チャイコフスキー 交響曲第4番2

たいこ叩きのチャイコフスキー 交響曲第4番試聴記

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★★★☆
一楽章、ふくよかなホルンとそれに続く金管の豊かな響きがとても良い。いつものように力みのない自然体に好感が持てます。
ムラヴィンスキーのような凍てつくロシアの大地を連想させるような厳しさはありません。
むしろ暖かみさえ感じる音楽です。少し響きが薄いように感じられるのが軽微な欠点でしょうか。
ただ、ムラヴィンスキーの気高く、いい加減な気持ちで聴く人間を寄せ付けないような強い個性のある演奏ではありませんが、その分庶民的で暖かいチャイコフスキーです。

二楽章、この楽章でも優しい音楽で、この曲の新しい魅力を発見したような気がします。
素朴で田舎くさい音楽の魅力を伝えてくれて良い雰囲気です。

三楽章、音楽の振幅が広いこともありませんし、極端な表情もありませんが、にじみ出るような暖かさはとても心地よい音楽に仕上がっています。

四楽章、テンポは中庸。強烈に前へ進むような推進力はありません。しかし、この暖かみは全楽章を通して持っています。

これまで、思っていたチャイコフスキーの四番のイメージを完全に覆されました。
こんな音楽だったのかと・・・・・。
音楽の深さを改めて感じさせられました。

マヌエル・ロペス・ゴメス/シモン・ボリバル交響楽団

ゴメス★★★★☆
一楽章、豊かに鳴るホルンやトロンボーン。柔らかく美しい弦の第一主題。豊かに歌うクラリネット。第二主題も美しいです。第二主題の後はテンポが遅くなり、クライマックスへ向けてテンポが速くなります。テンポの動きもあり、起伏も激しい音楽のようです。コーダのファンファーレもとても良く鳴り響きます。コーダへ入ってからもアッチェレランドや独特な強弱の変化がありました。

二楽章、美しく歌うオーボエの主要主題。続く弦も南米のオケらしく暖かみのある美しい響きです。歌はありますが、内面から湧き上がるような表現では無く、浅い感じがあります。中間部も良く歌います。ファゴットの主要主題はあまり深味がありません。

三楽章、速いテンポで動くような豊かな表現です。トリオも速いテンポで軽妙なオーボエその他の木管の表現です。ピッコロが入る部分だけテンポが遅くなり、行進曲でまたテンポが速くなりました。主部が戻るとまた一体感のある動きのある表現がなかなか良いです。フルートとピッコロもとても動きのある大きな表現でした。

四楽章、豪快で速いテンポのロンド主題。副主題の表現も豊かです。オケが一体になって動く表現はとても良いです。第二副主題は少しテンポを落として演奏します。三度目のロンド主題の前でテンポを戻しました。若干アンサンブルが緩い感じもありますがなかなかの熱延です。二回目の第二副主題は速いテンポのままです。ファンファーレの後はまたテンポを落として歌います。最後はオケとティンパニの猛烈なクレッシェンドで熱狂的に終わりました。

豊かな表現と強弱の変化やテンポの動きなどもあり、四楽章最後の熱狂的な終結部も圧巻でした。二楽章も浅い表現が僅かな欠点だったように思います。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1971年ライヴ

ロジェストヴェンスキー★★★★☆
一楽章、低いホルンが強く野太い響きのホルン。そしてビブラートをかけて鋭い響きのトランペット。潤いがあって柔らかく美しい弦。滑らかな第二主題。トゥッティはオケの響きが良くブレンドされて豊かでスケールの大きな響きです。ムラヴィンスキーの凍りつくような冷たい響きとは違って温度感の高い演奏で、熱気を感じます。トロンボーンの叫びもかなり強烈でした。弱音もかなり抑えていて、強弱の振幅は相当大きいと思います。コーダは途中で少しテンポを落としましたが、かなり速いテンポで追い立てました。

二楽章、弦に主要主題が移るとクラリネットが主題を消すくらいの大きさで演奏します。ストレートな表現です。中間部は速めのテンポでとても活発な動きの演奏です。暖かく哀愁を感じさせるファゴットの主要主題。

三楽章、コントラバスが分厚いスケルツォ主題です。トリオは速めのテンポで色んな楽器の受け渡しが明瞭で、はっきりとした動きがあります。

四楽章、物凄いエネルギーが爆発するロンド主題。第二副主題に入ってもホルンが早い段階からかなり大きく演奏します。そしてトロンボーンの咆哮はすさまじいものです。シンバルも凄い音量です。ファンファーレへ向けて少しアッチェレランドしました。ファンファーレの間もトロンボーンが凄く強く入って来ます。コーダに入って少しテンポを速めますが、最後でシンバルの強烈なクレッシェンドがありました。最後の音が鳴り終わる前に拍手と歓声が上がります。生でこの演奏を聴いていた人たちはまさに熱狂したことでしょう。

テンポの動きや大きな歌などはありませんでしたが、極限まで抑えた弱音から金管の強烈な咆哮。そしてシンバルの大音量。聴衆を熱狂させる要素を十分に備えた演奏でした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、冒頭から強烈な金管の吹きまくり!続く木管の旋律はあっさりしていて、この曲独特の陰影はあまり感じません。
金管の切れ味鋭い音が魅力的です。木管も美しい響きですが、明るい音色なので、チャイコフスキーの暗さや寒さはあまり伝わってきません。
ホルンの強烈な咆哮が印象に残ります。

二楽章、あっさりしています。金管には限界かと思うほどの音量を要求していますので、静かな部分でも歌いすぎるとコテコテになるので、意識的に歌うことを避けているのでしょうか。
500gのステーキのあとにサラダがでてきたような感じで、ちょうど良いといえば、良いのですが・・・・・・。
あまり表情はありませんが、オケは上手いので、とても美しい演奏です。

三楽章、この楽章は速めのテンポで、さらにあっさり。オケの名人芸を聞かせてくれます。

四楽章、ムラヴィンスキーやショルティのような猛スピードではありませんが、鳴り物も豪快に鳴るので、なかなか良いです。

期待したほどの爆演ではありませんでしたが、堂々とした良い演奏でした。

ウラディミール・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

フェドセーエフ★★★★
一楽章、意外と細い響きのホルン。鋭い響きのトランペット。あまり歌うことなく淡々と進む第一主題。あまり表現やテンポの動きなどは無く、ちょっと 一本調子な感じがします。金管の咆哮もありません。とても抑制の効いた演奏です。トランペットに比べるとホルンが明らかに弱いです。コーダに入るとテンポ が速くなります。

二楽章、豊かな残響を伴って美しく響くオーボエの主要主題。この楽章でも感情を込めるような表現はありません。中間部の後半ではテンポを落としてたっぷりとした表現をしました。初めて感情を込めた表現をした部分のように感じました。

三楽章、フレーズの中ではアクセントなどは強く無く、自然な流れですがポイントポイントではかなり強くアクセントを演奏しています。最初はテヌート気味に演奏されるトリオの主題。クライマックスはかなり活発でした。

四楽章、かなり速めのテンポで勢いのある演奏です。ムラヴィンスキーのテンポより僅かに遅い程度です。金管が咆哮することはやはり無く、ロシアのオケのパワーが炸裂するような演奏を期待すると裏切られます。トランペットのアーファンファーレの最後で遅くなりました。ホルンの前まではかなりテンポを落として濃厚な表現でした。ホルンからは元のテンポに戻りそのまま最後まで走りました。

録音の問題なのかも知れませんが、ロシアのオケのパワー炸裂の演奏ではありませんでした。あまり大きな表現も無く淡々とした演奏でしたが、四楽章の勢いはさすがでした。
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クルト・ザンデルリング/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ザンデルリング★★★★
一楽章、穏やかなホルンに続いて鋭く突き抜けて来るトランペットのファンファーレ。ザンデルリングらしくゆっくりと柔らかく歌う第一主題。優雅に舞うような演奏です。第二主題も非常にゆっくりとしています。展開部の前のクライマックスはとても雄大です。展開部も遅いですが、あまり遅さを感じさせません。再現部の前のトロンボーンが吠える前にティンパニが激しくクレッシェンドしました。美しい第二主題の再現。コーダに入って行進曲調になってからアッチェレランドしました。

二楽章、テンポが遅いこともあってあまり大きく歌いません。続く弦は暗く静かに切々と歌います。トリオは少しデンポも速まって軽くなります。主部が戻るとまた、弦が切々と歌い木管のオブリガートが滑らかです。

三楽章、柔らかく穏やかなスケルツォ主題。アクセントも強く無く滑らかに流れて行きます。トリオは縦の線をきっちりと合わせるように意識しているような演奏です。

四楽章、ザンデルリングのイメージはもっと遅い演奏をイメージしていましたが、思ったほど遅くはありません。オケが荒れ狂うような演奏では無く、とても丁寧に美しく演奏されます。ホルンのファンファーレの合間に登場する弦の穏やかな響き。最後までテンポを速めること無く堂々とした足取りの演奏でした。

この演奏は、ロシアの力みなぎる演奏ではありません。明らかにヨーロッパの洗練された音楽です。終始力みの無い美しい響きで通しました。表現も大きな表現は避けて上品な演奏を実現しました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★☆
一楽章、豪快に鳴り響くファンファーレ。内面から湧き上がるような歌を聞かせる第一主題。表面にワックスがかかっているような滑らかな演奏です。天上の音楽のような美しさの第二主題。クライマックスではティンパニが強いいバランスで響きます。ファンファーレやトロンボーンの叫びはかなり強烈ですが、その他の弦が主体の部分はあまり強くありません。コーダへ向けてアッチェレランドしました。最後もテンポを速めて終わりました。

二楽章、弦に移った主要主題は透明感があってとても美しいです。トリオでも表面にワックスがかかったような滑らかさは変わりません。主要主題が戻ってもあまり大きな表現は無く、ひたすら美しい演奏に徹しているような感じがします。

三楽章、軽い演奏ですが、集中力は高いです。トリオは柔らかく緊張感が緩み穏やかになります。行進曲も柔らかいトランペットです。ピッコロはとても活発に動きます。終結に向けてテンポを速めて切迫します。

四楽章、ベルリンpoとのスタジオ録音よりテンポは速いです。トランペットのエネルギー感はやはり強いです。金管やティンパニが弦にかぶってくるような感じで、弦の大人しさと金管やティンパニの強さがアンバランスです。ファンファーレの後静かにホルンが出てから僅かにテンポを速めましたが、追い立てるようにテンポを煽るような演奏では無く、比較的落ち着いた演奏でした。

滑らかで美しい弦と木管に対して、強烈で力強い金管とティンパニがアンバランスでした。感情を込めて歌うような表現も無く、ひたすら美しく演奏することに徹したような感じがしました。
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クラウディオ・アバド/シカゴ交響楽団

アバド★★★☆
一楽章、少し距離があって伸びやかなホルン。強いですが柔らかいトランペット。消え入るような弱音で演奏される第一主題。どの楽器も伸びやかで美しいです。純度が高く清潔感のある演奏です。第二主題もとても抑えた音量です。弱音の繊細さをとても重視した演奏のようです。二度目の大きなトゥッティはゆっくりとしたテンポでトランペットなどはあまり強奏はしませんでした。ホルンはかなり強く演奏しましたが。静かでロシアの冬の寂しさを感じさせるような表現です。トロンボーンの叫びはあっさりとしていました。深い感情移入はありませんが、実に整った美しい演奏です。コーダも興奮を煽るような加速はしませんでした。

二楽章、オーボエの主要主題もとても音量を落としています。主要主題が弦に移ってからは奥ゆかしい歌ですがとても豊かな響きが印象的です。ドロドロになるようなことは皆無でとてもスマートに演奏が進んで行きます。

三楽章、アクセントをあまり強く演奏せずに流れの良い演奏です。トリオのオーボエはとても良く歌いました。スケルツォ主題が戻ると緊張感が高まったような感じがします。

四楽章、ゆっくり目のロンド主題。オケのエネルギーが発散されるような爆発はありません。とても紳士的でスマートです。ファンファーレの前のトロンボーンとトランペットは余裕綽々です。コーダに入ってもテンポはそのままで金管はテヌートぎみの表現です。最後で僅かにテンポが速くなって終わりましたが、興奮を煽るような熱気を感じるような演奏ではありませんでした。

弱音の繊細さに重点を置いたような真面目で純粋で、清潔感に溢れる演奏でした。その分狂気のような熱狂とは対極にあるような演奏で、これだけ冷静な演奏も珍しいと思います。あまりにも真面目過ぎて面白みはありませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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