マーラー 交響曲第9番3

たいこ叩きのマーラー 交響曲第9番名盤試聴記

オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★★
一楽章、闇の中に現れる緊張感から、第一主題で開放されます。細い糸を紡いで行くように複雑に音楽が絡み合って行きます。展開部の重い響きが印象的です。クライマックスでも咆哮するようなことはなく、極めて冷静に音楽が進んで行きます。銅鑼とともに現れるトロンボーンのシンコペーションも余力を残して、制御されています。マーラーが楽譜に記した細かい書き込みはほとんど無視したと言われるクレンペラーの演奏ですが、その分演奏の流れはとても良く、自然に身を任せることができます。コーダはとても柔らかく美しいものでした。

二楽章、この楽章はオケによって色んな色彩感を聞くことができるので楽しい。ふくよかなホルン。ちょっとだけ金属的な弦。トライアングルが異様に近いところで演奏しているような録音です。テンポの変化は自然です。金物打楽器のレベルを高めに録っているのか、突然のシンバルに全体をマスクされます。次第に迫ってくる暗い影が自然に表現されています。

三楽章、落ち着いたテンポで、とりたてて騒ぎ立てることもなく、また深く感情移入することもなく、自然に淡々と音楽が進みます。大太鼓の弱音のトレモロが入った後も堂々とした落ち着いたテンポでスケールの大きさを感じさせます。最後も大きくテンポを煽ることはなく、着実な足取りでした。

四楽章、緊張感のあるヴァイオリンから弦楽合奏に移り凄く安堵感を与えてくれます。しかしすぐに哀しみを含んだ音楽になって行きます。テンポが動いたり大きく歌うこともなく自然な流れです。ハープの上に乗って演奏される木管がとても悲しそうです。クライマックスのトロンボーンは強烈でした。この曲で初めてフルパワーだったのではないか?コーダからの表現も客観的で自らの別れの悲しさと言うよりは、自分とは別の人の別れを見ているような演奏でした。

自然な流れで、感情を抉り出すような演奏ではありませんが、安定感のある演奏でした。

リッカルド・シャイー/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

シャイー★★★★
一楽章、サーッと言うヒスノイズのような音の中から演奏が聞こえます。非常にゆっくりとしたテンポで演奏されます。まさにため息のような第1主題。柔らかく美しい響きです。テンポは遅いのですが、音の密度はあまり高くなく、ふわっとしています。クライマックスで音が混濁して、色彩感があまり分かりませんでした。テンポは遅いですが、感情移入することは無く演奏自体は淡々と進んでいます。

二楽章、この楽章もゆっくり目のテンポです。コンセルトヘボウ独特の濃厚な色彩はあまり感じませんが、まろやかな響きです。Bに入って、最初はそんなには速くない感じがしましたが、実際にはかなり速くなっています。Cに入ってから次第にテンポを落とし、のどかな雰囲気です。ここのBも、入りはゆっくりですぐに速くなりました。テンポはよく動いて表情も多彩です。

三楽章、軽いトランペットの序奏に続く力強いA。豪快にホールに響くティンパニ。深い響きのコントラバス。オケはいつものように美しく鳴っているのだろうけれど、off気味の録音で色彩感に乏しいのが残念なところです。柔らかい表情のB。ノイズのせいなのか、弱音での緊張感があまりありませんし、音 の密度もやはり高いとは言えない感じで、漠然と演奏されているように感じてしまいます。あまりテンポを上げずに終わりました。

四楽章、厚みがあり暖かい主要主題。意図的に歌うことは無く、自然に任せているようです。第一のエピソードでは別れを迎えるう つろな雰囲気をうまく表現しています。ホルンに現れる主要主題も寂しさを感じさせるものでした。第二のエピソードも別れを強く印象付けるものです。コーダ もすばらしい演奏でした。

三楽章までは、散漫で何をしたいのか正直分からないような演奏でしたが、四楽章では、意図的な解釈を加えないことで、作品からにじみ出るような別れの寂しさを見事に表現しました。
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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、ふわっと柔らかい第一主題。この録音も低域が薄く厚みに乏しい響きです。また、奥行き感もあまりありません。微妙なテンポの動きによって濃厚な表情が付けられて行きます。揺り篭に揺られるような音楽。衝撃音だけのシンバル。一時の穏やかな安らぎ。展開部の前の頂点は、そんなに大きな頂点ではありませんでした。トロンボーンのシンコペーションもあまり強烈ではありませんでした。晩年のライヴ録音では、濃厚なコントラストで強烈な主張を展開しましたが、この頃の音楽はそれほど強い主張は無く、色彩も淡い感じです。コーダは独奏ヴァイオリンと木管の絡みがかなりはっきりと演奏されます。

二楽章、頭の音を強く演奏するファゴット。響きが薄く、残響成分も少ないので、豊かさもありません。Bはかなり速く感じます。表現は積極的ですが、ちょっと雑な演奏のような感じで、バーンスタインのニューヨーク時代をイメージさせます。Cはゆったりとして落ち着いた雰囲気です。再び現れるBがやはり落ち着きが無い。再度のCはゆったりと歌います。Aは前のCから引き継いでゆったりとしたテンポで、始まり次第にテンポを速めますが、ここでは雑な感じはありません。むしろマーラーのオーケストレーションを見事に再現しています。途中で大きくテンポを落として、一瞬止まるような部分もありました。なかなか豊かで大胆な表現です。

三楽章、トランペットと弦。ホルンと弦のそれぞれの間を少し空けて重々しく始まりました。その後急加速して、生命観に溢れる生き生きとした表現です。この躍動感はバーンスタインの若い頃の特質を思い起こさせます。各楽器の動きがとても克明ですが、響きの薄さと奥行き感の無さがとても残念です。

四楽章、暖かみがあって深い主要主題は非常に感情が込められてうねりのような音楽になっています。登場する楽器が大変明快に現れます。弦が重層的に重なって押し寄せてくる部分は勢いもありなかなか良い演奏でした。そこから静まるところの引きも良い表現でした。第2のエピソードのうつろな寂しさもとても良く表現されています。クライマックスは少し薄い感じがしました。コーダはあまり別れを感じさせる演奏ではありませんでした。

バーンスタインの音楽が完熟する前の過渡期の演奏だったのではないかと感じました。濃厚な表現や躍動があるかと思えば、とてもあっさりとした部分もあり、まだ定まっていないような感じがありました。
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ワレリー・ゲルギエフ/ロンドン交響楽団

icon★★★☆
一楽章、静かで控えめな第一主題。第二主題も騒然とすることは無く、穏やかです。残響感に乏しく、狭い空間で演奏しているような感じを受けます。展開部に入る前の頂点も狭い印象を拭うことはできず、スケールの小さい演奏に感じました。展開部冒頭は速めのテンポです。展開部は全体的に速めのテンポですが、マーラーの複雑なオーケストレーションはあまり表現されず、主旋律に重きが置かれ、他のパートは削ぎ落とされているような感じの響きです。トロンボーンのシンコペーションも全開ではありません。葬送行進曲も速いテンポで重さはありません。再現部に入って、ハープに導かれて出るホルンの響きも浅く、この演奏を象徴しているような感じがします。

二楽章、四つの音の初めの音に軽くアクセントを入れた冒頭。美しい音で抜けて来るクラリネット。弦の最初は少し遅くなりました。とても生き生きとした音楽です。Bも活発な動きです。音の強弱が明瞭で躍動感があります。Cはテンポが動いて歌います。途中で顔を出すAはテンポを上げて活発に動きました。再び現れるBも活発に動きます。シンバルが豪快に鳴ります。最後のBはとても速かったです。

三楽章、分厚い弦の響き。この楽章でも積極的な音楽が続きます。トランペットのソロは柔らかいと言うよりも細い感じです。オケは絶対に全開にはならず、常に制御されています。最後は色彩のパレットをいっぱいに広げて、狂ったように終りました。

四楽章、ゆったりとたっぷり演奏される序奏。感情の込められた主要主題。ホルンの主要主題が間接音をあまり含まないので、とても浅く聞こえます。第一のエピソードは速いテンポで淡々と進みます。第二のエピソードはすごく速いテンポです。ゲルギエフは感情の入り込む余地を無くそうとしているかのようです。ここでのクライマックスが初めて全開になった感じですごいエネルギー感でした。コーダもテンポは速いですが、寂しい冷たい空気を感じさせます。

二楽章と三楽章の躍動感を強調することで、四楽章の静を演出したようです。とても個性的なテンポ設定で、この曲の違った面を聴かせてくれたようにも感じました。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★
一楽章、とても明快な音でしっかりとした演奏です。さらりとした第一主題。テュッティの何とも言えない暗闇に突入するような雰囲気は独特のものです。展開部でもホルンがキリッと浮かび上がります。第三主題の頂点は全開です。弱音と強音が明快に区別されていて、onとoffのように単純な音楽のような錯覚に陥りそうです。主役がすごく強調されていて、その裏で動いているパートがあまり聞こえないので、複雑な構造が分からず薄い音楽に感じてしまいます。「最大の暴力で」と指示されたトロンボーンはその通り強烈でした。鐘はチューブラベルです。コーダの前のホルンはとても美しく、他のパートもすごく幻想的な雰囲気でした。

二楽章、ゆっくりとしたテンポです。弦は弓を跳ねさせているように強いアタックでした。ゆったりとしたテンポからテンポを上げるところの変化が大きくて全く別の曲を聴いているような感覚に襲われます。穏やかな部分はとても安堵感のある良い演奏です。また、テンポを上げるところが違和感があるんですよね。終わりに向けても弦は弓を跳ねるような演奏でした。

三楽章、少し抑えぎみのトランペットから開始しました。しばらくするといつものように全開になります。金管も抑えるところは抑えているのですが、強奏部分では弦もしゃかりきになって演奏しているように聞こえて、onとoffがはっきりしているような演奏です。ホルンなども間接音よりも直接音が強調されて音楽に奥行きを与えません。これは録音の問題もあるのかも知れませんが、全ての音が前へ出てくるので、全てさらけ出したような、あられもない姿になっているように感じます。

四楽章、とても安らかで安堵感のある主要主題。僅かに硬質なホルン。分厚い弦楽合奏。弦楽によってマーラーの人生への惜別の思いが切々と語られて行きます。孤独と寂しさを訴える木管。クライマックスで金管が登場すると全開。まさにopenになってしまって、そこまで貯めてきた感情を全て放出してしまい、ちょっと興ざめします。コーダからも直接音が強く、フワッとした羽毛のような柔らかさがありません。「死に絶えるように」と書かれている最後の表現としては、音の力があり過ぎだと思います。

これはシカゴのオーケストラホールの音響特性にもよるのだと思いますが、間接音が少な過ぎで、とても強い音が全体を支配しています。この曲の持っているメッセージとは相容れないオケの特性だと思います。

ジェームズ・レヴァイン/フィラデルフィア管弦楽団

icon★★★
一楽章、暖かいハープの調べ。第一主題も暖かい。テュッティは何かが崩れるような巨大な響きです。すごい情報量で音の洪水が押し寄せてきます。レヴァインの演奏に共通するティンパニの強打。弱音部でも暖かく、ピーンと張り詰めたような緊張感はありません。そして、色彩感がモノトーンのように淡白なのもレヴァインのマーラーの特徴です。濃厚な表情は付けられていないので、音楽自体は淡々と進む感じです。金管もかなり強奏されますが、一音一音に重さは感じません。とても心地よい響きで音楽が進んで行くのですが、この作品がこれで良いのか、ちょっと疑問に感じます。コーダは柔らかい独奏ヴァイオリンと木管が美しかった。

二楽章、抜けが良く生き生きとしたクラリネット。弦楽器はゆっくりと演奏をはじめました。Bはかなりテンポを上げました。付点のリズムが正確に演奏できないくらい速いテンポです。金管は遠慮なく強奏します。とても気持ちの良い演奏です。狂乱も見事に再現されています。演奏自体はとても上手いのですが、感情的に何も迫ってくるものが無いのが、これで良いのか、疑問です。レヴァインはこの作品を音響として捉えているようで、その意味では見事ですばらしい音響空間を再現しています。

三楽章、軽く演奏された冒頭のトランペット。相変わらずティンパニは思いきり良く入って来ます。金管は強奏されるのですが、色彩感はありません。マーラーの複雑なオーケストレーションを表現しているとは言えないようです。ただ、アンサンブルの精度などは非常に高く、精緻な演奏ではあります。

四楽章、かなり思いっきり演奏された冒頭でした。すごく感情が込められたように感じます。分厚い弦が歌います。寂しげな独奏ヴァイオリンが別れの悲しさを歌います。第一のエピソードの高まったところでレヴァインの声も録音されています。これまでの楽章とは一転して良く歌います。一つ一つの音に感情が込められています。コーダは特に感情が篭った演奏ではありませんでした。

総じて、あっけらかんとした演奏でした。

ウイン・モリス/ロンドン交響楽団

モリス★★★
一楽章、予想したほど遅くは無く、普通のテンポで始まりました。第一主題も目立った表情付けはされていません。響きが浅く、テンポの動きもほとんど無く、機械が一定に刻んでいるような感覚です。展開部に入る前の頂点でもテンポは動かず、ゆっくりのままで、とても無機的に感じました。金管を激しく吹き鳴らせますが、内面を抉るような音楽にはなっていません。トロンボーンのシンコペーションの部分でも、あまりにもきっちりとテンポを刻むので、聞いていて堅苦しく感じました。

二楽章、暖かい響きです。この楽章もスタートから全くテンポが動きません。Bは速めのテンポです。ここで初めて動きのある音楽が聞けました。Cはテンポも動いて自然です。二度目のCはすごく遅かったです。

三楽章、あまりにもカッチリと2拍子を刻むので、音楽が縦に振れているようで、横へ揺れるような曖昧な動きが無いので、とても硬いです。音楽が前に進もうとする力が無いので、とても遅く感じます。最後はものすごく遅いテンポから時間をかけて僅かにテンポを速めて終わりました。

四楽章、この楽章もゆっくりですが、感情のこもった主要主題です。ファゴットのモノローグは消え入るような弱い音量でした。ヴァイオリンの弱音が羽毛のようなフワッとした柔らかい肌触りでとても美しい。この楽章は、これまでと打って変わって、とても感動的な演奏です。三楽章までは、遅さが音楽を停滞させていたような感じがありましたが、この楽章では、そのテンポの遅さが音楽をとても深いものにしています。聞き手を引き込むような集中力。三楽章までの演奏が嘘のようです。切々と別れを告げるコーダも感動的でした。

四楽章だけなら満点の演奏でしたが、そこに至るまでがあまりにも不自然な動きだったのが残念です。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ロンドン交響楽団 1966年

ホーレンシュタイン★★★
一楽章、独特の音の切り方をする第一主題。かなりストレートに感情をぶつけてくる演奏で、頂点では絶叫します。録音は古く常にノイズが付きまといますが、音には力があり、濃厚な演奏です。強烈なトロンボーンのシンコペーションの後のティンパニもかなり強打します。葬送行進曲の鐘がくっきりと浮かび上がります。とても激しく起伏に富んだ演奏です。コーダは一転して柔らかいヴァイオリン独奏です。

二楽章、明るいクラリネットと少しこもったホルン。ゆっくりとしたテンポですが、テンポは揺れ動きます。大きくテンポを落とす部分もあります。ぐっと早まるB。メリハリがあって躍動感があります。Cは音が痩せぎみなので、穏やかさはあまり感じません。二度目のBへの切り替わりはゆっくりから入りました。テンポはよく動きます。最後のAでは下品なくらいに大きくホルンが吹きましたし、とても遅いテンポです。

三楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポで始まりました。途中でテンポを落として強く濃厚な表現です。ここまで管楽器の小さいミスはたくさんあります。録音は古いですが、色彩感は濃厚です。とても情熱的で熱気を感じさせます。

四楽章、音楽を大きくくくって歌った第一主題。第二のエピソードでは登場する木管が唐突で淋しさは感じませんでした。テンポは速めでグイグイと進む力強さがあります。クライマックスで突き抜けるトランペット。コーダは暖かく、あまり別れの寂しさは感じませんでした。

個性的な演奏で、聞かせどころもたくさんありました。最新の録音で聞いてみたい演奏でした。
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ラファエル・クーベリック/ニューヨーク・フィルハーモニック 1978年

クーベリック★★★
一楽章、あまり抑揚の無い第一主題ですが、かえって脱力感が伝わってきます。第二主題もあまり表情は付けられていません。トゥッティはかなりのエネルギー感でした。展開部に入って、ミュートした金管が強烈に演奏します。金管やティンパニが強烈です。全体に金管が強めに演奏されるので、濃厚な色彩感です。決して美しい演奏ではありませんが、力があって生き生きとした演奏です。

二楽章、サラッと流れの良い演奏で引っかかるところがありませんが、音楽には活気があって生命感に溢れています。Bに入っても大きくテンポを速めることはありませんでした。この楽章でも金管が強い感じです。Cがあまり美しくないのが、この頃のニューヨークpoらしいところです。美しくはありませんが、躍動感や生命感など人間臭い演奏で、嫌いな演奏てせはありません。クライマックスではテンポを速めて、シンバルも炸裂しました。その後は大きくテンポを落として黄昏るように終わるかと思っていましたが、オケは元気なままです。

三楽章、金管に比べると弱い弦。一音一音刻み込むような強い音です。管楽器は生き生きとしていて色彩感も濃厚です。中間部の穏やかな部分でも、生き生きとした表情は変わらず、血の気が多い感じがします。これはこの頃のニューヨークpoの特徴か?積極的な音楽なのですが、ちょっと雑な感じもします。

四楽章、浅く深みの感じられない主要主題。注意深く進む第一のエピソードですが、美しさはあまりありません。弦が主体になると音楽が淡泊になって、サラサラと流れて行きます。第二のエピソードでは木管が踏み込んだ表現をしますが強く訴えてくるような表現ではありません。コーダに柔らかさや深みが感じられません。

管楽器主体の部分では生命感に溢れた生き生きとした演奏でしたが、少し雑な印象がありました。弦主体になると表現が浅く深みの無い音楽になってしまい、四楽章のコーダでも心動かされることはありませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第9番の名盤を試聴したレビュー

マーラー 交響曲第9番4

たいこ叩きのマーラー 交響曲第9番名盤試聴記

ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団 1969年

セル★★☆
一楽章、非常にあっさりと演奏される第一主題。ほとんど抑揚もなくさらりと流れる第二主題。ためなともなくひっかかるところが無くすんなりと音楽がすすんで行きます。セル好みの締まったホルンの響き。テンポも速めで感情移入などは全く無いように感じます。縦の線がきっちりしていて、とてもシンプルに聞こえます。力で押すようなこともありません。オケは余裕を持って演奏しています。情に流されるような演奏ではなく、理詰めで音楽が構築されていて、こちらも感情が動くことはありません。

二楽章、ホルンのトリルが強調される以外は、特に目立った表現は無く、流れて行きます。Bに入ってもテンポは僅かに速くなりました。トロンボーンも大きく叫ぶことはありません。最後のBはとても速いテンポでした。最後のAはゆっくりですが、やはり感情を込めるような演奏ではありません。

三楽章、

四楽章、全く抑揚なく演奏される序奏。同様に全く思い入れが無いかのように演奏される主要主題。第一のエピソードも速めのテンポで淡々と進みます。タメやねばったり、うなったりすることは無く、この曲をとてもシンプルにストレートに伝えているようです。第二のエピソードも感情移入されていないので、こちらの感情が動くこともありません。消え入るような弱音で演奏されるコーダ。すごい透明感で美しいです。

非常に透明感が高く美しいコーダにはグッと来ました。しかし、そこまでの音楽の運びがあまりにもシンプルで、私には肩すかしのような感じが残ってしまいました。
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ケント・ナガノ/ハレ管弦楽団 1996年5月 東京

ナガノ★★
一楽章、非常に録音レベルが低く最初はかなり聞き取りにくい状態でした。あまり思い入れの無いような第一主題。作品に込められたメッセージは全く関係ないかのように淡々と進められます。第二主題から高まったトゥッティも巨大な響きではありませんでした。展開部の前はかなりテンポを煽ったのは迫力がありました。音色は暖色系で、あまり密度の高い響きではありません。少し緩い雰囲気さえありますので、陰鬱な部分の落ち込みがあまり無く、浅い感じが常にあります。トロンボーンのシンコペーションもトロンボーンよりもチューバの響きが強く、強烈な印象はありません。コーダの前のフルートも静寂感や緊張感は伝わって来ません。

二楽章、暖かいホルン。温度感があり厳しさは感じません。Bは速めのテンポであっさりと演奏されます。Cは暖色系の音色が幸いして、穏やかで温かい演奏です。最後のBはかなり速いです。

三楽章、この楽章は遅めのテンポで非常に落ち着いた演奏です。感情移入などは全く無く、ずっと淡々と進んでいます。オケも咆哮することも無く、とても制御されています。最後のテンポの追い込みもあんまり激しくありませんでした。

四楽章、ほとんど歌わない主要主題。ファゴットのモノローグはとても弱く消え入るようでした。あまりにも素っ気ないこの演奏が私には、ただ演奏しているだけにしか聞こえません。感情的に沈んだり、高まったりすることが無いのです。第二のエピソードもテンポが速く、淋しさも感じられません。

ナガノはこの演奏で何を表現したかったのか、私には分かりませんでした。
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ミヒャエル・ギーレン/北ドイツ放送交響楽団 2010年ライヴ

ギーレン★★
一楽章、ミュートしたホルンが少し長めに尾を引く冒頭。穏やかな第一主題。流れるような第二主題。頂点でも絶叫することは無く、良くコントロールされています。暗闇の中に落とされたような展開部。ずっと暗闇が広がっているような感じです。ハープの動きが強調されています。トロンボーンのシンコペーションはとても長く吹き伸ばされた印象で、ゆっくりしたテンポになっています。色彩感は豊かです。柔らかく美しいコーダ。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで暖かいファゴットと弦。冷たく突き抜けるクラリネットが対照的。舞踊風な音楽と言うよりも、しっかりと足を踏みしめるような確実さがあります。Bは流れを損なわない程度に速くなりました。トロンボーンにメロディーが出る頃にはかなり速くなっています。Cはあまり穏やかさを感じません。二度目のCはすごくゆっくりとした演奏です。最後のAもすごくゆっくりですすが、終わりに向けて脱力いるようにさらにテンポを落とします。

三楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポで始まりました。Bもゆっくりなので、おどけたような雰囲気はありません。二度目のAは引きずるような感じがします。二度目のBは幾分明るい表現になりました。細いトランペット。どうも音楽がチグハグしているような感じがして、しっくり来ません。ハープが出る部分も非常に遅いです。最後もテンポは僅かに上げますが、とても落ち着いています。

四楽章、感情を込めずに無機的に演奏される主要主題。浅い響きのホルン。感情が込められることはほとんど無く、無表情に音楽は進みます。ただ、弦の厚みのある柔らかい響きは魅力的です。第二のエピソードも寂しさはほとんど感じません。なかなか壮大なクライマックス。冷たい冬の別れです。

ほとんど感情移入を断ち切ったマーラーの9番の演奏は、解釈の一つとして認めますが、やはり聞いていて共感できませんでした。
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ディミトリ・ミトロプーロス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1960年

ミトロプーロス★★
一楽章、チリチリと言うスクラッチノイズの中から音楽が聞こえます。倍音成分がほとんど無く、硬い響きです。浮遊感のある第一主題。かなりキツイ響きのトゥッティ。頂点ではかなり激しく動きも大きい演奏です。かなり情熱的な演奏のように感じます。再現部に入っても金管がかなり激しく演奏しています。色んな楽器が活発に動いています。一転して穏やかになるコーダ。

二楽章、この当時の演奏としては、非常に整っていると思います。なかなかスタイリッシュです。もっと良い録音で聞きたかったですね。最後のAはゆっくりとしたテンポになりますが、楽器の動きは克明で抉り出すような表現です。

三楽章、トランペットとホルンの間に演奏される弦が壮絶な響きでした。遅めのテンポで進むが、途中で一旦テンポを落としたりします。危なっかしいトランペットのソロ。最後までほとんどテンポを上げませんでした。

四楽章、ゆっくりと演奏される主要主題ですが、あまり感情移入はしていないようです。第一のエピソードの二回のヴァイオリン独奏の間の弦楽合奏も動きがあって素晴らしかった。第二のエピソードは速いテンポで始まりました。ここでも感情移入はほとんど無いように感じます。クライマックスのエネルギー感はすごいです。

とても客観的な演奏だったように感じましたが、頂点では遠慮なくドカーンと来るところの対比が面白い演奏でした。ただ、やはり録音の古さがいかんともしがたい。
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アンドレ・プレヴィン/ケルン放送交響楽団 2001年

プレヴィン★★
一楽章、力が抜けて穏やかで美しい第一主題。第一主題の途中でひっくり返るホルン。テンポが動いたり、オケが咆哮することも、大きく歌ったりすることは無く、作品を客観的に見ているような演奏です。ティンパニは硬質で非常に軽い響きです。トロンボーンのシンコペーションの前もシルキーで滑らかです。トロンボーンのシンコペーションは何かを発散するようなパワーがありました。葬送行進曲のトランペットのファンファーレも整然としていて、美しい演奏です。

二楽章、Bへの変化も大きなテンポの変化は無く、滑らかに音楽が進んでいます。トロンボーンも抑えた演奏で、マーラーが「きわめて粗野に」と指定したのとはかなり離れた演奏のようです。Cの中にAが現れる前はテンポを落としてAを導きました。

三楽章、深く刻み込まれるような演奏ではなく、とても軽い演奏で、その分流れがスムーズで美しいものとなっています。Bも大げさな表現は無く、軽い演奏です。Aが戻っても決して重くはなりません。再びBが再現した部分では、Ebクラリネットが楽しそうです。Cは滑らかなトランペット。最後は僅かにテンポを速めた程度でした。音楽的な興奮よりも、造形的な美しさを優先していねのでしょうか。

四楽章、ほとんど抑揚の無い主要主題。第一のエピソードのヴァイオリン独奏も何かを表現しようとはしていないようで、淡々と音符を音にしている感じです。こんな演奏なので、聞いていても心が動かされるようなことは無く、作品と共感しようとしても拒絶されるようで、できません。丁寧には演奏されているのですが、内面に訴えて来るものが無いです。クライマックスでも美しくすがすがしいトランペット。コーダも浮遊感のある美しい演奏でしたが、別れの悲しさなど内面に届くことはありませんでした。

プレヴィンはつくづくマーラー指揮者じゃないという事を感じさせられました。
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ヤンスク・カヒッゼ/トビリシ交響楽団

カヒッゼ
一楽章、かなりはっきりとしたチェロとホルン。ゆっくりとした第一主題ですが、どこか安っぽい音がしています。トランペットの高音が突き抜けて来るかと思えば、所々で金管が弱い部分もあり、一般的なこの曲の印象と違います。こんな曲だったっけ?と思うような部分がいくつもあり、不思議な感覚です。演奏するだけで精一杯と言う感じで、表現がどうとか、楽譜に書かれていることを正確に音にするとか言う次元ではありません。トロンボーンのシンコペーションも厚みの無い響きでした。ホルンにビブラートを掛けるのも旧ソビエトの名残でしょうか。コーダも潤いの無い音で味わいもありませんでした。

二楽章、透明感の無いクラレネット。潤いが無くささくれ立ったような弦。Bへの切り替わり時にオケのメンバーが迷ったような怪しい変化でした。トロ ンボーンの旋律がほとんど聞こえません。トランペットのミュートを付けた細かいパッセージも怪しい。管楽器は吹きやすいように吹いているような感じがしま す。音程も怪しいところが随所にあります。

三楽章、トランペットに比べると弱いホルン。かなり頼りない演奏で、聞いていてハラハラします。この曲はこのオケには技術的にかなり無理があるようです。バランスもおかしいところがたくさんあります。

四楽章、テンポを動かして感情移入しようとするカヒッゼですが、音楽は浅く深まることはありません。粗暴な金管が容赦なく吹かれます。トランペットだけが大きく突き抜けるクライマックス。特に何の感慨も無く終わりました。

演奏するので精一杯と言う感じのコンサートで、何かを表現したとか訴えたとかと言う次元ではありませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第9番の名盤を試聴したレビュー