています。
この楽章はとても激しい演奏です。強烈な鐘の音、金管の咆哮もすごいですが、ムラヴィンスキーがしっかり制御しています。

当日、会場にいた人にとっては、すごいコンサートだったんだろうと想像はできますが、この録音では残念ながら伝わりきらないです。
せめて1970年ごろの録音で残っていれば、評価はかなり違ったものになったのではないかと思います。

投稿者: koji shimizu

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