チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」3

たいこ叩きのチャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」名盤試聴記

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団


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★★★☆
一楽章、テンポは速めですが、情感たっぷりの演奏です。録音年代の関係もあって、ダイナミックレンジかなり狭いです。
音楽がストレートにぶつかってきます。それはそれで魅力的なのですが、カラヤンの語り口の上手さの方が、「悲愴」の演奏には合っているような気がします。

二楽章、緩急の差を大きくとった演奏で豊かな表現の演奏です。特にテンポを遅くした部分は惹きつけられます。

三楽章、四番の録音には、もう少し奥行き感があったのですが、この録音は平面的な感じで、音楽も浅く感じてしまいます。
思いっきり鳴るシンバルが気持ちいい。でもこのシンバルも安物だろうなあという音がしています。
ソ連指導部は、「安い楽器でも良い音を出せ!」と言って、予算をつけなかったのでしょう。

四楽章、悲しみの淵へ落ちて行く表現は作為的なところがなく、ストレートに伝わってきます。

朝比奈 隆/新日本フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、N響のサンティの録音に比べるとオケは遠いです。サンティの録音はかなり近い位置に音場が展開しましたのでこの録音が適度な距離感かもしれません。
一連のベートーヴェンの録音同様、テンポはかなり遅いですが、さすがにベートーヴェンと違って、テンポが動いてロマンティックな演奏です。
繊細な弦楽器が美しいです。木管の表現も豊かで、朝比奈も積極的な表現をしています。
力みのない、伸びやかなトランペットの音色が気持ちいい。テンポが遅い分、感情のうねりのような表現はすばらしいです。
テンポの揺れに合わせて音楽に身をゆだねるのも良いものです。

二楽章、中庸です。

三楽章、ゆっくりです。柔らかい演奏ですが、金管の伸ばす音を押すのはいただけません。ティンパニのロールに強烈なアクセントには驚きました。

四楽章、朝比奈の姿勢は基本的に自然体なので、チャイコフスキーのような情感たっぷりな作品の場合は、過剰な演出などはまず無いので、語り口勝負のような器用な演奏にはなりえません。

この、ほとんど直球勝負のような演奏にも魅力は感じますが、やはり朝比奈はブルックナーやベートーヴェンで本領発揮のような気がします。

上岡 敏之/ヴッパタール交響楽団

icon★★★☆
一楽章、とてもゆっくりとした出だし。とても長い間。独特の表情付け。何か起こりそうな予感を感じさせる冒頭でした。強弱の変化に富んだ第一主題以降。あまり奥行き感の無い金管。第二主題に入る前でかなりテンポを落としました。テンポがよく動きます。展開部の前のバスクラのメロディでもかなりテンポを落としたようです。オケの響きに分厚さはありません。トロンボーンの嘆きもテヌートで控え目でした。ロシアの濃厚で強烈な音楽ではなく、歌や間を伴った独特の音楽を作ろうとしているようです。

二楽章、速目のテンポでスタートしました。上岡は独特の間を持った指揮者のようです。

三楽章、柔らかい音が心地よい始動です。かなり抑制の効いた演奏で、導入部分は爆発しません。極めてソフトな演奏です。金管が突き抜けて来ることもなく、穏やかな音楽になっています。微妙な強弱の変化が独特で、印象的な表現です。大太鼓のトレモロにトロンボーンの旋律が乗る部分でも大太鼓が勝っているような感じで、管は控え目です。ただ、とても表現が豊かで、一つのメロディーの中にも強弱の変化があってとても面白く聴かせてくれました。

四楽章、アタッカで入りました。ファゴットが陰鬱に下降していった最後も独特の歌いまわしがありました。金管が入る部分では、少し弱めに入って山を作るような感じの演奏です。クライマックスでも決して咆哮などはしません。とても抑制の効いた演奏です。

とても念入りなリハーサルを繰り返して表現を徹底した演奏だったと思います。現在の指揮者の中ではとても個性的な部類だと思います。今後の活躍に期待したい指揮者の一人です。

ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク★★★
一楽章、陰鬱な旋律を演奏するファゴット、続く木管や弦も誇張した表現はなく、淡々としています。
テンポも劇的に動かすこともありません。作品そのものに語らせるような演奏です。余裕たっぷりの金管の響きがコンセルトヘボウに響くのが心地良いです。
ハイティンクの音楽は力まず、伸びやかでしなやかな音楽が魅力です。
過不足無く、余裕を残して演奏する金管セクションも非常に美しいです。
テンポが動かないので、劇的な演出にも乏しい部分はあります。このへんは好き嫌いの分かれるところかもしれませんが、純音楽としての完成度は高いのではないかと思います。
また、このような演奏スタイルだから、どんな作品を演奏しても一定レベルを保つことができるのも、ハイティンクのプロとしての良さですね。また、逆にファースト・チョイスにもなりにくいというところはハイティンクの弱みでもあるかと思います。

二楽章、とてもチャーミングな木管です。コンセルトヘボウはホールと一体になった音色の魅力は他のオーケストラにはないものがあります。
クソ真面目とも言えるほどのハイティンクの指揮が音楽の揺れをまり生み出さないので、少し音楽が硬いように感じます。
5拍子の曖昧な揺れをもっと表現して欲しいと感じます。

三楽章、堂々としたテンポでブラスセクションの鳴りも抜群で、気持ちいい。

四楽章、小技が利かないハイティンクが切々と音楽を語りかけてくるようなこの楽章。大げさな表現がないところにかえって好感が持てる演奏です。

ジェームズ・レヴァイン/シカゴ交響楽団

icon★★★
一楽章、ゆっくりとしたテンポで深く歌うファゴット。一転して速いテンポの第一主題。金管は豪快に入ります。甘美な第二主題。シルキーな弦。滑らかな木管ともに美しいです。展開部でも見事に鳴り響く金管、咆哮と言っても良いような鳴り方です。トロンボーンの嘆きはあまり壮絶さはありませんでした。

二楽章、優雅に歌います。中間部はさほど暗い雰囲気は無く、表題を強く意識した演奏では無いようです。ティンパニは速いリズムを正確に刻んで行きます。

三楽章、ゆっくりとしたテンポで始まりました。次第にテンポを速めて行きます。奥まったところから輝かしいトランペットが響きます。気持よく鳴り響く金管。オケの上手さは存分に発揮されます。堂々とした行進曲です。

四楽章、悲しみを強く意識した演奏には感じません。どこか暖かい感じがします。

聞き終えても深い悲しみが残るような演奏ではありませんでした。レヴァインらしあっけらかんとした演奏でした。ただ、オケの上手さは特筆ものです。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★
一楽章、冒頭から深く歌う序奏。弱々しく繊細な第一主題。鋭く轟くトランペットですが、美しいです。とても感情のこもった第二主題第一句。滑らかですが、寂しさを感じさせる第二句。展開部は意外と薄っぺらい響きです。トロンボーンの嘆きも泣き叫ぶような大きな表現では無く、比較的落ち着いた表現でした。

二楽章、この楽章もシンプルで薄い響きですが、歌はとても豊かです。中間部も切々と歌います。主部が戻るとまた伸びやかな歌です。ウィーンpoらしい濃密な色彩感がとても良いです。

三楽章、速いテンポでねっとりと艶やかなヴァイオリン。強弱の振幅はあまり大きくありません。大太鼓の入る部分でも金管は全開にはならず、速めのテンポであっさりとした演奏でした。最後は雪崩れ込むように終わりました。

四楽章、流れるように進んで行きます。あまり悲しみに打ちひしがれるような感じはありません。

豊かな表現で良く歌う演奏でしたが、トゥッティの響きが薄く、強弱の振幅もあまり大きくありませんでした。また、四楽章が悲しみに沈んでゆくような感じがあまり無かったのが少し残念でした。
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クラウディオ・アバド/シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ

アバド★★★
一楽章、波が押し寄せるように押したり引いたりする序奏。優しく流れの良い第一主題。生き生きとしたエネルギーを発散する若いオケ。第二主題の第一区も柔らかく優しい演奏です。展開部はあまり厚みの無い弦と強い金管で、金管が登場すると全体を支配してしまいます。アバドの演奏にしてはかなり金管が激しく吠えています。トロンボーンの嘆きもそれまでの勢いそのままに激しいです。元気に歌うコーダのトランペット。

二楽章、伸びやかで豊かな歌の主要主題。あまり暗く沈まない中間部。中間部ではメロディーが繰り返される二回目の音量を落として演奏しました。

三楽章、自然体で流れの良い演奏ですが、その分アクセントなどのアーティキュレーションに対する反応が弱いので、キュッと締まった感じはありません。金管はここでも気持ちよく鳴り響きます。

四楽章、
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ミハイル・プレトニョフ/ロシア・ナショナル管弦楽団

プレトニョフ★★★
一楽章、太く柔らかいファゴットによる息の長い序奏。速く動きのある第二主題第一句。鋭いトランペット。速いテンポで激しい展開部。トランペットが咆哮します。トロンボーンの嘆きもかなり強烈です。詰まった感じのコーダのトランペット。速めのテンポでさっさと進みます。

二楽章、速めのテンポでサラッと演奏される主要主題。細身ですが、整ったアンサンブルです。中間部も速めのテンポであっさりと進みます。

三楽章、金管も軽く、あまり強弱の振幅が大きい演奏ではありません。

四楽章、最初の音にタメがある第一主題。第二主題は息の長い演奏でした。テンポが大きく動くことは無く、どっしりとしています。お寺の鐘のようなドラ。

特徴のある表現も一部にはありましたが、総じて標準的な演奏と言う感じでした。
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ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス/RAI国立交響楽団 2003年トリノライヴ

ブルゴス★★☆
一楽章、感情の込められた序奏。速いテンポの第一主題。鋭いトランペット。味気なくさっぱりと演奏される第二主題第一句。テンポは速く進んで行きますが、表面はデコデコしていて滑らかではありません。展開部でも鋭く突き刺さるようなトランペット。トロンボーンの嘆きはとてもあっさりとした表現で長い音も短めに演奏しました。第二主題第一句の再現も速くあっさりとしています。コーダのトランペットや木管は美しく歌います。

二楽章、細身でサラッとした肌触りで美しく主要主題。中間部は速めのテンポで淡々とした演奏であまり沈んだ感じはありません。

三楽章、弦のアンサンブルや木管の旋律の受け渡しなどがあまり丁寧では無い感じで、少し乱れます。金管は濃厚な色彩です。大太鼓のロールがある部分の最後で大きくテンポを落としました。最後はアッチェレランドして終わりました。

四楽章、あっさりと淡白な演奏です。あまり表題を意識せずに楽譜に忠実な演奏をしているようです。コーダの前の強奏部分も粘った表現は無くとてもあっさりとしています。コーダもサラッと終わりました。

三楽章ではテンポの動きもありましたが、全体としてはとてもあっさりと淡白な演奏で、感情を吐露するような表現はありませんでした。あまりにも淡白で表題とはかけ離れた演奏のように感じました。
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レオポルド・ストコフスキー/ロンドン交響楽団

icon★★
一楽章、うねるような序奏。柔らかい第一主題。木管もくっきりとしています。非常に感情の込められた第二主題。展開部は強烈な一撃ではなく、なだらかに盛り上がったような感じでした。そしてしばらくすると大きなテンポの動きがありました。ストコフスキーらしい大きなテンポの動きが何度か表れます。トロンボーンの嘆きは絶叫するようなものではなく、かなり抑えられたものでした。コーダのトランペットはかなり大きく音量を変化させた演奏でした。

二楽章、歌があり豊かな音楽ですが、この楽章でも極端なテンポの動きがあります。それぞれの楽器が主張し強弱の変化も大きくてとても生き生きとした生命感に溢れる音楽です。ただ、この大きなテンポの動きにあざとさも感じます。ストコフスキーの内面から自然に出たものではなく、意図的に仕掛けたもののように感じます。

三楽章、色彩感が鮮明です。独特のスラーがあったり普通の演奏とは違います。テンポも途中で遅くなり盛り上がりへ向けてアッチェレランドしました。

四楽章、速めのテンポで突入しました。この楽章はテンポの動きもなく、純粋な音楽です。かなり大きめの音で軽いドラの響き。淡々とした演奏で、悲しみの淵へ落ちていく様な演奏ではありませんでした。

かなり作為的なテンポの動きなど、ストコ節全開の演奏でした。私にはこの作為的な演奏には共感できませんでした。

カルロ・マリア・ジュリーニ/ロサンゼルスフィルハーモニー管弦楽団 大阪ライヴ

ジュリーニ★★
一楽章、ゆっくりとしたテンポで感情を抑えたような序奏。会場がデッドなのが分かる第一主題。遠い金管。ひっかかるところが無く滑らかに流れて行きます。展開部も荒れ狂うような表現では無く、それまでの流れを維持したものです。トロンボーンの嘆きはゆっくりと明るい響きです。その後の第二主題第一句の再現は速めのテンポであっさりと演奏されます。コーダのトランペットは霞の中から聞こえてくるようなくすんだ響きでした。

二楽章、滑らかな中に自然な歌がある主要主題。録音が飛び飛びになります。かなりナローレンジで解像度も低いです。

三楽章、録音のせいか、静かに始まる弦に比べると飛び出す木管。金管が入っても大騒ぎすることは無く、落ち着いた演奏です。

四楽章、

録音が悪くしかも音や画像が飛んだりして安定した再生が出来ませんでした。演奏の細部もあまり分からず良かったのかどうかも分かりません。
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ネーメ・ヤルヴィ/イェーテボリ交響楽団

ヤルヴィ★☆
一楽章、あっさりとサラッとした序奏。繊細でリズミックな第一主題。第二主題第一句もあっさりとしています。第二句も速いテンポで粘りは全くありません。音が整理されていて、余分な響きが無くちょっと寂しい展開部。金管はかなり強く咆哮します。テンポは劇的に動いて激しい表現になって行きます。コーダはまた速いテンポになりとてもあっさりとした表現です。

二楽章、この楽章もあっさりとした表現で淡々と進んで行きます。中間部も大きく歌うことは無く速いテンポで進みます。

三楽章、アクセントがあまり強く無く、音楽がなだらかに流れて行きます。やはり音が整理されている感じでとてもスッキリとスリムな演奏です。大太鼓のロールが入る部分もとてもスッキリと軽い感じでした。テンポもとても落ち着いています。

四楽章、深く感情を込めるような表現は無く、とてもサッパリとしています。コーダも沈んでいくような表現は無くとてもあっさりとしています。

感情を込めることは無く、とてもあっさりとした表現の演奏でした。音も整理されていて、スッキリとした響きでしたが、その分寂しく厚みの無い響きになりました。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

クラウディオ・アバド/シカゴ交響楽団

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一楽章、比較的速いテンポの音楽の運びで、陰鬱な表情はあまりありません。
録音もデッドで、味わいがあまりありません。オケの響きも軽くて、作品の持っている重いものを表現していないように感じます。音楽が淡々と流れて行くだけです。

二楽章、上滑りしているような感じがして、何も伝わってきません。5拍子の揺れも感じられない。
こんなせっかちな音楽のどこに魅力を見出せば良いのでしょうか。私には、この演奏の良さが理解できない。

三楽章、音楽が前のめりにならない。前進しようとする生命感のようなものも感じられない。
アバドは、このスーパーオケを使って何をしたかったのだろう。
シカゴsoを鳴らし切るような豪快な演奏をするわけでもなく・・・・・・・・。

四楽章、三楽章と対比して、ぐっと重く沈みこむような音楽が聴きたいところなのですが、アバドの指揮では、ムリな要求のようです。

作品に没入したいと思う心を、アバドが邪魔をしているような感じがして、何とも・・・・・・・・。

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