チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」ベスト盤アンケート

たいこ叩きのチャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、冒頭から表現が濃厚です。カラヤンのねちっこさが「悲愴」にはピッタリなようです。
また、色使いが鮮やかでとてもカラフルな音楽です。アバドの演奏で感じた上滑りもなく、オケが全体で一つの音楽を演奏しています。また、オケが艶やかでとても美しい。
起伏も大きく、表現力豊かです。
ブラスセクションの鳴りも抜群!豪華絢爛です。この豪華なサウンドが華美と取られる場合もあるのでしょう。
しかし、この「悲愴」の演奏に関しては、全く文句がありません。むせび泣くようなトロンボーン。絶妙な音色で盛り上げるティンパニ。すばらしい名人芸のオンパレードです。

二楽章、5拍子の揺れが心地よい演奏です。オケ全体が同じ揺れを感じながら演奏しているのが、よく分かります。饒舌な語り口。人工的な演出だと言われれば、そうかも知れません。
でも、それを狙ってできるカラヤンとベルリンpoはさすがに凄いと言わざるを得ません。

三楽章、かなり快速に進みます。やはり音楽に前へ行こうとする力があります。ティンパニの音色感にも感服します。ベルリンpo全開のパワーも凄い。文句なし!

四楽章、三楽章から一転して泣きが入ります。内面から沸き起こってくる悲しみが表出されていて、一緒に沈んで行けます。そしてさらに深い悲しみへと・・・・・・。
すばらしい演奏でした。アンチカラヤンの人にとっては、この華美な部分が耐えられないのかもしれませんが、この表現力はさすがとしか言いようがありません。
個人的には、この後録音したウィーンpoとの録音よりも、こちらの演奏が好きです。
また、オケの機能としては同等のレベルのシカゴsoを指揮して凡演の限りを尽くしたアバドはいったい何たったんだろう。

イゴール・マルケヴィチ/NHK交響楽団

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一楽章、太いファゴットの音、遅いテンポで注意深く音楽が進んで行きます。
凄い緊張感のある演奏です。NHKホールの残響が少ないせいもあると思いますが、輪郭のくっきりしたシャープな演奏になっています。
一つ一つの楽器も生き生きとしています。また、この遅いテンポでも緊張感を切らさずに演奏が続いています。
この頃になるとN響の金管もすごく上手くなっています。すばらしい響きと激しさを表現しています。
凄い!金管の咆哮!
すばらしい一楽章でした。マルケヴィチ恐るべし!

二楽章、一転してサラリとした演奏です。最後もものすごく遅いテンポになりました。

三楽章、この楽章も遅めのテンポの部類だと思います。N響大熱演です。

四楽章、弦楽器の繊細な音色が美しいです。起伏の非常に激しい演奏です。
こんなに凄い「悲愴」が日本で演奏されていたとは・・・・・・!

ネロ・サンティ/NHK交響楽団

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一楽章、柔らかいファゴットです。同じN響でもマルケヴッチの時とはかなり違う音がしています。
ふくよかでしなやかな音楽です。金管の強奏でも非常に美しい音がしています。
自然な歌があって、響きがふくよかですごく癒し系の演奏のような感じがします。音、一つ一つの扱いがとても丁寧です。ものすごく分厚い低音の上に音楽が乗っているので、安定感抜群です。
金管の咆哮があっても、必ず下で支えている楽器の方がバランス的に上回っているので、常に暖かみのあるサウンドで音楽が作られています。これが徹底されているところがすばらしい!
これだけ骨格のしっかりした音楽作りをするイタリア人指揮者は稀なのではないかと思います。とにかく音楽が豊かです。

二楽章、この楽章も非常に豊かな響きがしています。音楽を聴くという至福の時を感じさせてくれる演奏です。
こんなに豊かな音楽を持っている人が、どうして世界のトップオケを指揮する機会に恵まれないんだろうと不思議に思うくらい、すばらしい演奏です。

三楽章、リズムの切れもとても良いです。チャイコフスキーからイメージする寒色系の響きではありませんが、これはこれで良いと納得できる演奏です。
N響ってこんなにも上手くなっているんですね。音の洪水のような次から次から音楽が噴出してくるようです。

四楽章、強烈なティンパニの一撃がありました。うわぁ~!とにかく凄いとしか言いようが無い。銅鑼の音も良かったなあ。すばらしい演奏でした。
次は是非このサンティにN響の音楽監督になってもらいたいものです。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★★★★
一楽章、豊かなファゴットの音から始まりました。残響が豊かに収録されています。スタジオ録音ではないかと錯覚するくらい綺麗な音がしています。
ふくよかな響きです。音楽はゆっくり進みます。演奏の集中力も高く音楽の起伏も大きい演奏です。
いろんな楽器が交錯する絶叫部分も凄くパワフル。なかなかの熱演です。これだけ燃え上がる朝比奈の演奏ははじめて耳にするかもしれません。
ベートーヴェンで見せる姿とは違う強いエネルギーの爆発があります。
弦楽器も大きなうねりとなって押し寄せてくるような感覚になります。

二楽章、艶やかで艶めかしい音楽です。情感を込めた音楽が迫り来るような実に生き生きとした演奏でしょう。

三楽章、ゆっくりしています。とのパートも表現が積極的で、生き物のように生き生きした音楽になっています。録り方もあるのだと思いますが、どの楽器も張りのある明るい音がしています。
終盤に来て少しテンポが速くなりました。とても若々しく熱気の溢れる演奏です。

四楽章、深遠の淵へ落ちて行くようなファゴットもとても情感溢れる演奏でした。このCDは20年ぐらい前に聞いて、そのときは全く感動しなかったのに、久しぶりに聴いてみて、全く違う気持ちになりました。感動です。すばらしいです。
やはり、同じ演奏を同じ人間が聴いても、歳月を重ねると全く違う感想を持つものなんですね。
あの時には、内面から溢れ出る音楽を感じ取ることができなかったんでしょう。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、黒い曇天の中にファゴットの序奏が沈み込むように響きます。透明感の高い弦と鮮明な色彩の木管。繊細な第一主題がゆっくりとしたテンポで示されます。弱く羽毛に触れるような肌触りの繊細な弦の旋律の第二主題。とてもゆったりと朗々と歌います。第二主題部の中間部もゆったりとしたテンポで、木管をくっきりと浮かび上がらせて歌う演奏です。間もたっぷりと取ります。第二主題部の主部がもどり再び繊細な弦が大きく歌います。凄い遅さで普通の指揮者がこのテンポで演奏したら耐えられないかも知れませんが、チェリビダッケの演奏は透明感があり、押し寄せる波や大きな歌もあるので聴き続けることができます。展開部も全開と言うほどの強奏ではありませんが、スケールの大きな広大な空間を連想させる演奏です。再現部に入ってから強弱のデフォルメがありテンポも速めました。トロンボーンの嘆きは他の金管やティンパニも含めてまるで戦闘機の空中戦のような強烈さでした。天に昇るようなロ長調の第二主題。クラリネットは凄い弱音からクレッシェンドして第二主題を歌います。弦のピツィカートに乗って歌うトランペットが柔らかく響きます。

二楽章、一般的な演奏より若干遅いかなと言う程度のテンポです。この楽章でも豊かに歌います。中間部もテンポを維持して進みます。主部よりも沈み込む音楽ですが、淡々と進んで行きます。主部が戻り薄明かりが差すような音楽です。チェリビダッケは間を空けて流れを止めるるようなことはせずに一気にこの楽章を進めて行きます。

三楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポで弦の優しい響きが印象的です。前半は大騒ぎすることなく穏やかに進みます。ティンパニのロールも穏やかで、荒れ狂うような強打はしません。次第に強くなる金管ですが、しっかりとコントロールが効いていて、安定しています。シンバルも奥まったところから美しく響いてきました。クライマックスも美しい響きでした。

四楽章、暗闇の中から響いてくるような主題が大きなうねりになって、また静まって行きます。ゆっくりと深みに落ちて行くようなファゴット。凄く感情が込められた、まさに悲愴です。このゆっくりとしたテンポに込められた音楽の深みを何と説明すれば良いのでしょう。クライマックスから音量を落としながらテンポも落としました。また、次第に暗闇の中に消えて行きました。

非常にスケールが大きく、透明感も高く、深淵な演奏でした。

ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団

ゲルギエフ★★★★★
一楽章、暗く重く沈みこむ序奏。しっかりと鳴って力強い第一主題。リズムの刻みも明快です。また、原色の濃厚な色彩もとても強いです。残響を伴って遠くから響くトランペット。ゆっくりとたっぷりとうねるように歌う第二主題の第一句。展開部の前もものすごく遅いです。展開部は激しいですが、低域が薄く厚みのある響きではありません。表現は思い切った強弱の変化などもありなかなかキレの良い演奏です。生き生きと豊かな表情で動くオケは見事です。トロンボーンの嘆きもすごくゆっくりと、そして強烈に演奏されます。コーダもゆっくりと心を込めた歌でとても美しいです。

二楽章、とても大きな表現で揺れ動きます。一楽章からは一転して速いテンポです。少し暗く沈むトリオですが、やはりテンポは速めで悲しみを振り切るように進みます。

三楽章、この楽章も速いテンポでメリハリのある表現で活発に動きます。とても有機的に動く弦と木管。オケのパワーが炸裂するような咆哮はありませんが、冷静に整ったアンサンブルです。

四楽章、たっぷりとしたタメがあってグッと迫って来る第一主題。ファゴットが太い音で悲しみに沈んで行きます。テンポの動きもとても大きいです。激しい部分はかなり激しく演奏しています。ドラが鳴ってからトロンボーンが大きく歌います。波が寄せては引きながら静かに終わります。

とても濃厚な色彩と歌で、思い切った強弱の変化のある表現でキレもありました。悲しみに沈んでゆく四楽章も素晴らしかったです。
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レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

バーンスタイン★★★★★
一楽章、ゆっくりとねっとりとした序奏。凄く遅い第一主題。しばらくすると少しテンポが速くなりますが、それでも普通の演奏に比べると遅いです。トランペットが濃厚な色彩で入って来ます。広々とした第二主題第一句。これもとても遅いです。バーンスタインの感情に従ってテンポが動いています。再現部はその前の弱音から大きなダイナミックレンジで爆発します。トロンボーンの嘆きは突き抜けるように浮き上がって強烈に叫びます。美しいコーダのトランペット。続く木管も尾を引くように音がたなびいて行きます。

二楽章、この楽章は特に遅いことはありません。とても良く歌う主要主題。ライヴ録音ですが、とても美しい響きです。中間部は大きく暗転せずに正確に進んで行きます。

三楽章、どっしりと落ち着いたテンポです。とても静かに進みます。金管が入っても余裕のある美しい響きです。ティンパニのロールや金管の強い色彩が空気を変えます。大太鼓のロールが入った後は堂々とした行進です。

四楽章、確かに遅いですが、そんなに遅いとは感じさせない第一主題。一音一音をとてもしっかりと聞かせてくれます。悲しみを誘うファゴット。第二主題もゆっくりと感情を込めて演奏します。テンポも大きく動きます。この遅いテンポはバーンスタインにとっては必然だったのでしょう。この世との惜別の表現にはこのテンポでなければ表現できなかったのだと思います。聞いていてこちらも目頭が熱くなります。ドラが入る前は壮絶な演奏になります。ドラはこの演奏にはこの音しか無いというような絶妙な響きでした。力が尽きるように次第に弱くなって終わりました。

ゆっくりと濃厚な表現で色彩もとても豊かでした。バーンスタインの感情を包み隠さず吐露した演奏でした。でも金管が咆哮することは無く、ライヴでありながら非常に美しい響きの素晴らしい演奏でした。遅いテンポの四楽章はこの世との別れを惜しむバーンスタインが一音一音に必然性を込めたような表現でした。
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小澤 征爾/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2008年ベルリンフィルハーモニーホールライヴ

小澤★★★★★
一楽章、アゴーギクを効かせて歌う序奏。ゆっくりと噛みしめるような第一主題。分厚い響きでは無く、サラッとしたあっさりした響きです。とても繊細で微妙な表現を聞かせています。第二主題の第二句は伸びやかに歌います。ゆったりとした展開部。突き抜けて吠えるトランペット。トロンボーンの嘆きも叫ぶように強く演奏されます。澄んで美しいコーダ。

二楽章、チャーミングに揺れ動く主要主題。オケが一体になって高い集中力で訴えかけてくる中間部。濃厚ではなくサラサラとした透明感のある美しさです。

三楽章、とても繊細な弦。ゆったりとしていてデリケートな表現です。金管が吠えることは無く、常に美しい演奏です。

四楽章、深く感情のこもった第一主題。シルキーでとても繊細で美しい第二主題。悲しみに沈みこんで行くようなコーダではありませんでしたが、ライヴでこれだけ美しい演奏を聞かせてくれるは珍しいのではないかと思います。

繊細で、シルキーで非常に美しい演奏でした。この演奏を聞くと海外での小澤の評価が高いのが分かるような気がしました。小澤の美学を貫き通した素晴らしい演奏でした。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/バイエルン放送交響楽団

ショルティ★★★★★
一楽章、柔らかい音で歌うファゴット。速めのテンポでくっきりと力強い第一主題。メリハリがはっきりしていて切れ味鋭く、色彩感も豊かな演奏です。独特なうねりがあるような第二主題第一句。第二句あたりからテンポが速くなります。展開部の直前は楽譜通りバスクラリネットでは無くファゴットです。激しく動く展開部。金管も強く入ります。オケのアンサンブルは見事です。シカゴsoとの演奏のように金管が強いです。トロンボーンの嘆きもテンポは速いですが、かなり強く吹かれます。第二主題の再現も起伏の激しい表現です。

二楽章、俊敏で賑やかな主要主題。ショルティのボクシングのような指揮にオケが良く反応しています。中間部は一見淡々としているようですが、沈んだ表現もキッチリとしています。

三楽章、大きな躍動感のある演奏です。それぞれの楽器キリッと立っていて精度の高い演奏です。表現も厳しく動きます。とても明快に鳴り響く演奏がとても心地良く感じます。バイエルン放送soがシカコsoのような筋肉質の響きになっています。

四楽章、動きのある第一主題と静かに止まったような第二主題の対比が見事です。コーダの前も金管がかなり強く演奏します。

悲しみに暮れるような表現はありませんでしたが、オケを見事にドライブした筋肉質の演奏は、生き生きとした躍動感に満ちたもので、とても聞き応えがありました。
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マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ヤンソンス★★★★★
一楽章、繊細で優しい第一主題。鋭く鳴り響くトランペット。途中でグッと音量を落とす第二主題第一句。豊かに歌う第二句。厚みがあって深い響きの展開部。どっしりしていて激しさはありませんが、トランペットが入ると強烈に激しさが高まります。トロンボーンの嘆きに向けて次第に激しくなって来ます。トロンボーンの嘆きはゆっくりとしたテンポであまり激しく咆哮しません。とても良く歌うコーダ。

二楽章、溶け合ったマイルドな響きで美しい主要主題。悲しみを吐露するように迫って来る中間部。それでも響きは包まれているようにマイルドです。NHKホールでのライヴのようですが、音響条件の悪さをカバーして美しい響きの演奏です。

三楽章、どっしりと落ち着いたテンポです。ホルンが強く豊かな表現をします。弱音では繊細な動きをする弦。大太鼓のロールが入る前で突然音量を落としてクレッシェンドしました。見事に鳴るシンバル。最後のシンバルの前でも音量を落としてクレッシェンドしました。

四楽章、シルキーでとても繊細な第一主題。すごく静かで柔らかくここでも非常に繊細な第二主題。コーダも非常に美しい。ヤンソンスの表現は大きな表現はありませんが、内面から湧き上るような表現でとてもしぜんでした。

非常に美しく充実した演奏でした。ライヴでこれほど繊細な響きを聞かせてくれるオケは滅多に無いでしょう。しかも音響効果としては不利なNHKホールでこれだけ美しい演奏をしたことは驚きです。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

スヴェトラーノフ★★★★★
一楽章、太いファゴット。大きく歌う弦。濃厚な色彩感です。ゆったりとしたテンポの中にも動きのある第一主題。尾を引くようにねっとりとした第二主題第一句。轟音を鳴り響かせる展開部の弦。トランペットも激しく咆哮します。凄く速いテンポで煽り立てます。トロンボーンの嘆きも遠慮なく咆哮します。このあたりはさすがスヴェトラーノフと言ったところか。コーダのトランペットもねっとりとしています。

二楽章、濃厚に歌う主要主題。速めのテンポでぐいぐいと進んで行きます。中間部も速めのテンポですが、ここでも濃厚な表現は変わりません。

三楽章、気持ちよく鳴り響く金管ですが、しっかりと統制は取れています。

四楽章、ゆっくりと感情を込めた第一主題。柔らかく微妙な表現の第二主題。オケが一体になって湧き上るような凄みのある響き。うねるようなコーダ。悲しみにのた打ち回るような感じの表現です。

ねっとりとした濃厚な表現と濃厚な色彩の演奏でした。低域の解像度が低いからそう聞こえるのかも知れませんが、オケが一体になって、のた打ち回るような悲しみの表現のコーダはなかなか見事でした。
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アンドリス・ネルソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ネルソンス★★★★★
一楽章、感情を込めて豊かに歌う序奏。柔らかく美しい第一主題。ロシアの寒さを感じさせる響きです。トランペットは柔らかく輝かしい響きですが、かなり余裕を残した演奏です。ゆったりとした第二主題第一句。明るく日が差すような第二句。柔らかく厚みのある展開部。トロンボーンの嘆きは音量を抑えていますが、悲しみは十分に伝わってきます。厚みのある柔らかい響きはとても美しいです。ゆっくりと豊かに歌うコーダのトランペットとフルート。

二楽章、速めのテンポで活動的な主要主題。テンポも動いてとても明るい演奏です。切々と歌う中間部。ティーレマンの演奏と同じようにティンパニが大きくクレッシェンドします。柔らかく豊かな響きはとても心地良いものです。

三楽章、柔らかくありながら繊細な演奏です。音が荒れることは全くありません。大太鼓のロールが入る部分も分厚くどっしりとした堂々とした王者の風格のような演奏です。

四楽章、悲愴感が十分に伝わる第一主題。第二主題も悲しみでうつろになって行く感情を上手く表現しています。重い響きのドラ。波が押し寄せては引いていくようなコーダ。

柔らかく美しい響きで、分厚くどっしりとしたトゥッティの安定感のある演奏でした。悲しみの表現も十分で感情の込められた演奏は素晴らしかったです。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ロンドン交響楽団

ホーレンシュタイン★★★★★
一楽章、ゆっくりと感情を込めて歌う序奏。硬質で濃厚な色彩です。重いコントラバス。明快な第二主題第二句。引きずるような粘りの展開部。一音一音がとても重いです。強烈に咆哮するトランペット。テンポの動きも迫って来るような迫力です。トロンボーンの嘆きもかなり強烈ですし、その前にトランペットのクレッシェンドも凄いものでした。

二楽章、ゴツゴツとした肌触りの主要主題。変化を克明に表現しています。速いテンポであっさりとした表現の中間部。主部が戻るととても生き生きとした表現です。

三楽章、一つ一つの音にとても力があります。とても積極的で、それぞれの楽器が強く主張します。物凄いエネルギーです。

四楽章、深く感情を込めた感じはありませんが、悲しみがにじみ出てくるような感じです。第二主題も明快に鳴ります。叩きつけるような激しい演奏。ゴーンと響くドラ。崩れ落ちるようなコーダ。

とても音に力があって、濃厚な色彩と硬質な響きで振幅の非常に大きな演奏でした。深く感情を込めるような表現ではありませんでしたが、作品から自然ににじみ出る悲しみが上手く表現されていました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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